2008年10月05日

アルトゥール・キシェンコと城戸康裕

佐藤嘉洋戦の後
魔裟斗を追いつめたのがアルトゥール・キシェンコ。

正直、アンディ・サワーに勝つとは
思っていなかったので驚きだったし
魔裟斗をあそこまで追い込んだというのも
驚きでした。

キシェンコは見たら分かる通りのかっこよさ。
顔に似合わずパンチが強い。
そして若い。来年の優勝候補筆頭。

1日大会のコメントルームには、ボッコボコの顔で登場。
ボッコボコの顔なのに「ダメージがあるようですね?」と聞かれると
「足が少しね」と。いや見た感じ一番は足じゃないだろうに。

質問がすべて出終わった後で
立ち上がろうとして、立てずにセコンドにすがりつきつつ
「御願い、誰か私を運んでください」と苦笑。
本当はもっとおしゃべりな方なのかなと。

通訳さんの言葉のセンスもあると思うのですが
ロシア系の選手はけっこう独特な言い回しをすることが
多いように感じます。

「一晩に3試合こなすのは大変ですが、準備はできています。
 戻る道はないですから」

と、これは昨年のMAX前の会見の言葉。
戻る道はないですから、というのは
退路を断って、みたいな、ウクライナのことわざみたいな
ものなのかもしれませんが。

たしかこの日の会見、もしくは囲み取材で
祖国に彼女がいる、という話になり
それじゃー日本の女性ファンが悲しむでしょうね
と言われたキシェンコが

「えー。でも彼女のこと愛してるし……」

と返したそうです。女性ファン二重の意味で卒倒。

そして今年の抽選会では
城戸康裕から「この中で唯一抱かれてもいいかなと思った」
と謎のラブコールを受けて困惑したキシェンコは

「何と言っていいか本当に分からないよ……。
 僕は城戸のことはあまり好きなタイプじゃないし
 今まで生きてきて男性にそんな感情を抱いたことは一度もない」

と、あまりにもマジな返答。

前日会見でも、あいかわらずよく喋る城戸に呆れたキシェンコは

「こんなによくしゃべる対戦相手は初めてだよ(笑)。
 僕はみんなに何を言えるかな。みんなに成功を祈ってあげたいけど、
 とくに城戸へ成功を祈ってあげたいね」

と笑顔。城戸も嬉しそうに笑顔。

城戸との一連の会話(※城戸が一方的に話し、困惑するキシェンコ)は
キシェンコの魅力を多くの人に広めたのではないかと思います。

城戸は喜怒哀楽が激しくて、これはこれで素晴らしいです。
キシェンコとの試合も、コメントで笑いを取りつつ盛り上げて、
敗れた後は、前に出られない自分に涙をみせていた。

10.1では

「腹立たしいっすね。戻りたいです、1R前に。
 何が効いたっていうか、何も効いてないです。
 もったいないです。本当にもったいない。もっとやりたかった」

と、ひたすらに後悔して、最後は

「まだまだ、まだやります僕は。まだ25なんで。
 見捨てないでください(笑)。いい仕事するんで、お願いします」

と、場の空気を和ませてさわやかに去っていった。

キシェンコのほうが今のところかなり先を言っていますが
この日のあっけない悔しさを胸に、城戸がもっと頑張ることができたなら、
いつか、来年か再来年か、またその次か、
城戸とキシェンコがリングでまた対峙するときが
来ると思います。

その時は、城戸の涙も、キシェンコの笑顔も、
組み合わせ決定抽選会や会見で苦笑したりしあったことも、
魔裟斗にキシェンコが敗れたことも、その日の大会で
城戸が初めて顔を切られて縫ったことも、
全部含めて、言葉の壁を越えて、
互いが成長した互いを感じあうのでしょう。
どんな顔をして城戸はキシェンコを見るのか。
そしてキシェンコはどんな顔をして、城戸を見るのか。

いまキシェンコと城戸を知っている人は、
その時の2人が笑顔であっても、険しい顔であっても、
それぞれに思うことがあるはずです。
思い返す時代を持ちながら試合を見られることは、とても貴重です。
そしてその時の自分がどうしていたかさえも感じながら
試合を見ることができる。

彼らを見ていた、ただそれだけのことでも、
観客ひとりひとりの、かけがえのない財産になるのです。

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フリーライター佐々木亜希がときどき更新するブログ
「ときどきキックアウト」は
K−1 MAXもときどき応援しています。


posted by sasakey |02:17 | K-1 |
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