2006年08月14日

10年分の思いをこめて第2章  伊志嶺監督と島っ子たち 八重山商工野球部

「あいつは目が死んどる。あれじゃあ、だめだ。」 
伊志嶺監督は一回戦が終わったあと、大黒柱の背番号1、大嶺祐介を叱責した。松代高校に左打者が多かったのもあるが、この日のマウンドには、大嶺ではなく左投手の当山を送り込んだ。それどころか、大嶺をスターティングメンバーからも外した。伊志嶺吉盛とはそういう男である。伊志嶺は10年に渡って選手たちを見てきた。体調、精神面など選手の顔を見ればどういう状態か手に取るように分かる。と同時に18人の選手には徹底して厳しい練習を課してきた。どの選手が出ても常に八重山商工の野球ができるとの自負がある。個人プレーではなく全員で戦えるチームに育ててきたつもりだ。戦う気持ちが感じられないやつはエースだろうと試合には出さん。大嶺に向けての強烈なメッセージでもあった。3回、ピンチを迎えると伊志嶺は、ピッチャーを金城長靖に変え、大嶺をファーストに入れた。金城長靖は気持ちを前面に出して打者に向かっていくタイプ。一塁ベースに立ちながら大嶺はどんな思いで守っていただろうか。大粒の汗を滴らせながら金城長靖の気迫のこもった熱投が続く。5回にはこの試合を決定づける3ランホームランを自ら放ち、この日の主役は間違いなく金城長靖であった。しかし8回、伊志嶺は大嶺をマウンドに送る。ここに伊志嶺の選手操縦術を見た。決して突き放すだけでなく名誉挽回の機会を与える。「戦う気持ちがあるなら見せてみい。」エースとしての自覚を持って欲しい。エースというのは責任あるものなんだ。それをお前はわからんか。8回の大嶺への交代にそんな伊志嶺の意思が見えた。そしてこの日の大嶺は一回戦とは別人のようなピッチングを見せた。大嶺の顔は戦う表情になっていた。マウンドに上がるや3者連続三振。金城長靖に負けず劣らずの気迫のピッチングはすさまじいものがあった。一塁を守りながら大嶺は金城長靖の気持ちのこもったピッチングに伊志嶺のメッセージの意図を感じたのではないだろうか。長打を一本浴び、2点は失ったもののアウト全てを三振でもぎとったあたりに大嶺の意地をはっきり見てとれた。エース背番号1の重さ。大嶺はこの甲子園の大舞台で改めてこれを実感したはずである。伊志嶺の冷徹とも思える采配は実はエースを這い上がらせるための温情でもあった。これは大嶺が力を出さないと勝っていけないことを伊志嶺自身が一番知っているからでもある。 
 三振を奪いマウンドで躍動する大嶺をこの日の主役である金城長靖が嬉しそうに一塁から見守っていた。この風景を見たときに真のエースは大嶺だと八重山商工の誰もが認めているんだというのを思い知らされた。伊志嶺監督はじめ八重山商工全員が認めるエース背番号1、大嶺祐介が本当に目覚めた時、石垣島に優勝旗が渡るという現実がぐっと近づく。そのために伊志嶺は次もグラウンドで選手より大きい声で選手を叱咤する。 
「なあに、やっとんじゃあ!」 
伊志嶺吉盛と石垣島の島っ子たちの10年の総決算はまだまだ続く。 

  • 共通ジャンル:

posted by ブラウンシュガー |00:48 | 野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/rock/tb_ping/21
コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」