2009年08月20日
花園大学 鈴木一世 -不言実行-(前)
試合で彼がミスする姿を見て、他大学の監督がこんなことを言っていた。 「お前でもミスするんだな。なんだかお前も人間だったんだって、ホッとしたよ」。 彼、鈴木一世のイメージを象徴するようなセリフだと思った。 昨年の全日本インカレでも、こんなことがあった。大会への出発前日、彼は練習中にスティックをぶつけて手の平を負傷。4針縫う大怪我だったが、治療後すぐに大会に向かった。しかしあろうことか、それが本番の演技の最中に2針、とれてしまった。それでも、4種目をノーミスで通しきり、順位は堂々の4位。![]()
鈴木はミスの少ない選手ではあるが、当然ながら全くミスをしないわけではない。しかし、その後の様子が、人と少し違っている。 例えば手具を取り落としても、その後の演技にひびくことがまずない。それを、多くの場合は「気持ちの切り替えが早い」と評価するが、彼の場合は少し違う。 気持ちの切り替えが早い、ということは、ミスによって落ち込んだ気持ちをすっぱり忘れられる、ということである。が、彼はまずミスをした時に、気持ちが落ちているように見えないのだ。むしろ直後には、ふっと空気が緩むようにすら思えることがある。諦めている、とうわけではない。そのミスを、ひとつの独立した事実とし受け取めている、という風に見える。起こったことは起こったこととして受け止めるが、それ以上でも、以下でもない。だから、その後に影響を及ぼすことがないのだ。 根本的に気落ちすることがないわけだから、切り替える必要などない。彼は起こったことを冷静に受け止めて、その後、なすべきことを為しているだけなのだ。だから、冒頭のような言葉もかけられるし、たとえ4針縫う大怪我をしていたとしても、それは彼にとってもひとつの出来事にすぎない。ミスや怪我は、彼にとって心理的に、プレッシャーを与えるものにはならないのだ。![]()
人と話すときには、明瞭で率直な語り口をする。内容も合理的で、筋が通っている。自分の決めたことは、周囲に影響を受けることなく、淡々と行う。彼のこれまでの実績も、その性格を象徴するようなものだった。 大学1年での目標が「ジャパン(全日本選手権)に出ること」、2年でのそれが「ジャパンで決勝に残ること」、そして3年では「6位入賞」。そのどれもが、果たされている。苦労話をあまり語らない彼の口から聞くと、それは淡々と達成されたように思われるのだが、そこには確かに、努力の跡がある。 「高校時代はリザーバーだったんで」という言葉通り、高校時代の彼は常に2番手の選手だった。出身は北海道恵庭南高等学校。その同学年に、現在は青森大の春日克之がいる。去年の全日本選手権覇者だ。そのため高校時代、鈴木には個人での全国大会出場経験がない。高校1、2年時はもちろん、「気分屋でやる気にむらがあった」という彼が、体育館にひとり居残って「極秘練習」をして臨んだ高校最後の道内大会でさえも、0.025点差で春日に敗れている。 団体で出場することになったインターハイの会場で、「何で俺が出られないんだろうか」と、個人の試合を見ていた。決して、そこから大きく後れをとっているとは思えなかった。全国の場で自分を試したいという思いは、強くなった。![]()
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花園大学 |
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