2007年11月24日

MLB型FAシステムに移行は可能か?

以前の↓のエントリーの後半部分でFA制度について若干触れました。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/rahmian/article/201

今日はNPBがMLB型のFAシステムへ移行できるかどうかについて考えながら現状のシステムの違いについて触れて見たいと思います。

まず書いておきたいのは、どちらが優れたシステムであるか…と言うことは書くつもりはありません。
従って”移行”と書きましたが、それをお薦めするエントリーではないことをお断り致します。
またわしがNPBを見ていたのはもう一回り以上昔のことですので、もし現状と違っていましたらご指摘いただくとありがたいです。
今後の糧にしたいと思いますので。

まずFAシステムそのものの違いは大きく3つあります。

この辺はよくご存知のことと思われますが、まずFA権取得までの期間。
MLBはメジャーで合計6年間25人登録された場合です。
NPBもほぼMLBと同じ条件下での9年間ですかね?

一見MLBの期間が短く感じますが、最初のFA権取得年齢という意味で捉えると、恐らく3年の差はないものと思います。
これはNPBの選手が入団してから一軍登録に至るまでの期間より、MLBのマイナーからメジャーに上がるまでの期間の方が圧倒的に長いからです。
ですので、実質的には大きく変わっていないのが現状であると推測します。

二つ目の違いは権利行使の時点での障害が、MLBに比べNPBが多いことが上げられるでしょう。

障害はいくつかありますが、まずその一つとして、実質的に代理人が使えない状態にあること。
NPBにおいても代理人は許可されてると認識していますが、その資格が厳しい上、代理人のみでは生計が立たないような条件がつけられていたと思います。
代理人が使えないデメリットにつきましては、長谷川氏のブログにありますのでご参照いただければと思います。

http://sports.yoshimoto.co.jp/shiggy_blog/2007/11/fa_ca7b.html

二つ目の障害はFAの補償。
NPBの場合、FA選手を受け入れたチームは、代替の選手または金銭などで補償しなければなりません。
MLBの場合ドラフトピックのみ…しかも今季からは勝率16位以下のチームはドラフトピックを失うことはなくなりました。

障害の三つ目は世間一般の”空気”でしょうか?
所謂NPBファンの世論は、まだまだFAに対しては冷たいものだと感じています。
MLBでの派手な高額契約などがどうしても話題となってしまうこともあると思いますが、”金を選ぶ=FA”のイメージとなってしまっているように思えます。
実際のFAは最初のエントリーでも書きました通り、選手の救済という地味なケースが多く、それが敷いては選手の流動化を活発にして戦力均衡にも繋がると思うのですが。

他にも移籍後のサラリーの問題などいくつかありますが、障害についてはこの辺で。。。

それではシステムの違いに戻りましょう。

3つ目の違いはNPBとMLBのサラリーシステムの違いがあります。
”移行する場合の実務”という面ではもしかするとこれが最も大きな問題になるかもしれません。

MLBの場合、メジャーデビューを果たしてから3年以上メジャーでフルシーズン登録されませんと、サラリーの調停権利を得ることができません。
この間は代理人も勿論サラリーの交渉をチームとできませんから、大抵の選手はMLBの最低賃金レベルに抑えられています。
まーそれでも確か40万ドル程度はありますから大金ではありますけどw

実際に松井のチームメイトである王やカノーはまだ調停権がありませんから、現在のサラリーは40万ドル近辺です。
来季チェンバレンやヒューズがどれほど活躍しても再来年のサラリーはそんなものでしょう。 

※ただチームの方針などでサイズモアやベイのように調停前に複数年契約を結んでしまう場合もあります。

また調停権利を得ても、FAの場合のようにとんでもない上昇はありません。

今トレード市場を賑わしているミゲール・カブレラの今季のサラリーは7.4M。
これは昨年オフに調停権を得たことによって契約された金額です。
MLB屈指のスラッガーのサラリーとしてはかなり安いですよね。

MLBの調停は間を取るのではなく、チーム側か選手側のどちらかの提示額に決定されます。
あまりにとんでもない額を提示しようものなら、正当だと思われる方に決定されてしまいますので、どちらも変な額は提示できないわけですね。
実際には調停に至る前に、”示談”で決まるケースが多いですけど。

NPBの場合は一年目から基本的にサラリーの交渉はできますよね?
金額の差はあるとは思うのですが、1軍一年目で活躍したルーキーの2年目のサラリーが、一軍最低年俸に近いケースというのは、あまりないのでは?

この給与体系を変えることが、MLB型FAシステムへの絶対的条件になりますので、例えば来年一気に変える…なんてことは非常に難しいでしょうね。
9年後にパーフェクトに移行されるのを目的に段階的に行う…ということが無難なのかもしれません。

移行は可能か?という命題については、可能性としては”0”ではないでしょうけど、かなり難航しそうなのは言うまでもありませんね。
二つ目の違いをクリアするには相当のエネルギーが必要でしょう。
特に世論に多大な影響を及ぼすことができるマスコミがチームのオーナー側にいるわけですから、ファンの理解を得られるのも相当難しいものと思われます。

ただその前に三つ目の違いを解決しなければなりません。
つまり選手側の権利を作るために、ある権利を放棄しなければなりませんから、現在その恩恵に預かっている選手たちを説得するのも難しいかもしれません。
これができませんとファンからの支持も得られないでしょう。

ただMLB方式にしなければならない理由は全く無く、その独自のシステムが素晴らしいものなら、もしかすると選手の流出を防ぐ一つの手立てになるやもしれません。

posted by rahmian |16:56 | チーム編成 | コメント(5) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
MLB型FAシステムに移行は可能か?

とてもとても難しいテーマですね。。。
全般的なコメントはちょっと難しそうなので、気が付いた点のみの断片的コメントで失礼をば…。

NPBのFA権取得までの期間ですが、一軍登録145日=1年×9年が基本です。
ただ、いわゆる「逆指名」による入団選手は10年必要で、上原が今オフ対象にならなかったのはそのためです。逆指名とそうでない選手が、1年しか違わないというのは、そもそもおかしいとは思いますが…(再取得までの年数を重ねる必要があって、初めて公平になると思います)。
このほか、セ・パで微妙に計算方法が違っていたり、故障者選手への特例などがあったりして、計算方法は結構面倒のようです。
(参考:ウィキペディア日本語版「フリーエージェント」)

FA権行使のための諸障害についてですが、詰まるところ「日本型雇用形態の延長線上にあることが全て」と思っています。
御案内のとおり、日本では就職ではなく「就社」であり、「就社」対象もNPBではなく特定の球団である場合がまだまだ大半です。
したがって、トレードの多くは「配置転換」やまして「栄転」ではなく「左遷」ですし、「自由契約」の大多数は「馘首」としてとらえられます。

これらは球団やオーナー側が「選手は自球団のもの」と考えているから、と言えばそれまでのようですが、それと同様又はそれ以上に、選手(会)の側にもそうした意識があると、僕としては考えています。
善悪云々以前の問題として、まだまだ根強い日本的慣行の産物、としてとらえるのが正確ではないでしょうか。

で…具体的にMLB方式への移行を検討するとしたら、最大のボトルネックは仰るとおり給与体系でしょう。
NPBでは、イチローがブレイクした94年オフに年俸が10倍増したように、「単年で上下する度合いが強い」ものの、全体としてみれば単年度の年功序列型給与算出であり、選手(会)側も基本的にそれを受け入れているということです(減俸の限度額(率)を定めている点などは、良くも悪くも「日本的」発想の典型だと感じます)。

こうした給与体系は、実績を挙げた伸び盛りの選手や、一握りのスーパースターにとっては、「巨額の複数年契約」を得る妨げになっているでしょうが、それ以外の選手にとっては「一応の安定」をもたらしているのだと思います。
逆に言えば、そうした給与体系の物差しを越えた選手にとっては、MLBへの志向が生まれるのは当然であるということです。加えて、NPBとMLBのレベル比較では、やはり後者に分があるとすれば、モチベーションの維持という意味からも同様の結果となるでしょう。

要は、「選手流出」を防ぐ手立てというものは、NPBのシステムをいくら変えても不可能、というのが僕の結論です。

それよりも、サッカーと同レベルは夢のまた夢としても、WBCを中心とした野球の国際交流を進め、MLB移籍=選手流出の意識の方を変えるしかないと思っています。ワールドシリーズチャンピオンへのアジアシリーズチャンピオンの挑戦なども、当然考えなくてはならないでしょう。
これらの鍵を握るのは、当然ながらMLB側であって、コミッショナーが選手会をどれだけ説得しながら進められるか…だと思います。

戻って、NPBのシステムを変えるとすれば、以前にも書いたような、ドラフトの完全ウェーバー化とセットでFA権取得年数を図るなどの変革を、上記の「日本型雇用形態」との調整の上で、可能なものから実現するしかないでしょう。
本来一番重要な、「選手の救済」的なFAについては、その中でできれば一本化すべきなのでしょうが、無理ならば「スーパースター用FA?」とは異なる条件での移籍手法として模索すべきなのだと思います。
その際、代理人制度がもう少し整備された方がよいことは、仰るとおりだと思います。これについては、「契約社会」には良くも悪くもなりきっていない日本の現状や、最近法曹関係者を粗製乱造(失礼)して職にあぶれている「弁護士」も少なくないことから、いい意味での「NPB専任代理人」をオーナー・選手会共同で雇用するなどの方法があるような気がします。

例によってゴチャゴチャ書いた割に、まとまりがなくてすみませんです。。。

posted by ぷにぷに | 2007-11-25 14:33

MLB型FAシステムに移行は可能か?

>ぷにぷにさん

いずれにしましても選手会の組織の弱さが現状を生んでいるとも思います。
努力していることは伺えますが、少なくとも対等かそれに近い関係になりませんと、選手の為の改革は無理でしょうね。

選手会が強くなれない理由…これも結局FAの障害と似たようなものになってしまうと思うのですが、肖像権裁判の結果が選手会に良い方に結審されるとちょっと空気が変わると思うんですけどね。

でもこの報道の扱いも日本では大分小さいようです。
選手会の命運を握るものなんですけどね。

posted by らー管理人 | 2007-11-25 17:41

MLB型FAシステムに移行は可能か?

はじめまして。いつも楽しく拝見しております。
日本でもようやく、代理人交渉が認められるよう
になってきましたが、それでも長谷川氏のおっし
ゃる通り、特にMLBとの交渉においては、まだ未
整備な部分が多く、この整備が早急に必要です
ね。

個人的感情としては、日本のトップ選手がFAや
ポスティングでMLBへ海外移籍するのは残念で
す。理想を言えば、実質的にMLBの極東地区
(Far East Division)として、アジアのリーダー
として、NPBには頑張って欲しいというのが
個人的希望です。

さて、上記私的感情は別にして、少し現実的に
考えてみました。まず、NPBとして今後の進む
べき方向性を決めることなしに、FA等個別の問題
について語れないのではないかと思いました。

つまり、NPBとして、欧州フットボールの自由
競争型でいくのか、それとも、米4大リーグの
戦力均衡型でいくのかということです。

もし、戦力均衡型で行くという前提に立つので
あれば、
①人材管理(ドラフト&FA)
②資金管理(収益分配&サラリーキャップ)
を同時に採用していかなければ、実質的に戦力
均衡を維持できません。

FAによる効果は、人材の流動性による戦力の均衡
化です。それは上記②と併用して始めて生まれる
ものです。選手の流動性を高めても経営規模に
格差があれば、選手は一気に資金力豊富な球団に
流れていくことになるからです。

一方、NPBの大きな問題点は、FA等戦力均衡型の
施策(①)を採用しながらも、収益分配制度・サラ
リーキャップ制度(②)を採用しないなど、矛盾し
た施策をとり、どっちつかずになっていることだ
と思います。

どちらの方針でいくのかを決め、その後に個々の
施策について、個別に最もベストな形を導き出し
ていくことが重要です。

また、FA個別の問題をとっても、以下の通り、
一部のスター選手のみに恩恵がある、本来のFAの
主旨とは違った偏った形になっています。

①獲得期間(9年または10年(逆指名入団の場合)
②移籍元への補償条件(国内と海外とで違い)
③FA権の利用状況(1993年(FA権スタート)~
2002年までの10年間)
 延べ586名の選手がFA権を獲得。
 そのうちそれを行使した選手は95名。
 全体の16.2%で6人に1人
 (日本プロ野球選手会発表)
そして最大の問題は、トップ選手の海外流出に
対して、リーグとしてどう対応していくのかと
いう非常に重要な問題をはらんでいることです。

今のMLBの動き(インターナショナルドラフトの
検討etc)を見て、彼らが将来どう動こうとして
いるのかを推測すれば、結果は自ずと見えて
きます。それに対してどうするのかを決める
ことは重要かつ喫緊の問題です。

また、MLBの歴史を学び、特に「反面教師」と
して学ぶことも重要です。なぜならば、MLBとNPB
は歴史的に見て共通する部分が多いからです。

①長い歴史をファンと共有していること
(それにあぐらをかいてきたという過去も共通
 しています。)
②リーグ誕生の歴史的経緯から既得権がチームに
 分散しており、戦力均衡を達成しにくい収益
 構造を有していること
③そして、ストライキをきっかけに待ったなしの
 改革が迫られたこと
(MLBは1994年、NPBは2004年)

また、以下の背景、歴史的な考察をすることは、
今後NPBがどうしていくべきかを意思決定する
ための重要なヒントとなると思っています。
①なぜ保留制度が出てきたか。
②なぜFA制度、調停制度が認められるように
 なったか。その歴史的背景は何だったのか
(FA制度が認められるまでに、3人の選手が出て
 きます。1970年から75年にかけてです。
(たった、30年前です。)
 ここで裁判所がどういうロジックでどういう
 判決を出したか。
MLBvsそれ以外の3大リーグで比較してみると興味
深い結果が出てきます。キーワードは反トラスト
法(日本で言う独占禁止法)です。)

posted by Baseball all of my life | 2007-11-26 21:52

MLB型FAシステムに移行は可能か?

>Baseball all of my lifeさん

こちらこそはじめまして。
そして貴重なご意見ありがとうございます。
サラリーキャップ制以外は賛同することも多いです。
また共通の歴史…という部分については、異論がありますが、これについては触れません。

ただ若干関連しますが、NPBとMLBの大きな違いはやはり選手会のパワーではないかと思います。
現在の体制では何を改革したとしても、基本的にはオーナー会議及びオーナーそれぞれに有利なものにしかならないと思います。

尤も、将来的にはオーナー自身にも降りかかってくるはずの問題も多数あるのですが、現在の力関係では聞く耳を持ってくれません。

仰るとおり明確なビジョンを立て、そしてほぼ同時にパワーの源である人と財源を確保すること。

その意味では繰り返しますけど、肖像権裁判の推移は非常に気になります。
もし選手会側に有利な裁定がくだれば、これはかなりのプレッシャーをオーナー会議に与えることができると思います。

posted by らー管理人 | 2007-11-27 08:53

MLB型FAシステムに移行は可能か?

管理人さん

いただいたコメント大変参考になりました。
ありがとうございます。
自分は独学でスポーツビジネスを勉強しています
が、まだまだ勉強不足を痛感しました。
(最近書かれた他のテーマも拝見しましたが、
特にstatsの詳細な分析には舌を巻いています)

さて、先のコメントの補足をさせていただくと、
米4大スポーツの場合(特にNFL)、
リーグの繁栄と選手の報酬増が、球団と選手の
共存共栄があって初めて実現することを
お互いに理解していると思われたためです。
もちろん、両者には対立関係になることもあると
思いますが、時には協力して対処することもある
とも理解しています。

その理解のベースとなったほんの一例ですが、
昨年末、NFL選手会がサラリーキャップの削減
提案をリーグに対して行ったという記事を
見たことがあります(15年総額で8億ドル
(=約960億円)だそうです)。
この提案の背景には、単なる削減提案のみなら
ず、NYで2010年完成予定の新スタジアム
(Giants&Jets)の入場料収入、テレビ放映権料
やスポンサーシップ料等々、サラリーキャップ
算出根拠になるリーグ収入が増えるという試算も
あってのようです。

こういうコミッショナー事務局、球団、選手に
おける利害関係のある間においても、
Win-Winのスキームができないものかという考え
方が自身の考えのベースになっています。

また選手会の存在は仰る通り大きいですね。
特にMLBは大きいと理解しています。
NFLが最もしっかりしている印象がありますが、
労使協定の仕組みも非常に大きいと思います。

肖像権の問題は、日本ではまだまだこれからだと
いうのが実感です(まだチームに帰属している
印象が大きいです)。

今後もちょくちょく拝見させていただきます。
また、コメントさせて頂く時もあると思います
が、自分のコメントがいいたたき台になって、
より建設的な意見が出てくるようになれば幸い
です。

posted by Baseball all of my life | 2007-11-28 12:09

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