2008年04月30日
心・技・体が揃ったスポーツドキュメンタリー
今、NHKスペシャル“ミラクルボディー”の第3回、ハイジャンプ 翼なき“天才”を見ました。 この番組は、各競技のトップアスリートを多角的に分析、解説するドキュメンタリーです。スーパースローカメラを使った、“瞬間”の技術の分析、また身体的なデータの計測、練習内容のピックアップ、そして各選手へのインタビュー等から、トップアスリートがどのようにしてその競技をこなしているのか、とても詳しく解説されています。 第1回は100m走にスポットを当て、アサファ・パウエルを中心に、タイソン・ゲイとの走りの比較や朝原宣治との身体的なデータの比較を行い、また身体能力でゲイを上回るパウエルがなぜ世界陸上ではゲイに負けたかということも、メンタル面から解説していました。第2回は水泳のマイケル・フェルプスの特集で、彼の泳ぎのメカニズム、その根底にティーンエイジの頃の厳しいトレーニングがあったこと、またフェルプスが行っているトレーニングに日本記録保持者である佐藤久佳がチャレンジした様子や、佐藤のストレートアームについても、スーパースローカメラを使って解説していました。 そしてこの第3回は、タイトルにもあるように走り高跳びの特集。アテネオリンピック金メダリストで、現役選手としては最高の記録を持つスウェーデンのステファン・ホルム、そして昨年、競技生活僅か1年半で世界陸上の金メダルを獲得したバハマのドナルド・トーマスの2人にスポットが当てられました。 あまり詳しい内容を書くことは一応避けておきますが、垂直飛びの比較、科学的な理に適ったホルムの跳躍の分析、一方自らの身体能力を生かして飛ぶトーマスの跳躍の分析、幼いころからハイジャンプに憧れてきたホルムの思い、そして直近の試合で自らのジャンプを改造しようと試行錯誤を重ねるトーマスの“変化”、・・・・などなど、とても興味深い内容でした。自分はハイジャンプという競技には疎いのですが、この番組は非常に楽しく見ることができましたし、第2回で水泳が取り上げられた時にも目からうろこの話の連続でしたから、その競技を知らない人でも経験者でも、誰もが楽しめる番組構成になっていると思います。 ・・・・で、べつに私はNHKの回し者というわけではありません(笑) ただ、この番組は自分にとって、やたら新鮮なものだと感じられました。少なくとも、スポーツドキュメンタリーとしては、珠玉の出来とも言える番組です。 じゃあなんで、これまで見てきたスポーツドキュメンタリーと呼ばれる番組に比べ、この番組が優れているように思えたかという事を考えてみたのですが、それはこの番組が、心・技・体の全てをフォローしているからではないかと思いました。 この番組は、表向きはスーパースローカメラを使った“技”の解説、データの測定や同じくスーパースローカメラを使って示される“体”の解説がメインとなっています。しかしそこに上手い具合に選手のインタビューや試合の模様を取り入れることにより、“心”の部分も非常によくクローズアップされています。例えばパウエルの場合には、世界陸上前夜のプライベートな彼の映像や、走っているときに感じていた事をパウエルが応えるインタビューを元に、それらの感情が実際に世界陸上決勝での走りにどのような変化をもたらしたか、写真を通して解説することにより、“心”が“技”と“体”に与えた影響を解説しています。 スポーツではよく“心・技・体”という言葉が使われます。それは、スポーツでベストなパフォーマンスを発揮する上で、これら3つが全て万全な状態にあることが必須であるためです。いくらこのうちの一つが優れていたからといって、べつの一つが劣っていれば、勝利は遠のきます。この3つのバランスが取れ、いずれも高いレベルにある選手が、素晴らしい結果を残すのでしょう。 ただ、短い時間で視聴率を稼ぎたい場合、TVのドキュメンタリーというのは大抵の場合、“心”に入れ込みすぎる傾向にあるように思えます。先日、某深夜のニュース番組のキャスターが北島康介にインタビューしているものを見ましたが、アレなんかは完全に“心”の部分のみがクローズアップされているものの典型と言えるでしょう。まぁその心の部分でも、アスリートの思いとかを到底無視した質問をそのキャスターは連発していたわけで、こんなくだらない質問にもきちんと答える北島はやっぱり人間が出来ているというか、対応もプロフェッショナルだよなぁ、なんて感心したりしたわけですが(笑) 今回のNHKの番組は相当に手間とお金をかけているので、特に番組の制作費が著しく違ってくるであろう民放の番組に、このレベルを求めるのは困難なのかもしれません。ただ、どうにもお涙頂戴路線に大衆を導きやすく、それがためにスポーツの本質から離れているように思えるマスメディアの報道が多い中、この番組はスポーツドキュメンタリーの“あるべき姿”のようなものを体現しているのではないでしょうか。
posted by Alan Hetarade |01:47 |
陸上競技 |
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この記事に対するコメント一覧
心・技・体が揃ったスポーツドキュメンタリー
こういう番組があったのですか。
それぞれの選手の心技体のバランスを突き詰めてみようという試みはかなり面白そうですね。最近だと成功者が一出るたびにそれだけ調べ上げて「これが成功の秘訣だ」とかドミノ倒しに流れることの多いですし。
で、1年ごとに成功の秘訣が変わると…(笑)
競技を無視したお涙頂戴路線とかバッシング路線もたまに見る分にはネタとして笑える部分もあるのですが、週刊誌とスポーツ紙とテレビとでほとんど同じで個性がないのは困り物ですね。
どれか一つ押さえておけばOKって感じでとても複数見たいとは思わないのですけれど、それを全部見ている人もいるらしいのが何とも不思議です。それも心技体のバランスの差異なのかもしれませんが(笑)
posted by 川の果て | 2008-04-30 17:31
>川の果てさん
私も第1回の放送はたまたま見た程度だったのですが、ここまできちんとした作りのドキュメンタリーはそうそうお目にかかれないだろうな、と思いました。
短期的にあれこれというのもありますが、この番組の場合は選手の生い立ちから追いかける形式を取っているので、もっと長いスパンでの取り組みが検証できているんですよね。それこそ、一発屋じゃなく(笑)
スポーツって突き詰めていけばものすごく奥が深い世界のはずなんですけど、近ごろの報道は何でもかんでも“簡略化”していく傾向にありますからね。タレント等を起用して視聴者目線で・・・というつもりなんでしょうけど、逆にスポーツの本質からはどんどん離れて行っているような。それにまるっきり逆行するようなこの番組は面白いな~と思いました。
確かに心技体の全てをフォローするのは難しいことではありますが、全てを見ることが出来たときの面白さのようなものを、このドキュメンタリーから感じる事ができました。
posted by Alan Hetarade | 2008-05-01 07:55


