2010年01月22日
オランダ 3名リーダー … わかりません
つねに試合の状況を見渡し、頭の中にはいつでも「いい絵」を描けていて、さらには豊富なイマジネーション、想像力を持ち、チーム組織の中でまわりの味方に指示を出していくプレーヤー。そんなすばらしい選手が、オランダ・ナショナル・チームには、3人…「Soccer Coaching: The European Way」 138ページ 1974年ワールドカップで準優勝したオランダのリヌス・ミケルス監督は、このように書いていました。リーダー・タイプ三人のうち、1名はヨハン・クライフであろうことは、すでに引用した部分で明らかです。では、残るふたりは誰なのか。あらためてオランダの試合をふたつ見てみましたが、どうもはっきりとはいえません。 ・サッカー戦術クロニクル 対 リヌス・ミケルス著述 上記シリーズで再読してきた1978年のミケルス論説には、ほかに2名、オランダの選手の名前が出てきていました。ビム・ヤンセンとヨハン・ニースケンス。しかし彼らのことをリーダー・タイプとは記しておらず、おそらくは他の選手の誰かだろうと思われます。ビム・ファン・ハネヘムとアリー・ハーンかなとか想像しましたが、やはり確信は持てませんでした。 今、ワールドカップ決勝のオランダ対西ドイツが、10分ほど欠けはするものの、無料動画でほぼ丸まる視聴可能です。それを並べますので、ご覧になってみてください。画質はよくないんですが、ぜいたくもいえません。ダイジェストではなく、だいたい全部を連続で見ることができるというだけで、充分に貴重でしょう。 このオランダ代表のプレーぶりについては、これまでの記事で具体的に図解・解釈をしてきました。『オランダ戦からたどる / 低レベル日本』に、そのリンク目次を列記してあります。しかし、決勝戦ではあまりいい面が出せていなかったと思います。この試合は、西ドイツのトータル・フットボールを中心にながめてみましょう。西ドイツにしても、さほど上出来ではないんですけどね。
まず、選手入場・国歌吹奏シーンから。ボンホフは、やっぱりボ・ノフという感じに聞こえますね。
【以下、動画群はFC2版に並べておきました】 →FC2版「オランダ 3名リーダー … わかりません」 0. 吹奏時に映し出されていく順番で選手名を。 【オランダ】 ニースケンス、クロル、ファン・ハネヘム、ヤンセン、シュルビア、レップ、レイスベルヘン、レンセンブリンク、ハーン、ヨングブルート、クライフ 【西ドイツ】 ベッケンバウアー、マイヤー、シュバルツェンベック、ボンホフ、ヘルツェンバイン、グラボウスキー、ミュラー、オベラート、フォクツ、ブライトナー、ヘーネス だいたいの布陣概念・双方の対人マーク枠組みについては、『ワールドカップ決勝 幻のゴール, オフサイド』の図をご覧ください。 ●1.すぐにキックオフ そしてクライフがPK獲得 ○ スイーパー対決 PKにつながっていくプレーでは、下がってきたクライフが、本来のスイーパーであるハーンを前方に上がらせ、自分はいったんスイーパー位置でフリーとなり、プレッシャーなくボールを受けてからドリブルを始めます。この一連のシーンについては、以前『クライフPK ! その構造 スイーパー攻撃』で図解してみました。 その後、3分あたりからのオランダの攻撃で、左寄りをハーンがフリー・ランニングしていきますね。1対1でマーク合戦をしている中、こうやって後方から出ていくと、一時的にフリーな状態になります。それに対し、このときはベッケンバウアーが抑え役として前進しました。こんなスイーパー同士による直接の攻防も、当時は案外と散見されたものです。 ○ 3分半くらいからの場面で、フォクツにイエロー・カード ○ 対「突撃」受け流しプレー? 5分すぎの西ドイツ側フリーキックをはね返した後、オランダ側は突撃オフサイド・トラップをしかけます。『ワールドカップ決勝 幻のゴール, オフサイド』で図解したシーンです。これは、ボールを下げたり大きく蹴ったりしない西ドイツの、つなぎとドリブルの組み合わせに遭い、ファウルをとられました。 ○ 西ドイツ的 上記の結果のフリーキックを、ベッケンバウアーはスッと縦に転がしました。何気なく見過ごすシーンなんですが… 空いている味方にボールをつないでいく基本パターンよりも、マークされている味方にボールを預け、そこからのパスをもらいに他の選手が動くプレーを大切にする、これは、当時の西ドイツ・サッカーの基本パターンの1つだったと思います。こういうことを幾度も繰り返す「くさび連鎖サッカー」的なゲームもありました。 ●2.前と10数秒重複 膠着状態になりました。お互いのマン・ツー・マン・ディフェンス枠組みが見てとれるでしょう。リードしたオランダはポゼッション守備の様相で、あまり攻め気配がありません。こういうのが、木山監督の言葉にあった「ボールをつなぐポゼッション」、ゴールに向かわないポゼッションだなぁと思えます。 このあとの10分くらいは、残念ながら動画がありません。その間に西ドイツが同点としていますので、そのシーンだけの動画を置いておきます。 動画がない、同点PKにいたるまでの間には、西ドイツの攻めに多様性が増していきます。センター・サークルあたりでベッケンバウアーが、右に開いたヘーネスに向けて長めのパスを送り、自らは中央をオーバーラップしかけるシーンなどが出てきました。 それから、ペナルティ・エリア際で、ミュラーがレイスベルヘンを抑えながらボールを受ける交錯プレーがあります。これは、ミュラーがファウルをとられました。このときの打撲か、膝の何かのせいか、結局後半になるとレイスベルヘンは次第に調子がおかしくなっていき、交代で退出します。 この場面では、プレー中断中にファン・ハネヘムがミュラーを小突き、それに対してミュラーが審判の方へ倒れてみせるという茶番もありました。 ●3'.ヘルツェンバインのPK奪取と同点シーン この場面、ヘルツェンバインのマーカーであるシュルビアは、攻撃参加しようとしたまま中央に残り、オベラートを抑えようとしています。このプレー自体は、ミケルス監督が推奨するプレッシング・サッカーの理屈に合致していますね。 ・守備ゾーンに戻るな! マーキング理念 が、ここにはシュルビアのほか、レップ、ヤンセンが集中しています。近くにはクライフもいます。他方、西ドイツ側は盛大にオランダ陣へ進出し、オベラート以外で後方に残るのは、ベッケンバウアーとフォクツだけでした。オランダ陣内は、当然オランダの数的不利となります。一時的ではありますけど。 PK後で動画に足りないのは、2分10数秒ほど。 次の「4」の冒頭には、オランダがフリーキックからの展開を失敗し、西ドイツがゴールキーパーにボールを戻す場面が出てきます。 西部謙司著「サッカー戦術クロニクル トータルフットボールとは何か?」では、まことしやかに次のような断言がなされていますけどねぇ。 『ボール狩り、つまりプレッシングは、人ではなくボールに対して行われる。ボールがGKにバックパスされれば、オランダ(アヤックス)の選手はGKにもプレッシャーをかけていく』 クロクル初版16ページ へぇ・・。知らない人が信じ込んだらどうするんでしょうか。 このバックパスから、『記憶に残るプレーが ミスって… 人もボールも動く』で図解した名場面が展開されます。 ●4.ベッケンバウアーのシュート(8分半あたりから) 7分50秒からはクライフ、ベッケンバウアーの2対1 ベッケンバウアーのこういうシュートについては、以前、下記で動画をとり上げました。 ・伝説のフリーキック ・ベッケンバウアー 絶滅種的フリーキックの粋 このあと、動画の途切れが若干あります。「4」の最後の場面、オランダのオフサイド・トラップは、ブライトナーからのボールがオランダ選手に触ったという判定でオフサイドとならず、オランダは決定的なピンチを迎えました。しかし、右でボールを得たヘーネスは中にパスをせずシュート。それがゴールキーパー正面に飛んだので、この判定は問題とされずに済みます。 ●5.逆転されるオランダ 7分すぎで前半終了、クライフ警告を挟み、8分から後半 1分15秒の西ドイツ側フリーキックのあと、オランダがオフサイド・トラップを失敗します。この、ボンホフが完璧に抜け出すプレーは、『ワールドカップ決勝 幻のゴール, オフサイド』の中の、ふたつめの連続プレー図解でとり上げました。 2分20秒くらいからのシーンでは、クライフのドリブルに、ミュラーがスライディングしています。 西ドイツの2点めの直前、3分45秒あたりのフリーキックから、シュルビアが攻めに出ていきました。このフリーのシュルビアに対しては、やはりベッケンバウアーが出てきて対応しています。そしてボールがゴールキーパーにパスされますが、ここでもオランダのニースケンスは、キーパーにプレッシャーなどかけにいきません。 『ボール狩り、つまりプレッシングは、人ではなくボールに対して行われる。ボールがGKにバックパスされれば、オランダ(アヤックス)の選手はGKにもプレッシャーをかけていく』 クロクル初版16ページ 恥ずかしいねぇ。 その、キーパーに頭でボールを戻したボンホフが、すぐにブラインド・サイド・ランを実行したことにより、西ドイツの得点機が生じます。長い距離のボールなしの動きが、ここでは見事に結実しました。 ハーフタイムに、負傷で不調のレンセンブリンクが退き、レネ・ファン・デ・ケルクホフが登場、そのまま左ウィングに入ります。その後半は… 続きは →「ベッケンバウアーとクライフ 対決」 (サッカー戦術クロニクルに関する記事は、下記にリンクを提示) ・サッカー戦術クロニクル(西部謙司 著) 悪書? 続編は
posted by ports |08:10 |
コメント(6) |
トラックバック(0)
トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/ports/tb_ping/715
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
オランダ 3名リーダー … わかりません
コメント投稿者ID :
あくまでも私の先入観です・笑。
一人はクライフだとして、残り二人はヤンセン、ハーンなのかな?と思いますが、実はクロルもリーダーの一人かも知れない、と思っています。78年のオランダのキャプテンですし、ナポリに移籍後、すぐにナポリのリーダー(&キャプテン)になっています。イタリアのサッカーに馴染むのは、早かったですね。ニースケンスは、能力は凄い選手ですが、「リーダー」としては、どうでしょうか?
ボンホフは、イタリア読みですと「H」は無音になるため、ずっと「ボンノフ」という音で覚えていました・笑。
posted by sinfonia | 2010-01-22 23:11
返.オランダ 3名リーダー … わかりません
コメント投稿者ID :
sinfonia さんへ
ありがとうございます。ぱっと見て、このチームの動きというのは、ヤンセンとクライフを軸にしているなと感じます。が、ヤンセンのことを、ミケルス監督はリーダー・タイプだと書いてないんですよね。そのあたりはどうなのかなぁと。
ハーンは、いい絵を描けているとは思えなかったものの、なんというか、何かと出ばってくる印象で、スイーパー役の任務のカバーリングを含め、結果として動かす側になったように見えました。ほかで突出しているのは、攻めに出るシュルビア、守りに戻るレップでしょうか。まあ、この2名は、ミケルス監督のいうリーダー・タイプではなさそうです。クロルは、地味に指示を出し続けてるかもしれません。
このオランダが、アヤックスと明らかに異なっているのは、ミケルス監督が特に書いたヤンセンとともに、プレー・メーカーのファン・ハネヘムがいることだと思います。ま、両名ともフェイエノールトの選手だから、当然といえばそうなんですが、ヤンセンはおき、ファン・ハネヘムについて考えてみると、アヤックスというのはゲーム・メーカー不在っぽいんだなと再認識させられます。そのことが、アヤックスに落ち着きのなさみたいなものを生じさせ、それでうまく回転しているときは、攻めの面でのアグレッシブさとして映るかなと感じました。
対してオランダ代表には、ファン・ハネヘムによるリズムの変化があり、もっと多様に攻められるようにできあがったみたいです。
で、そんな異分子的ファン・ハネヘムという存在は、口数少なめながら要所で指示をするリーダーでもあったかなと。オランダ代表だと、フェイエノールトでのファン・ハネヘムよりもとび出していかなくなっている気がしますが、守備時の牽引ぶりは非常に積極的です。中ほどで指揮を執る役立った可能性もありそうで。
ま、真実はどうなんでしょうね…
オランダでは、アーン、ファン・アネヘムになりますか。
posted by コリバノフ | 2010-01-23 08:34
オランダ 3名リーダー … わかりません
コメント投稿者ID :
有難うございます。
>アヤックスというのはゲーム・メーカー不在っぽいんだなと再認識させられます。そのことが、アヤックスに落ち着きのなさみたいなものを生じさせ、それでうまく回転しているときは、攻めの面でのアグレッシブさとして映るかなと
なるほど。アヤックスとあのオランダの違いは、ゲームメーカーの存在・・・ファン・ハネヘム。
落ち着きのないチームの長所、短所というのは、良く解ります。逆に、ゲームメーカーがいる事によって、落ち着き過ぎてしまい、攻撃面へのアグレッシブさが薄れてしまう場合も、良く理解できます。確かに、私のイメージでも、アヤックスは前者で、あのオランダはアグレッシブでしたが、アヤックスに比べると、ある種の停滞感も混じり、後者なのかな、と思います。
一人はクライフ、残る二人のうちの一人はフェイエノールト人か・・・そして、ヤンセンをミケルス氏がリーダータイプと認定していないのであれば、中盤でテンポを作る、視野の広いファン・ハネヘムに落ち着くかもしれませんね。
・・・「アーン」、「ヴァン・アネエムなってしまいます・笑。
posted by sinfonia | 2010-01-23 11:52
返.オランダ 3名リーダー … わかりません
コメント投稿者ID :
sinfonia さんへ
ありがとうございます。西ドイツ戦の前半では、「ある種の停滞感」とも少し異なる、やる気のなさみたいなものも感じられますね。早々にリードしてしまったためかと思えます。一つ前のブラジル戦だと、後半まで0—0状態が続くせいか、弛緩した時間帯は少なめだった感じですし。
多大な要求をせずに見直してみると、この決勝もそれなりにおもしろいゲームではありましたが、やはり両方とも好調ではないという憾みは残ります。
posted by コリバノフ | 2010-01-24 07:07
オランダ 3名リーダー … わかりません
コメント投稿者ID :
お久しぶり
ボンボフって知っているけど
クライフって誰?
懐かしいフレーズです
何かの本で見たような。。。。
posted by L ken | 2010-02-04 17:11
返.オランダ 3名リーダー … わかりません
コメント投稿者ID :
L ken さんへ
ありがとうございます、信念おめでとうございます。アレ? なにか気に入ったのでこのまま失礼します。
> 何かの本で見たような。。。。
クライフが、ベッケンバウアーのことを言った話でしたかねぇ。ま、向うの決まり文句でしょう。この、ボンホフは知ってるけどというのは、逆転後に書いたんですかね、それとも、予言的に試合前から準備してあった? 象徴的な字幕でした。
posted by コリバノフ | 2010-02-05 08:49
コメントする
「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。
- Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
- mixiアカウントでコメント投稿
- Googleアカウントでコメント投稿
- Hatena IDでコメント投稿
- Biglobeアカウントでコメント投稿
- ログインしてコメント投稿
- メールアドレスでコメント投稿
※新規のメールアドレスによる投稿IDご利用は停止しました。
※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。
詳しくは以下2ページをご覧下さい
・【仕様変更】PCからのコメント投稿について
・ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」
※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。
詳しくは以下2ページをご覧下さい
・【仕様変更】PCからのコメント投稿について
・ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

「Soccer Coaching: The European Way」 138ページ
1974年ワールドカップで準優勝したオランダのリヌス・ミケルス監督は、このように書いていました。リーダー・タイプ三人のうち、1名はヨハン・クライフであろうことは、すでに引用した部分で明らかです。では、残るふたりは誰なのか。あらためてオランダの試合をふたつ見てみましたが、どうもはっきりとはいえません。
まず、選手入場・国歌吹奏シーンから。ボンホフは、やっぱりボ・ノフという感じに聞こえますね。


