2007年05月09日

青森山田高校 vol.2-策士(中)-

 午後の練習はは団体のタンブリング練習、全通し(曲に合わせての団体の通し練習)、前後半(団体を前半と後半に分けての練習)、倒立、バランスの練習を経て、1時間ほどで終了した。

この日は秋田の国体選抜チームが合同練習に来ていたので、秋田の選手にフロアを渡す。


 しかし柴田は、秋田がフロアで構成づくりをしている間も、その脇で個人練習に入っていた。棍棒の演技を曲に合わせて軽く2本ほどこなすと、曲かけをしていた選手に「もう良いよ」と言った。かとおもうと直ぐに「次、縄」といって手具を持ち替えて、今度は縄の練習に入る。


 練習熱心なのは確かだ。ただ、私の目には柴田はどうも焦っているように見えた。









 「ちょっと入ってみろ」


 荒川監督不在の団体練習中、突然、尾坂監督にそういわれて柴田は「えっ」と思った。はじめは監督の言ったように「ちょっと入って」みるだけ、と思っていたが、それが荒川監督が戻ってきてからも続いた。


自分の不在中に団体メンバーが入れ替わっていたことに驚いた荒川監督だったが、当の柴田も驚いていた。



「まさか、本当に入るとは」


20070509-02.JPG







 個人競技と団体競技。器械体操の場合、そのふたつにはそこまで大きな差はない。しかし殊に新体操においては、このふたつは全く別物といっても良い。

 それぞれの規定はもちろんのこととして、もっとも大きな違いは、そこに求められる資質である。



 個人競技は当然ながら個人による、1分半の演技で、手具をもって行われる。その短時間に集中して、自分をみせなければならない。

 そのため、手具操作の器用さはもちろん、自分の持ち味や特徴を分析し、その「色」を十分に出し切る、ということが重要になる。1分半という短時間に、自分の力を出し切ることも必要である。

 つまり、個人選手には器用さと、自分への集中力が必要なのである。




 一方で団体は徒手(手具なし)で6名で行われる。
一糸乱れぬ動きが最大の魅力であるこの競技では、常に周囲を見て動くことが求められる。

時間は3分と、個人の倍もある。スタミナはもちろん必要だが、それ以上に求められるのは演技中のペース配分である。3分の間、全て100の力で動き続けることは難しい。力を抜いて体力を蓄える部分と、力を出し切る部分と、うまく配分していく必要がある。

 つまり団体では、全体を見渡す能力と、ペース配分をする、ある種の管理能力が必要になってくるのである。

20070509-01.JPG




20070509-00.JPG


 

 柴田の団体経験は、昔一度はいったことがあったきりで、それ以降、高校では個人選手として活躍してきた。

 団体に関して、もらした第一声は「キツイ」。「体の使い方が全然違う」のだという。

いきなり個人の倍以上の時間、演技することに関してたずねると「今は体力をつける時期だと思ってるから」とのこと。自身の課題についても「自分の“色”はスピード感と手具操作の器用さ。今は体がかたく、筋力が弱いためにその色が出しきれていない」と言う。よく、自分の事を分析している。

休憩をとらずに練習していることについて触れると、「一番、がんばるように意識して」のことだという。「焦った」ように見えた柴田の動きの裏には、やはりこうした思いがあった。

そしてこのことは後に、柴田にひとつの気づきを与えることとなる。




 一方、この「焦り」に関して言うと、元団体メンバーの亀井はまだそこまでではないように見えた。

 タンブリング練習中、「練習に気持ちが入っていない」と、監督からのかなり厳しい檄が飛んでいた。先輩からは「団体から外されたのはあと一歩足りないから。足りないなら、残って練習すればいいのに、それがない」と厳しい言葉が漏れた。

直美さんからは「一生懸命アピールすれば、まだまだ入れ替えのチャンスはあるから」と励ましの言葉をうけ、「練習ではレギュラーの倍動かなきゃ」という気持ちがあるのだが、それが行動につながらない。というか、自分でもどう動いたらいいのか戸惑っている、という感を覚えた。





20070509-03.JPG



posted by reportage |00:01 | 青森山田高校 | コメント(2) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加