2008年05月17日

花園大学-個人の花大、その変化-(後)

 花大に訪れた2日間はちょうど、選抜大会を控えた岡山精研高校が、合宿に来る時期と重なっていた。大学生は精研の長田監督に演技を見てもらい、高校生は大学生から刺激を受ける。お互いのために、自然にできあがった構図だと、長田監督は話す。
20080518-00.JPG


20080518-01.JPG


 そうして花大の構成づくりをみている最中、ふと長田監督が団体メンバーを呼び寄せた。全員がフロアをおりて、長田監督、昨年から花大を率いることとなった野田監督を中心に、車座になる。フロアは、がら空きになる。
 ちょっとした指示でもあるのかと思えば、その話は1時間以上に及んだ。個人と団体の両方のある部、とりわけ個人の多い花大では、フロアを使える時間というのは限られている。そんな中、彼らは1時間以上もフロアを空け、監督を囲んで、身を乗り出さんばかりにその話に聞き入った。
20080518-03.JPG


20080518-04.JPG


音楽が鳴り響く体育館の中、決して大きくはない声で行われた話し合いで何とか拾うことが出来たのは、「日本一」の言葉だった――――



 花大が岡山精研高校と度々練習をともにするようになったのは、07年の夏、当時からあった長田監督と野田監督のつながりをきっかけに始まったことだった。
「絶対、優勝したい」と常々語っていた当時の4年生は、最後の年となるこの年に思い切った行動に出る。知る限りではそれまで例のないことだったが、大学生の方から高校に足を運び、合宿を行ったのである。これまで、大会前に高校生が大学に練習に行く、というのはよく見られることだったが、逆は非常に稀、私の知る限りでは初めてのことだった。高校生を牽引する立場であるというプライドが、それを許さなかったからだ。「あんまり(高校に練習に行っていると)言いたくないですね」とその心情を語る古河の言葉からも、それは伺えた。



 そんな思いをふりきってまで、当時の4年生が合宿を敢行したのは、ごく純粋な「勝ちたい」という思いのためだ。そして「自分たちは、その土台づくりをしたい」という、力強く潔く、そしてどこか切なさを感じさせる決意のためである。



 高校での合宿は岡山の精研高校に始まり、鳥取の智頭農林、佐賀の神埼清明、香川の坂出工業と、4年生の母校を中心にまわった。
 
  花大はもともと上下関係が薄く自由な気風のためか、新しいことに取り組むに当たり、柔軟性や吸収力に優れている。合宿を通じて多様な環境で演技することは、あらゆる意味での対応力を養うことになり、その特長に磨きをかけた。高校の監督からの様々な講評からは多くを学ぶことができた。しかし何より、勝つためにプライドを投げ打っての行動に出た、彼らの心の変化こそが最も大きな意味をもっていた。

20080518-08.JPG



 全日本選手権で高い評価を得たあの演技は、そうした背景の下、岡山での合宿の中で生まれた。インカレを終えて、「どうやったら勝てるか」を真剣に考えて臨んだ合宿だったが、当初、構成をそこまで変える予定はなかった。しかし、演技をつめていく過程で、どうしてもつじつまが合わないところが出てきてしまい、先に進むことができなくなった。散々悩んだ結果、思いきり変えてしまおう、ということになり、急遽構成の半分をつくり変えることを決めた。突然の、それも大幅な変更である。
20080518-09.JPG



  当然ながら練習は長時間に及んだ。集中力が切れてくると、互いに声をかけ合った。「モチベーションを上げてくれる」という長田監督の話は、このときも彼らの力になった。
難航を極めながらも第2タンブリング、演技の中盤までをなんとか仕上げることがでした。午前11時からはじまった練習、気がつけば時計の針は午前5時を指していた。


 そうまでしてつくった演技だったが、大学に持ち帰ってからも、後半部分の制作には苦心、一時は「インカレのときの演技に戻すか」という話まで出た。
 さらなる試行錯誤の末に新しい演技が出来たのは、大会一ヶ月前のことだった。





 ――――車座での話し合いが終わると、選手たちはまた鏡に向かって動きの研究を始める。ビデオにおさめては、新しい演技を模索する。
20080518-05.JPG


20080518-06.JPG


  「絶対に、優勝」して「日本一」になるために間違いなく壁となるのは、現在全日本選手権を5連覇中の青森大学の存在である。彼らを超えることは容易ではないが、花大には飛びぬけた柔軟性と吸収力からくる、「豊富な発想力」がある。
 高校に合宿に行くことに抵抗はなかったか、とたずねたとき、古河は「でも、勝ってないチームがプライドもっても仕方ないんで」とこともなさげに話した。

  負けじ魂と同居するのは、潔さと転じることを恐れない強さ。絶えず変化し続ける挑戦者の姿は見ていて楽しく、そしてどうしようもなく、わくわくするものである。

20080518-12.JPG




  06年に花園大学を卒業、その翌年に同大学の監督となった若き指導者・野田光太郎。彼は現在部員の確保、とりわけ団体メンバーの獲得に奔走している。

 高校生の大会では、スカウトに訪れるスーツ姿の彼に何度となく出会った。スター選手の彼が声をかければ高校生はイチコロなのでは、と思ったが、団体となると話は別らしい。 今の部の課題は、とたずねると「とにかく団体に人を入れることです」と話す。どうやらこれが目下のところの野田監督の悩みらしい。
20080518-11.JPG


 しかし07年11月、全日本選手権で花大の演技を見た「あまり新体操が好きじゃなかった」高校生は、この春、花園大学の門を叩いた。「今までにない構成で、ここに入ってやりたいと思った」。そう語る山中は、今年、埼玉栄高校から花園大学に進学、団体レギュラー入りを目指す。



  若き監督の悩みも、もうじきなくなるかもしれない。



20080518-10.JPG



posted by reportage |23:04 | 花園大学 | コメント(1) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/reportage/tb_ping/47
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
花園大学-個人の花大、その変化-(後)

昨年より花園大の団体がおもしろくなってきました。個人でのあの発想の豊かさが、団体にも活かされているように思いました。アクロバティックな演技より構成の素晴らしさで感動したいなあ。今年も期待していいかな?

posted by sakura | 2008-05-28 22:48

コメントする