2008年09月07日

バーレーン戦「スイッチ」の入った瞬間

スタジアムは気温33・8度 湿度72%と蒸し暑かった
 バーレーン対日本のW杯アジア最終予選は、日本がFK、PKから前半に2点を奪う好スタート。65分には相手選手が退場となると、諦めたのか帰路に着くバーレーン・ファンも目立ち、84分には中村憲がダメ押しのミドルシュートを決めて勝負は決まったかに見えた。

 しかし、サッカーは何が起こるか分からない。86分にサルマン・イサが1点を返すと、2分後には闘莉王のOGで1点差に詰め寄る。04年アジア杯準決勝の逆バージョンの再現のような試合展開は、最後で日本が踏みとどまり、3-2で逃げ切って勝ち点3を持ち帰ることに成功した。

 もしかしたら、マチャラ、岡田両監督とも、前半は0-0でオーケー、後半勝負と想定していたのかもしれない。日本はこれまで通りの4-2-3-1という布陣。トップ下にドリブル突破を武器とする田中達、左MFに松井を起用したのは、大型DF陣を揃えるバーレーンに対し、スピードとアジリティで勝負という狙いからだろう。

 対するバーレーンは、4-4-2ながら攻撃力のある右DFアブドゥラー・アル=マルズーキ(スタミナはないが)を少し高めのポジションに置いて、右MFイスマイール・オマールを前線に飛び出させる3-4-3との併用による流動的なシステム。ホームだけに、攻撃的な姿勢で日本を迎え撃とうというゲームプランだろう。

 立ち上がりの日本は玉田、松井のレフティ2人に田中達の絡む左サイドからの攻撃が目だった。17分にはゴール正面右20mのFKを中村俊が直接決め、日本は願ってもない先制点をゲットする。この1点で、バーレーンのスイッチが入った。それまで前線のアラ・フバイルとイスマイール・アブドゥルタティフにロングボールをフィードするいつものスタイルだったのが、ミドルパスをつなぎながらペナルティエリアに侵入する人数を増やし、サイド攻撃で日本に圧力をかける。

 しかし、単純なサイド攻撃では中澤、闘莉王の牙城を崩すことはできない。42分には左FKのトリックプレーから中村俊のシュートが相手DFのハンドを誘いPKに。これを遠藤がきっちり決めて、日本が2-0とリードして前半を終えた。

 ハーフタイムにちょっとしたハプニングが起こっていた。ロッカールームのエアコンが切れていたという。「後半も苦しかったが、後半の方が動けた。ハーフタイムにぐったりして戻ってきたが、エアコンが壊れていて蒸し風呂状態だった。かえってその方が良かったのかもしれない」とは岡田監督のコメントだが、「(3次予選の)オマーン、タイでもそうだった」(加藤GKコーチ)という。来年6月のホームの試合では、対戦相手のロッカールームは、ハーフタイムまでにギンギンに冷やして体温調整を狂わせるのも、効果があるかもしれない。

 2点のビハインドで、後半のバーレーンは積極的にプレスを掛けに来た。中澤、闘莉王らに自陣でのボールキープを許さない。明らかに勝負所と読んだのだろう。ここで1点を返せば、バーレーンも勢いに乗れる。1点差なら試合終盤に何が起きるか分からないからだ。6分、7分、8分と立て続けにシュートを放っただけでなく、こぼれ球を拾ってはクロスも上げてくる。しかし、空中戦は中澤、闘莉王がことごとく制していたため、苦し紛れのシュートは枠を捉えきれない。

 日本が耐える時間帯、苦境を救ったのは田中達だった。65分、右ハーフライン付近でボールを受けたものの、フォローはなく孤立無援の状態。多くの選手はボールをキープして味方の攻め上がりを待つか、スローインをもらおうとしただろう。しかし田中達は一人で勝負を仕掛け、右サイドを切り裂く。これがモハメド・フセインのファウルを誘い、2度目のイエローで退場となる。CBの退場により、バーレーンはDF陣の修正を余儀なくされた。72分と79分には玉田がドリブル突破で好機を演出。2点のリードがあるものの、これまでの代表では見られなかったアグレッシブなプレーだ。
 
 75分の長谷部、玉田のシュートは連続してバーに嫌われたが、84分に中村憲が豪快なミドルを突き刺して3-0とする。もうこれで勝負はついたかに見えた。ところが1プレーで試合の状況はガラリと変わる。86分に右からのライナー性のクロスをサルマン・イサが巧トラップからゴール右上に決めると、2分後には右からのクロスを闘莉王がヘッドで楢崎に返そうとしたが、飛び出した楢崎の逆を突く格好でOGに。ここでバーレーンに最後のスイッチが入った。3分のロスタイムも含め、1人少ないハンデを感じさせない猛攻を見せる。しかし、日本も「ここは耐える時」だという共通意識のスイッチが入った。先制直後、後半開始に続く、3度目のスイッチ・オンだ。

 終了間際の2失点は残念だが、選手交代などにより混乱した部分もあったのだろう。むしろ守りに入ったら、きっちりと相手の攻撃を跳ね返したこと、2失点で踏みとどまり、勝ち点3を持ち帰ったことを評価したい。攻撃面では田中達や玉田、松井らがドリブル突破を積極的に仕掛けたことは今後につながるだろう。彼らの一番の武器でもあるのだから、味方を探してパスをするようなプレーは見たくない。唯一、気になったのは、70分過ぎに相手が前掛かりなっていた際、カウンターのチャンスがありながら、押し上げが遅れていた点だ。

 疲れもあるだろう。少ない人数でもフィニッシュまで持っていくのか。それとも無理をしてマイボールを失うのではなく、ボールをキープして時間を稼ぐのか。ここらあたり、イメージが共有できずに中途半端なプレーになっていたのが気にかかる。とはいえ、チームは進化の途中にあり、最終目標は再来年の6月にピークに持っていくこと。10月のカザフスタン戦ではどんな積み上げがあり、また新たな課題が出てくるのか。岡田ジャパンの戦いはまだまだ続く。


posted by roku03 |16:11 | コメント(4) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2008年09月05日

バーレーン戦で気になること

 今年2月、重慶での東アジア選手権以来のブログとなる。今は、バーレーンのマナマにあるホテルでパソコンに向かっている。6日キックオフの、バーレーン対日本戦を取材するためだ。

「接近・展開・連続」から「オレ流」に路線変更しても、ホームのバーレーン戦は相手が主力抜きにもかかわらず苦戦した岡田ジャパン。「ボールも人も動くサッカー」でメダルを目標に掲げながら、グループリーグ3連敗の惨敗を喫した反町ジャパン。改めて指摘するまでもなく、攻撃力不足、得点力不足がその一因であることは間違いない。

 もちろん、得点力不足に悩んでいるのは日本だけではない。北京五輪ではアジアの3チームがグループリーグで敗退したし、今年7月に来日したクラマー氏は、その豊富な指導経験から、「ゴール前5メートルのシュートも枠に飛ばない」アジア各国の現状を「アジア病」と称していた。

 絶対的なストライカーは、どの国も待ち望んでいる。それは欧州や南米のトップチームでも変わらない。そして、欧州や南米の列強は、絶対的なストライカーがいなくても、試合になれば結果を残している。果たしてそれは、歴史の違いということなのだろうか。

 岡田ジャパンがバーレーンに移動する前日に、流通経済大学と30分ハーフの練習試合を実施した。日本代表は開始15分を2タッチの制約をつけたり、対戦相手には3-5-2で戦うこと、中盤ではマン・マークでプレスをかけることなどをリクエストした。結果は0-1で日本が敗れたが、そう気にする必要はないだろう。挑戦者の気持ちで勢いのある大学生に、内容的に押されていたことは気がかりだが……。

 この試合を取材していて、あることに気付かされた。これまで日本代表に限らず、Jリーグのチームも「マイボールを大切」にすることで、ポゼッションを高めつつ、フィジカルのハンデから接触プレーを避けようと「球離れ」を早くし、「組織的な攻守」でハンデを補おうとしてきた。

 しかし、そうした意識に強く囚われすぎているのではないだろうか。ハンデを補うための「日本スタイル」という「固定観念」、「既成概念」にどっぷりと浸かり、それが足かせとなって、「得点力不足」の一因になっているような印象を受けたのだ。

 流経大との練習試合後半のことだ。左サイドのペナルティエリア付近でボランチの今野がボールを受けた。目の前にはDFが一人しかいない。今野はタテに仕掛けるでもなく、中にドリブルで入るわけでもなく、ボールをキープしつつ、左DF長友の攻め上がりを待った。この時の長友は自陣の深い位置にいたため、今野をサポートするのに時間がかかってしまった。

 やっと長友が今野を追い越し、サイドを駆け上がろうとした時には、すでに琉経大の選手も戻っていて、1対1の状況が2対3と、日本にとっては不利な状況へ変わっていた。「ボランチの選手はFWのクサビを受けたり、サイドチェンジの際に、ボールをためてサイドDFの攻撃参加を引き出す」というのは、役割のうちの一つだろう。しかし、いつも同じプレーを求められているわけではないはずだ。

 チャンスがあれば自分から積極的に仕掛ける。例えばガットゥーゾが今野のシチュエーションなら、果敢にドリブル突破を仕掛けて、シュートが無理ならPKでも獲得しようと狙ったのではないだろうか。

今野のプレーを見た後で、同じ視線で代表選手を分析すると、多くの選手が「自分のプレー」あるいは「自分の得意とする(持ち味とする)プレー」に終始し、それができれば満足しているような印象を受けた。「自分の役割」は忠実にこなすものの、それ以上の「意外性」はない。

 このため、「相手の嫌がるプレー」や「状況に応じたプレー」が、特に攻撃の時に少ない。その結果、ボールを保持して攻め込むものの、シュートや決定的なチャンスが少ないという、ジーコ・ジャパン時代からの弊害が今もって日本代表に残っている。「自分の得意とするプレー」=「誰もリスクを冒さないプレー」の繰り返しのため、相手はいつも自陣ゴール前を固める時間的な余裕がある。遅攻しかできない日本は、引いた相手に「ボールを回す」しか選択肢がなく、ウルグアイ戦では相手カウンターの餌食になっていた。

 そんな日本にカウンターの意識を持ち込んだのが、オシム前監督だったと思う。チャンスがあれば、CBでもサイドDFでも攻撃参加してかまわない。チャンスにいち早く気付いて飛び出した選手がCBなら、誰かが彼のフォローに入るという共通意識。彼の言う「日本サッカーの日本化」とは、日本人の持つサッカーへの常識、これまでの「固定観念・規定概念」を打破することだったのではないだろうか。

 残念ながら今はもう、その真意をオシム氏に確認することはできない。もともとカウンターを得意とするバーレーンが、いつ攻めればチャンス(日本にとっては危険は状況)なのか。チームとしてスイッチの入るタイミングを、明日の試合ではじっくり観察したい。

posted by roku03 |15:49 | コメント(3) | トラックバック(2)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加