2007年09月12日

青森山田高校 vol.4-異端児-(後)

 事前にユニフォームについて審判に問い合わせたところ「ユニフォームに乱れの出ないよう、工夫するのであれば可」といった回答であった。早速、妻の直美さんによってデザインの考案が始まった。今回ユニフォームで大きく変えたいのは、「長パン」と器械体操のそれと同型であるパンツを、裾の広がったものにすることであった。体のラインがはっきりあらわれる従来のそれに、抵抗を抱く選手も少なくなかったため、このことは多くの選手の抱き続けていたい思いにも応えるかたちとなった。



 試行錯誤の末、見た目には分からないが、従来の長パンの裾の部分に、広がった部分がかぶさっているような、二重構造のユニフォームが完成した。これはタンブリングなどの際に裾がめくれあがって選手の怪我につながらないよう、配慮したものだった。さらにメーカー側の案で、裾が動かないように中で糸でとめるという細工も施した。


 そうしたメーカーとの二人三脚の末に、ユニフォームは完成した。裾の広いパンツはすらりと脚が長く、ラインがきれいに見えた。ランニング部分も従来とは違う大胆なカットを入れ、布地も重厚感のあるベロア地を使用した。


 武器がないといわれていた演技には、直美さんのダンスレッスンと、彼女のセンスによる独自の徒手動作が多分に盛り込まれ、徒手で見せる演技が仕上がった。曲は再び手直しをし、「神」をイメージしていたというそれに近づいた、荘厳なものとなった。
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 奇しくも今年のインターハイにはNHKを含む3つのテレビ局が入ることになっていた。それまでの武器と違う形で新体操に「インパクトを与える」には、絶好の場であった。





 8月3日 12:10
 インターハイの公式練習。本会場に姿を現した青森山田の6人に、会場の視線は集中する。今年の青森山田の演技、曲、そしてユニフォームの、初披露の場である。
公式練習の直前まで何度も不安の言葉を口にしていた直美さんだったが、15分間の公式練習の後、それが杞憂であったことを知る。他の関係者からの評判は、思いの外良かった。
―――これは、次の主流になるだろう。間違いなくそう感じた。



 しかしこれ以降、このユニフォームが袖を通されることはなかった。






 公式練習終了後、ユニフォームについて審判団から待ったがかかった。事前に許可を得てのユニフォーム変更だったにもかかわらず、話し合いの結果、青森山田には「これを着て出場した場合、ひとりにつき0.2ずつ減点する」との決定が言い渡された。
 審判との話し合いが物別れに終わった後の荒川監督は、表情には出さないが、憤りの色が露だった。


 「俺のような“異端児”をつくらないためには、ルールの言葉じりをしっかりしなくちゃいけない」
 荒川監督の語るように、確かに、男子新体操のルールには曖昧な表現が多い。ただそれだけに、かいくぐれる可能性と同じだけ、言いくるめられる可能性もある。実は今回のことも、ユニフォームを作る段階で「危ういかな」という思いがよぎりもした。いくら許可をとったからといって、まったく予期しなかった事態ではなかった。だから、彼の憤りの原因はまた別のところにある。



 審判との話し合いで争点になったのは、裾の二重構造についてだ。「裾に乱れの出ないよう、工夫」するように指示したのは審判側だったが、それが「こういうもの(二重構造)だとは思わなかった」というのが言い分だった。しかし、「では、どういうものなら良かったのか」という問いに対して、回答はなかった。

 話し合いの後にとりなすように「来年は(ユニフォームに関する)ルールを改定するから」と進言されてなお、監督の憤りはおさまらなかった。
「俺は今のルールと勝負してる。(来年、すべてに許可が下りてからでは)リスクを背負った意味がない」
 この試みはルールが整っていない今年のうちに、青森山田が単独でやることに意味があった。そうでなければ、インパクトなど生まれようもない。

「俺はルールブックと勝負して負けた。でも、納得した負けじゃない」
異端児を黙らせるには、それなりの説明が要る。競技を束ねるものは、その責務を果たすべきである。
 結局、インターハイで青森山田は従来のユニフォームで演技を終えた。
 
 試合終了直後、納得のいかない形で試合を終えたことにより、監督は声をかけるのもはばかられるほどに沈んで見えた。あれだけの窮地に追い込まれながら打ち出した打開策が、こんな形でふいになったのである。この件にはもう辟易しただろうか、と思った。





 だが、その数日後。
「オレはまだ諦めてないよ。国体、ジャパン(全日本選手権)で着たいのさ。」

 電話口での彼は、いつもの気さくな、でも自信にあふれた口調だった。
大丈夫、異端児の瞳はまだ輝きを失っていない。



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posted by reportage |13:17 | 青森山田高校 | コメント(5) | トラックバック(1)
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参加者インタビュー第22弾〜男子新体操をもっとメジャーに! 【夢×挑戦応援団】

「参加者インタビュー」第22回は、"男子新体操"への挑戦について伺いました!

2007-09-28 10:30 | 続きを読む
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青森山田高校 vol.4-異端児-(後)

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初めてコメントさせていただきます。実は娘が山田の新体操部なのです。いつも男子の写真が出ていると、たまにチラッと写っている女子の中に娘が居ないかと探すことを楽しみに拝見させていただいています。
昨日、全日本新体操選手権での団体予選の応援に行きました。ユニフォームは従来の形でしたが、インターハイでの話があったので気にしていたのですが、夜になって友人から今日の団体決勝であのユニフォームを着たためか減点が大きかったと聞きました。荒川先生はとうとうやったんだ!減点覚悟で決断したのでしょうか?・・・色々と考えると胸が熱くなり、涙がでてしまいました。教えてくれた友人は、他校の男子新体操部の母でしたが、減点されてしまったけれど、とてもかっこ良かったと言ってくれました。

posted by ワルツ | 2007-11-26 00:57

ようやった!

コメント投稿者ID :

JAPANすごかったですね!予選から決勝まですべて見ました。青森山田の決勝でのユニフォームすごくよかったですね。演技もすごかったし。ただ、なぜユニフォームのせいで減点は納得いきませんでした。青森山田の後のチームの演技がいくら素晴らしいとは言え、何かJAPANを観戦に行ったわりにはその後の演技が・・・
どのような事が組織の中であったのか知る余地もありませんが、このままの旧態依然の体勢だと国体種目としての新体操がなくなるという実態も分かるような気がしました。選手の皆さんが存続のために一生懸命、存続の署名をお願いしている姿を見て一観戦者として署名させていただきました。新体操、JAPANに懸けた選手の気持ちがすごく感じられました。頑張ってください。ファンとして応援します。

村田、横地両選手の引退セレモニー、とても感激しました。今後とも日本の新体操のため指導をお願いします。

posted by パンダパパ | 2007-11-27 20:16

青森山田高校 vol.4-異端児-(後)

コメント投稿者ID :

>ワルツさん
コメントありがとうございます。
娘さんが山田で新体操部なんですね!インハイ前や国体前、女子の方も少し見ていたのですが、時には涙を流しながら、すごくがんばっていました。
今回の青森山田と荒川監督の決断は、本当に色々な想いが交錯した中での、部の全員で下した決断でした。どちらを選んでも、「英断」と呼べるものだったと思います。

今後とも、新体操男女の応援を宜しくお願いします!

posted by 管理人 | 2007-12-13 10:30

青森山田高校 vol.4-異端児-(後)

コメント投稿者ID :

中学2年の僕も新体操をやっています。ほんとに新体操って楽しいですよね。練習の時でも一緒にやっている、仲間にお互い注意しながら笑ったり怒ったりで楽しく練習しています。タンブリング練習ではかなり苦戦してるし、団体のブンレンでは、なかなか動きが、ハモらないし、とても難しい競技です。でも、それが楽しいのです。倒立で一人だけ落ちて、監督の先生に怒られたりしてるけど、やめたいと思ったことはありません。なぜなら、新体操が楽しいからです。これから高校になっても新体操を続けていたいです。そして、半田中学校を倒して、全国に行って、全国優勝をしたいです。

posted by 俺も新体操やってます | 2008-05-24 22:11

青森山田高校 vol.4-異端児-(後)

コメント投稿者ID :

あと2005年の元曲の名前を教えてください。

posted by 俺も新体操やってます | 2008-05-24 22:14

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