reportage -男子新体操 取材記録-

青森大学-采配-(後)

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 翌日の全日本インカレ、団体競技。試技は完璧な演技を披露した国士舘大学の後に行われた。

 繊細なピアノの音から始まる青森大学の演技は、バランスを寸分の乱れもなく合わせた後、最初の見せ場、第一タンブリングに入る。ピアノの主旋律に、低音の伴奏が荘厳さを加えたところで、助走してきた外崎がドッペル。着地で一歩、前に歩いたが、男子新体操史上初というそれは、周囲を沸かせながらあまりにもあっけなく成功した。いや、あっけなく見えた、というだけなのかもしれない。彼にとって本当に頭を悩ませた技が、この後に控えていることを知っていたために、そんな風に見えただけなのかもしれない。
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 そして迎える、問題の第二タンブリング。6人同時で始まるバック転から、外崎は半分ひねって踏み切ったところを、周囲の3人に支えられるようにして受け止められる。そのまま背中から押し上げられるように宙を舞った体は1回転。空中で足を軽く前後に開くと―――片方の膝を曲げた、座の状態で着地した。直前の葛藤を知らなければ、なんということもない、と思うほどにそれは自然だった。技を変更してからの1本通しは、これ初めてだった。

 本当の、最終的な決断を下したのは公式練習の直前。皆を集めて、改めて変更の旨を伝えてから、監督はこう続けた。
「0.3減点されるかもしれない、後ろめたい状態ではやりたくはない。(青大で創部してからの)7年間、俺は自分の決めた采配で失敗したことがない。今もこの決断は失敗だと思わない。お前たちなら出来ると信頼しているし、自分の采配にも自信がある。…どうだ?」

 実際5月に行われた東インカレで、その出発当日に団体の選手変更を行うという、無謀とも言える行動に出たが、演技はミスなく終えることができた。監督の指揮と自身の実力の確かさを、選手たちは実体験として知っている。たずねられて、うなずいた。


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 練習会場の公式練習で一度だけ、この変更部分の練習は行われた。実はこの時、技は失敗している。投げ上げられる前に組みは崩れたのだ。だがやり直しはさせなかった。
「それでいい。今の感覚で、こうきたら、こうなる、ということだけ感じておいてくれ。今の突き上げられてからの感覚さえ覚えておけば心配ない。」

 そこで何度も練習を繰り返せば、肉体的な負担はもちろんだが、その部分ばかり妙に意識して、余計に力んでしまう。たった数秒の技にウェートを置くことで、他がおろそかにならぬよう、との配慮のもとのアドバイスだった。伏臥よりも座を選んだのは、その方が外崎にとってわかりやすいだろうと考えたためだ。これもやはり、リスクは最低限に抑える彼の性分があらわれた。

 そして外崎は練習でのミスを、本番ではきっちり修正してきた。この演技で今年も、絶対王者は表彰台の高みに上った。


 創部8年目を迎えた青森大学。未だ、彼の采配にミスはない。


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青森大学-采配-(後)

失礼しました。
9月は私も体育館にお邪魔しました。
「スワンの涙」というまだまだ初心者のブログです。
ネコ宙さんとこにもお世話になってます。
http://ameblo.jp/miya-bm/
よろしくお願いします。

青森大学-采配-(後)

スワンさん
これは9月下旬に取材した分ですね。。更新が遅いもので。。

ブックマークぜひお願いします!よろしければそちらのサイトも教えてもらえますか??

青森大学-采配-(後)

こちらの取材はいつ頃でしたか?
今後の更新も楽しみにしております。
わたしの所にもブックマークさせてくださーい!

青森大学-采配-(後)

体操人さん
ありがとうございます!青大は毎年タンブがパワーアップしていきますよね~!

更新は、ジャパンまでにもう1個くらいはアップできるかと。。


ネコ宙さん
ありがとうございます!
リンクの方も、よろしくお願いします。すごい動画の量にびっくりしました…!

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男子新体操とは??
女子のそれとは全く異なり、迫力のあるタンブリング(宙返りなどの技)と、キレのある動きで構成される競技。
棒、輪、縄、棍棒の4つの手具で行われる個人と、6人で手具を使わずに行われる団体とがあり、特に団体の演技は圧巻!
タンブリングの上をタンブリングで飛び越える「交差」や、6人が一糸乱れぬバック転を見せる「3つバック」など、思わず息を呑む迫力満点の見せ場が満載。死ぬ前に1回は見ておいて損はないです。
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