2008年04月14日
◆ オフサイド変更は改悪だった?
相手が二名いるかどうかがオフサイドの基準、それが当然になって幾星霜もが過ぎました。以前の三名ルールならばもっと質の高いサッカーができたといわれても、そんな話に興味を持つのがむずかしい。 でもほかの事情があったので読み進めてみると、幸運にもそのオフサイド論はとてもおもしろい主張、考えてみたくなるものでした。 ふたりから三人へ変えたのは二十世紀前半で、もはや当時を知る人がいないのではという過去です。 その体験者が残した論考だとオフサイド変更は大間違い。改悪以上のこと、犯罪だとしていました。それを差し支えない程度に引用。 ————以下引用———— 新たなサッカー金脈への近道を、立派な老ジェントルマンたちはそこに見いだそうとした 彼らはひとつの語を変えてしまった。三であったのを今後は二に … 中略 … 一九二五年六月十三日、インターナショナル・ボードはパリの会議でオフサイド規定を変更した。 … 中略 … これが、かつてわれわれの知っていたサッカーに革命を起こし、早々に「安全第一」のゲームを生じさせ、徐々にではあれ明白な、英国サッカーの下降と堕落へつながった。
… 中略 … 百万人を超える英国のアマチュア選手が、そして何百万もの外国アマチュア選手たちも、もとのオフサイド規定に満足していたのだ、実のところ。さらに、ほとんどのプロ選手たちにとっても不平はなかった。しかし彼らを抱える経営者の多くは苛立っていた。 … 中略 … 〜、ある種の会社、フットボール・クラブとして知られる会社は、ますます貧血状態を呈してきており … 中略 … 経営陣はこのような病いを阻止するべく自問した。歓迎すべからざる景気に転じた原因は何か。 … 中略 … 彼らは、自らが拙劣な見方をしてしまうということに思いいたらなかった。そしてこう考えた。だめだ、ルールが、それが原因だ。特にその中のひとつが、と。オフサイド規定である。 彼らの見解によれば、オフサイドが突然に守備へ恵みを与えるようになり、攻撃を去勢し始めた。 … 中略 … その等式は、経営陣が理解できた限りではシンプルなものだ。無得点=無観衆。入場口が回転しなければサッカーは利益を生まなくなってしまう。商売の回復のため、オフサイド規定を変えるべきなのだ。 — 「サッカー・レボリューション」(ウィリー・マイスル)— ————以上、引用終わり———— ここまでだと罪にまではされてませんが… さらに続きますけど全文引用するわけにもいかず、抜粋の追加はまた後日ということにして。 ● オフサイド・トラップのせいで変更? ニューカッスル・ユナイテッドがオフサイド・トラップを多用し始め、それが広まりオフサイドがどの試合でも頻発、得点がとても少なくなったとの話が伝わっています。 ビジター・チームを乗せてニューカッスルに向かう列車が、停止位置を少々通り過ぎてしまったなどという伝説だってありました。 「おいっ、もうやられちまった、オフサイドだ!」 オフサイド・トラップ地獄? そんな状況にはまってしまい、まるでゴールを挙げられない。そこで気軽にオフサイド・トラップができないようにする。サッカー自体を健康にするため、真っ当な判断のもとに変えた、はず。 でもサッカーをやる側はプロ・アマともども、だいたいは「もとのオフサイド規定に満足」していたと書いてありますね。今となってはその実態はわからない。 ニューカッスルが発明したとかいうオフサイド・トラップに対し、ほかのクラブが抗議してルールが変わったなんていう話もあります。なるほど、選手ではなくクラブ経営層のみがルールにクレームをつけたんでしょうかね。 ● まちぶせ、由来 たいていのフットボール系ゲームには、オフサイドの類いが二十一世紀でも残っています。 その起源には諸説あるでしょうが、前方で待ち受けるのは卑怯だとする思考から来る、そういう理解が主のようです。それは事実でしょう。しかしその観点だけで論じられることが多すぎる気はします。 あたりまえのことですが、単にゲームの興趣のための事情があったでしょう。 たとえば。遠い昔は一点入るとそれでゲームは終ってしまったようですから、元来ゴールは難しいものだった。それが洗練されていく中で、やはりゴールが簡単ではつまらない、困難だからおもしろい、そんな感覚は残ったことと思います。 得点を難しくさせる狙い自体も当然ながらあったはず。 現行のサッカーが十九世紀に固まるころ、足を蹴りあうことが禁じられました。それが雄々しいフットボールの象徴とされてたころもあったようなんですが。 オフサイドは卑怯だとされていたが、それはつまらなくしてしまうからずるいという感覚が近いかもしれない。三人オフサイドが決まったのはゴールを難しく、おもしろくしておくためがメインで、懲罰的な意味合いは薄かったとする方が現実に近いような… ● 前方へのパスと組み合わせると 待ち伏せをどうしても嫌だといえば、ラグビーのようでなければ不純かもしれない。フォワード・パス禁止はオフサイドと呼ばないだけのことで、同種のものに違いないですね。それがノック・オンにもつながる。 アメリカン・フットボールで一度だけ許される、命のフォワード・パス。あの制限もオフサイド系統なんでしょう。 当初のサッカーはパスがあまり発達しておらず、ドリブル主体のゲームだったといわれます。 それでも、前方にパスをしてOKとすることで足を使う不自由なゲームに多様性をつくりだす、それを草創期の人たちはある程度意識していただろうという気がします。 同時に、そのフォワード・パスができるからこそ、オフサイドなしではつまらなくもあったんでしょう。 得点量産系統のバスケットボールやハンドボールは、フットボールと違ってオフサイドがありません。待ち伏せを厭うイギリス精神がつくったゲームではないからだということになるんですか? それはあるんでしょうね。 でも、狭い範囲で少人数が入り乱れる、そのかたち自体も影響してるでしょう。考案者はなんらかのオフサイドの知識を持っていて、だけど採用しなかったのだろうと思います。 サロン・フットボールも、ルールの統一化を進めるうちにオフサイドを採らないことになりました。 オフサイドをルールに入れない交錯ゲームはコートが狭くて速い? ● 大成功か 本の中には書いてくれていなかった昔のイングランド一部リーグの年間ゴール数をとりあえず足しました。 変更直前の1924-25シーズン。1,192。 変更直後の1925-26シーズン。1,703。 劇的に増えてました。 変えて間もないとルールに不慣れだから、それでこういう結果になるのでしょうけど、…それにしても極端な増加でした。
posted by ports |20:05 |
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この記事に対するコメント一覧
◆ オフサイド変更は改悪だった?
良エントリー。
確かにその時代に生きていたらゴールが少なくなるのは、華がなくなるから観客が減るって単純に思ったかも。
そう考えると、現行のオフサイド・ルールが生き延びてるってことはどういうことなんだろう?
待ち伏せはずるいって、みんな思ったから変更したんだとしても、しばらくしてゴールが入らないのはつまらないから戻すって言い出してもいいようなものだけど・・・、変更初年度が劇的に増えたから、ゴールが少なくなるとは思わなかったのかな?それとも単にそれはきっかけで、ゴールよりもゴールを決めるプロセスが楽しいって感覚が大勢を占めて戻すことがなかったのか?
実際、昔のオフサイド・ルールの試合と比べてみないと何ともいいようがないが、確かに考えてみると面白い。
今見たら、どっちのほうが魅力的なんだろう?
posted by ブランク | 2008-04-14 22:49
返.◆ オフサイド変更は改悪だった?
ブランク さんへ
どうもありがとうございます。
考えてみると面白い、ですね。
今のプレーにもつながりそうに感じますよ。どうぞお考えください。
> 実際、昔のオフサイド・ルールの試合と比べてみないと
> 今見たら、どっちのほうが魅力的なんだろう?
実地に見ることはかなわない。
それは当然なんですがその様子を描写したものすらも、あまりなさそうで困ります。外国ならあるかもしれませんけどね。
ぽつぽつと述べられた言葉を拾って吟味していくと、ある程度の骨子は浮かびあがってきます。あとは想像力ということですね。どっちがどうでしょうか…
posted by コリバノフ | 2008-04-14 23:53
◆ オフサイド変更は改悪だった?
フォンテインは昔のフランス代表選手ですが、映像で見たところ、ハーフウェイぐらいから裏をとって、ドリブルで独走してましたけど、このころってオフサイドあったんですよね?
そういえばゲルトミュラーが現代サッカーはラインが高いから、自分なら年間70決められると豪語していました。
フォンテインが私のころとは守備のレベルが違うからW杯の記録はロナウドたちとは比べられませんよと謙虚だったのと対照的でした。
posted by レイモンコパ | 2008-04-15 17:19
返.◆ オフサイド変更は改悪だった?
レイモンコパ さんへ
どうもありがとうございます。
どんな試合だったのでしょう?
たぶんオフサイドは1925年以来変わってないだろうと思いますよ。
90年代にからだひとつぶんずれて、あとはボールに関与しただとかの解釈くらい?
「私は若い選手諸君に、ジュスト・フォンテンをモデルにしなさいと助言したい」
ワールドカップ得点王になったときのフランス代表監督はこう書いてました。見たことない人ですけど、意欲の高い選手だとか…
ミュラーは、これまでのところは絶後の異才でしょうかね。
posted by コリバノフ | 2008-04-15 19:07


