2008年12月18日
ヴィドマー監督のチャレンジ
サッカーとは、異文化との触れ合いかもしれない。などと書くと、何を今さらそんなことをとお叱りを受けるかもしれない。ならば、サッカーとは異文化をどう採り入れて、昇華していくのかの繰り返しかもしれない。と書いても、そんなことは当たり前だろうと、これまたお叱りを受けそうだ。まったくもってその通り。欧州や南米では、当たり前のことなのだろう。では、最近の日本、Jリーグのクラブではどうか。そんな疑問を感じた世界クラブ選手権のG大阪対アデレードの試合だった。 両者が対戦したACL決勝は、G大阪が持ち前のポゼッション・サッカーで2試合とも完勝した。アデレードは、フィジカルの強さとパワフルなスタイルから、準決勝のクルヴチ戦ではエースのリバウドを削りまくったと聞いていた。しかし、G大阪との決勝では、すでにFCWCへの出場権を獲得したためか、パワフルなスタイルは鳴りを潜めていた。リバウドのような、特定の選手をハードマークで殺せばいいというチーム戦術は、G大阪には通用しにくい。1トップのルーカスはマンマークでケアするのは当然としても、遠藤を潰したところでドリブラーの佐々木や、ボランチの橋本、明神、さらには二川が急所を突いてくる。まさに「とらえどころのない」厄介なチームだ。 そんなアデレードが、FCWCの初戦であるワイタケレ戦は、カッシオ、ジエゴらブラジル人選手を温存しつつ、4-4-2の中盤はダイヤモンド型、1ボランチのリードをパサーに、2トップはクリスティアーノを1トップ気味に配し、もう一人のFWであるキャプテンのドッドをタテ位置に置いて飛び出す布陣だった。サイドMFのバービエロとスパヌオーロは中に入り込んで、両サイドバックのマレンとジャミーソンの攻撃参加を引き出す。特に左サイドのジャミーソンは20歳の若さながらプレミア・リーグでプレーした経験もあり、自信過剰なばかりに左足でのキックをセットプレーではアピールしようとしていた(リードにたしなめられていた印象もあるが)。 結果はセットプレーから2点を奪ってワイタケレを下し、G大阪との準々決勝に進出したが、驚いたのは豊田スタジアムでのヴィドマー監督のゲームプランだった。ワイタケレ戦の4-4-1-1から4-1-4-1に変更。中盤の4の両サイド、カッシオとドッドは中に絞って高い位置取りの3トップに近く、1トップのクリスティアーノと連動してG大阪の4DFによるビルドアップへ積極的にプレスを掛けに行った。前線からのプレスと、その動きに連動して中盤のジエゴ、バービエロ、リードはパスコースを限定してG大阪にプレッシャーを与え続けた。攻守に渡り、スイッチが入った瞬間は4-3-3と言ってもいい。そして20分過ぎまでは、G大阪の選手による苦し紛れのアウトサイドの弱いパスをカットして、何度もチャンスを演出した。 プレスを受けた際に、身体の向き、いわゆるボディシェイプを確立できていない時は、アウトサイドによるコントロールは相手のプレスをかわすのに有効かもしれない。しかし、アウトサイドでのパスはコースが読めない利点がある反面、パワーがないためカットしやすい。そこをアデレードは狙った。本来なら、動き出しの速さでボールをポゼッションする位置をキープして、余裕を持ってつなぐのがG大阪のサッカーだろう。しかしアデレードは前線からのプレスでそれを阻止した。 とはいえ、アデレードのプレスは前半の20分で消えた。体力が持たなかったのだろう。けが人に加え、ワイタケレ戦から中2日での試合。しかしながら、彼らはG大阪を苦しめた。にもかかわらず、遠藤の技ありのゴールで敗れた。試合後の西野監督は「相手は予想以上に高い位置からフォアチェックに入ったのでミスが出た」と認めつつ、「あれくらいのプレスならボールを動かせる力はあるはず。これくらいのプレスは打開しないといけない」とハーフタイムに指示したそうだ。そして決勝点に関しては、「アデレードはガンバのサッカーを消しにアグレッシブに来た。今日のシステムの中でいかにアタッキングサードに飛び出すか。プレスをかいくぐって飛び出す動きを遠藤がやってくれた。あれで落ち着いてゲームが出来た」と勝因を語っていた。まさに西野監督の分析と指示通りの結果と言える。 そんなG大阪に対し、ヴィドマー監督は「私たちはACLと戦い方を変えた。違いはあった。結果だけでなく試合運びが違う。我々の大きな進展だ」と開口一番に話し、「ガンバとの試合では、我々に出来るだけのサッカーをしたかった。それはフィジカルを生かした空中戦ではなく、地上戦で戦うことが大切だった。それでここまで追い詰めることができた。パワープレーは最後の10分までしたくなかった。ACL決勝より進歩しているので満足している。オーストラリアのチームのランドマークがどこにあるのか分かった」と語っていたのが印象的だった。感動したと言ってもいい。 アデレードとヴィドマー監督は、ACLを通じてアジアのサッカーを知りつつ、身びいきだが日本のポゼッション・サッカーに、オーストラリア・サッカーの将来像を見たのではないだろうか。06年のドイツW杯で、日本はヒディング・オーストラリアのパワープレーに屈した。しかし、彼らにしてもパワープレーだけではオセアニアやアジアで通用しても、世界に太刀打ちできないことに危機感を抱いているのではないだろうか。だからこそ、ヴィドマー監督は、G大阪戦をパワープレーで目先の勝利を狙うより、前線からのプレスとポゼッション・サッカーというモダンなスタイルを目指しつつ、勝利に挑戦したのが今回のFCWCだったと思う。 翻って日本はどうか。初めてFCWCに出場した浦和は、前回大会をどうとらえていたのか。世界基準へのステップにオジェック監督はトライしたのか。阿部はインターセプトなどで見せ場を作ったが、急所を突いてくるミランの怖さを体験したことだろう。しかし、それはクラブの財産にも、チームの進むべき方向付けにもならず、FCWCはボーナスに終わったような気がしてならない。ミラン戦での経験から日本サッカーは、浦和は何を学び、それを次の(今季の)シーズンに生かして新たなトライをしたのかどうか。残念ながら浦和は個人の財産にとどまり、クラブの財産として生かせなかったから今季は低迷した気がする。 せっかくFCWCというチャンスがありながら、浦和だけでなく今大会で演じられる好ゲームを、Jのクラブは自分たちのグレードアップに生かせなかった。どこか、別世界の出来事ととらえていたのではないだろう。そこにヴィドマー監督という存在が出現した。これこそ、今大会の一番の収穫だと思っている。Jリーグの各クラブは今大会で欧州や南米のトレンドを学び、積極的に自チームに採り入れていく。その積み重ねが、Jクラブと日本代表の強化につながり、ひいてはW杯での好成績にもつながるのではないだろうか。
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posted by roku03 |00:12 |
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ヴィドマー監督のチャレンジ
コメント投稿者ID :
卓見ですね
posted by e-Fujikawa | 2008-12-31 17:42
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