2007年03月12日
●チャイルド団体、その魅力とは・・・
全日本クラブチャイルド選手権のおかげで、「チャイルド競技(手具をもたない徒手で競う)」の認知度はかなりあがってきている。しかし、「チャイルド団体」という競技は、まだ見たことがない人もいるのではないだろうか。
チャイルド団体は公式競技ではないため、ルールもまちまちである。私の知っている範囲でも1チーム5人の大会もあれば、6人の大会もあるし、演技時間が1分半の大会もあれば、2分半の大会もある。入れるべき難度などの規定も大会によって違っていたりする。しかし、このチャイルド団体、私はかなり好きな競技である。
2007年1月19~21日にかけて長野県で開催された長野県新体操クラブカップ選手権大会の最終日は、ジュニア団体、シニア団体と並行してチャイルド団体競技が行われた。年々盛んになっているこの大会で、今年のチャイルド団体は54チームが出場。それぞれに個性あふれる魅力的な演技を見せてくれたが、なかでも私がその場で演技を見ながらため息の連続、演技がおわったときには拍手喝采だったチームがある。
●音と動きの一致にゾクッ!
~舞エンジェルスのチャイ団~
長野県の舞エンジェルスから出ていた2チームである。このチームは、昨年のチャイルド団体競技でも目をひいた。そのときに印象的だったのは、ジャンプの高さと5人の空中姿勢が見事に同じ形だということだった。身体能力の高さは昨年の時点ですでに目立っていたのだ。
その舞エンジェルスが、今年のチャイルド団体には2チーム出してきていたが、これがどちらも素晴らしい演技を見せてくれた。先に登場した舞エンジェルスR.G.Jr.は、『エル・クンバンチェロ』 の軽快な曲にのせて、弾けるような勢いのある演技のスタートだった。
演技前半最初の見せ場は、5人揃っての後ろバランストゥールのあとの、5人同時のジャンプ! 見事な後屈と高さのあるジャンプが音のアクセントに合わせてバチッ! と決まったときには、見ていて思わずガッツポーズをしたくなった。コサックターンのあとに、5人が縦一列に隊形を変えて、前から順のカノンでかわいらしいポーズを決めるところは、ここがやりたくてこの曲にしたのではないか? と思うほど、音楽にぴったり合ったカノンでため息が出た。その後、30秒ほどはあまり難度は入っておらず、細かい音のアクセントに動きをぴったり合わせて見せる。5人それぞれが音をはずさないので、5人の動きも小気味よいくらいに合っている。5人同時のユニゾンあり、微妙にずらすカノンありだが、本当に曲に合った動きの連続で見ていて気持ちがいい。
選手達は股関節や腰だけでなく、腕、肩、胸、膝などあらゆる部分を柔らかく、細かく動かすことができ、小さな動きで、あるいは大きな動きで音を表現していく。この音にこだわった振り付けも素晴らしいが、それを体現している選手たちもすごい。チャイルドだからまだ小学生だ。おそるべし・・・。
比較的難度の少ないパートのあとには、横に5人並んでのバックルジャンプで度肝を抜く。去年もすばらしかったが、更に進化した? と思える高さのある素晴らしいジャンプもぴたっと揃った。
5人揃っての横バランスの前後の細かい動きも、心憎いまでに細かく音に合っているステップ1つとっても音にのっている。音楽との融合とはまさにこのことだろう。競技作品だから、当然ながら難度が折り込まれているが、この作品に関しては、コサックバランスやC柔軟などの動きが止まってしまう難度が入るのが惜しいくらい、踊りとしての魅力があるのだ。
後ろバランスターンの後の、ちょっとした振りが本当にかっこよく、かつチャーミング! そしてその後に、もう一度、踏み切り脚を変えてのバックルジャンプ! 今度は5人が斜めになって躍動感あふれる最後の見せ場となった。 最後の最後、後ろバランストゥールが、やや乱れたのが惜しかったが、そこまでの踊りっぷりは文句なし、あっぱれ! だった。これぞチャイルド、これぞチャイルド団体! とワクワクさせてくれた。結果は2位。
舞エンジェルスは数年前までは、そこまで上位に顔を出すクラブではなかったと記憶している。が、この小学生達の成長でクラブとしての力もしっかりつけてきたことが感じられたし、それが成績にもきっちり反映したことがうれしかった。
●持ち味の違う2チームに共通する
「音楽を表現する」気持ち
さらに、舞エンジェルスの快進撃は続いた。45番目に登場した舞エンジェルスR.G.の曲は、先に出たチームとは一転して、非常にゆっくりしたテンポの『Warriors』 だった。ロード・オブ・ザ・ダンスの曲で、新体操でもよく使われているおなじみの曲だが、この曲は、とにかく遅い。そして後半で転調するまではかなり単調な曲である。
しかし、このチームはまずスタートのポーズにインパクトがあった。一見、どうやって止まっているのかわからない、イリュージョンのようなポーズに、会場から「ほおっ」と声がもれていた。そして、動き始めると、とにかく1つの音に1つの動きが徹底して合っているのだ。ゆっくりと「1・2・3・4」とカウントできる曲調だが、「1」でこの動き、「2」でこの動き、という音取りが完璧にできている。だから、5人の揃いっぷりが半端じゃない。
舞エンジェルスR.G.Jr.といいこの舞エンジェルスR.G.といい、曲や振りは違っていてもそこに共通して感じられるのは、音と動きの一致、曲を表現しようとする思いの強さ。身体や顔の隅々までを使って音を身体で表現しようとしている振り付け、そしてそれを理解してやろうとしている選手達。
今の新体操では、高い点数を稼げる難度を入れれば入れるほど、止まって見えることが多く、流れるような演技で点数をとることは難しいように思える。チャイルドでさえ、やはり止まるところはびしーっと止まって見せるような演技のほうが点数は出やすいように思う。しかし、こうやって曲を表現することにこだわった、音を大切にした演技にはこれだけ感動できるのだ。舞エンジェルスR.G.の順位は9位と、Jr.には及ばなかった。が、こういう気持ちのいい演技を見せてくれたことに対しての感動はどちらの演技にもたしかにあった。 チャイルド団体という競技だったからできたことかもしれない。手具をもっての演技では手具操作に追われてなかなかこういう曲にこだわった作品つくりは難しいのかもしれないが・・・。と思いながら、この大会のビデオを見直してみたら、ジュニア団体でも舞エンジェルスR.G.は3位に入っていた。そして、この団体の演技も、やはりチャイルド団体で見せたよさをしっかり継承していたのだ。「手具もったら仕方ない」「クラブ10なんだからあわただしくても仕方ない」ではなく、しっかり舞エンジェルスのこだわりを感じさせる演技になっていた。これは、楽しみだ。今のジュニア団体も楽しみだし、今年、チャイルド団体に出ていた子達もいずれジュニアにあがってくる。
単に強くなる、成績をあげられるチームになるだろうという意味で楽しみなのではない。点数がとれればいい、成績がよければいいではないこだわりを感じさせる演技をこれからも見せてくれるだろうことが楽しみでたまらない。今の舞エンジェルスは、そういうクラブだ。この良さが変わらないことを祈りたい。
(撮影:榊原嘉徳)
posted by 椎名桂子 |09:01 |