2008年05月05日
● 再度・オフ・サイド
英国サッカーを激変させたともいわれるオフサイド改定。三名から二名に減ることに決まり、適用されて二年目を迎えた秋、タイムズに載ったという記事から。 オフサイド規定の変更が進歩をうながすはずだったが、残念なことに期待していたものは現れてこない。積極的に組み立てるゲームをという思いに対し、現実にはさらに大きな損失さえもがもたらされている。 新オフサイドは昨今のサッカーのやり方に変化を強いることはなく、逆に昨シーズン試みられた新しいかたちすべてを不要にするものだといっても間違いではない。 あらゆるチームがこれまでにも増して守備の問題を遥かに気にしており、それで当然といえる。攻撃側にとってみれば、前線の三名に向けてボールをキックするときに、相手がひとり残っているだけでよくなったのだから。 これがハーフバックを守備へ集中させることになり、攻撃力を削ぐ結果をもたらした。ハーフとフォワードの間が18メートル(20ヤード)以上に開いているのも、今や珍しいことではない。そんな状況ではハーフとフォワード間にコンビネーションが欠けるのがあたりまえである。 — The Times 1926年10月25日朝刊(?) —
この記者さんは明らかに変更オフサイドの結果に不興を感じてます。先進の英国人にしては意外にもスピード最優先主義を解さない、相対的には遅れた方だったのかもしれませんが… ウィリー・マイスルはこの改定から約三十年を経て、あらためて大逆罪だと告発しました。が、執筆時に思い当たった新発見の論理ではありませんね。もうずっとそれに不満だったわけです。 さらにFAの幹部すらもが、改定後十一年で三人オフサイドに戻すことを示唆するレポートを作成していました。十代なかばに改定を体験したジェフリー・グリーンも、ふたりオフサイドになってからのゲームを否定しています。 二十一世紀になると三人オフサイドで試合をした人がいませんから、誰もが当然の改定だと信じている、あるいは当初からサッカーはこうしたものだと理解しています。しかし改定があった時代にはかなりの反対があったものと推測できそうです。 ● Times まず向いた? ブランクさんに教えていただいた冒頭のタイムズ紙の記事、変更一年後の論説でとても貴重ですよね、どうもありがとうございました。言葉遣いもちょっと直しておきましたが、ニュアンスの問題があるようでしたら再度ご指摘お願いします。 たぶんこのタイムズの記事が唯一の批判だとか最初のものだというのでもなく、同種の論述がタブロイド紙や雑誌などにも出ていたはずで、それもどこかにあるでしょう。 タイムズの記者さんは新オフサイドに期待を抱いていた。その裏切られた期待とは、前線と中盤が連携した組み立てによる攻撃のはずですね。 そしていくつかのクラブでは新たな戦術が試みられていたらしい。その頓挫した新たなサッカーとは、記者の期待に沿う傾向があるものでないと論旨がおかしいですね。新しいかたちと書いていますが、すでに旧式がほとんど断絶していて、何シーズンか途切れたから、それで新しいとしたのだろうと強引に考えておきます。 昨シーズンとは、変更直後の1925-26シーズンでしょうね。オフサイド規定は変わっても、前から試行しかけていたサッカーを発展させていく、そういうつもりでいたクラブがあったのだと受けとれば、話の筋は通る。それはある程度ていねいな組み立てゲームのはず。 そうであるとすれば、新オフサイド施行に際しては、見る側にもやる側にも、比較的緻密なサッカーに変化するだろうと考える人々がいたことを示しています。 変更前に存在しただろうやり方、少々速度過剰でキック・アンド・ラッシュ風味もときどき感じるような試合。すぐにオフサイドになってしまうスタイル。そんな戦法に合致させるべく、とにかく得点が増えればいいと改定に踏み切ったか、なんて想像しましたが、それは今からながめたことによる単なる先入観、偏見… 結果をほぼ知って遡及したために、完全に間違えてしまいました。 ● イリガリィ… どうやら、起こったこととは反対に近い状態になると喧伝されていた節がありますね。 そうに違いない、当然ですよね。ただ単に雑にプレーしても得点増加をもたらし得る変更ですよなんて公式見解があったら、それはたいていの人が認めないでしょう、普通だったら。 問題のオフサイド・トラップを使いづらくすることで、能動的に組み立てていくゲームに変わりますという展望が示され、そんな望ましい未来図を英国の多くの人が受け容れる流れに。 これが、意図を隠したFAや経営者サイドによるプロパガンダとは考えられませんね。チームや観客を欺いたところで益するところはなさそうですよ。 いろいろな検討の後の規定変更だったはずなのに、変更推進側も結果を読み違えていたということなのでは? あり得ます。二十世紀後半にも、ゴール数欠乏をゴール枠の寸法拡大で打破しようとするまじめな議論が、善意であろう方々から持ち上がりましたっけ。 守備側を不利にすることで攻撃の工夫がしやすくなり、それによって変化に富んだサッカーが戻ってくる。たとえばそんな勘違い論法がなにかの拍子に大々的に信仰される。人も信ずれば納豆を買う、ん、こんにゃく? とにかくそんなようなこと、言いますね。 テレビがないころにはあり得ないだろうって、それは過小評価でしょう。未開時代の文字メディアでも伝わったものと思われます。理論が合理的である、そう感じさせさえすれば充分ですし。 深い思考に基づかない実験ゲームでは、被験者というか協力者のプレーも時流の意識に影響されて…。良好なテスト結果もでてきそうですよ。 NBAはゾーン守備みたいなのをイリーガル・ディフェンスとして反則にしてきたわけでしょう? その結果、ゲームはおもしろくなった、これは成功例。しかし同様によかれと思ったオフサイド改定は、単に考え足らずで失敗してしまった? このころはすでにモリアーティ教授は亡くなってますが、マイクロフトなんかは存命中のはずですけどね。 ● 反対派、異端は 変更に反対する、三人オフサイド維持論は英国内にもあったでしょう。しかし、単に現状を打破すること自体に拘泥する考え不足の人々が、改定反対派を圧倒的に押し切った? 変更派も「意図が善」ですからね、強いです。ふたりオフサイドにすれば楽しく建設的なサッカーがプロ・リーグに戻ってくる、そんな意味のスローガンで… でもイギリスですからね、おそらく反対派もそれなりに論陣を張っただろうなという気がします。それがどんな内容だったか、やはり見てみたいですね。あとは大陸・南米の賛否はどうだったのか。ドイツ語、スペイン語などの文章でも賛成・反対の論説が残っているかと思いますが、ご存知の方はいらっしゃいませんか? 実施されるまでは少ないながらも異端グループが鋭く反論し、施行後はある程度まで反対派が膨れたんではないでしょうか。そのあたり、イギリスではまとめられてると思います、目につかぬように? ● 一気にきつい… 新オフサイドがサッカー・スタイルを変化させなかったというタイムズの記述は、やはり以前から慌ただしい蹴り合い気味の傾向があったことを示しているでしょう。しかし相対的にはそうだったというだけ。だからジェフリー・グリーンなどはオフサイドの嵐のころの方が、まだましだと感じたんでしょう。 そのころも、新オフサイドになった直後でも、オフサイド・トラップ対策にもなる組み立てサッカーをしようとするチームは存在していたが、しかし。 新オフサイドでのリーグ戦が始まると、予想以上に蹴って走るだけで相手ゴールへ迫れる感覚だったので、それを活かす方へほとんどが流れたのでしょう。三人規定のオフサイド・トラップに弱かったスタイルを、もっともっと押し進めればOKだとなって、一気にきつい一揆的な現れ方に… ● ルール?オフサイド・トラップに失敗しても一名カバーが余ってるわけですからね、安心感はあります。でも三十年以上やっていたルールで、この程度のオフサイド戦術もなかったとは… ルール解釈が変わってオフサイド・トラップ出現というような話は残っていないんでしょうか? もともとが現行みたいに、直接パスを受けられそうな選手のみオフサイドになっていたのだとすれば、なにかの理屈で突然に、関係なさそうな方角への縦パスであっても、残っているだけで笛を吹くことに変更されて混乱とか、それならなんとなく理屈でわかる気もしますが。 あるいは…。上の図では、白の8がボールが蹴る前に、黒の3が白11に並んでしまえば、それでもうオフサイド・エリアにとらえたことになりますね。しかしそれは白が意図して利用したのではないからプレーを続けられるルール運用だったとか。だからオフサイド・トラップは理論的に存在しない、ところが、そこの解釈を変更したなどということは? でもそうであれば明記した資料がありますよね。どうも堂々巡りです。理解さんへのお礼に関係ない時期もまとめておこうかと思いましたが、なんとなくめまいがするようで先送り…
posted by ports |17:59 |
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● 再度・オフ・サイド
なるほどグリーンさんを想定してたんッスか。んー、あれは一体、誰が書いたんですかね・・・。オフサイド改正は俺も管理人さんと同じような考えになりました。で、疑問なのは確かにトラップですね。
こんなのもう読みました?
http://mysite.wanadoo-members.co.uk/corshamref/sub/offhist.htm
「オフサイドポジションにいるだけじゃ、ファールじゃないんだよ」って何度か言っててもファールになっちゃってたようで、1920年にルールに加えられたってなってるんッスけど、トラップ出現になんか影響ありますか?逆パターンですけど・・・。または1907年の相手陣内のみファールっていうのはどうでしょう?
具体的にどんな影響があったのかは・・・・調べ方がわからないのでパス(笑)クラブ史をあたるのも手かなって・・・って、やってないんですけど(笑)
posted by ブランク | 2008-05-06 00:09
返.● 再度・オフ・サイド
ブランク さんへ
> で、疑問なのは確かにトラップですね。
> こんなのもう読みました?
大急ぎで新しいの書きました、どうもありがとうございました。
> クラブ史をあたるのも手かなって・・・
よろしくお願いします。
posted by コリバノフ | 2008-05-06 07:17

オフサイド・トラップに失敗しても一名カバーが余ってるわけですからね、安心感はあります。でも三十年以上やっていたルールで、この程度のオフサイド戦術もなかったとは…
ルール解釈が変わってオフサイド・トラップ出現というような話は残っていないんでしょうか?
もともとが現行みたいに、直接パスを受けられそうな選手のみオフサイドになっていたのだとすれば、なにかの理屈で突然に、関係なさそうな方角への縦パスであっても、残っているだけで笛を吹くことに変更されて混乱とか、それならなんとなく理屈でわかる気もしますが。
あるいは…。上の図では、白の8がボールが蹴る前に、黒の3が白11に並んでしまえば、それでもうオフサイド・エリアにとらえたことになりますね。しかしそれは白が意図して利用したのではないからプレーを続けられるルール運用だったとか。だからオフサイド・トラップは理論的に存在しない、ところが、そこの解釈を変更したなどということは?
でもそうであれば明記した資料がありますよね。どうも堂々巡りです。理解さんへのお礼に関係ない時期もまとめておこうかと思いましたが、なんとなくめまいがするようで先送り…

