2009年06月30日

対神戸戦、フィンケ監督の回答

 6月27日は、駒場での浦和対神戸戦か、国立でのF東京対清水戦のどちらを取材するか迷った。先週は横浜M対浦和戦を取材したので、味スタの芝生改修でジプシー生活を余儀なくされているF東京の試合もそそられたものだ。

 しかし、今季はまだ神戸の試合を見ていない。ザルツブルグからJに復帰した宮本が、4DFのセンターでどんな統率力を見せるのか。ボルフスブルクから神戸に戻った大久保のコンディションも気になった。そして、先週は横浜Mに完敗したフィンケ監督が、どのような回答を見せてくれるのか――「30分以降はいつものパス回しができなかった原因を、試合後はすぐに分析できない」――ことを知りたくて、駒場に足を運ぶことにした。

 当日の気温は31度と1週間前に比べて上昇していたものの、湿度は42%。先週が2時キックオフに比べ、4時だったせいか風も出ていて蒸し暑さ、不快感は収まっている。そして試合は、開始2分で浦和が先制した。ボランチに入った細貝のシュートをペナルティエリア左でエジミウソンが押し込んだのだ。

 この1点で浦和は余裕を持って試合を進めることができたのではないか。横浜M戦と比較して、前線から厳しくプレスを掛けるのではなく、高原やエジミウソンはリトリートして神戸の出方をうかがう。攻撃でも、攻め急ぐことなく、守備のバランスを考えながら数的優位を保って、カウンターを食らうリスクに備えていた。

 横浜Mほど中盤に圧力のない神戸だからできたことかもしれない。これに対し、記者の座るスタンドでは、神戸のコーチが携帯でベンチに状況報告をしていた。浦和の2トップのプレッシャーがそれほど厳しくないため、神戸はDFラインから宮本や北本が余裕を持ってGKとDFラインの間にロングパスを出して浦和ゴールに迫る。7分の大久保のGKと1対1、17分にアラン・バイーアが抜け出しそうな場面から同点に追いついていれば、その後の展開にも多少の変化があっただろう。

 前後半とも、神戸には4回ほど得点のチャンスはあった。それは両チームの監督が認めている。そしてチャンスを生かせなかった神戸のカイオ・ジュニオール監督は「落ち着いてプレーすべきだった」と日本人に特有の欠点を指摘した。失点に関しても「集中力の問題」と言明。まさにその通りだと思う。そして今季、神戸の監督を引き受けた同氏は、専守防衛から攻撃的なサッカーへの転換をテーマに掲げながら、浦和戦ではロングパスによる一発に賭けるしか選択肢がなかったのも仕方がないことだろう。

 もしも前線にウェズレイがいて、ボランチにホベルトとエジミウソンがいれば、リアクション・サッカーも成立したかもしれない。この日の神戸のサッカーを見ていて、シャムスカ大分のスタイルがオーバーラップした。ブラジル人監督は、常に結果を求められるため、徹底したリアリストではないか。それが彼らの強みであり、時として弱点にもなってしまうのではないか。それにしても、大分のけが人の多さは異常で同情したくなるが……。

 そしてフィンケ監督である。対戦相手との力関係の差もあるとはいえ、「横浜M戦のように悪い試合のあとは、しっかりしたリアクションを見せるべきで、それは勝利ではなく良い内容のサッカーをすること」だと述べ、横浜M戦で敗戦した原因について質問を受けると、「ミスした選手の名前を言うつもりはないが、悪い意味で驚くようなプレーが多かった。代表選手が戻ってきたのに、それまでより悪いパフォーマンスを見せた。1週間、分析し、選手と話し、確認、分析、確認、調整を行った。今日、ピッチに立った選手は代表選手も含め、ベターなプレーを見せた」と語った。

 会見でコメントを聞くたびに、フィンケ監督は正直な監督だと思う。2-0の勝利も「ベスト」とは言わない。あくまで「ベター」に過ぎないのだ。そこには、まだ浦和は発展途上のチームで、フィンケ監督にとっても過渡期に過ぎないと言外に匂わせている気がした。

 さらに、「勝ったら選手のおかげ、負けたら全て監督の責任というのが、この業界のセオリー」と断りつつ、「今日の天候で大切なのはタイミング良くテンポを変えること。テンポを速くすると速く疲れてしまう。テンポを考えてプレーすべき」だと言った。これこそ、横浜M戦の敗因からフィンケ監督が施した処方箋ではないだろうか。

 天候を含めチームの置かれている状況、対戦相手との力関係など、全ての情報を選手はインプットして柔軟に対処し、試合に勝利するため全力を尽くす。状況判断が必要なのは、何も試合中の対戦相手だけではない。それは、当該試合のレフェリーのジャッジにも求められるかもしれない。

 蒸し暑ければ、それに応じて試合を進めればいい。サッカーでは「チェンジ・オブ・ペース」とよく言われるが、一本調子になりやすいのが日本人のサッカーでもある。横浜M戦の敗戦を受け、神戸戦ではあえてスローダウンして臨んだとしたら、フィンケ監督は日本人のメンタリティーも把握しつつあるのかもしれない。

 これがオシム監督だったら、それでもハイペースで相手を押し込むことを指示した可能性もある。「暑くても相手に走り勝て」と。ただ、オシム監督とフィンケ監督の類似点もないわけではない。フィンケ監督は「今回、細貝はチームにとって価値ある仕事をしたので褒め称えたい。守備的MFでも、スーパースターの穴を埋めることができるということを言いたい」と、左DFからボランチに入った細貝を賞賛した。

 かつて、「水を運ぶ選手」と形容して鈴木を賞賛したオシム監督。表現方法こそ違うが、現代サッカーにとって重要なポジションを評価したフィンケ監督。昨年の晩秋、藤口元社長はオシム監督と、グルノーブルのGMを務める祖母井氏をセットで招聘しようとしたものの、祖母井GMに断られてオシム監督獲得を断念した。しかし、その祖母井GMの推薦でフィンケ監督を紹介され獲得したのだから、目指すサッカーは同じだとしても何の不思議もない。



 

posted by roku03 |20:19 | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年06月26日

岡田ジャパンのW杯予選総括~戦えるチームを作って欲しい

  2大会連続して世界最速でワールドカップ本大会出場を決めた日本代表。ホームで確実に引き分け、アウェーできっちり勝ち点3を獲得するというサッカー界の常識から逆転した現象の末、南アフリカへの切符をつかんだ。

  アジア最終予選の日本代表は4-2-3-1システムをベースに戦い、玉田圭司と田中達也が縦関係の2トップを組んでのドリブル突破を武器とした。高いボールポゼッション率と前線からのプレスで相手を押し込み、高さではなく2トップのアジリティを生かす戦い方だ。仮にドリブル突破が阻止されても、ゴール前でFKを獲得すれば中村俊輔、遠藤保仁らスペシャリストがいる。絶対的な大型ストライカーがいない日本の戦力から判断しても、《地上戦》に活路を見いだすのは当然だった。
 
 この間、左MFは日本の《アキレス腱》でもあった。このポジションには途中出場も含めて松井大輔、中村憲剛、香川真司、稲本潤一、大久保嘉人、岡崎慎司の6人が起用された。だが、5試合中2試合連続してスタメン出場した選手はおらず、フル出場もホームでのバーレーン戦の大久保だけ。人材難に悩まされてきたが、今年のキリンカップで一応の解決を見た。

 田中達の負傷離脱が長引いていることから、岡田監督はトップ下に中村憲、左MFに岡崎を起用するシステムを採用。これが見事にはまった。中村憲はパスを出すと同時に受け手としても機能し、ペナルティエリアに侵入して対戦相手の脅威となった。そして岡崎は左MFの位置からゴール前や右サイドへダイアゴナルに飛び出し、チリ戦では2点、ベルギー戦でも1点を奪った。岡崎自身は「右も左も関係ない。自由に動けるほうがいい」とコンバートを歓迎。2列目から自由に前線へ飛び出す「シャドーストライカー」としてアウェーのウズベキスタン戦で決勝点を決めて日本をW杯に導き、カタール戦でも相手のオウンゴールを誘った。ただし、左MFのポジションにはライバルが多いのも事実。今後はポジション争いの激化が予想される。

  一方、ホームのカタール戦では新たな問題も噴出した。豊富な運動量で攻守を支え、状況に応じてドリブルで局面を打開できる長谷部誠、絶妙の間で攻撃に幅を持たせる遠藤の2人がいなくなると、中村俊や中村憲の負担が増大する。代わりに起用された阿部勇樹や橋本英郎はリスクを冒して前線に飛び出すことはなく、カタールDF陣を混乱に陥れることはできなかった。

 遠藤と長谷部のバックアップをどうするのか。センターバックの控えは山口智と槙野智章以外の候補はいるのか。両サイドバックの選手層も日本が持ち越している課題である。本大会で日本のボールポゼッションがどこまで通じるのかにも疑問が残るため、カウンターの頻度と精度をさらに高める必要もある。スタメンで起用するかどうかは別として、長身ストライカーの発掘と育成も急務である。鹿島の大迫勇也や山形の長谷川悠、横浜Mの渡邊千真なども一度トライしてほしい人材だ。
 
 4大会連続のW杯本大会出場は果たしたが、岡田監督が目標に掲げる「ベスト4」を実現するために越えなければならないハードルは、数え上げたら切りがない。だが、今から悲観しても始まらない。ファンタジー溢れるチームとまでは期待しないが、「戦える」チームを作ってもらいたい。本大会のピッチに立つことで満足したチームは、ジーコ・ジャパンで終わりにしてほしい。

注※この原稿は、6月24日発売の「Jリーグサッカーキング」に執筆したものを転載したものです。  

posted by roku03 |13:37 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2009年06月24日

フィンケ監督の挑戦

 J1リーグの第14節で、浦和は横浜Mに完敗した。立ち上がりの浦和は、坪井や細貝らが鋭い出足で横浜Mのタテへのフィードをことごとくカット。闘莉王も積極的に攻撃参加して、波状攻撃で横浜Mを脅かした。

 ところが30分を過ぎると横浜Mも反撃に転じる。ショートパスの交換から浦和DF陣の裏にスルーパスを出して41分、44分と決定機を迎える。後半も横浜Mの攻勢は続き、右サイドからのカウンターで2点を奪い完勝した。

 試合後のフィンケ監督は、横浜Mの勝利を「妥当」だと称えつつ、「勝利を収めるために、30分間だけいいプレーをするのでは物足りない」と浦和の失速を認めた。ただ、その原因を聞かれると、試合直後ということで、「詳しい分析をここで語ることは難しい」と明言を避けた。

 勝った横浜Mの木村監督は、浦和対川崎F戦を分析し、「浦和はラスト20分で足が止まるので、(そこからが)勝負と思っていたが、後半開始から動きが落ちた」と分析しつつ、「前半20分のサッカーを90分間やられたら、かなわないでしょう」と苦笑してみせた。

 チーム全員の運動量が求められる、攻撃的なフィンケのサッカーは、まだ発展途上ということもあり、日本の蒸し暑さを克服できていないのではないだろうか。当日の天候は、公式記録によると気温こそ22・4度だったが、湿度はなんと94%。浦和は、横浜Mだけでなく、日本の梅雨特有の蒸し暑さとの戦いに消耗して敗れ去ったと思えてならない。

 しかし、試合後のフィンケ監督は言う。「今日の敗戦の後では、謝罪する理由を見つける必要はない」と。天候やピッチ条件などの環境に敗戦の理由を求めるのではなく、あくまで「30分以降、(浦和は)優れたプレーを出来なかった。このことをしっかり分析し、改善していきたい」と、サッカーの質の向上に目を向けていた。

 フィンケ監督のコメントを聞いて、かつて千葉や日本代表を率いたオシム監督なら、「蒸し暑くても、もっと走れ。相手に走り勝て」と言っていたのではないだろうかと思ってしまった。そして、この試合を分析したフィンケ監督も同じ結論に至ったのではないだろうか。

 6月13日のナビスコ杯、大宮を6-2と粉砕した後の会見で、日本の夏特有の蒸し暑さについて感想を聞かれたフィンケ監督は次のように述べていた。「私は日本で2回の四季を感じてみたいから、ドイツからのオファーを断った。2度目の夏なら、日本の夏にとってコメントできるので、それまで待って欲しい」と。

 来夏、フィンケ監督がどのような回答を用意してくるのか。今季のJ1は鹿島が独走する気配が漂っているものの、フィンケ監督の冒険心に富んだサッカーも気になって仕方がない。例え今季、浦和がリーグタイトルを獲れなかったとしても、フィンケ監督にその責任を問うべきではないだろう。浦和は明らかに変わりつつある。今はまだ、その序章が始まったばかりで、これから産みの苦しみが待っている。そして、その先にあるのは……。

 もしかしたら、日本サッカー界への大いなるヒントかもしれない。南アでの岡田ジャパンの健闘を祈りつつ、フィンケ監督の挑戦にも期待したい。

posted by roku03 |12:04 | コメント(0) | トラックバック(0)
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