2009年07月01日

王者ブラジルの逆襲 …しかし

 西ドイツ・ワールドカップでのブラジルには、優勝したメキシコ大会のような輝かしさがなかった。でも、1970年がよかったせいで、それとの対比により、みすぼらしく見えすぎてしまった面もありそうです。1974年のブラジルは、しぶとく勝負強さを発揮してはいました。
 大雑把には、ブラジルは攻撃力不足。二試合が無得点引き分けで、ザイールからは3得点しましたが、東ドイツとは1-0、アルゼンチン戦は2-1でした。二次リーグ最終戦の対オランダに臨むブラジルは、得失点差で劣っていたために勝つしかない状況。

 その試合、ブラジルが何もできなかったとする見解があるそうですが、それほどだめでもありません。
 単純なボール扱いでは、オランダよりもブラジル選手たちの方がちょっと上手そうです。ま、そうしたものは、試合を左右するほどの要素でもなく、さらにオランダの豪放なスライディング・タックルなどによっても、小技はいっそう封じ込められてはいきます。しかし、オランダが多用したオフサイド・トラップにつけ込む方法が、ブラジルには残っていました。得点欠乏気味のブラジルがそれを狙うのは、わりと理に適っている感じがしますね。たびたびオフサイドにされようとも、何回かのうちに一、二度、うまく裏をとればいいわけです。

 下記では、布陣図とともに、ペナルティ・エリア際でのオフサイド・ラインをめぐる攻防を図解しました。今回は、オランダらしい突撃オフサイド・トラップについて。

 くさってもブラジル、かな…
 http://www.plus-blog.sportsnavi.com/ports/article/478


 このときは、本来の突撃オフサイド・トラップ指揮官であるハーンがリードしたのではありませんが、それでもオランダ的なやり方が、そしてブラジルの意図するところも、ともによく表れているようです。

 オランダ陣内に入り、左側でブラジルがフリーキックをもらいました。キッカーはフランシスコ・マリーニョ。

     ports-96575.jpg

 フリーキックはオランダにクリアされました。クライフが追いかけるものの、センター・サークルで弾んだボールにはマリオ・マリーニョの方が早く追いつき、先に後ろへ下がっていたルイス・ペレイラに向けてパス。

      ports-96577.jpg

 クライフが迫って来るところを、ボールを浮かせてルイス・ペレイラがかわします。

        ports-96578.jpg

 この間に、ニースケンスとレップがダッシュしてきましたが、ルイス・ペレイラは軽やかにキープ。ブラジルのゼ・マリアとフランシスコ・マリーニョは、両外に戻っています。

      ports-96579.jpg

 そして、最初と逆に最後尾へ退いたマリオ・マリーニョにバックパスを送ります。オランダ側はシュルビアとヤンセンが来ました。「突撃」の様相です。でも、深追い加減にも見えます。

     ports-96580.jpg

 レップとシュルビアが、ボールを追ってマリオ・マリーニョを追い詰めていきました。クライフはここでふり返り、全体の様子をながめています。

      ports-96581.jpg

 画面外、向う側でパス・コースをつくっただろうフランシスコ・マリーニョの方へ、レップがずれていきました。

       ports-96582.jpg

 シュルビアとしては、レップが当初のコースでM・マリーニョに詰めるはず、だから自らは、F・マリーニョ側へのパスを切るように寄せる、そんなつもりだったみたいですね。M・マリーニョの前に直行という感じではありませんでした。
 確かに外へのコースもあったわけで、ここでの一瞬の行き違いは仕方ない気もしますね。

 マリオ・マリーニョは右のアウトで切り返し、正面を向いてストップ。前方を見渡します。シュルビアも、外に行きすぎたところで急停止。レップとF・マリーニョは絵から外れた奥です。

       ports-96583.jpg

 余裕を得たマリオ・マリーニョは、狙いを定めたパス。

      ports-96584.jpg

 オランダの、急激で大きなオフサイド・トラップを意識していたジャイルジーニョは、自陣から、パスの落ちる先へとダッシュ。

     ports-96586.jpg

 この、ごちゃごちゃとぼやけた選手たちは、たぶん以下です。センター・サークルで折り重なる4人は、下の方に名前を並べました。

     ports-96587.jpg

 オンサイドの位置から抜け出たジャイルジーニョ。それに対しては、クライフがマークして競争しました。

     ports-96588.jpg

 しかし、審判の笛でプレーは途切れることに。ジャイルジーニョではなく、ハーフウェイに戻りかけていたパウロ・セザール・リマが、どうやらオフサイドをとられたようです。
 能動的にプレーと関与していないとしても、このころはオフサイドになりましたからね。


 ブラジルは、こういうチャンスを意識して狙っていたでしょう。これは、ワールドカップ初戦にあったウルグアイの即興(試みられていたプレス崩しプラン? 逆 風車の理論)、個人技で打開する方向とは違い、組織的な連動を意図してのもの。単に「放り込み」だとする見方もあるかもしれませんが。

 一方、オランダの方も、オフサイド・トラップをかけて上がる一群と、反対に、前線から戻ってオフサイド漏れをカバーしようとする選手が、うまいこと調和していました。これなら、オフサイドをとってもらえなくても、どうにか対処できますね。いつもこうするのは難しそうですけど。

 中央でジャイルジーニョをマークして下がったクライフ。そしてクライフだけではなく、ぼやけてよくわからない奥の方でも、同様にレップが走っているように見えました。
 マリオ・マリーニョを追い込んでいく際に、外のフランシスコ・マリーニョを消そうと動いたレップでしたが、すぐに選択を変更し、自陣に向かってダッシュ。そのあたりには、ブラジルの(おそらくは)ディルセウが戻ってきます。そこらへんの抑えを意識して、即座に行動を切り換えることができたみたいです。
(ここまでまったく出て来ないバウドミーロは、たぶん手前側タッチ間近にいるだろうと思います)

 レップの似た動きは、別の図解でも見られましたね。

 クライフ時代オランダ 人かスペースか

  ports-95018.jpg


 また、同じブルガリア対オランダでは、オランダが失点を喫しています。これを、レップもクライフも記憶していたでしょう。

 負けない! オランダの足跡

    ports-95982.jpg

 この失点は、オフサイド・トラップ失敗から始まったオウン・ゴール。当時の不確実なオフサイド判定基準でも、まるで無関係な選手はオフサイドにされない例は、わりとありました。審判次第、か。

 オランダ唯一の失点時、抜け出したのは左ウィングとしてプレーしたデネフです。
 ブラジルの狙いはよかったと思えますが、中央で逆をとるかたちばかりになってしまったのは、やっぱり具合が悪い。戻ってくる選手と抜け出す選手が近くで交錯し、オフサイドをとられてしまいやすいですからね。とはいえ、この大会のブラジルには、ウィング風の選手があまりいません。サントスのエドゥーはほとんど使われませんでしたし。ちょっと無理があったでしょうかね。
 ともかく、例示したシーンは中身のある攻防でした。それにしても、なんだかパウロ・セザール・リマは、足を引っ張るような動きが多かったみたい…


posted by ports |07:00 | コメント(2) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/ports/tb_ping/483
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
王者ブラジルの逆襲 …しかし

コメント投稿者ID :

何でオールドスクールな試合ばっか取り上げるの、

posted by 1 | 2009-07-01 19:16

返.王者ブラジルの逆襲 …しかし

コメント投稿者ID :

1 さんへ
 
申しわけない、スパムにされてました。
「1」という、その場限り風な投稿者名と、一行だけのつぶやきめいたコメントだからスパムなのでしょうか。
そうではなく、口調のぞんざいさか、中途で切れているかのような読点での終了、あるいは、昔の試合を記事にすることに対する「非難」だと受けとるのか。
基準は不明です。問い合わせてみますけど、しかし、基準を明確にしないこともスパム・フィルター運用の鍵だとのことで、はっきりしたお答えは得られないだろうし、それをここで開示するのもまずい。謎のままです。
 
 
さて、単にご質問だと解し、無駄かもしれない返答をしておきます。
 
1.トータル・フットボール解明は当ブログの重要主題
2.「今、ここ」を最高だとか基準だなどとする思潮は批判する
 
こんなことなどから、過去の試合を具体的なプレーに即して記事にしたり、文献を探るなどもしていきます。
 
まったくご覧になってなくとも、図解を添えることにより、ある程度までプレーを想像できる方はいるだろうなと思いますよ。

posted by コリバノフ | 2009-07-02 06:49

コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」