2007年08月16日
フォクツのキャラクターが最高に良かったです。フォクツといえば74年の決勝戦でクライフを徹底的にマークした「嫌な奴」という印象が強かったのですが、この物語に登場するフォクツは真正直で不器用で常に前向きな性格の愛すべき人物として描かれています。フォクツをこの物語の主人公に据えたのは大正解だと思います。
ただし全編を通してフォクツが主人公と言う訳ではなく、各章によってクライフであったりベッケンバウアーであったりネッツァーであったりと主人公は変わっています。
クライフとベッケンバウアーは強烈な個性の持ち主として描かれています。クライフに関しては私が前々から抱いている印象通りの気難しい男ですが、意外だったのはベッケンバウアー。インテリジェンスの塊のような人と思っていたベッケンバウアーが実は天才肌のプレーヤーだったというだけでなく、心の奥に「ワル」の部分も持っていて一旦ダークサイドが表面に表れるともう誰にも止められない!というから驚きでした。
あとがきで西部さん自身が登場人物の会話と人物造詣の9割がフィクションといっているので実際の選手の人間性がどんなだっかは判らないのですが、このフィクション部分があるからこそ面白さが倍増されているのだと思います。
主な登場人物はフォクツ、ネッツァー、ベッケンバウアー、クライフ、ミュラー、オベラートといった選手達、さらにバイスバイラー、シェーン、クラマーといった指導者達で、その数からして圧倒的にドイツ中心の物語になっています。オランダではクライフの他にはカイザーくらいしか描かれてませんが、そのカイザーにしてもプレーの凄さが全くわからないのが残念です。
エピソードで面白かったのは、フォクツとネッツァーの出会い、ネッツァーの苦悩とユーロでの活躍、そしてワールドカップ決勝を前にネッツァーがクライフ役としてフォクツに相対するシーン。この辺にもっとスポットを当てて更にストーリーを拡げて、ネッツァー、フォクツ、バイスバイラー、ボルシアMGを主軸にした本格的な小説ものに仕上げてみても面白かったのでは...とも思います。
また、この本は単にサッカーを題材にした小説と言うだけでなく、オランダのトータルフットボールについての解説やその源流を辿る部分もあったりして、当時のプレースタイルやその前後の変遷を辿る上での入門書としても活用できると思います。ただこの辺に関しては西部さんも過去にサッカー誌等に寄稿されていると思うので、既に知ってると言う人も多いかとは思いますが。
ここでジミー・ホーガンやフューゴ・マイスルの名が登場しました!
しかし話をスコットランドに持っていく展開はちょっと強引かなぁ...
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posted by サッカーニョ |04:01 |
トータルフットボール |
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2007年08月07日
コリバノフさん、クライフさん、杉山さんのおかげでトータルフットボールという奴がだいぶ見えてきました。
トータルフットボール(1)
トータルフットボール(2)
トータルフットボール(3)(4)
その後、私自身でも少し勉強してみました。『ヨハン・クライフ「美しく勝利せよ」』という本に当時の戦術について少しだけヒントが載っていました。この本はクライフ自身が語ったことを纏めたものですから信憑性は高いです。ただし戦術については彼の理想を語っているようなので、実際の試合を観た場合の印象とは違うはずです。当たり前のことですがクライフ自身も「サッカーに完璧なプレーはありえない」と語っているように、実際には理想どおりにゲームは進まないですから。
しかし残念ながらこの本では74年W杯についてはあまり言及されていません。戦術の基本は「全員がポジションにとらわれずに動く」「ボールがあっても無くても同じように走る」ことだそうですが、具体的な動き方についてはあまり述べられていません。
90分間動き続けることが出来るか?と言う疑問については、次のような答えが見つかりました。「FW、MF、DFの3つのラインは常に接近してプレーすべき」こうすることで空いたポジションまで5~10mだけ走ればよいのだそうです。これはアリーゴ・サッキがACミランで実践したゾーンプレスにも通じるのでは?と思います。
それと「ディフェンダーは守備に徹して、マークする相手をいかに確実にキープするか第一に考える。それが出来てこそチャンスがあれば攻撃に加わっても良い」とも述べており「全員がポジションにとらわれずに動く」よりも重視されていたみたいです。しかし実際に全員が各ポジションに課せられた役割をこなした上でポジションにとらわれずに動いていたわけではないでしょう。もしそうならプラティニの言葉「プレイヤーが完璧なプレイをしたら点は入らない。永遠に0対0」のとおり無敵だったはずからね。
「ディフェンダーは守備に徹して...攻撃に加わっても良い」と言うのはアヤックス・コーチ時代の考え方と混同して語ったのではないかとも考えられます。というのも、この本で語られているアヤックス・コーチ時代の戦術論が74年のトータルフットボールのイメージに反してポジション毎の役割を重要視しているからです。当時のアヤックスにおけるポジション毎の選手名と役割は以下の通り。選手個々の能力を戦術にフィードバックしています。
GKはメンゾで、前に出てフィールドプレーヤーとしてゲームに参加する。
CBの1人はライカールトで、「リベロ的に動き回る」(それしか書かれてません)
もう1人のCBはスペルボスで、「決まったエリアから離れてはいけない」(つまりバイタルエリアを見ろってこと)
SBは右がブリント、左がシローイで、「決められたスペースをカバーすること、攻撃には加わらない」
SHはボウタースとミューレンで、「ボールについて走りプレスをかけ続ける」攻撃時はWGと連携。
CHはボスマンで、CFとCBとの距離を保ちながらスペースを作る。守備時は最終ラインの前のスペースを見る。
ヴィンテルがCHに入ったときは豊富な運動量でプレスをかけボールを奪ったら素早い動きで相手を撹乱する。
WGはファントシップ(右)とビチュヘ(左)で、タッチライン際で相手と競り合い、オープンスペースを広く取る。
CFはファン・バステンで、相手の最終ラインを下げさせるなど。
相手のGKかDFがボールを持っているときはWGとCFで囲い込む。
以上、なんだか普通です。守備について重視しているようにも感じます。もちろんこれらの役割を果たした上でポジションを離れることが許されていたのだと思います。しかし、これだけを読むと、このときのシステムがファン・ハール時代のベースになっているのは明らかです。ヨハン・クライフの戦術から『自由』を奪ったのがファン・ハール流?
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posted by saccanho |01:40 |
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2007年08月04日
えー、申し訳にくいのですが、「トータルフットボール完結編」と銘打って前回投稿したのですが、過去記事の方になんと『クライフ』様が降臨されて来ましてなんだか盛り上がりそうなので、どうぞご覧ください。↓
トータルフットボール(1)
トータルフットボール(2)
トータルフットボール(3)(4)
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posted by サッカーニョ |23:58 |
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2007年08月04日
コリバノフさんの「トータルフットボール」追想録を読んでいく内に、『トータルフットボール』って人々が語るほどに革新的な戦術って訳では無かったのかなぁ...なんて思えてきました。74年ワールドカップで快進撃を続ける様を目撃した人々の記憶の中でかなり美化されたって言うのでしょうか。
↓コリバノフさんの記事内容はコチラです。
トータルフットボール(1)
トータルフットボール(2)
トータルフットボール(3)(4)
>いつもいつもポジションチェンジを繰り返してもいませんし、常に走り回ってるわけではない。
>怪我をしてないアヤックス・メンバーすべてを使ったわけでもないんです。
>オランダチームの背後にシステマチックな理論があったかどうかは常人にはわかりません。
>オランダが動き出すと、多方向へ走る選手たちのダイナミズムに眼を奪われます。それで「華麗な」とか印象表現になっちゃうんですよ。
決して戦術として細部に渡って決まり事があった訳ではなく、最低限の決まり事(例えば「ポジションには拘るな」とか「空いたスペースを埋めろ」とか)があって、後は結構フィールドプレーヤーの即興に任せる部分が多かったのかなぁ。そう考えると『トータルフットボール』という革新的かつ完璧な戦術論が存在したわけではなくて、最低限の戦術と規律、スキルフルな選手、それに偶然がミックスされて生まれた奇跡のチームだったのかも...って考えてしまいます。もちろんアヤックスではチーム内で連携プレーを培っていく時間がたっぷりあったわけですから、ミケルスの戦術が十分に浸透していたと考えられますが、それでもクライフなどスター選手の技量に因るところが大きかったと思います。100%アヤックスでないオランダ代表では尚更そう思います。
そう考えると、現代のやたらと規制の多いフォーメーションやら戦術の中で歯車のように働いている選手たちでも、規制を取り外してやれば同じようなプレーができるのでは...って思えてきます。少なくともビッグクラブが保有するレベルの選手達の内で労力を惜しまない選手を集めてチームを編成すれば出来そうな気がします。もちろん運とか奇跡的な要素も必要ですけど。
98年ワールドカップのオランダも大会のベストチームと言われましたし、確かに観ていて面白かったです。このときもワールドカップの直前くらいから調子良くなってきて、本番、特にブラジル戦で最高潮に達したと記憶しています。チームってのは『なまもの』ですから、同じチームでも調子いいときは人々を魅了するゲームをするのに調子悪いときは観るに耐えないゲームをしたりと、常に変化します。74年のオランダ代表はまさに最高潮の時であったのですからチームの出来に関しては計算されていなかった部分がかなりのウエイトを占めていると考えた上で、本当に計算された「未来のサッカー」だったのか再評価すべきではないでしょうか?
>四六時中走り続けてはいません。割合と休んでます。
>攻めでも守りでもポジションチェンジしたら、平気で入れ替わったエリアに残っちゃうんですね。
そりゃあ、そうでしょうね。現代のプレーヤーでもゲーム中にはかなり歩いてますし、ましてや痩せっぽちのクライフにそんな持久力があるはずも無いですよね。でも今まで『トータルフットボール』の解説などを読んだり聞いたりしていると、ゲーム中フルに動き回っているかのような印象を与える解説って多いと思います。コリバノフさんの解説はその辺があまり誇張されていないようで真実味が感じられますね。
>マーカーが相手を捨てて攻撃参加する。これもオシム氏のジェフに似ているのかな。
同感です。というか私はJリーグはほとんど観ませんし、日本代表の試合もたまーにしか観ませんので、偉そうなことは言えませんが、サッカーニュースなんかでオシムジャパンについて聞いていて「≒トータルフットボール」みたいな印象は持ってました。もちろん実際のトータルフットボールも知らないのでイメージに過ぎませんが。それにしても当時のドイツも似たようなことをやってたって言うのは少し驚きです。
(2)ではオーストリアのヴンダーチームやハンガリーのマジックマジャールまで登場しました。74年から遡って行き着くとこまで行こうと考えていたのですが、やはりここまで来ますね。私の中での最終目標みたいなものでしたし。しかしペレの時代とかディステファの時代が無かったので、また機会があればその時代も採り上げてみたいと言うか、誰かに採り上げて頂きたいと言うか...この記事にコメントしていただいても構いません。
それから、ヴンダーチーム&マジックマジャール&ミケルス・アヤックスの共通項を勝手ながら見出してしまいました。それは...
この勝手な共通項については少し自分なりに話を纏めてみてから記事にしたいと思います。(纏まらなくて記事にならなかったらゴメンナサイ)
最後になりましたが、コリバノフさん、本当にありがとうございました。
74年の決勝戦なら昔からビデオは発売されていたと思うのですが観たことがありません。私は昔の試合ってあまり観てみたいと思わなかったというか、実際には何度か観たことがあるのですが、やはり時代が古すぎると当時のバックグラウンドを解っていないせいで気持ちが入ってゆかないのでしょうね。それに1-2で負けた決勝戦をビデオで観ただけではトータルフットボールを10%も理解は出来ないだろうと感じていましたし...(ダイジェストで見てそう感じてました)
でもコリバノフさんの情報が私の中でバックグラウンドとして存在している今なら観てみようかなぁと思っている次第であります。
また機会がありましたらコメントお寄せください。長くても全然構わないですから。なんなら、ここでペレorディステファノについてコメントくださっても結構ですよ。
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posted by サッカーニョ |00:14 |
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2007年08月02日
コリバノフさん、トータルフットボールの続きはこちらにどうぞ。
↓過去記事をご覧になりたい方はコチラです。
トータルフットボール(1)
トータルフットボール(2)
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posted by サッカーニョ |22:50 |
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2007年07月31日
74年の西ドイツワールドカップについて、コリバノフさんが「ベッケンバウアー」と「トータルフットボール」に関して非常に興味深いコメントを寄せてくださいました。
>>その内容はコチラをご覧ください。
”トータルフットボール(1)”ということは(2)もあるのですね。期待しています。そこでは是非、トータルフットボールとファンハール型3-4-3の違いをもっと具体的に解説していただけたら、と思います。
その前に私の意見も述べさせていただきます。私は、この頃のベッケンバウアーもクライフもトータルフットボールも体験していなくて、文献に基づくエセ知識しか持たないのですが、それでもトータルフットボールとファンハール型3-4-3の違いはなんとなくは理解しているつもりです。その大きな違いは、トータルフットボールでは選手が流動的にポジションチェンジを繰り返すのに対し、ファンハール型3-4-3では主にボールを動かすところにあるのだと思います。実践するのはトータルフットボールの方がはるかに難しいでしょう。当然カバーリングなどでミスを犯すリスクは高くなるわけです。選手も人間である以上どれだけ訓練をしてもミスをなくすことは不可能です。だからこそ極力ミスを犯さずに効率よく攻撃と守備を行えるシステムを開発した。それがファンハール型3-4-3なのではないのでしょうか?
だから私は、決してトータルフットボールの方が優れていてファンハール型3-4-3が退化しているとは思えません。むしろ、さらに現代風に進化しているのでは?とさえ思います。それでも、いや、だからこそトータルフットボールの方がはるかに魅力的だとも思います。
以上、生意気な発言でスミマセンでした。コリバノフさん、他、皆さんの意見をお聞かせください。
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