2008年04月20日

岡山精研高校 -本質-(中)

「徒手をしっかりやることは、遠回りに見えて一番の近道」

長田監督のこの言葉は、自身の経験と結果に裏付けられたものである。


 男子新体操の大きな見せ場といえば、ダイナミックなタンブリングや、組みなどの大技が代表的である。だから、それ以外の動きである徒手を徹底するということは、一見すると遠回りに見える。


 実際のところ、周囲の目にも部活を始めた当初はそう映ったかもしれない。

 1999年、「岡山国体優勝を目指して」招聘された長田監督だったが、突きつけられたのは部員0名という現実。なんとか7、8名の部員を集めて同好会から始めるも、集まったのはこれまで部活をまじめにやってきたことのない生徒たちである。時間になっても集まらない、挨拶はしない、着替えない、休日は部活に来ない。

マット運動をやらせれば、自分の番がくるまで床に座って待っている、といった有様だった。初心者を教えるときは「まずは前転、後転から」なんて話をするが、岡山精研はそれよりもさらに手前からスタートしなければならなかった。「練習以上に、中身を変えなければ」―――。

 そう考えた長田監督はあるとき、練習後にステージから、体育館端に立つ監督にむかってその日の反省を叫ぶように、と指示をした。「新体操は自分の気持ちを人に見せるものだから、それをさせたかった」という思いの下の指導だった。



 徒手の徹底という地道な練習に嫌気がさし、「辞めたい」という部員も少なくはなかったが、そうした部員にも根気よく説得を続けた。「諦めるのはいつでもできるが、自分で人生を切り開いていくためには、これは大きく変われるチャンス」なのだと、言い聞かせてきた。


  大学時代の演技や周囲からの評判から、長田監督にはなんとなく「論理の人」というイメージがあった。だからこうした「熱い」側面があることに、多少なりとも驚いた。青森山田の荒川監督とともに一時代を築いた大学個人選手時代、彼の演技は「いかに周囲を驚かせるか」という緻密な創意工夫のこもった、どこかクレバーさを感じさせるものだったからだ。



説得の結果「辞める」といっていた部員たちも「なんだかんだで、続ける」のは、彼のそうした意外性のある「熱い」部分に、少なからず心を動かされたためなのだろう。
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 同時期につくり始めていたジュニアチームも、週1回の練習から初めて、徐々に練習時間を増やしていった。そこでも一貫して行われた「徒手の徹底」は、徐々に日の目を見るようになる。




・1999年 4月   同好会から、部の設立。 
      6月   県総体。しかし試合には間に合わず、出場を見送る。
      11月   初めての大会・新人戦に出場。結果は奮わず。



・2000年 4月    井上監督にジュニアの指導を任せ、高校生の指導に専念。
      6月    中国ブロック大会に出場、3校中3位。



・2001年         ジュニアの練習を週6日、行うようになる。



・2002年  8月     インターハイ出場権を勝ち取り、出場。19位



・2003年  8月     インターハイ、6位。
       10月    国体、10位。



・2004年         ジュニアチームの下に、さらに年少のキッズの教室を設立。
         8月  インターハイ、5位。
       10月  国体、4位。 




 「徒手の徹底」は年を追うごとにその成果が目に見える形で表れるようになった。見せ場のタンブリングや組みをするにしても、その基礎となる徒手を井上監督とともにジュニアで叩き込んだ事で、より美しく、完成度の高いものが仕上がった。
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「(構成づくりは)自分への挑戦。自分のセンスが、どこまで通用するか」の言葉通り、構成は長田監督がすべてつくり上げる。だが、せっかくのセンスある構成も、それを実現できるだけの選手たちがいなければ意味がない。
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 長田監督の独創的な演技構成と、そしてそれを実現できるだけの実力を、徹底した徒手練習でコツコツと積み重ねてきた選手たち。どちらかが欠けてもいけなかった。6年の年月をかけてこの両方を揃えたことが、岡山精研にとって大きな意味をもっていた。そしてそれは同時に、表彰台の高みを確約するものとなった。


                ・2005年 8月 インターハイ、優勝
                      10月 岡山国体、優勝




 さらに、この徒手の徹底はうれしい誤算を生んだ。そしてこの誤算こそが、地元国体後も、決して衰えない岡山精研の力の源となった。





posted by reportage |16:40 | 岡山精研高校 | コメント(0) | トラックバック(1)
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