2007年04月23日
世界陸上の前哨戦 【ロンドンマラソン】
とにかく、今回のロンドンマラソンはメンバーが豪華だった。特に男子に関しては、世界の10傑中、世界記録保持者のテルガト、前記録保持者のハヌーシ、“皇帝”ことゲブレシラシエ、昨年の覇者リモと4人も登場。それ以外にも、アテネで金メダルを獲得したバルディーニ、世界陸上2連覇中で福岡ではゲブレシラシエの前に敗れたガリブ、他にもチェロノ、レルといった世界的な知名度を持つ選手がことごとく登場。これがこのままそっくり世界陸上のレースであってもおかしくないようなメンバーだった。 レースの方は非常に厳しいものになった。どんどん気温が上昇する中でのサバイバルレースとなった。バルディーニが脱落し、そしてあのゲブレシラシエがリタイヤするという大波乱が起こったことが、それを如実に表している。ハヌーシもリタイヤし、チェロノは失速した。結局ゲブレシラシエのリタイヤ後は8人の集団でのレースとなり、最後のスパートを制したレルが優勝したわけだ。特にラスト1キロを切っての4選手の攻防は見ごたえがあった。 特筆すべきはやはり、初マラソンだった2選手だろう。グムリはラストでレルに離されて2位に終わったものの、初マラソンにして2時間7分44秒というタイムは素晴らしい。同郷の先輩であるガリブが4位ということで、これに勝ったことで世界陸上でも一気に優勝候補に挙げられるだろう。またアメリカの初マラソン記録を樹立したライアン・ホールも、無名の存在ながらこの世界的な選手たちの中で物怖じする事無く集団を引っ張ることができたというのは、評価すべきだ。 ケニア人のレルが優勝、リモも3位に入ったことでケニアの代表選考はかなり紛糾しそうな気もするが、ダニエル・ジェンガにとってレルが優勝したというのは喜ばしいニュースでは無いだろう。これまでケニアの協会から干され続けているジェンガだが、熾烈争いとなっている代表のメンバーに入れるだろうか。 さて女子の方はというと、こちらも豪華なメンバーが揃った中で、スピードレースを制したのは周だった。ソウルマラソンで2時間20分を切り、アジア大会、そしてこのロンドンマラソンと、それぞれ条件が異なるレースで確実に結果を出してくる安定感は凄い。そしてやはり周の持ち味は、独走力だ。物怖じせずに自らレースを作り、アジア大会などもそうだが、極端な話、1人で42キロを走りきってしまう。世界陸上でもこの周がレースを牽引することがあると面白い。間違いなく、優勝候補の最右翼にこの周はいる。 このレースに男女通じて唯一出場した日本人が、既に世界陸上の代表に内定している嶋原だった。佐藤敦が怪我のため出られなかったというのは残念であり、嶋原もリタイヤに終わってしまったため、日本人が見せ場を作ることはなかった。島原個人に関しては、同僚のマーラ・ヤマウチと一緒に走れれば良かったのだが、完全に序盤の5キロで自らのペースを乱してしまったようだ。もっとも新チームに移行してすぐのレースという事で、コンディションが悪かったのだろう。ただ幸い、ヤマウチも世界陸上の代表に内定したというので、これからは2人でともに調整して、本番では頑張ってもらいたい。 出来ればこのように世界的な選手たちが顔をそろえる大会にどんどん日本人にも出場してもらいたいのだが、現在の日本の選考システムでは、なかなか海外の大都市マラソンを走るというのは難しい。過去にはこのロンドンで瀬古氏と谷口氏が優勝したり、近年では諏訪が入賞したり、ソウルマラソンでは藤田や国近が活躍した。しかしまだまだ、足りない。 もっとも福岡を走ったゲブレシラシエとガリブはこのロンドンに出場しているわけで、年に2回マラソンを走るとすれば、1度は国内、もう1度は海外・・・・というやり方もアリだろう。ただ理想を言わせていただければ、国内の選考レースを2つ以下にして、その代わり海外のマラソンも選考対象に加えるのが良い。そうすれば国内の熱を落とすことなく、さらに門戸を外に開き、揉まれ、日本人の課題である“スピード”を養うことが出来る。また国内のレースを減らせばその分海外招待選手も豪華になるはずで、レース単位で見ればレベルアップが図られる。 しかし現実的に見て、国内マラソンを減らすことは不可能である。だが、海外のレースを全て選考対象から外してしまうというのは、如何なものだろうか。今年の国内マラソンにおいて日本人選手が痛感したのは“スピード不足”だ。いまや世界ではトラック競技を経てロードに転進するのがトレンドとなっており、そのためマラソンのスピードアップが著しい。今日のロンドンも8位までが2時間8分台である。この日本人の弱点を補うのに海外の大都市マラソンは絶好の舞台となるのだが、選考方法が“鎖国”を続ければ、いずれ世界から日本が取り残されてしまうかもしれない。
posted by Alan Hetarade |21:49 |
陸上競技 |
コメント(2) |
トラックバック(1)
トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/s_co_log/tb_ping/144
この記事に対するトラックバック一覧
4/26のおすすめ 【おすすめエントリー集】
ここが変だよ!プロ野球〜私的プロ野球改革案〜 【ブログ】ここが変だよ!プロ野球〜私的プロ野球改革案〜 セ・リーグでも導入となった"プレーオフ"について、筆者からの提案は? アジアラグビーの危機?!〜カーワンジャパン、韓国に圧勝〜 【ブログ】スポ狂おっさん徒然記 韓国に大勝したカーワンJAPAN。しかし、ライバルの衰退は日本にも影響を及ぼすのです… 世界陸上の前哨戦 【ロンドンマラソン】 【ブログ】スコログ 選考方法で"鎖国"を続けるのはいかがなもの?
この記事に対するコメント一覧
Re:世界陸上の前哨戦 【ロンドンマラソン】
確かに海外で走って勝ったとなると、世界陸上と五輪以外では高橋尚子が勝ったくらいしか思いつかないですね。
日本の場合は実業団に所属している選手が大半なわけですし、どうしてもそちらのスケジュールとの兼ね合いもでてくるでしょうから難しい部分もあるでしょうけれど、もう少し意欲的に出て行ってもらいたいものです。
posted by 川の果て | 2007-04-24 13:51
Re:世界陸上の前哨戦 【ロンドンマラソン】
コメントありがとうございます。
>川の果てさん
女子に関しては、渋井や野口、大南姉妹などが海外マラソンでの優勝経験もありますし、比較的積極的に外に出て行っているのかなぁ、という気はします。
問題は男子で、今のところ世界的なスピードに対応できる選手というのが高岡くらいしか居ないんですよね。オリンピックの選考は国内マラソンに絞るとしても、世界陸上くらいなら、海外の大都市マラソンを幾つか指定して、それも参考レースにすれば良いと思うんですけどね。
ただどこやらのマラソンの主催者のように是が非でも自分の利益は守りたがるような人たちの力が働くでしょうから、現実的には不可能ですけど。そうやってるうちに世界のスピードが日本を置き去りにしてきている感があるのが、心配ですね。
posted by Alan Hetarade | 2007-04-24 22:33


