2008年04月29日
● 伯林五輪の英国代表
1936年のベルリン・オリンピック。こんなアマチュア大会を問題にして、FAが自国全体の真剣な改革案を検討するというのも、やや大げさかもしれません。これがどの程度のサッカー大会だったのか、今では想像するのが困難です。 ごく平均的な水準の好チーム、ポーランドに4—5で惜敗してしまったイギリスというのは、アマチュア契約のイングランド国籍選手から選ばれたチームらしい。プロを含んでおらず、フル代表でないから力を入れてない、そんな位置づけだったとの論調も、後の人にはたしかにあるみたいです。
メンバーをながめて、見聞きした記憶があった名前はバーナード・ジョイ(1911-1984)くらい。彼はかつての強豪コリンシャンズの後継チームに登録しつつ、アマチュア契約ながらプロのフルハムなどでプレー。 戦前黄金期のアーセナルにも所属し、“プリンス・オブ・ストッパー”ハービー・ロバーツの控え選手として実力はプロ・レベル。というよりも母国の誇りのひとりではないでしょうか。ベルリン五輪の年に一試合だけとはいえフル代表でもプレーしています。 戦争中は、RAF(英国空軍)が名手たちを集めたサッカー・チームでプレーし、後にアーセナルの主将も務め、そしてジャーナリストになりました。 あとは五輪後にプロになったモーリス・エデルストン。彼もフルハムにいたことがあるそうですが、三部だったレディングFCが長かったようです。父上が指導していたクラブなんですね。 ほかはどんなレベルの選手なのかわかりません。 しかし上記二名以外も、アマ契約のプロ・クラブ選手、あるいはそれとほぼ同等の能力とする向きもあります。 プロ契約をしない抜きん出たアマチュア選手というのが、このころまでイングランドにはかなりいたようです。ジョイさんの世代あたりが最後のようですが。 このアマチュア代表というのは、相当に力を入れたはずのチームといった方がふさわしいようです。 マイスルもその立場ですね。すでにヒトラー政権下のドイツを離れ、イングランドへ移住してしまった時期ですが、英国人として懐かしのベルリンにやって来ていたと思います。英国オリンピック委員会で広報の仕事をしていましたから。 ● ウレフォードブラウン Gという頭文字はきっと誤植で、実はチャールズ・ウレフォードブラウン(慶応2, 1866—1951)のことだったかと推測します。 チャールズだとすると孫文と同じ歳です。翌1867年にキュリー夫人や夏目漱石が生まれます。そして1868年になると明治維新ですね。 クリケットやチェスでも活躍し、サッカーではコリンシャンズなどでプレー、イングランド代表チームの主将も務めたハーフバックの選手。WM以前のセンターハーフだったのではという気がします。 コリンシャンズはアマチュアながら最強チームだった時代があったそうです。手強かったスコットランドを破るべく、十九世紀に、イングランドの優れた選手を集めて創設したとの話がありますね。代表チームのバックボーンというか、選抜チーム的なクラブ。 ブラジルのコリンチャンスはそれを見て、シャツから名前から全部真似たとか。レアル・マドリーがラ・サンタ・カサ・ブランカになったのも、もとはといえばコリンシャンズの白シャツに憧れたせい。 ウレフォードブラウンは、ベルリン五輪のときにはすでにISC(代表選手選考委員会)の委員長職にあり、一九四一年から亡くなる五一年まではFA副会長のひとり。かなり偉い人だったのでしょう。 代表監督を置く習慣のなかったイングランドにあって、現場の統率は誰がしていたか知りませんが、ISCの委員構成によっては委員長が総監督的立場だったこともあるだろうと思います。 「サッカー」という略語を案出した人物だという噂もありますよ。 この方を詳しく知る方はいらっしゃいませんか? 弟のオズワルド・エリック・ウレフォードブラウンもコリンシャンズの選手でイングランド代表にも。しかし若くして第一次大戦で戦没。ウレフォードブラウンだけだと取り違える可能性があります。 ● スタンリー・フォード・ラウス(明治28, 1895—1986) 生年も、ゴールキーパーだったことも、ウィリー・マイスルと同じです。たぶんアマチュア選手で、代表歴ほかあまり特筆される経歴はなさそう。体育教育などをやりながら審判として活躍、対角線審判法で有名になり、国際審判員としてはフーゴ・マイスル並みかそれ以上に名高い人だったようです。 一九三四年から六二年までFA事務局長、一九六一年からはFIFA会長でおなじみ。一九七四年の会長選挙でブラジルのジョアン・アベランジェに敗れ、それ以降はFIFA名誉会長になりました。 FAには、事務局長のほかに財務担当の責任者が別にいて、あとは数名の副会長、理事長、そして王族がなることが多い会長がいます。実質的な権力は評議会のメンバーが持っているのでしょうが、当時のラウスはFAの新進実務責任者だったと思えます。 ふたり合わせると、プロ容認期からの英国サッカーをかなり網羅的に承知していたことになりそうです。オフサイド地獄のことも見ていて、だけど「元に戻せば国際試合の結果が好転していく」と考えたわけですね。懐古趣味とも異なるようです。
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