2010年02月09日

2.7のラストファイト・バトラーツ吉川祐太最終試合

2.7、川口・イサミアリーナで、
格闘探偵団バトラーツの吉川祐太選手
最終試合が行われました。

吉川祐太という名前を知っている人は決して多くはないと思います。
ですが、本当にいい選手でした。

彼の先輩であり、彼の最終試合となる今回の試合の発起人
澤宗紀は、吉川にタイトルマッチを直訴されたときのことを、
こう書いています。(澤宗紀ブログ「モテナイ・ドリル」より)

「この時、今の状況がぶっ飛ぶくらい気になったのは・・
 吉川さんの目!

 な・・なんてまっすぐな目なんだ・・

 オカマちゃんや戦争を体験した人達が吉川さんの事を「いい男ねぇ!」っていうのもわかるわ、こりゃ。

『火垂るの墓』の実写版でせつ子の兄を是非、吉川さんにやってもらいたい。

「せつ子、それ、おはじきやないか!」

 そう叫んでほしい。」

・・・そういう目力を持った選手です。
わかりづらかったですか。申し訳ない。

しかし『火垂るの墓』の実写版・せつ子の兄をやれるというのは同感です。
これは相当まっすぐじゃないと出来ない役だというのは、
想像していただけるのではないでしょうか。

そのくらいまっすぐな人でした。
陳腐な表現ですが「娘をやってもいい」と思えるような人柄といえば、
もう少し分かってもらえるでしょうか。娘、いないけど。

その吉川が「刀を研ぎ続ける、自分がバトラーツの一員として
納得できる練習を続けることができなくなったから」引退を決意した。

レスラーとして人前に立つということは、
いろんな評価を引き受けるということでもあります。

そのベースになるのがレスラーにとっては練習で、
吉川祐太はそれが続けられないと思ったから引退を決意した。

そうか、としか言いようがないです。
まっすぐな人に、納得しない生き方をしろといっても、
無理な話です。
ただ、とても残念です。

まっすぐな人が、変態社長(事実です)と、ランジェリーをつけた
変態レスラー(これも事実です)のいるバトラーツにいるというのは、
それはそのままバトラーツの奥行きにもなっていることだったので、
彼の引退は、彼の不在が残念なことだけでなく、
バトラーツにとっても残念です。

最終試合の紹介VTRで、「バトラーツの選手」という言葉が
繰り返し出てきました。

プロレスラーになって、「バトラーツ」という団体の旗を持ったことで、
吉川祐太は、その旗に恥じない男であろうと自分に命じたのだと思います。
だからこそ、引退を決めたのだろうとも。

試合前に吉川祐太は言いました。

「負けていいって思った試合は、ひとつもありません」

確かに、そういう試合をしていた選手でした。
彼の試合は何度も何度も見ていますが、
途中で心折れたなと思う場面は、一度もありませんでした。
だけど、だとしたら、
どれほどの悔しさを心にためてきたというのだろう。

ところでラストファイトは最終試合と銘打たれていた。
なぜなのか。

「引退試合だったら、また復帰してやろうと思うかもしれない。
 でも最終試合は、最後だからそこから先はない」

本人の言葉です。
最後までわざわざ自分を律して試合に挑んだ。

本人としては、12月6日の試合で最後と決めていたから、
もう試合はしないという心づもりだったようです。
だけど澤宗紀がやってくれとこの場を用意した。
「僕がやりたいんです。僕が吉川さんにさよならをしたいんです」

レスラーは唯一無二の存在を目指すものだけど、
ひとりでは戦えないのも確かで、
またバトラーツの旗を背負ってきたのは吉川ひとりでもない。

試合は、いつものバトラーツの試合のように、激しいものでした。
澤のパートナー、日高郁人の攻撃も熾烈をきわめました。
足への攻撃がえぐい。

澤が吉川を殴りながら「そんなもんか」「これでいいのか」と叫ぶ。

20分を超えて、澤のシャイニングを返して吉川が逆シャイニング。
澤をアームロックにとらえると、日高がその背を蹴ってカット。
ヒザをついた吉川へ澤がハイキック。
倒れた吉川をダウンカウント9でひきずりあげ、立てと要求。
立ち上がった吉川が日高、澤、さらに同コーナーの臼田にも平手。
最後の最後は、「祐太、ありがとう!!」の声と同時に伊良部パンチ。
大の字に吉川が倒れ、レフェリーストップで澤が勝利しました。

「最後の最後まで、容赦なく来てくれる先輩達とこういう試合が出来て、
 辞めていく人間に花を持たせるような甘いリングじゃなくて、
 本当に良かったです。

 短い選手生活でしたが、いっぺんの曇りも後悔もありません。
 それはこうやって僕を支えてくれた人たちのおかげです。
 僕はこのバトラーツのリングが大好きです。
 ありがとうございました」

10カウントゴングや引退セレモニーを拒否した吉川のために、
周囲が用意したのは「10カウントパンチ」。

バトラーツの後輩である矢野啓太や及川千尋からはじまり、
石川修司、小笠原和彦、竜司ウォルター、井口摂、
臼田勝美、日高郁人、そして石川雄規、最後に澤宗紀。
若干パンチでないものも混じっていましたが、とにかく10発。
引退する選手がボコボコになる様に拍手を贈った後に、
ラストコールを聞きました。

この日のリングでは、休憩時間に及川千尋選手が
リングにあげられ、挨拶を行っていました。
不意打ちであげられてしまった様子で、話してることはメタメタでしたけど、
「元気です」とのことで、ひとまず安心です。

セコンドとして声をはりあげていた及川選手は、
最後に先輩である吉川選手に向きあって、
顔を張って、なにを感じたのか。

そして10カウントパンチの最初の相手として
向きあった矢野選手は何を感じたのか。

「自分は○○です」と名乗ったとき、
そこから生じる責任をどこまで背負えるか。

短いか長いかは関係なく、どこまで本気でそれに立ち向かえるか。

本気で「バトラーツの選手」であろうとした吉川祐太は、
それによって本人の価値を高めただけでなく
バトラーツの価値も、その純度も高いレベルに引き上げていきました。

お疲れ様でした。
そして、いい試合を見せてくれてありがとう。


フリーライター佐々木亜希がときどき更新するブログ
「ときどきキックアウト」は
格闘探偵団バトラーツをときどき応援しています。

吉川祐太選手のブログ「僕はばちばち進行形」
ご本人の写真を確認したい方も、ぜひこちらに。
写真だけでも、まっすぐそうだということは感じると思います。

posted by sasakey |13:35 | 格闘探偵団バトラーツ |
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