2009年02月23日

濃密な戦い、プレーオフ

 プレーオフでは密度の高い試合が多い。ずっと感じてきたことではあるが、昨季のアジアリーグアイスホッケー・プレーオフのDVDを見て改めてその感を深くした。

 昨季のファイナルは北海道の二強、日本製紙クレインズと王子の顔合わせだった。昨季は全く取材をしなかったが、ホッケーを愛する地である北海道での盛り上がりは想像できる。DVDでは王子の二連勝で迎えた釧路での最終戦を全て見ることが出来た。この試合では王子は苦しみながらも勝ったという印象だが、プレーオフ9連勝という驚異的な快進撃で一気に手にした優勝だった。若手の活躍でチームに勢いがついたこともあるだろうが、トップリーグでは実に14シーズンぶりに栄冠を勝ち取った背景には、前回の優勝を経験している桜井らベテランのタイトルへの渇望があったのではないだろうか。

 プレーオフでは、選手もチームもレギュラーリーグと全く違って見えることがある。ホッケーの選手はプレーオフに入ると髭を剃らなくなったりするが、そういう単純なことではなく、レギュラーリーグとは違うテンションで試合が展開していくのだ。一瞬のプレーが、その後の流れを大きく左右してしまう。

 今季のプレーオフも始まっている。正直なところ私的な事情で取材が難しい日程もあるのだが、何とか都合をつけて出来るだけリンクに行きたい。そこには必ず濃密な時間が待っているはずだからだ。

posted by satoko |15:23 | アイスホッケー | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年02月16日

「気持ち」でもぎとった栄冠 (第76回全日本アイスホッケー選手権大会 準々決勝 西武 7 - 0 苫小牧駒澤大学 準決勝 西武 5 - 4 HC日光アイスバックス 決勝 西武 6 - 5 日本製紙クレインズ)

 スポーツで勝つためには、「心・技・体」の全てが整っていることが必要だ。しかし、なかでも一番大切なのは「心」ではないだろうか、と感じさせる西武の優勝だった。

 バンクーバー五輪最終予選を終えて帰国したばかりの代表選手を多数擁する西武にとり、全日本選手権は決して良い状態で戦えた大会ではなかったはずだ。しかし、準決勝・決勝と続いた接戦を制することが出来たのは何故なのか。決勝終了後、勝因を尋ねると、FW・小原大輔は答えた。
「やっぱり、負けたくないっていう気持ちしかないかな…」
FW・内山朋彦も言った。
「今日、みんなほんと気持ち入ってて、それが一番だと思います」
今季限りで活動を終了する西武は、強いチームとして終わりたいという選手たちの切実な「気持ち」によって、最後の全日本選手権を制した。

 7-0と圧勝した初戦の対苫小牧駒澤大学戦(13日)後、日本代表選手の小原は「まだちょっと僕自身、体の調子が上がりきってない」と言いながらも「外のチームにも代表選手いるんで、そういう言い訳は通用しないんで…頑張ります」と翌日の試合までに体調を整えることを誓っている。とはいえ、明らかにコンディションが良くない代表選手たちに代わり、奮闘していたのは五輪予選期間中日本に残って練習していた選手たちだった。試合開始11秒でゴールを決め、攻撃の口火を切った内山は、「久々の試合」と言いながらも「でも練習はやってたので」と準備を整えていたことをうかがわせた。
「(チームの譲渡先が)まだ見つかってないですけど、アピールするには優勝しなきゃいけない。優勝しか考えてないです」

 翌日の準決勝では、代表選手がいないHC日光アイスバックスに苦しめられる。全てのメンバーが揃った状態できっちり調整してきたであろうバックスは、日光から駆け付けたファンの声援を背に生き生きと動いていた。西武はエンプティネットゴールが決勝点となる薄氷の勝利で、なんとか決勝に進出した。
 小原は「立ち上がり先制されてばたついたが、最後はチーム一丸となっていい攻めが出来た」と試合を振り返った。
「今日、結構ミスが目立つ試合だったので、修正して後は気持ちで頑張ります」
 3-3の同点で迎えた第3ピリオド開始59秒、豊富な運動量が功を奏して、ゴール横からのゴールで貴重な勝ち越し点を挙げた内山は「あんな風になればいいなと思ったら、ほんとに」と狙い通りのゴールだったことを明かした。
「(チームの雰囲気は)良くもなかったですけど、勝ったことはいいことで、プラスになると思うんで…修正するところは修正できれば」
「今日でだしちょっと良くなかったんで、明日(の決勝は)もっとでだしからいけるように」

 立ち見も出て大勢の観客が見守るDyDoドリンコアイスアリーナで、15日の決勝は始まった。対戦相手の日本製紙クレインズは魅力的なホッケーをするチームだが、今季の西武にとっては相性の悪い相手ではない。しかし、決勝は予断を許さないシーソーゲームとなった。
 第1ピリオドを1点リードで終えた西武だが、第2ピリオド中盤で同点に追いつかれる。10分33秒、そして10秒後に連続してゴールを決め、突き放したかに見えたが、クレインズも16秒後に得点して食い下がる。更に西武は弱点のペナルティ癖が出てしまい、第2ピリオド終了までにキルプレーで2点を失う。西武の負けるパターンの試合展開にも見えた。
 第3ピリオドに入っても悪い流れは止まらず、5分49秒にも失点、クレインズが一方的に連続4得点を挙げる。しかし、ここで西武に流れを引き戻したのは、やはり主将の鈴木貴人だった。鈴木が7分46秒に得点、更に小原が12分3秒に同点に追いつくゴールを決める。そして鈴木は試合終了まで3分を切った17分9秒にもゴール、遂に西武は逆転した。
 カウントダウンするファンの声援の中、西武は守りきり、テープの投げ込まれるホームリンクで歓喜の優勝を成し遂げた。

 「チームが劣勢なとき、流れ変えるゴール決められて良かったです」
試合後、小原は第3ピリオドの同点ゴールをそう振り返った。
「自分たちのミスからの失点もあったし、控え室では結構分析っていうか…気落とさないで頑張ろうっていう感じで」
「パワープレーだったり、やっぱりクレインズは上手いんで、反則したら失点覚悟くらいの気持ちでやってたから。力は五分だと思うんで、最後まであきらめずにやってたのが良かったかなと思う」
更に、西武にとっては24日から始まるアジアリーグのプレーオフについては、こう語った。
「去年(全日本選手権で)優勝した後に、プレーオフ・セミファイナルでやられてるんで、ここで浮かれないで気を引き締め直して」
セミファイナルの対戦相手は王子である。
「(王子は)今シーズン相性もそんなに良くないチームなんで、とりあえずセミファイナル制して、なんとか決勝進出したいなと思います」
小原の同点弾をアシストした内山も、チームは落ち着いていたという。
「慌ててるとかは全然なくて、みんな冷静に」
2点リードされても、内山の「優勝しか考えてない」気持ちは揺らいでいなかった。
「負けることは全く考えてなかったです」
小原も「この後休めるので」と語ったが、内山もプレーオフまでにはチームの状態が上がると言う。
「ナショナルチームの人達も疲れてたと思うんで…今度は休んでいい状態でいけると思うんで、もっと強い西武見せられると思います」

 万全ではないコンディションを、有終の美を飾ろうという強い意志でカバーした西武。プレーオフでは、本来の姿に戻り二つ目のタイトル奪取に立ち向かう。
 まだ来季の展望は見えていない。しかし、前を向いて戦い続ける彼らには、歴史ある強豪ホッケーチームとして存在し続ける権利があるはずだ。 

posted by satoko |11:00 | アイスホッケー | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年02月02日

北京五輪が残したもの

 1月25日・東京辰巳国際水泳場で行われた、シンクロナイズドスイミングの世界選手権代表選考会に、北京五輪代表選手のなかでただ一人出場したのが石黒由美子選手だった。結果としては世界選手権の代表には入れなかったが、石黒にとってこの選考会は、ロンドン五輪を目指すにあたって「次へつなげるためのステップ」という位置づけだった。

 石黒は、北京五輪後に現役続行を決めたものの「どうしても、シンクロやりたいという思いが出てこなくなっちゃった」という。選手として退き、選考会も辞退する意向をクラブに伝えたが、今シンクロに向き合えないだけであってロンドンに向けての気持ちはあるのでは、と問われてはっとしたという。
「ロンドンには行きたいっていう思いが、ほんとにあった」
次に行われる国際大会の選考会に出るためにも、とにかく出ることに意義がある、という思いで「3回か4回ぐらいしか練習していない」状態であえて臨んだ選考会だったのだ。

 石黒に聞いてみた。
「北京がかなりしんどかったってことですか?」
石黒は、それまでの記者との応答と変わらず真摯に答えた。
「そうですね…やっているときは精一杯だったんで分からなかったんですけど、終わってみたら、ほんとにシンクロをやりたくなくなってしまうほど、シンクロから心が離れちゃったんですよね。それを思うとやっぱり辛かったのかなっていうのは、あるんですけど…」
北京五輪代表ほど厳しい状況で五輪に臨んだシンクロの日本代表は、過去にいなかったのではないだろうか。異常な緊張状態でシンクロに取り組み続けた五輪終了後、同じテンションを保って競技に向き合うのは、生身の人間には無理だと思える。北京五輪代表のなかでただ一人現役続行を決めた石黒も、例外ではなかったということだろう。

 しかし、交通事故による大怪我を克服して夢である五輪出場を果たした石黒は、苦境から立ち上がることが出来る選手だ。話しづらいであろう現在の状況を、真っ直ぐな瞳と言葉で記者に語り続ける石黒には、不思議な力が感じられた。
「頑張ります。よろしくお願いします」
明るい声で囲み取材を終えた石黒が、ロンドン五輪出場を果たしたときには、北京での辛い経験が貴重な糧になるはずだ。

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posted by satoko |16:36 | シンクロナイズドスイミング | コメント(0) | トラックバック(0)
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