2007年03月06日

前橋工業高校 vol.1 -男子新体操の特性-

 公立高校の弱みといえば、大きく二つのことが挙げられる。ひとつは施設が私立のそれより劣っていること、もうひとつは学区制のため、強い選手を呼び寄せることができないことだ。

 前者のことは、前橋工業に関してはあまり問題ではないだろう。ほぼ男子新体操部専用となっている、日当たりの良い天井の高い練習場に、だいぶ年季が入っているが、市からゆずってもらったというフロアが敷きっぱなしの状態になっている。
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私立でも専用体育館などほとんどない中で、公立としては十二分に恵まれた施設である。
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しかし後者の問題は、さすがに頭を悩ませるところである。

多くの私立校は、全日本ジュニア選手権などで好成績をおさめた中学生を呼び寄せることができる。学区制ではないし、遠方の選手であっても寮に入れることができる。時に学費免除などの特典がつくことさえあるのは、そこに「勝たなければならない」私立校ならではの事情があるためだ。


 一方で公立ではそこまでのプレッシャーはない代わりに、経験者を集められない分、一から選手を育て上げなければならない。前橋工業もその例にもれず、部員は全員が新体操未経験者だ。


たとえば、これがサッカーや野球であれば、このことはチームの実力を決める上で、埋めることのできない決定的な差を生み出すものとなるだろう。

しかしながら、必ずしもそうならないところが、現在の男子新体操のおもしろいところである。前橋工業の新体操をみていて、改めてその魅力に気づかされた。






 前橋工業男子新体操部の部員は全部で8名。その全てが、男子新体操未経験者である。中学時代に器械体操の経験の有無はあるが、タンブリング以外の動きに関しては全員が全く同じスタートをきる。それだけに、練習風景、特に個人演技の練習をみていると選手の個性やセンスがはっきりと見えて愉しい。


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今度2年生になる岸は、練習を見ていると時々アレッ、と思うことがある。

スムーズに練習していたかと思うと、突然まったくの素人のようなミスをするのだ。

それもそのはず、彼は中学時代に器械体操の経験すらない、ズブの素人から始めた選手なのだ。

始めて1年にも関わらず、すでに十分新体操らしい動きをモノにしている。

男子新体操ではまったくの素人が、資質次第では1年足らずで十分に見れる演技をするのだ。






新3年生の桜井は、典型的な個人向きの選手である。
徒手(手具を持たない状態)で行うタンブリング練習でもいち早く手具をもち始めていたし、何かというと器用に手具を動かしている。
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前橋工業の個人演技は、基本的に先輩の演技をマネるところから入る。
そのため部内で同じ演技をする選手がいるわけだが、同じ演技だけに、手具操作や体の使い方の器用さが際立つ。

また、練習中には大学生が演技で使用している曲がBGMとして流されるのだが、彼はタンブリング練習中、自分の番になるとわざわざ好きな曲に変えてから、気分をのせるようにしてからタンブリングに入る。

個人選手は演技構成や曲を、だいたい全て自分で決める。こういったこだわりも、「個人選手らしいな」と感じた。





 ただでさえ各選手の個性がよくあわられる個人演技で、前橋工業の場合スタートがほぼ同じなだけに、如実に現れるその違いが見ていて愉しい。
 しかしその個性も、団体演技となると必ずしも良い方向には働かない。



 団体演技をみせる方法としては、大きく2つの方法がある。
ひとつはセオリー通り、全体のレベルを均一にあげる方法。もうひとつはひとり、スター性のある選手を入れてその選手を中心にみせる、という方法である。

しかし後者の方法は「スター選手」をとれる私立ならではの方法。やっとこさ団体を組んでいる公立校では、地道にレベルを均一にしていく外ない。


そうなってくると、邪魔になるのが個性やセンスの差である。
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団体向きであるが、個人はさっぱりな選手がいれば、その逆もまたしかり。かと思えば、両方そつなくこなす選手もいたりする。経験の浅い選手ほど、そうした部分ははっきりと現れる。


加えて、前橋工業の昨年の団体チームは、6名のレギュラー中5名が3年生であった。新チームでの団体経験者は1名だけである。前橋工業にとって、今年は厳しい一年になりそうである。



 昨年のインターハイでは12位。「柔らかい動きの演技で上手くみせられず、点数がのびなかった」と主将の大沢はその結果を振り返る。今年は「一昨年の固い演技に戻して」リベンジを図る。20070306-04.JPG




 初心者ばかりのチームだけに、今後の課題は多い。しかし男子新体操の魅力のひとつに「突然の成長」がある。昨年まで何でもなかった選手が今年とつぜんに上位争いに食いこんでくる、なんてことがままある世界なのだ。

 現に、現在主将をつとめる大沢は、中学までテニス部に所属していた、これまたズブの素人から始めた選手である。

テレビ番組「笑ってコラえて」での男子新体操の特集に魅了さて新体操を始めた。数年前に一視聴者だった彼が、今では部を率いているのである。
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 男子新体操という競技の特性を、良くも悪くも如実にうける前橋工業。

 選抜を経験してどのような成長をみせてくれるのか、今後も見守っていきたい高校のひとつだ。







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posted by reportage |22:44 | 前橋工業高校 | コメント(2) | トラックバック(0)
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