2007年12月19日

高橋の決意

「絶対、あきらめなければ夢はかなうんだという走りを見せる」。使い古された言葉でも、それが彼女の口から発せられたのなら、それは多くの人の胸に響く。そして、それを体現する勝負の場所がついに決まった。
 北京五輪で2大会ぶりの五輪出場を目指す高橋尚子が、その選考レースに、3月9日の「名古屋国際女子マラソン」を選んだことが分かった。国民皆が注目するレースになることは間違いない。だからこそ、自らの走りで見る人に何かを伝えたい。思えば、これまでも高橋の走りは多くの人の胸に刻まれてきた。シドニー五輪での金メダルの快走は国民に喜びと感動を与えた。そして、まさかのアテネ五輪出場を逃した2003年の東京国際女子マラソンからの再起を期した、2005年の同レースでは見事に復活の優勝。屈辱を振り払ったあの走りは夢を持つことの大切さを教えてくれた。そして2008年名古屋でも必ず・・・。
 しかし、現実は厳しい。五輪切符獲得のラストチャンスとなる名古屋には、ベテランの弘山やアテネ7位の坂本ら、有力選手がこぞって参戦することが濃厚だ。マラソン8勝の実績を誇る高橋でも一筋縄ではいかない。また、最大のライバルも現れた。奇しくも、この日、トラックの日本記録ホルダー・福士加代子のマラソン転向と1月の大阪国際への出場が発表された。マラソン五輪代表の枠は3つ。だが、すでに世界陸上で銅メダルを獲得した土佐が代表に内定しており、先月の東京国際を高記録で優勝した野口みずきも代表濃厚。実質残る枠は1つとなる。仮に大阪で福士も含め、日本人選手が好タイムで上位に食い込めば、高橋の立場はますます厳しくなる。
 それでも、やるしかない、走るしかない。名古屋はトップランナー・高橋尚子の集大成になるに違いない。「夢をかなえるために・・・」。五輪最後の挑戦へ向けて、高橋の決意は固まった。}

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2007年12月15日

テーマトーク

 「過去罰するより未来へ」
 アメリカ・大リーグに所属する選手の過去の薬物使用を調査した、「ミッチェル・リポート」なるものが、公開された。公開された実名リストには、あのロジャー・クレメンスやアンディ・ぺティットなど、輝かしい実績を残した名選手や現役選手の名がずらりと並んでいる。驚くことに、その中には、日本球界で活躍する、元西武・カブレラや阪神ウイリアムスの名もあった。真偽は定かではない。もちろん、これが真実だとすれば、プロとして、アスリートとして薬物使用は、あるまじき行為である。
 しかし、今、過去の事実を掘り起こし、球界に傷を付けることよりも、まずはしっかりとした薬物違反の規定を作ることが先決ではないか。メジャーでは禁止薬物使用を定めたのが2002年で、検査開始も2003年と、薬物対策の導入が遅かった。そのため、全てがそうではないと思うが、禁止薬物と分からず、トレーナーなどの助言を受けて、薬物を使用してしまった選手も、少なくないのではないか。まずは、禁止指定薬物の周知をアメリカで徹底する、抜き打ち検査の回数を増やすなど、未来のスポーツ界を守ることが、蔓延するドーピングの歯止めにはならないか。


 「夢を語って何が悪い」
 多くの人に夢を与える、プロ野球選手が夢を語って何が悪い。
 阪神タイガースの藤川球児投手が、来オフにもメジャーに挑戦する意思があることを、契約更改の場で球団に伝えた。藤川は、「気持が抑えきれなくなった。思いを隠して来年、プレーできない」と突然の宣言に至った真意を語った。これには賛否両論あろう。実際にタイガースで頭角を表したのは、ここ3、4年で、ファンや球団にとっても、最低FA取得となる2012年まではタイガースの選手として、プレーしてもらいたいところ。しかし、藤川自身が、メジャーリーグ挑戦を堂々と表明できる程の実力をつけてきたことも確かである。それが彼の「夢」なら、僕は支持したい。アスリートとは、自らの成長と共に日々変化していく向上心がなければ、成熟はしない。国際舞台を経験し、藤川の目指すべきものも、いつしか、海の向こうのマウンドに変わっていたのだ。避けるべきは、より高みを目指す藤川がモチベーションを失うことだ。
 しかし、それも来年は心配いらない。「阪神で来年は絶対優勝したい」。藤川の心はすでに来期に向いている。夢への思いも一時凍結を宣言した。プロ野球の頂点に立って初めて夢への挑戦権を得る。そう信じて、藤川は来年も甲子園のマウンドに立つ。 



 「五味よ、やれんのか?」
 夢の大連立で、今年の大晦日のビックイベントを彩る、陣容が固まりつつある。しかし、あの男の名前がまだない。そう、その男の名は五味隆典。PRIDEライト級で圧倒的な強さを誇った、日本軽量級のエース格。かつて五味は、大晦日のリングで、こう高らかに宣言した、「大晦日はKOでなきゃ」。こんな言葉をリングで声高に叫べる日本人がいるだろうか。常にKO、一本を狙うファイトスタイルはファンから絶大な支持を受ける。しかし、現時点で、彼の大晦日参戦を有力視する話は聞こえてこない。本人は、リングに上がりたくて仕方がないはずだ。なのになぜか。一部報道では、来年3月に旗揚げする、新団体のエースとして、参戦する話も浮上している。
 それでも、K-1、PRIDEの世紀の合体が実現し、川尻、石田、青木とかつてのライバルが大晦日参戦を果たす中で、リングに彼がいないのは、寂しすぎる。類まれな打撃センスで、強豪外国人を次々にマットに沈めてきたあの強さ。最後まで、信じている。今年の大晦日、もう一度、五味が、リングであの言葉を叫んでくれることを。

 
 

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2007年12月10日

まだやれる

 ガードしているにもかかわらず、日本期待の新星はマットに崩れ落ちた。全盛期を彷彿とさせる強さ。ピーター・アーツがトーナメントを盛り上げた。8日に行われた、「K-1GP2007決勝戦」は、無敵の王者・セーム・シュルトの前人未到の大会3連覇で幕を閉じた。しかし、大会で輝いたのは、シュルトと決勝戦を戦った、アーツだった。
 初戦は日本のエース候補・澤屋敷との対戦。「玉砕覚悟」で望む若武者に、アーツは構えるのではなく、圧力をかけ、向かっていた。開始早々のハイキック。ガードしたかに見えた澤屋敷が力なくダウンした。ガードの上からも響く、脅威の破壊力を見せつける。何とか立ち上がった澤屋敷だが、アーツは休むことなく、フィニッシュに持ち込む。ローキックとパンチのコンビネーションで、追い込み、右ストレート一閃。圧倒的な力の差を見せつけ、アーツは幸先良いスタートを切った。
 しかし、準決勝のレミー・ボンヤスキー戦は死闘となる。レミーはこの日絶好調だった。因縁の対戦として注目された、一回戦のバダ・ハリ戦ではローキックでハリの足を破壊。完勝と言える内容で、アーツ戦を迎えた。序盤はアーツペース。重いローキックで、レミーの足を止めにかかる。しかし、2R以降は体力で勝るレミーが、スタミナが切れかかるアーツに打撃を次々にヒットさせ、形勢は逆転したかに思えた。それでも、ここからがアーツの真骨頂。最後の力を振り絞り、再び打撃をレミーにヒットさせる。最後は、若いレミーがスタミナ切れを起こし、ゴングが鳴った。判定は3-0。アーツが2年連続で決勝に進出した。決勝では、シュルトのジャブに苦しみ、最後はバランスを崩した際に、足を痛め、無念のKO負け。4度目の栄冠は成らなかった。それでも、テレビ解説の魔裟斗が、「シュルトに勝てるのは、アーツだけ」と言ったように、この日のアーツの強さと存在感は際立っていた。
 今大会は、チェ・ホンマン、澤屋敷、バダ・ハリと、ここ数年で頭角を現してきた新世代ファイターが、バンナ、アーツ、レミーという旧世代に敗れた。それも、すべて完敗と言っていい。まだまだ、主役は譲れない。アーツは試合後に言った、「少なくとも、あと3、4年はやっていけるよ」。

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2007年12月07日

決戦迫る!!

 明日に迫った、「K-1ワールドGP2007・決勝戦」。これまで、幾多の名勝負を生んできた、激戦のトーナメントを制するのは、誰になるのか。希望的観測も含めて、展望する。
 何といっても、大本命は史上初のGP3連覇を狙う、セームシュルトだ。派手さはないものの、これほど、「敗戦」が想像できないファイターは、シュルト以外に見当たらない。この3年間で、チェ・ホンマンやピーター・アーツに敗れてはいるものの、いずれも完敗ではなく、僅差の判定によるものだ。前蹴りで相手の前進を封じ、対戦相手が「レンガで殴られているみたい」と評する、破壊力抜群のパンチで相手を沈めるのはシュルトの必勝パターンだ。安定感抜群の絶対王者は一回戦でグラウベ・フェィトーザと対戦。過去の対戦でも、シュルトがKO勝ち。極真空手界の期待を一身に背負う、グラウベには、厳しい戦いとなりそうだ。
 対抗には、バダ・ハリとピーター・アーツを挙げたい。ハリは今年のK-1重量級戦線で最も躍進したファイターと言える。初のタイトルマッチ形式が導入されたヘビー級王座決定戦では、日本の藤本に圧勝。王座戦前の、挑戦者決定戦でも、若手世代のエースの座を争う、カラエフを一撃KOしている。かつては、対戦相手への過度な挑発や会見での乱闘など、リング外での言動で注目を浴びていたが、そのキャラクターの一人歩きは、もはや今のハリに必要ない。ヘビー級とは思えないスピードある打撃がハリの魅力。今年はローキックの威力も以前より数段アップしているように見える。たまに見せる、壮絶なKO負けも、ご愛嬌。舌戦を繰り広げている、レミー・ボンヤスキーとの対戦も興味深い。レミーは穴が少なく、完成度の高い、まさしく正統派のファイター。ハリとは対極に位置するかもしれない。いずれにせよ、壮絶に倒し、壮絶に散る紙一重の戦いをハリには期待したい。
 近年、熟練味を増してきているのが、ピーター・アーツだ。GPを3度制している、名王者も一時は不振に陥った。しかし、ここ数年のGPシリーズでは持ち前の、重いパンチとキックのコンビネーションのキレが戻り、鳴りを潜めていた、伝家の宝刀、ハイキックも復活。ケガでトーナメントから途中離脱することも、多いが、コンディションさえ整えば、優勝候補筆頭に挙げてもいいだろう。一回戦では、日本の秘密兵器・澤屋敷と対戦。新世代に主役を譲るつもりはない。

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2007年12月06日

濱ちゃん、打ったれ!!

 初めて背負う。背番号は7。まさに心機一転だ。先日のトレードで、阪神からオリックスへ移籍することが決定した濱中治が5日、オリックスへの入団会見を行った。彼がこれまで歩んできた厳しい道のりは、もはや言うまでも無い。未来を嘱望されていた大砲は、ついに阪神では花開かなかった。そこに極めつけのように通告された、オリックスへのトレード。ファンにとっても、本人にとっても、この別れは寂しすぎる。
 しかし、これはチャンスでもある。チームが変わり、阪神在籍時とはまた違った気持ちで野球に取り組める。さらに、外野手の層が薄いオリックスでは十分にレギュラーを狙える。肩に不安を抱えるが、DHといううってつけのポジションもいざとなれば使える。
 不振に故障が重なり、今季は主に代打要因だった。その鬱憤を晴らすべく、とにかくオリックスでは思う存分バットを振ってほしい。「長打力と本塁打を見て欲しい」。入団会見で本人が宣言したように、これが濱中の一番の魅力。「濱ちゃん、打ったれ!!」。一ファンとして、彼の第二のスタートを応援したい。

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2007年12月04日

一球一瞬 北京五輪野球アジア地区最終予選編

  『GREAT JAPAN』 


「皆が中を向いて、胴上げしてるでしょ」。テレビ解説を務めた、野球評論家の東尾修氏のこのコメントが全てを物語っている。「絶対に五輪の切符を勝ち取る」。歓喜の胴上げは、裏方も含め、星野JAPANの全てのメンバーが、このひとつの目標に向かって一致団結したことの表れだった。
 台湾での3試合。選手は素人には予測もつかない程の、重圧や緊張を背負って試合に臨んだに違いない。しかし、選手たちはその重圧を力に変え、全力で勝利に邁進した。
 「スモールベースボールと言うけれども、選手たちはグレートなハートを持っている」。星野監督は最後まで選手を信じ続けた。七回表の大村のスクイズの場面。無死満塁でのスクイズは、本塁がフォースプレーとなるため、難しい。ましてや、直前にエースのダルビッシュが逆転の2点本塁打を浴び、窮地に追い込まれていた。失敗は許されない。同点を狙うこのスクイズを敢行するサインを出した、監督の勇気はグレートだった。そして、大村はそれを難なく決めるグレートプレーをやってのけた。
 道は開けた。しかし、この達成感はすぐに昇華することだろう。最大の目標は来年の北京五輪で金メダルを獲得することだ。大きな勇気と使命を持つ指揮官が率いる、グレートなJAPAN戦士たちの北京での戦いを早く見てみたい。おめでとう!星野JAPAN!

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2007年12月03日

一球一瞬 北京五輪野球アジア最終予選編

 『唯一のゲッツー』


 言葉にするまでもない。鬼気迫る表情で走り、ヘッドスライディングする4番新井、川上、岩瀬のピンチを切り抜ける気迫のピッチング・・・。台湾の地で一つになった星野ジャパンが、宿敵韓国に辛くも勝利した。
 ピックアップすべき場面はいくつもある。稲葉の決勝点を呼び込んだ、勝負強いバッティングや、再三のピンチを切り抜けた、川上、岩瀬の力投。さらには、その投手陣を引っ張った、キャッチャー阿部の強気のリードなど。
 それでも、目立ちはしないが、このゲームのひとつの分岐点となったプレーが他にあった。それは、両チームの二塁手の守備。一回表、先頭打者を空振り三振に打ち取り、幸先良いスタートを切ったかに思えた日本の先発・成瀬。しかし、二番のコ・ヨンミンに甘く入ったチェンジアップを叩かれ、先制点となるソロ本塁打を浴びる。これで動揺したのか、若き左腕は三番・イ・テクソンには四球を与え、迎えるは韓国の主砲・キム・ドンジュ。先制点を許し、もう一点もやれない厳しい状況で、キムが放った強烈な打球。二塁手の西岡は手前でショートバウンドする難しい打球を正面で処理し、落ち着いて二塁へ送球。川崎(二塁)、新井(一塁)と渡り、併殺打。これで、韓国へ傾きかけた悪い流れを断ち切った。
 そして二回表、日本は二塁打の新井を三塁に置き、二死から大村がレフト前に同点タイムリー。続く9番・森野の場面。一回表の日本と同じく、韓国はここで打ち取り、同点のまま終えたいところ。しかし、森野の放ったハーフライナー気味の打球を、先ほど本塁打を放った、二塁手コ・ヨンミンが弾き、エラー。逆転となる二点目が日本に転がりこんだ。打球速度は違えど、この打球も一回の西岡と同じく、グラブに届くか届かないかの所でバウンドするものだった。戦前から、イレギュラーしやすく、打球処理が難しいと言われきた土の内野グラウンド。人工芝全盛の日本の球場でプレーする日本の選手は、本番前の練習を入念に行い、土用の守備に対応した。韓国の選手ももちろん、細心の注意を払い、打球を処理していただろう。しかし、結果的に4対3のスコアで、このエラーで失った一点は大きかった。逆にミスすれば、試合の主導権を韓国に握られかねない場面で西岡は、落ち着いて処理し、二つのアウトをもぎ取った。この日唯一の併殺打だった。
 

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