2009年02月08日

「小さな箱」で見た原点

  「格闘技好き」を自認しながら、23歳で初めてのボクシング生観戦。情けない限りだ。「機会がなかった」とおあつらえむきの言い訳をしておく。場所は大阪市内の小さな多目的ホール。入ってみるとそれが予想以上に小さい。リングから最後部席まで25㍍あるかないか。ボクシングのために作られたホールでないことが功を奏して座席の視線の高さも〝リングサイド〟レベル。観戦環境は抜群なのだ。腰を下ろし、お次は観戦者の観察。これはいつも通り。スポーツ観戦にくれば、自分が必ずすることだ。こんなところにも小さな発見・・・ネタがあったりする。しかし、今日はいつもと違うことにすぐ気付く。うん、どうやら「ガラ」がよろしくない。格闘技興行なら当然?といえる客層ではあるが、会場が小さい分、殺伐感の密度が違う。見渡せば、どうやら、自分のような第3者的立場で観戦に来ている人はごく少数。地元の仲間、同級生、先輩、後輩、両親、そして「仁義なき」的な方々も・・・。そうこうしているうちに、いつの間にかいたリングアナが短めにあいさつを済ませると間髪いれずに第一試合が始まった。ちなみに、この日は全7試合が行われ、メーンは昨年世界にも挑戦したバンタム級日本2位の池原信遂とタイのバンタム級王者とのノンタイトル戦。もちろんここにその試合の分析、感想など書けたら良いのだが、自分はメーンクラスの試合を書くだけの筆力も、知識もない、いわば「4回戦ボーイ」。ここはこの日の第2試合に行われたSフライ級の4回戦についてあれこれ言わしてもらおう。
 なにせ、自分がこの日座った席がこの一戦でデビューした選手の応援団に囲まれてしまったのだ。試合前の会話をひろってみた。「なんか俺が緊張するわ」、「相手強いんかな~」、「井岡さんがセコンドついてるで。よっぽど強いんやで」。期待、不安、緊張・・・試合前から会場には人間の〝情〟が満ち溢れていた。しかし、それらを吹き飛ばすかのようにその選手は鮮烈にデビュー戦を飾った。1RKO勝利。スピード感溢れるステップで相手を翻弄する姿が印象に残った。それでも、この一戦から感じたのは何よりも「人間くさい」ボクシングの試合の魅力。対戦相手の、いわゆる「身内」ももちろん多く駆けつけていた。入場前から飛び交う、互いの選手への多くの感情。「あいつならやってくれる」・・・彼らも同時に戦っているようだった。
  試合後再び、客席から。「やっぱ強い」、「早すぎやろ」、「俺が教えただけあるわ」。 大歓声に包まれる彼はまさに〝ヒーロー〟だった。たかだか4回戦といわれるかもしれない。いや、されど4回戦。そこで確かに〝ヒーロー〟は生まれたのだから。おそらく300人も収容できないほどの〝小さな箱〟の中での輝きは本人、関係者の中でも鮮烈に残るはず。そんな喜びを繰り返すごとにこの〝箱〟も大きくなっていくのだろう。俗に言うチャンピオンロード。辰吉も、徳山も、長谷川も幾多の世界王者もみな、この〝小さな箱〟から世界へ飛び出していったに違いない。
 会場を出てみると、何ともいえない満足感があった。「良いもの」を見たからだろう。この初観戦がいきなり大会場での世界戦なら自分のボクシングへの印象もずいぶんと違ったものとなっていた。ボクシングを観戦するならまずは「小さな箱」から。人間味ある戦い、ボクシングの原点がそこにはある。

posted by reikun |20:58 | 独り言 | コメント(0) | トラックバック(0)
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