2007年04月08日
青森大学 vol.1 -ウサギとカメ(前)-
「ウサギとカメ」という昔話がある。 二匹が競争をして、ウサギが昼寝している間にカメがゴールする、というあの話だ。 この話で、カメがウサギに勝てた理由はなんだろうか。 ウサギが昼寝してしまったから?カメが休まず進み続けたから? 私はその答えを、青森大学の中に見つけた気がした。 2002年、東インカレ(インカレの東日本予選)に突如として姿を現した青森大学は、まだ大学のジャージすら揃っていない状態だった。 しかし、それが初出場のインカレでいきなりの団体優勝。 翌年はインカレに続き、国内最高峰の大会、全日本選手権でも団体優勝。それまでの福岡大学VS国士舘大学の構図に割ってはいるどころか、いきなりそれを飛び越えてしまった。 まさに「彗星のごとく」とか「青天の霹靂」という言葉がぴったりくるこの出来事は、男子新体操界に衝撃を与えた。そして2006年の全日本選手権まで、青大はその王座を守り続けている。 これだけの実績を知れば、誰だって青大の強さの秘訣を知りたがるはずだ。 私ももちろんそのひとりであり、それを知るべく、3月上旬、取材に訪れた。 青大の部活に関して、まず始めに驚かされたことがひとつ。青森大学には練習場がない。正確に言えば、大学に新体操部の練習場所が、ないのである。 そのため、練習は近くにある青森山田高校の練習場を借りて行われる。 この日、青大の選手が体育館に姿を現したのは昼前ころ。高校生がまだフロアを使用しているので、その間、同体育館の2Fテラスで走り、柔軟を行う。 決して広いとは言えないスペースを何往復もし、体を温める。柔軟では、中田監督自らが選手の足上げを行う場面もあった。 大学生ともなると、監督が練習から指導する、というのは珍しい。だいたい演技ができあがってから、「通し」練習を見てもらう程度だろう。そんな中、まだまだオフシーズンのこの時期に、アップから選手の傍らに立つ中田監督の姿は意外な光景だった。![]()
高校生の練習が終わった13時半頃、フロアに入ると早速タンブリング練習が始まる。と、私は思わずびくりとしてしまった。 空気が、変わったのだ。 これは本当に、大げさな表現ではなく本当に、青大の練習が始まった瞬間に、確かに空気が変わるのを感じたのだ。 まず、練習中に出す「ファイトー!!」の掛け声が格段にデカイ。うるさいほどのその声で、タンブリング練習の間、山田の体育館からは掛け声以外の物音はまったく聞こえなくなる。 しかしそんな表面的なことより何よりも、練習に取り組む姿勢が違う。 倒立前転に始まり、飛びこみ前転、前宙、バック転。やっていることは高校生のそれと大差ないのだが、全員が一斉に行うそれは、美しさ、ダイナミックさ、どれをとっても格段で、圧巻である。 しかしそれ以上に感じたのは、選手たちのそのひとつひとつに取り組む真剣さが、明らかに違うということ。選手ひとりひとりが、この練習の貴重さを知っている。そんな感じだった。![]()
実際のところ、練習時間はかなり限られている。 平日の練習であれば、授業が終わった選手から体育館に集まりだし、全員集合するのがだいたい17時。それから高校生の練習が終わるまで、体育館2Fのテラスでアップなどをして待つ。19時頃、高校生の練習が終わるとようやくフロアに入れるのだが、練習は21時か、遅くても22時には切り上げられる。個人、団体それぞれの練習があるから、各1時間ほどの練習しかできない。 「ファイトーー!!」絶えず響く掛け声の中、一本一本ていねいに行われるタンブリング練習は、大会会場のような、ピリリとした適度な緊張感をはらんでいた。 「みんな、スワンのときの手、気をつけていきましょう!」 そんな中、皆に注意を呼びかける選手がいた。新4年生の誰かかと思えば、呼びかけをした佐藤聖(ひじり)は、まだ1年生であった。こういった場面は、青大ではよく見られる光景だ。 「フロアに入ったら、学年は関係ないので。考える人は、多ければ多いほど良い」。同じく1年の高岩は語る。「先輩も嫌な顔はしない」そうだ。 昨年、団体のチームキャプテンを務めた斉藤も「強いチームづくりには必要なこと。互いに指摘しあえないと、強いチームはつくれない」と語る。創部わずか6年目のこの部には、体育会的な悪い慣習はない。 タンブリング練習の後は、鹿倒立で7カウント、静止するのを10本。倒立の状態で1分間キープを1本。倒立でフロアのまわりを1周。フロアでの練習は以上で、わずか1時間ばかりのことだった。そしてその間ずっと、傍らには中田監督の姿があった。![]()
訊けば、監督は会議などがある日以外はほぼ毎回、練習に顔を出すという。取材をしていてあらためて感じるのだが、選手に休みがないということは当然、監督にも休みがない、ということだ。青大の部活は毎週火曜が定休だが、その他のまとまった休みはお正月とインカレ後のお盆休みしかない。 「部活は毎日同じことの繰り返しですけど、来るの嫌になったりしないんですか?」 大学の監督がここまで練習に顔を出す、というのがどうしても珍しく感じてしまい、ついたずねてしまった。 「行きたくない日もあるけど、使命感があるから」 キッパリとした口調だった。私はこの言葉のもつ意味が、私が考えている以上に大きなものであることを、取材を通して知ることとなった。![]()
男子新体操 用語解説、大会日程など→http://reportage.web.fc2.com/
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posted by reportage |18:41 |
青森大学 |
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青森大学 vol.1 -ウサギとカメ(前)-
コメント投稿者ID : NID00012498
2009全日本の動画見ました。泣けました。
繰り返し繰り返し何度も再生しても涙が溢れてきます。
体操素人の自分ですがその理由を考えてみました。
一つ目は、選曲の素晴らしさ。インカレの演技も見ました。構成は似ているが、凄いなと思いこそすれ涙が出ることは無かった。この音楽との組み合わせで「芸術」の域に昇華したのではないでしょうか。
二つ目に、動と静の対比の美しさ。"静"が"動"を引き立てて、「見る演技」から「魅せる演技」に飛躍しています。
動は勿論ですがこの"静"が素晴らしく心を引きつけられます。
三つ目は、場の静寂さ。特別な事情があったようですが、結果として「競技」や「演舞」を超えて「奉納」に近い神聖な思いを感じました。(上手く表現できませんが)
そして最後に、選手一人ひとりの安定した技術の高さ。バラつきの無さは安心して見ていられるだけでなく、選手層の厚さも透けて見えます。
30万件のアクセスは突出しており、世界中に感動を与えたのでしょう。
素晴らしい演技ありがとうございました。
追)ドイツ遠征の動画でインタビュー時の選手の顔。普通のお兄さん達で一層好感持てました。(笑
posted by TAK^2 | 2010-07-03 10:03
コメントありがとうございます
コメント投稿者ID : reportage
コメントありがとうございます。
おっしゃるように、“静”と“動”だとか、“魅せる”ことだとか、青森大学は監督、選手が一貫して本当に緻密なレベルまで計算しているチームでした。そうした裏側を知らない方が見ても伝わるほどのものだったのだと、コメントを見て改めて感心してしまいました。
それからやっぱり、普段の姿は全員が、好感の持てる素敵なお兄さんでしたよ(笑)体操に入る前に、人間としての教育がしっかしなされている、素晴らしいチームでした。
posted by 管理人 | 2010-07-10 11:30
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