2008年06月27日

取り戻した「自信」、掴み取った「切符」

 喜びを抑えきれず、関係者が座るスタンドにダッシュで駆け寄った。これまでの幾多の苦しみがあったからこそ、弾ける笑顔はより一層輝いていた。日本陸上選手権・女子1万㍍は渋井陽子(三井住友海上火災保険)が優勝し、同種目の北京五輪代表に内定した。
レースは稀に見る激戦となった。五輪A標準記録突破者が多数参戦する中、渋井は序盤から積極的に先頭集団を引っ張り、ペースを作った。大本命と目される福士加代子、赤羽有紀子らがそれに続く。
 渋井にとっての勝負所は残り2千㍍。2大会連続の五輪出場を狙う福士が一気にロングスパートをしかけ、2人を一気に突き放しにかかった。それでも、渋井は必死に腕を振り、福士に食らいついた。ラスト1周勝負では、先に仕掛けた赤羽をゴール前で見事にかわし、三つ巴のデッドヒートを制した。
 屈辱にまみれて、渋井の2008年は始まった。マラソンでの五輪出場を狙い出場した、昨年11月の東京国際女子マラソン。アテネ五輪金メダリスト・野口みずきとの一騎打ちで注目されたが、30キロ地点で大失速。結果は7位の惨敗だった。敗戦のショックから、マラソンはもちろん、トラック競技での五輪出場も絶望的かと思われた。
しかし、渋井は這い上がった。4月の兵庫リレーカーニバルで、五輪A標準記録を突破する31分19秒73をマークし、今日のレースに五輪代表の望みをつないでいた。
 一度は失いかけた自信を渋井は取り戻したのだ。さらに、渋井が手にしたのは「初の五輪切符」という何物にも変えがたい頂点への挑戦権。「1度は出たいと思っていたので、(代表内定を)取れて良かった」。試合後のインタビューでサラリと言ったこの言葉が渋井のこの日の喜びの全てを物語る。五輪はもちろんのこと、それに次ぐ規模の「世界陸上」にも渋井は1度(2003年パリ大会・1万㍍)しか出場していない。マラソン(2004年当時)、1万㍍で日本記録を打ち立てたるも、大舞台にはことごとく見離されてきた渋井の初の五輪。自信を取り戻した渋井にもう怖いものはない。真夏の北京ではこれまでのうっぷんをすべてぶつけてくれるに違いない。しかと見届けたい。

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2008年02月16日

「地味」では終われない

 地味な印象は、シーズン大活躍へのカモフラージュか。はたまた本当に地味なのか。
 2月1日に12球団一斉にキャンプインしたプロ野球の春季キャンプは、早くも折り返し。我らが阪神タイガースも今週で沖縄・宜野座キャンプを打ち上げ、来週からは高知県・安芸市に移動して、二次キャンプが始まる。今キャンプは、FAでの大砲・新井の補強やそれに伴う、新井と今岡とのポジション争い、またトレードで獲得した金村らが加わり熾烈を極める先発争いなど、見所は多い。その中でも個人的に最も注目していたのは、新外国人として獲得したルー・フォード外野手とスコット・アッチソン投手両助っ人外国人のキャンプでの様子だ。
 結論から言えば、フォード、アッチソン共に、スポーツ紙でも大きく扱われることは少なく、ここまでは地味な印象。それは二人のプレースタイルが大きく影響しているのかもしれない。
 フォードは俊足巧打の外野手。ガッツ溢れるプレーが信条だ。大砲候補ばかりをこれまで補強してきた阪神には、珍しいタイプの助っ人だけに注目された。しかし、キャンプの半分を終えたここまでで、一番目立ったのは、守備練習でフェンスに激突、胸を打撲し、練習を2日連続で休んだということぐらいか。期待される打撃練習では、中距離打者の宿命か、鋭いライナーを連発するも、ニュースバリューの高い、「さく越え」は一桁台にとどまっている。調整不足の感は否定できないが、周囲には「実戦向き」の声も多く、オープン戦期間での巻き返しに期待したいところだ。
 一方のアッチソンは、安定したコントロールと多彩な変化球が売りの技巧派投手。昨年の「汗かき大王」ジャンや、雄たけびを上げて投球するボーグルソンに比べて、キャラクター性は弱く、こちらもフォードと同様に、前半のキャンプでは注目すべきトピックは少なかった。ただ、フォードとは違い、こっち、いやアッチはここにきて首脳陣の評価が高まってきている。14日のフリー打撃では出所の見にくい投球フォームに加え、低めに制球されるストレートと変化球で、赤星らを翻弄し、「虎のマダックス」の片鱗を見せ付けた。先発候補として期待されるだけに、「アッチソン」という名前のインパクトに負けないぐらいの快投を見せてほしい。
 ただ、やはり、どうしても「地味」な印象は拭えないこの二人の助っ人。16日には日本ハムとの練習試合でフォードが一足早くデビューする。アッチソンも21日の紅白戦に登板を予定している。これから多くなるオープン戦、さらにはシーズン開幕。「地味」なままでは終われない。いや、終わっては困る。秋には、派手な成績でイメチェンしているルーとアッチに違いない。
 

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2008年02月15日

夢の続き

 夢の続きが始まるー。 「HERO´S」を主催するFEGと、昨年大晦日に「やれんのか!」を開催した旧プライド制作スタッフによる「大連立」の完成形、総合格闘技新イベント、「DREAM」の発足が13日発表された。
 旗揚げ戦では、73キロ以下のライト級トーナメントが開幕。一回戦8試合が行われる。会見では、いち早く目玉カードとして、「青木真也対JZカルバン」のカードも発表された。 大連立という大きなテーマのもとに設立された、新団体の設立。ファンにとっては、待望の格闘技交流戦が開戦する。
 ドーリムマッチを彩る選手はもちろんだが、個人的に注目するのは大会のプロデュースを担当するのが、旧PRIDEスタッフ中心になることだ。大会スタッフはもちろん、選手と勘違いするほどのヘビー級の体格の持ち主のリングアナのケイ・グラントや「巻き舌魔術師」こと、入場の選手名アナウンスを担当するレニー・ハートといった名脇役も健在だ。PRIDEが常に実力、人気両面でHERO´Sや日本の他団体の追随を許さなかったのは、ヒョードルら世界最高峰の選手をラインナップに揃えたことはもちろん、選手が体感するほどの緊張感をファンにも感じさせてくれる大会演出の面での質の高さにもある。その象徴とも言えるのが、元・フジテレビの佐藤大輔氏が制作する選手の入場前に流れる演出映像、いわゆる「煽りV」だ。それは、過去の大会のどの試合のものが一番の名作か、インターネットの掲示板で激論が交わされるほど。「DREAM」でも佐藤氏によって「煽りV」が制作されることが決定的だ。
 このように、「DREAM」の大会色は確実にPRIDE色が濃くなることは間違いない。ただ、「DREAM」の主催はFEG。このことから、選手のブッキングだけPRIDE側に任せて、大会運営もFEGが担うことも考えられた。それでも、FEGはこれまで一貫して「本物の戦い」を提供してきたPRIDEに大会のすべてを任せた。両団体の有力選手が一同に会するイベント。PRIDEが標榜してきた実力重視の最高峰の戦いを見せて、「一番強いのはだれか?」をファンは知りたい。それが「大連立」の究極のテーマだからだ。
 注目の旗揚げ戦は3月15日。「DREAM」はファンの前にどんな夢の続きを見せてくれるのか。日本の総合格闘技界は新たな局面へと移る。
 

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2008年02月14日

RESTART

 沈黙を破り、彼が動き出した。その男、PRIDEライト級戦線で、トップを張り続けた二冠(ライト級王者、ライト級GP王者)王者の五味隆典。
 待望の復帰戦といっていい。2007年、彼がリングに上がったのは、一度きり。それも、アメリカで行われた「PRIDE.33」でニック・ディアスにまさかの一本負けを喫して以降、一年以上リングから遠ざかっている。一時は「絶対王者」としてPRIDEで10連勝も記録した男の存在感はこの一年で確実に薄くなった感がある。「大晦日はKOじゃなきゃ!!」とリング上で叫び、毎年出場を続けてきた大晦日興行にも参戦することなく、年末はアメリカ・UFCの試合会場に表れ、電撃参戦も噂された。
 しかし、そんな五味が新しいスタートとして、選んだ場はやはり日本。それも、新団体として旗揚げされる「戦極」。対戦相手には、K-1MAXやHERO´Sにも参戦経験のあるドゥエイン・ラドウィックを五味自らが指名した。ラドウィックは、近年は精彩を欠いているとはいえ、かつては武田幸三をKOし、総合ではジェンス・パルバーや須藤元気にも勝利している、軽量級屈指のストライカーだ。スリルある打撃戦が予想されるが、五味は「打撃の選手なので打ち負けないようにして、KOを狙っていきます」と殴り合いは望むところだ。多くのファンも、「火の玉ボーイ」の異名そのっままの真っ向勝負を望んでいるに違いない。さらに、「戦極」参戦について五味は「先駆者になっていけたらなと。この階級を盛り上げていきたい」と早くも、エースらしい力強い言葉を口にした。
 RESTART・・・・。まさかの敗戦は昨年の二月。あれから確実に時間は進んでいる。しかし、時の流れは周囲だけ。五味本人の中で、まだ時計はあの時から止まったままなのかもしれない。それでも、何が必要かは分かっている。3月5日のリング上、己の拳で敵をマットに沈めた瞬間。止まっていた時間は再び動き出す。それは五味の「チャンピオンロード第2章」の幕開けでもある。



 

posted by reikun |01:25 | 独り言 | トラックバック(0)
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2008年02月13日

小国から世界へ

 連日スポーツ紙の紙面を賑わせている、プロ野球日本ハムの怪物ルーキー中田翔に負けず劣らずの「大物ルーキー」が昨日、久々に元気な姿をファンの前で見せてくれた。
 しかし、話は競馬界、それも女馬のポルトフィーノという牝馬の話。競馬界では、プロ野球の新人にあたる新馬のデビュー戦は2歳から始まる。現在3歳のこのポルトフィーノも昨年の6月の新馬戦に出走し、見事にデビュー戦を快走で飾っている。厳密に言えば、新人さんには該当しない。しかし、デビュー戦以後は放牧に出されて、昨日の京都競馬10Rのエルフィンステークスが約8ヶ月ぶりとなる2戦目の出走だった。長期のブランクを考えれば、2回目のデビュー戦といってもいい。
 そもそも、この馬が「大物」といわれる所以はその血統にある。母は「女帝」の異名を持ち、牝馬限定レースだけでなく、牡馬も混じる伝統の天皇賞・秋も制した、あのエアグルーヴ。父は、芝、ダートのG1レースで勝利し、特にダートでは無類の強さを誇った、「怪物」クロフネ。姉にはG1ホースのアドマイヤグルーヴ。さらに、跨るのは、父母の主戦騎手でもあった武豊とくれば、競馬界の「華麗なる一族」期待の看板娘に注目が集まるのも当然といえるかもしれない。
 欠点は気性面だという。そのため、昨日のレースでは、出走前に決まって行う返し馬をせずに、ゲートに入った。それが功を奏してか結局レースでは、2着を2馬身以上引き離しての快勝。桜花賞から始まる牝馬のクラシック戦線に向けて視界は良好だ。
 馬名「ポルトフィーノ」はイタリアにある小さな地方公共団体の名称が由来。将来のスターホース候補で、スケールの大きさを感じさせる馬だけに、その馬名とのギャップが何ともたまらない。小さな町からのシンデレラストーリー。「ポルトフィーノから世界へ」は少々出来すぎのタイトルだろうか。

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2008年02月12日

「感謝」の言葉

 「感謝」からその言葉は始まった。某スポーツ紙に掲載されている、中央競馬のトップジョッキー・武豊のコラムを毎週楽しみにしている。その11日付のコラムには、武のある人たちへの「感謝」の気持ちが綴られていた。それは、10日の京都競馬開催が中止になった原因であるターフに降り積もった大量の雪の除雪作業にあたった多くの人たちに対してである。
 文中では、芝の状態が悪ければ、コースが芝からダートに変更する可能性もあったが、多くの人の雪が降る中での懸命な除雪作業が、今日(11日)の開催に繋がったと、武は作業にあたった人たちの労をねぎらっている。毎レース無事にレースをこなせているのはこのように、コースの整備にあたる関係者の人たちのおかげでもある。言葉の端々から、そんな思いが伝わってきた。日本競馬界きってのトップジョッキーから発せられたこの感謝の言葉。それは、トップの立場になると、騎乗することが当たり前になり、ついつい忘れがちになりそうな、競技環境への視線でもある。
 レースには馬主、オーナー、調教師、ファンなど、関係する多くの人の夢や思いが詰まっている。除雪作業にあたった人たちの「競馬開催はもちろん、全馬が無事にレースをこなせるように」という思いもそのうちの一つ。競馬はジョッキーと馬だけの世界ではないのだ。

posted by reikun |01:04 | 独り言 | トラックバック(0)
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2008年02月04日

戦極の「顔」

 昨年の大晦日、誰もが待ち望んだK-1と旧PRIDEサイドの「大連立」で先行きが怪しかった日本の総合格闘技界に光が差し始めた。しかし、本格化を期待する大連立の「2008年構想」が今だ明らかにされない中、両団体に割って入る形で、ワールド・ビクトリーロード主催の「戦極」が3月5日旗揚げ興行を迎える。
 その戦極の「顔」とも言えるメーンイベントが吉田秀彦対ジョシュ・バーネットの対戦に決まった。共に、2006年大晦日の「PRIDE男祭り」以来1年2ヶ月ぶりのリング復帰。それでも、両者共にトレーニングはその間継続していたようで、コンディションに大きな差はなさそうだ。勝負の図式は、ジョシュ本人が3日の会見で語ったように、柔道対キャッチレスリング。ハイレベルなグラウンドテクニックの応酬となれば見ごたえは十分。テイクダウンを奪い、じわじわとポジションを固めて、締め技、十字固めでフィニッシュする吉田とは対照的にプロレスのスープレックスなど、アグレッシブに動き回り、相手にダメージを与えたところで確実に仕留めるジョシュ。「静と動」、甲乙つけがたいグラウンド勝負になることを期待したい。個人的な勝敗予想は、ジョシュ有利。ノゲイラ、ミルコらPRIDEヘビー級戦線で凌ぎを削ってきたジョシュ。ミルコにも打撃勝負を挑み、ノゲイラの寝技にも屈することは無かった。極めの強さでは吉田も譲らないが、ジョシュは運動量豊富なグラウンド戦で有利と見る。
 同イベントには、復活が待たれていたPRIDE二冠王者(ライト級王者、05年ライト級GP王者)・五味隆典の参戦も決定。こちらもカードが決まり次第、展望したい。
 

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2008年01月31日

新しいスタート

 キャプテン・中川のコメントがすべてを物語っていた。「力と力の勝負ができてよかった。これまでは、負けても心のそこから涙が出なかった。でも今回こうして涙を流せたということは、正々堂々と勝負できたということだと思う」。中川だけでなく、エース宮崎を始め、日本代表の選手の多くが流していた涙は中川と同じ意味のものに違いない。
 代々木体育館に集まった観衆は1万人以上。これまで経験したことがないであろう、大声援を背にハンドボール男子・日本代表は死力を尽くして、格上の韓国に挑んだ。得点のたびに全身を使って喜びを表現する多くの選手。相手の得点を防ぐファウルにはガッツポーズも出た。勝ちたい思いや、フェアなジャッジの元でプレーできる喜びが日本だけでなく、韓国の選手からも、伝わってきた。 ハンドボールの試合をフルタイムで観戦したのは、昨日の女子も含めて2試合の完全なる、にわか・素人が偉そうには言えない。だが、ハンドボールの試合はこんなにも迫力があり、熱狂できるスポーツなのか。こんなことを一人でも多くの人が感じたなら、負けはしたものの、試合を戦った選手や日本のハンドボール界にとっては大きな収穫だったのではないか。スポーツをメジャー、マイナーで分けたくはないが、これまで「マイナー」とされてきたハンドボール。だが、この日両国の選手が見せてくれた、ハンドボールと、それに対するファンの熱狂は、まさにメジャースポーツのそれだった。
「この日は日本のハンドボール界の新しいスタートになったと思う」。キャプテン・中川の言葉を忘れたくない。
 

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2008年01月30日

「時のスポーツ」で熱狂したい

 迫力ある接触プレーとスピード感ある試合展開は予想以上。この競技の魅力を少なからず感じた。「中東の笛」による、不可解判定が原因で予選のやり直しが決定したハンドボール。今や時の人ならぬ、時のスポーツだ。
 昨日は女子の日韓戦が行われ、韓国が日本を圧倒。これがアジア代表の実力だと言わんばかりの得点ラッシュで結局13点差をつけるワンサイドゲームとなった。それでも、このスポーツの魅力を感じるには十分な試合だった。一番に感じたのは、「試合展開の速さ」。長さ40メートルのコートの中でめまぐるしく攻守が切り替わる。日本はパスミスが目立ち、そこを韓国に確実に速攻で繋がれ、失点したが、ミスすれば瞬く間に失点を許すスリルある攻防はこの競技の特徴と言っていい。また、女子でも十分に感じる、ゴール前の激しい接触プレーは迫力十分で、格闘技の要素もたっぷり。さらに、体を投げ出しながら打つシュートは、時には華麗さ、時にはプレーヤーのゴールへの執念が見えた。どうしても得点シーンばかりが目だってしまう競技だが、逆に勝負を分けるポイントはディフェンス、失点をどれだけ防ぐかにある。昨日の試合では試合中、常に日本チームにプレッシャーをかけ続けた韓国のディフェンスが相当機能していた。
 今日は女子以上に注目を集めるであろう、男子チームの韓国戦。昨日以上のスピード感と激しさは間違いなし。「にわか」と言われるのは覚悟のうえ・・・。新たな魅力を発見するべく、また歓喜の五輪出場を見届けるべく、今日はサッカーそっちのけで、ハンドボールに熱狂したい。

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2008年01月28日

声援を力に変え

 そこに「トラックの女王」の面影は無かった。大阪国際女子マラソンで初マラソンに挑んだ福士加代子(ワコール)には長く厳しい、42.195キロだった。
 序盤はトラックで鍛えたそのスピードをいかんなく発揮。競技場を出るやいなや、早くも独走態勢に入った。スローペースで牽制し合う2位集団を尻目に、福士は20キロまで、5キロを16分台のペースで快走し、後続と最大で600メートルもの差をつける。後は野口みずきの大会新記録、坂本直子の初マラソン日本最高タイム、このいずれかを破れるか。記録だけが焦点になりつつあった。しかしその状況が、本人曰く、「目や足に違和感が出た」(スポーツ報知より)大阪城で一変する。飄々と走っていた福士の顔からは疲労が滲み、額からは大量の汗が吹き出る。見る見るうちにペースは落ち、34キロ地点でついにペースを上げ、集団から抜け出したマーラ・ヤマウチ(英国)にかわされた。その時点でもう福士に余力は残っていなかった。粘るどころか、後続に次々と抜かれ、順位も急降下。優勝したヤマウチのインタビューが始まっても、福士はまだ競技場にすら戻っていなかった。
 ペースは1キロ6分台のジョギング並。ふらつく足取りが痛々しかった。記録、順位の望みが消えた以上、レースを途中で止めてもおかしくなかった。しかし、福士は走り続ける。それは、鳴り止まない、沿道の声援が後押ししていたからだろう。多くのこどもたちの声を張り上げた声援が、福士の歩を進めた。「最後まで走りきる」。それは、レース前に、「見ている人が楽しいと思ってくれる走りをしたい」と公言した福士にとっての使命でもあった。今日の走りを見て楽しいと思った人はいないだろう。それでも、「完走したい」という思いは痛いほど伝わってきた。
 五輪代表の切符獲得は絶望的で、タイムも順位も、期待されたものとは程遠かった。しかし、それ以上に得たものがある。自分の力ではどうしようもできないことを痛感したレースで、福士は「声援を力に変え」を体現した。「楽しさ」は伝わらなくても、声援を全身に受け止めてゴールした福士に勇気をもらった人はきっと少なくない。

 福士選手、本当にお疲れ様でした。

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