2008年05月04日

◆ どうぞ そのまま

 私が記事を書き始めるようになり、はっきりと記憶している年月よりもさらに長い間、ハンガリー、オーストリア、イタリア、ユーゴスラビア、そしてブラジル、ウルグアイは、巧妙で精緻なサッカーのブランドを提供してきた。
 彼らが見せるのは「芝の上で綾なされる」ショート・パス・ゲームである。だがそれは、スコットランド、イングランドの古きよきサッカーが適切に保存されたもの、それをオーガニックな栽培で熟成させただけにすぎないのだ。
 … 中略 …
 まったく申し分なく、単にそのままであるべきだった。
 
  — 「サッカー・レボリューション」(ウィリー・マイスル)—

● 第五氷河期の城

 1926-27シーズンに優勝したニューカッスルですが、1930年代のアーセナル黄金時代には、5位が一度あったものの中位から下位のチームになります。そして1933-34シーズンに21位で降格、一部に復帰するのは第二次大戦の後、1948-49シーズンでした。
 ずっと下って1995-96、1996-97と二季連続で2位へ。このあたりがもしかすると第五間氷期でしょうか。それともやはり五度目の優勝がなければ氷河期のままと見るべきか。すでに四度目の優勝から八十年くらい経過してしまいました。

 第二次大戦が終った頃のニューカッスルにさかのぼれば、優勝は無理でも、そこにはどっしりとしたストッパー・センターハーフと、たくましく効果的で繊細さに欠けるセンターフォワードがかまえていたそうです。ジェフリー・グリーンの話によれば。そして、いつのこととして書いていたのか忘れましたが、クリスタル・パレスのファンが相手のニューカッスルに向かい、「ニューカッスルのまがいものめ」と怒鳴っていたとのこと。

 ニューカッスルは突出して好成績を収めてきたクラブです。そして「まがいもの」と野次られるとは、つまり過去は優勝以上のクラブでもあった?
 盛者必衰、でもないのかもしれませんが、かつての公平気味なイングランドの競争リーグにあって、トップ・リーグの優勝が四回とはたいそうなことでした。もっと遥かに優勝回数の多いクラブはありますが、とにかくニューカッスルを超えるのは六つしかないようですよ。
 リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、エバートン、アストン・ヴィラ、サンダーランド。間違ってたら教えてください。

 サンダーランド! …あらためて感心しますね。草創期に黄金時代があったと自分で書いておきながら、あまりに下位リーグのクラブという印象を強く持ってしまっていて、これはたいへん失礼してしまいましたよ。アーセナルの三連覇直後に優勝したのはサンダーランドでした。
 余談ですが次のシーズンには、五輪後の竹内さんが、やはり優勝できなかったアーセナルを観戦するわけですね。

 1935-36シーズンがサンダーランドにとっては早くも六度目の優勝で、以後はまだ勝てていませんね。ほかの五回の優勝は十九世紀から第一次大戦前まで。繰り返しになりますが、サンダーランドとニューカッスルをあわせて、このスコットランド国境近くのあたりはかつての最強勢力なんですね。

● じゅうたんの上の優美なニューカッスル

「亡くなるころのハーバート・チャプマンは今一たびの驚きを準備している途中で、それは古いかたちに似た何かだという話になっているが、私はほんとうにそうだろうと思う」

 このウィリー・マイスルに似た見解は、1953年、ジェフリー・グリーンによるものです。「フットボール・アソシェーションの歴史」編集に協力しているころか終った時期あたりなのかなと思います。マイスルの著書は1955年に出ますが、それ以前からチャプマンの計画に関する推測を雑誌などに書いてきたらしいですから、グリーンも読んでいたでしょうね。

 でも特に典拠を示さずに言及していることなどから、1950年代の英国ではそれなりに広まっていた伝説だろうなと感じます。
 このように書いたグリーンは、サード・バック・ゲーム反対派でたぶんFA寄り、1926年から時代は完全に変わったと断言します。そして全面的に変化してしまったという新オフサイドでのゲームと対比させて、ニューカッスルの黄金時代に触れていました。これを参考にするのはどうかなとも思いますが、とりあえず。

「…失われたのは名高いニューカッスル・ユナイテッドの初期のスタイルだ。繊細優美に織りなすパターン、床の上に保たれたボール。それは、アストン・ヴィラ、サンダーランド、プレストン・ノース・エンド等々もである」

 しかしグリーンはこれに関して「おそらく」と書いています。

● 実はオーストリアって…

 この人は1930年代から四十数年もタイムズで書き続けた、かなり影響力ある記者だったようなんですが、二十世紀の生まれなんですよね(Geoffrey Green 1911-1990)。だから1900年代初頭の、偉大だったというニューカッスルを見てはいません。サンダーランドやアストン・ヴィラとかもです。

 あのニューカッスルなどについての形容は、先人の話を聞いての想像であり、そして下敷きにしたのは、なんと第二次世界大戦後のオーストリア代表だといいます。1951年にウェンブリーでイングランドと引き分けるオーストリアの試合ぶりから、昔の自国でワンダフルなといわれたクラブを類推したというわけです。

 惜しいことにどうやらこの人は、フーゴ・マイスルのオーストリアも見てはいないようです。1930年代、驚異のチームがロンドンに来たのは一度だけですからね、無理もありません。

 1933年にグラスゴーでオーストリアを見て、俺たちの試合だとつぶやいたその世代が白髪になって、戦後1951年のオーストリアに同種のものを見たのかもしれませんね。ジミー・ホーガンと同年齢くらいか、さほど離れていないだろう人たち。彼らの話をジェフリー・グリーンが聞いたわけでしょうね。

● マクラッケンの力?

 第一次大戦が終わって十代になり、グリーンの分析的な記憶に残った最初のサッカーとは、例のオフサイド地獄時代でしょうか。しかしこの人にとっては、ミドル・ティーン以降の新オフサイド時代、サード・バック・ゲームと較べれば、ゴールが少ない旧オフサイド時代の方がずっとましだったようです。

 マイスルはまったく言及していませんが、グリーンの方は、ニューカッスルのマクラッケンがオフサイド規定を変えさせたとしていました。

 グリーンの文章は少々修飾過多だと揶揄されたこともあったようで、なるほどそんな紫文調(?)の感じはややあります。でもニューカッスルに言及した表現、あれはわりあい一般的な言い回しだったりはしないでしょうかね。ジミー・ホーガンの「じゅうたんの上」と同じこと、マイスルのも同系統ですね。

 1895年生まれのマイスルなら、中学生年代に黄金期晩年のニューカッスルを見に連れていかれたかなと思いますが、そのような回想が残されているのかどうかは不明です。「キッカー」とか「ワールド・スポーツ」などのコラムになら、あるいは具体的な回顧が記してあるかもしれません。しかしもちろん調査もできません。

 実態はわからない、繊細だったころのニューカッスルですが…
 伝わってくる雰囲気から想像するに、こうしたものが全土で発展し続ければ、三人オフサイドでのオフサイド・トラップに困窮することなどなかったのではないかと思えてきます。
 その種子は風に乗ってイギリスを離れ、飛来した海外の地で花開くようになっていったかもしれませんね。それがオフサイド・トラップに対する抗体になったのか。

 マクラッケンがオフサイド規定を変えさせたと言われちゃうほどなのはどうしたものでしょうね。オフサイド・トラップごときが、なんて考えずに、理屈をつける試みがあっていいかもしれません。
 もっと適当な空想だって必要でしょうかね。しかし事実をあまりに無視することもできませんし。グラフをながめ、とうとうウトウト、眠くなり…

posted by ports |23:50 | コメント(8) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
◆ どうぞ そのまま

この前のコメント、結局まだ最後まで読めないんですけど(涙)ポケミスって買える頃には古本しかなかったような、専ら赤背でした。近くの本屋で見つからないんで暫く読めないと思います(涙)

イミテーション・ゴールド、Navy blueつながりのつもりだったんですけど、赤ニシンになっちゃいましたか・・・。I'm old fashioned. I love the moonlight. I love the old fashioned things.・・・まあ、いいんですけど。黄色い部屋はガストン・ルルーだったんでニアリー・イコールですね。

トラップは頻度の問題だったんじゃないッスかね。多分、管理人さんの言うように以前からやってて、難しいものではなかったけど、そうそう引っかかるものじゃなかったような気もします。

posted by ブランク | 2008-05-05 23:52

返.◆ どうぞ そのまま

ブランク さんへ

> イミテーション・ゴールド、Navy blueつながりのつもり

まさかチェット・ベイカーがダイアン・リネイのを吹きました?
歌ったり?
都築道夫もルルーを念頭にもおいて改装案を書きました。日本の名著ですね。

> 以前からやってて、難しいものではなかったけど、そうそう引っかかるものじゃなかったような気もします。

そういう線でいってみます。

どうもありがとうございました!

posted by コリバノフ | 2008-05-06 07:15

◆ どうぞ そのまま

おー、リフできチョイスですね。
管理人さんも隠れファンだったとは・・・。カミング・アウトしたほうがいいですよ(笑)

I'm old fashioned はミュージカルものです。分かりづらくてすみませんでした。「旧式」っていうのはold fashionではなく、old style,old form,old taste,old type・・・だったんでしょうか(笑)

posted by ブランク | 2008-05-06 23:46

返.◆ どうぞ そのまま

ブランク さんへ

返信欄、まちがえました

> おー、リフできチョイス

ありがとうございます、「について」連作など、実は興味なくて、銀狼関連でみごとな翻訳に感動しただけでした。ふと「サッカーの影について」の白い字を見たらおもしろくて。
で、文章も真似するかと思ったんですがつかみきれませんでしたよ。

あ、old fashion 使われてます。

o、次もありますか、

posted by コリバノフ | 2008-05-07 00:28

◆ どうぞ そのまま

拝啓 ブランク様

ひよこ組 さんより

「リタ・ヘイワースよりもチェット・ベイカーの方が好みですね。」

先日は 失礼しました。
こちら 映画に疎くて
リタヘイワース 歌っている事
知らずに すみません。

I'm old fashioned

ジェロームカーン作
チェットベイカーの方は
「It could happen to you] 収録。
ジョンコルトレインの「ブルートレイン」にも。

敬具

posted by コリバノフ | 2008-05-08 00:09

◆ どうぞ そのまま

ひよこ組さんへ

気にしないでください。色つながりにできなかったのが致命的(笑)ブルートレインは歌ものでなし、青い山脈は好みでなし。ブルーゼットでも良かったのかもしれないですが、歌よりも口笛なので・・・と色々考えてたんで赤にしんになったかも(笑)ピアノならエバンスよりも赤い花輪で。ベーシストなら赤いミカエルさんですか(笑)

すみません、調子に乗りました。

posted by ブランク | 2008-05-08 20:24

◆ どうぞ そのまま

なるへそニューカッスルってだいぶ昔は強いクラブだったんですね。。
日本でいうといまの広島とかセレッソみたいな感じかな?
ってなんかブログタイトルが変わってますね^^;
テンプレートまで変わってるから一瞬「あれ?コピペ間違えた?」って思っちゃいましたよ
リアってなんのことですか?リアディゾンさんじゃないですよね?
まあでもぶっちゃけ前のブログタイトルのほうがよかったと思いますよ
紅きダニューブってなんかカッコいい響きじゃないですか(はあと)

posted by fujiko | 2008-05-14 19:36

返.◆ どうぞ そのまま

fujiko さんへ

どうもありがとうございます。

> 広島とかセレッソみたいな感じかな?

さすが田辺製薬まで調べたのが粋てますね、アレ?いっか

> ってなんかブログタイトルが変わってますね^^;

気が変わって、また真似したのを書いたんですけどね、慌ててたせいでもないでしょうが、フリーズしちゃっておじゃんでした。

> リアってなんのことですか?

カナリアとかシベリアとかですかね。

> まあでもぶっちゃけ前のブログタイトルのほうがよかったと思いますよ

おぉ、ありがとうございます。あいかわらずの推敲不足のやつで再遂行に挑戦してから昔の名前で出しましょう。
またよろしくお願いします(はあと)

posted by コリバノフ | 2008-05-14 21:55

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