2008年04月24日

● ウィング…ハーフ?

 センターハーフ、ウィングハーフなどの呼称はほとんど使われなくなりましたが、今でもイギリスではセンターバックをセンターハーフと言ったりもするようです。昔は確実にストッパーのことでしたが、最新の英語ではどうなんでしょうか。

 WMシステムのポジション名は長く残ったようです。インサイドレフトとかインサイドフォワードは、1970年代でも出てくることがある呼称で、インナーという略称も残ってました。
 ウィングハーフは70年代ですでに聞かないものになっていたかなと思いますが、それと結局は同じものからくる、レフトハーフ、ライトハーフなどは使う人もいたような気がします。

 ウィングハーフ、これは字面からすると外側に開き気味のミッドフィールダーを思わせるものです。でも2バックの時代からの呼び名をWMでも残しただけであって、センターハーフ同様に、もはや位置取りを示してはいませんね。
 サイド・バックでもなく、タッチ際にかたよった中盤選手でもなく、逆に「中央をカバー」する重要な選手のことを指しています。チャプマンWMの強烈な伝播力のおかげで、一般的にはこれがウィングハーフです。守備的なタイプもいるし攻撃的な場合もあるし、ゲームメーカーだったりもします。

 1966年ワールドカップに関する文章でベッケンバウアーなどをウィングハーフだとしていたりしますが、もちろんタッチ沿いを主戦場にしてはいません。

● 背番号と呼び名

         9 Centre-forward
11 Outside-left        7 Outside-right    
   10 Inside-left   8Inside-right
     6Left-half   4Right-half
 3Left(full)-back    2Right(full)-back
       5Centre-half

 ベッケンバウアーが当時は右のウィングハーフ、つまりライト・ハーフだったと表現していても、それは右サイドに常駐しがちだったことを全然意味せず、中盤でプレーしていて背番号が4だったということからくるものです。
 それに、対になるべきレフト・ハーフが不在だったりします。4番ライト・ハーフの相方だった6番のレフト・ハーフは、あのときすでに中央に下がっていて、四人バック体制であるという概念になっているからです。これはラッキー・アーセナル…

 守備ラインに混ざってしまった6番をレフト・ハーフと呼ぶことはあまりないでしょうかね。でもほかは、着ているシャツの番号でその選手のポジションを称する例が頻出します。WMが浸透したことによる伝統的習慣です。
 これはくだらないことでもありませんね。文章に表記されたポジション名の含意するものが、ある選手の実態に近いポジション自体を指すのか、プレーぶりと無関係に背番号をポジション名に読み替えただけなのか、かなり重要になることもあります。

 それはまた、番号が各選手の概念的ポジションに合わせて与えられる、そういうのが伝統国の習わしでもあったからですね。ラグビー的なセット・プレーがないサッカーでは、ポジションが流動的な場合も多々ありますが、一応は、同じ選手でも概念的ポジションが変わると、番号もラグビー的に変える方が普通でした。
 1から11まで揃えて試合をするのがあたりまえで、各クラブが自分たちのシャツの販売を大きな営業活動の部分にすることがないころ、個人持ち番号という考え方はあまり強くなかったでしょう。

● たとえば…

 近くはといってもすでに一昔ですが、1990年代のインテルナツィオナーレにニコラ・ベルティというイタリア代表にもなった人がいました。通常はライトハーフを示す4番を着て中央を、センターサークル後方を主戦場に幅広く動く選手です。
 そのベルティが、もっと前線に近接して攻撃的に振る舞う役を割り振られたことが何試合かあり、その際は10番を着たりしていました。

 おおかたの伝統国は程度に差はあれ、ポジション別に番号を与えるという慣行をついこの前まで残していた感じです。控え選手に関しても、12番をゴールキーパーにする習慣が古い強国には存続しました。

● ウルグアイ

 WMを無視して2バックから少しだけ変容を遂げたかのようなウルグアイでは、WM以前の古式ウィングハーフの役割を引き継いでいるようです。6番・4番は左右の低い翼的に位置どりし、これに対しフルバックの3番・2番は通常センター・バックですね。
 そしてヨーロッパでは5番がストッパーであるのに、ウルグアイ型南米型では通常は中盤の選手の番号です。

    5         4
 6 3 2 4   3 6 5 2

 かつての覇権を取り戻せないウルグアイは、今でも伝統の力が非常に強いように感じます。背番号の振り分けの慣習にもっとも強い執着があるやに見えたほどです。
 近年までウルグアイの代表チームは6・3・2・4+5の並べ方を墨守していました。

 最近のサッカーマガジンで背番号特集記事があったそうですが、かつての割り振りの解説はどうなっていたんでしょう。

● アルゼンチン

 ワールドカップ本大会のように、幾日も公式戦が連続するときは、昔も選手個々に番号を与えて動かさなかったと思われます。
 アルゼンチンは1974年の西ドイツ・ワールドカップで、すでにアルファベット順に番号を決めていました。数人の例外的選手は別でしたが。
 これ以前にはイタリア風にディフェンダーから若い番号をつけていき、フォワードが一番大きい番号になるやり方もしていたようです。

 でも普通のときの考え方は、ウルグアイ同様に6・3・2・4+5だっただろうと想像します。

 1951年の英国祭、イングランドに初遠征して1−2で逆転負けしたとき、アルゼンチンは当然のように1から11までを着ていたようです。先制したこともあってか、きわめて守備的な戦いを演じたらしく、七名から八名を退かせてのじょうご型守備陣を敷いたといわれます。
 英国人評論家ジェフリー・グリーンが、このアルゼンチンのことを興味深い守り方だとしてこう評していました。

「右のバックのコルマンが …中略… 相手センターフォワードをマークする役を負い」
「センターハーフのファイナはだいたいの傾向として、アルゼンチンの攻撃時には中央下がり目からルーズに攻めに関与する」

 たぶんアルゼンチンのストッパーが背番号2番、中盤の中ほどに位置したファイナが5番を着ていたという意味でしょう。ストッパー・センターハーフではないだろうファイナのことを、番号が5だからセンターハーフと記したものと思います。ポジション名の代わりに背番号を入れて読めばわかりやすい。

 アルゼンチンはマン・マーク気味の守備をしていたようですね。さらに想像すると4番が右バックだったはず。
 ディフェンスの並びは、やはり左から6・3・2・4という概念が基本だったろうと思います。
 でもこのときは3バック的だったでしょうね。もしかすると3番がスイーパー的センターバックだったかもしれませんが、それならそう書きそうなものです。どちらかというとそちらよりは、6が少々上がり目で3が左バックだったのでは?
 ご存知の方はいらっしゃいませんか?

 WM的な陣形であっても背番号はウルグアイ型の伝統、と言ったらまずいんですかね、純南米的な古式イギリスの風習でしょうか、それに準拠して番号を割り振っていたのだろうと考えます。
 その後、アルゼンチンの変化はどうでしょうか?
 左から4・6・2・3と並べる慣行になったりしましたか?

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● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

背番号が欧州と南米で何故異なるか、拙宅この記事をご参考ください。多分こういう経緯だと思います。
http://mariott.blog21.fc2.com/blog-entry-96.html
そして、欧州では4番か6番がバックラインに下がってきたのではないかと思います。

posted by Mario | 2008-04-24 22:16

● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

>その後、アルゼンチンの変化はどうでしょうか? 左から4・6・2・3と並べる慣行になったりしましたか?
上の内容ではこの答えになっていませんね(笑)。 60年代以降のリベルタ杯などアルゼンチンクラブチームの記録を調べてみるしかなさそうです。 もうしわけありません。

posted by Mario | 2008-04-24 22:30

返.● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

Mario さんへ

早速どうもありがとうございます!

ご紹介いただいたページ、きれいな色分けで、でもちらちら派手すぎることがないセンスが見事ですね。感謝いたします。

その後のアルゼンチンの変化はご存知ありませんか。個人的には、その後の変化なんてないとも思うんですけどね。
ブラジルとあわせて、もう一回聞いてみることにします。なんか無駄そうですが。

あと、本筋の方は、ゾーン・ディフェンスだった2−3−5から、オフサイド改定を機に英国系とほかの一部のみWMへ、あとは2−3−5のままゾーンと対人マーク併用で第二次大戦へという構図にしておこうと思っています。
そちらも、よろしければ異論などお寄せいただければ幸いです。

よろしくお願いします、ありがとうございました。

posted by コリバノフ | 2008-04-24 23:02

● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

いにしえはいざ知らず、アルゼンチンの6番はCBの印象が強いですけどねえ。
86年のパサレラしかり、94年のルジェーリしかり。
左から3・6・2・4だと漠然と思っておりました。
左のソリンが3番、CBのアジャラが2番、同じくセンシーニ6番、右サネッティ4番の時代を見ておりましたもので…。

もっとも、3バックのビエルサのときにはサネッティは8番つけたりもしてましたが。

posted by 由比彰紀 | 2008-04-24 23:11

返.● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

由比彰紀 さんへ

どうもありがとうございます。

> 86年のパサレラ

たしか試合に出てないですね。それでも特別扱いだったのでしょう。ボルギが4とかボチーニ3でした…

> 左から3・6・2・4だと漠然と思っておりました

それがオーソドックスになっているとしたら、どんな事情だったのかを知りたいところですね。

たとえばウルグアイでも、モンテーロが4を好んだ時期には2が右バックになっちゃってました。でもまた戻ったのではないかと思います。

アルゼンチン向け仮説としては、上でちょっと触れた感じのようにWMの採用がいっときあって、3・2・4の最終ラインが一般化し、その後、欧州風に6が下がった、だとか、そんなような変遷の話はないでしょうか?

> 左のソリンが3

ソリン、左バックでしたか(笑)

> サネッティは8番つけたりも

右バックの4と同様、インサイドライト、つまり少々右寄りということで8では?

posted by コリバノフ | 2008-04-24 23:34

● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

へえ、面白いですね。Marioさんの図もわかりやすかった。

なんか動物の相同器官のように見えました。ポジション・チェンジも当時はその変遷に辿るような動きをしていたんッスかね?
一方で、ラッキー・アーセナルの4バックは南米の4バックと相似器官って感じですかね。6番と5番の動きがどうなのか気になりました。

posted by ブランク | 2008-04-24 23:48

返.● ウィング…ハーフ?

コメント投稿者ID :

ブランク さんへ

どうもありがとうございます。

> ラッキー・アーセナルの4バックは南米の4バックと相似器官

もしそうだとすると…
英国以外が正常進化で、3バック化の英国には、その前になんかの変異があったことにならないでしょうか?

posted by コリバノフ | 2008-04-25 05:01

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