2007年09月28日

秋田選抜(前)

 事実、忘れていたのだ。強いタンブリングと美しい徒手、それがあるのが強いチーム。どこかにそんな思いがあったことにすら、気づかなかったのだ。今回そのことを思い出させてくれたチームがある。



 9月下旬、国体直前の三連休。青森山田高校の体育館に、いつものメンバーとは別に、見慣れない8人の選手がいた。今回の国体開催地・秋田の選抜チームが合宿に来ていたのである。青森山田くらいの強豪校になると、他校から合宿を申し込まれることも珍しいことではない。実際、私が秋田選抜の選手に会うのも、二度目のことである。
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 前回彼らに会ったのも、同じ青森山田の体育館で、同じく合宿に来ているときだった。まだ寒い3月上旬の、私が初めて取材に訪れた日でもあった。
 このときは初めての取材ということもあって、今回は青森山田の取材のみにしよう、と決めていた。しかし今にして思えば、少なからず当時の彼らに見るべきものがないと感じていた、というのもあったのかもしれない。今年地元国体を控えていながら、チームの始動がこの前年であることに対して「遅すぎる」という念もあった。




 しかし、秋田の男子新体操部の状況がことのほか厳しいということを、そのとき私は知らなかった。部は団体などおよそ組めそうにない程度の人数が、県内のいくつかの高校にポツリ、ポツリといる程度の規模。今回の秋田選抜チームも、秋田工業から2名、秋田商業から2名、明桜高校から補欠を含む4名、秋田工専から1名の、正真正銘の混成チームだった。行事やテストの時期が違うため、思うように人数が集まらない日も多い。ましてチームの始動時期など、選手たちがどうこうできる問題ではなかった。



 もともと人数の少ない彼らは、選抜チームが組まれるより前から練習をともにしていた。そのため、「秋田選抜」と銘うってから変わったことは、練習場がそれまでより広い「三菱マテリアル」という企業のものを使えるようになったことと、不定期ではあるが、国士舘出身の大友監督が指導に入るようになったことだけだった。



 そうしてつくられた混成・秋田選抜が初めて青森山田に訪れた日、当時まだ曲もついていない彼らの団体を見て、青森山田の尾坂総監督がこう言ったのを覚えている。「内容がない」。
 私も同感であった。演技構成がどうの、というよりかは、彼らが何を伝えたいか、演技のどこを見せたいのか、そういうものが伝わってこなかった。



 それから、半年。同じ場所、同じシチュエーションで見る、まったく違う彼らの姿に私は驚かされることとなった。





 まず、団体は構成がガラリと変わっていた。よく新体操の団体で、団体演技の形としてなっているか否か、ということを「見える」「見えない」といった表現をすることがあるのだが、彼らの団体は「見える」ようになっていた。以前は分からなかった見せたい部分が、「見える」ようになっていたのだ。
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 秋田選抜の個人はこのとき初めて目にしたのだが、それぞれ課題は多いものの、どれも勢いと、周囲にアピールしようという気持ちの見える演技だった。多く残る課題も、青森山田の荒川・尾坂両監督と大友監督の指導をうけるうちに、みるみる良くなっていくのである。
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 本当にあの時と同じチームだろうかと思うほどに見違える変化。それは、彼らの過ごした半年間の濃さを物語っていた。


 昨年から大友監督のもと、始動した秋田選抜であるが、監督は彼らとは別の学校で教えている。そのため、練習に来られないことも少なくはなく、忙しくなると2~3週間も顔を出せないこともある。それでも彼らは監督の存在を「有り難いです」と話す。強豪校やそうでないところでさえ、毎日のように監督がいて、練習を見てもらえることが当たり前である。しかし彼らにはその「当たり前」が、貴重だった。
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 初めての青森山田での合宿は、秋田選抜にとって最初の合宿だった。そしてこの最初の合宿で、彼らは彼らの中だけで、静かにその心境に変化を迎えていた。


 全国でもトップに名を連ねる青森山田と練習をともにして、タンブリング、徒手、何もかも違う自分たちを「下手だ」と実感した。だがそれはやがてふつふつと悔しさに姿を変えた。「悔しい」「追いつきたい」「負けたくない」―――そして、ひとつの結論にたどり着く。「ここは、開き直るしかない」


 もともと指導に対する欲求は、有り余るほどにあったチームである。それに加えてこの「開き直り」は、この後につづく盛岡市立、埼玉栄、岡山精研、国士舘大での合宿を、より実のあるものへ変えた。「ガラリと」変わったように見えた団体は、合宿で行く先々で手直ししてもらうことで出来上がった。




 無論、チーム全体の意思がそこに至るまで、大きなケンカも何度かあった。殴りあったことも、辞める、辞めないの話にまでなったこともあったが、そのたびに根気強く話し合った。そうやって過ごした半年間は、彼らを少しずつ「チーム」にした。

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posted by reportage |12:30 | 秋田選抜 | コメント(0) | トラックバック(0)
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