2008年09月04日

8.31、もうひとつのタイトルマッチ

8.31は全日本プロレスで
王者・武藤敬司と挑戦者・後藤洋央紀による
IWGPタイトルマッチと
王者・諏訪魔と挑戦者・太陽ケアの
三冠タイトルマッチが行われました。

そしてもうひとつ。
北千住マルイ1010(せんじゅ)シアターで
NWAライトタッグのタイトルマッチがありました。

王者・日高郁人&澤宗紀が持つ
NWAライトタッグのベルトに
バトラーツの石川雄規と吉川祐太が挑戦したのです。

ここでは、その3つめのタイトルマッチについて書きます。

吉川の挑戦表明によって実現したこの試合。
吉川にとってはじめてのバトラーツのメインであり
はじめてのタイトルマッチでもあった試合でした。

バトラーツルールは
通常のプロレスルールと異なり
フォールによる3カウント決着がありません。

ですがこれはNWAタイトルマッチなので
当然プロレスルールで行われました。

しかし誰もフォールにいくことはなく
最後の最後まで相手の顔を殴り
相手を蹴り続けたのでした。

先発で出てきたのは澤と吉川。
平手と蹴りの応酬。
べつに3秒止まってたら死ぬとかいうわけでもないし
相手がそんなに憎いというわけでもないだろう
という打撃の応酬。

鼻血を出した吉川に
日高がローを放って膝を崩させてから蹴り、
掴んでイグチボム、
ヒザ蹴りの連打からローキック、ヒザ十字。
厳しい。

日高の攻撃で痛めた吉川の足を殴る澤。
これは痛い。

澤が吉川に極めたヒザ十字を
顔面へ渾身のグーパンチを放ってカットする石川。
そこまでしなくてもいい。

日高はもともとバトラーツの出身。
石川にとってみれば、時期は違えど3人とも自分の教え子です。
日高はもうバトラーツにいた頃の日高ではないけど、
だからといって否定する過去ではない。

石川へローを放ってソバット、
さらに石川の延髄斬りを野良犬ハイキックでカット。
ジャストのタイミング。

石川の技を読んで、あえて放ったハイキック。
そんなの分かってるんだ、
いつまでもそれをくらって倒れる自分でもないんだと。

倒れ、立ち上がる石川。
そして、まだまだ倒される石川雄規でもない。

最後は吉川が、澤の卍固めに捕まって敗北。

敗れて涙を流す吉川の頭を、笑顔でなぜて抱き留める石川。
勝ったけどフラフラの澤をなにやら怒鳴りつけている日高。

敗者と勝者の対照的な姿。

マイクを持った澤が

「今日はどうもありがとうございました。
 バカな上司、バカな後輩、バカな先輩に囲まれて
 僕はすごく幸せです!」

と挨拶し、最後は「1、2、3、ナーシャ!!」でフィニッシュ。

日高「40も過ぎてあんなバカな人(※石川)のもとを巣立って正解でした」
澤 「そして戻ってきたじゃないですか(笑)。もう、バカとしか
  出てこないですね。長生きする気ないんですかね、4人とも」
日高「俺は長生きしたいよ!(笑)俺はバカじゃないって信じてるんですけどね」
澤 「いや、バカですよ。俺はバカな人たちのところにしか行かない。
  大谷さんだって、バカですから!」

最後、澤に何を怒っていたのかを聞いてみました。

日高「おまえが勝ったんだから、先に立てって言ったんです。
  勝ったほうが先に立ち上がらなくてどうするんだって」
澤「いやぁ、見下ろすの慣れてなくて……(ゲップ)」
日高「おまえ、コメント中にゲップする奴があるかよ!
  もう、こんな団体2度とこない!(笑)」

石川雄規にも話を聞いてみました。

「今日は吉川が主役だね。自分は一歩引いてた感じだった。
 (最後は)よくやった、って。まだまだアイツの伸びしろはあるから。

 (日高は)すごい。さすがチャンピオンにまでなった選手だなって。
 坊主頭の時から考えたら、えらい成長ぶり。
 (ハイキックは)エグイことしやがる。ちゃんとアゴに
 入りやがったからね。

 (澤は)バカタレが(笑)。ちゃんと成長してやがる。
 いいことですよ。

 いいチームだよな。ゼロワンまで追いかけていくぜ!
 俺はしつこいからな。覚悟してろ!
 もう1回、引きずり戻してやる」

やるといったらやる人なので、多分本当に追いかけていくでしょう。

そして吉川祐太。

「日高さんも澤さんも、練習で普段手を合わせてて、
 正直、こういけば、こう攻めればとか思うときがあるんですけど、
 チャンピオンってのは、強さが増すんだなと分かりました。
 分厚い壁がありましたね。それを、崩せなかった。

 正直、応援してくれる人たちの言葉の中に、
 負けるだろうけどいい試合してねとか、
 負けるだろうけど頑張ってね、みたいな、
 ニュアンスを感じることがあったんです。
 でも、僕は本当に負ける気がなかった。勝って人生変えるつもりでした。
 今は、悔しさだけですね。
 自分のふがいなさが、悔しくてしょうがないです。

 試合前、リングで社長に『ベルトとりましょう』って言ったら、
 社長、ニヤッと笑って、うなずいてくれて。
 獲りたかった。
 でも、獲れなかった」

また、あのチームと戦いたいですか。
あまりにも普通な私の質問に
吉川は力強くうなずきました。

「当たり前です。しつこさがバトラーツのとりえなんで。

 僕がデビューする前って、原さんがいなくなって、
 澤さんも微妙な時期で、
 ちょうど、誰もいない時期があったんです。

 そのとき僕は、まだデビューもしてなかったけど、
 練習生としていたことに、意味があったと思うんです。
 うまく言えないけど、あのとき僕がいたことに、
 僕は、意味があったと思ってるんです。

 あのベルトが獲りたいです。
 NWAライトタッグのベルトを、社長と獲りたい。
 もちろん、あの2人から勝って獲りたいし、それがベストだと思います」

書いてみて思うのは、
試合はともかく、発言がバカなのは澤宗紀だけです。

というか、他の3人は、他人に自分のやっていることを
理解されるまで説明するよりも
自分がやりたいことを優先したいので
とりあえずバカってことでいいです、と理解を手放した感がありますが
澤は、わざわざバカになっている感じです。

ただどっちも「バカ」というカーテンをひくことで
人との間に一枚、壁を作っていることには変わりない。

バカのカーテンに身を包むことで得られるのは
「あいつらバカだからしょうがねぇよ」
という、暖かい無理解です。

だけど、そのカーテンの向こう側には
そう思われても守りたいような
どうしようもない戦いが潜んでいる。

バカという言葉は
そのカーテンをのぞきに来る覚悟があるのかという
問いかけでもある。

バトラーツというリングに上がるとそうなるのか。
それともプロレスがそもそも、そうさせるものなのか。

それとも自分のやりたいことをとことん追求すると
人は、自然とそのカーテンを引かねばならないものなのか。

だとしたら?

だとしたら。
そうでなくても。

あいつらはまぎれもないバカです、と書くのが正しい気がします。

sasakey-45592.jpg

バカのカーテンを引いてなにかを守ることは、
一歩間違うと、自分の殻にこもることにもなります。

王者組は、それに対する危機感を強く感じているように見えます。
だからこそ王者なのかとも、思うのです。

フリーライター佐々木亜希がときどき更新するブログ
「ときどきキックアウト」は
まぎれもないバカの試合も時々応援していこうと思います。


posted by sasakey |03:50 | 格闘探偵団バトラーツ |
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