2008年10月28日
♪ラインの白銀 再び。世界に冠たり西ドイツ
不尽のライン滾滾として来たり、無為の目線ペラペラと過ぐ — ? —
昔のつたえは そぞろ身に染む わびしく暮れ行く ラインの流れ —「ローレライ」(ハインリヒ・ハイネ 近藤朔風 訳)— シャルカー・クライゼルの伝説というのがあります。シャルケのこま。これはおそらく、ウィーン式の流動スタイル・サッカーを指し、その類いのサッカーで、ドイツ領の多くの人に記憶された高レベルのものとしては、たぶんシャルケが最初なんだろうなと考えます。 それは、下記で触れました。もはやドイツにも、理解できている人がほとんど存在しないかという感じですね。第二次大戦前の話です。 ● ラインの白銀【ドイツの0トップ=伝統工芸(?) こま】 http://www.plus-blog.sportsnavi.com/ports/article/114 時代はずっと下り、1970年代のこと。ライン川流域大聖堂の町、ケルンのチームは、当時の強豪クラブでした。毎シーズン、スタート時は順位表のテール・エンドあたり。それが、終盤になると優勝も可能かというまでに勝ち点を積み上げていく。しかし、上位チーム同士の勝負では負けることが多い。そんな感じでしたね。後に、奥寺選手がプレーしました。 このチームが、1973年に初来日します。 これにも、下記で若干言及し、閲覧できる情報を記しておきました。 オシムらくはトータル ・フットボール旧式? http://www.plus-blog.sportsnavi.com/ports/article/74 こんな話が見つかります。 「〜、どの選手もそのポジションに関係なく、攻撃と防御の双方を完璧にしなければならない。… 中略 … バックの選手も中盤を組み立て、また攻撃に参加し、そして得点できなければならない。同時に、どのHBおよびFWにも、守りに回ったときには、確実に相手の攻撃を止めることが要求される。 … 中略 … 特に、それぞれが高度な個人技を持っている1FCケルンにあっては、これが実現できるだろう。… 後略 …」 — ルディ・シュロット — これが、1973年に来日したケルンの監督の言葉です。一番強調したのは「特に、それぞれが」以下の部分だったとのこと。 このときのことはほとんど記憶してませんが、ヴォルフガンク・オベラートが主将で、この名選手は、ときに「歩いてプレーしてる」というのが学校で話題になりました。ほかには代表選手のクルマンがおり、レールやヴェーバー、そして薄幸の名手、フローエも含まれていたかもしれません。 日本でちょっとしたセンセーションになった彼らの手法は、誰もが流動的に攻め上がるというものです。 当時の日本リーグでも、特定のフルバックやスイーパーが攻撃参加する場面はありましたが、それとは異質とされました。機を見て誰かひとりが上がっていく類いの単発タイプではなく、オーバーラップした選手を、また別の選手がオーバーラップしていくような重奏的なもの。 シュロット監督曰く、ケルン独特の特徴だと思う、とのことでした。しかしこれは近い時期のテレビで、ボルシアMGやアイントラハト・フランクフルト、バイエルンにも見られたものです。ほかのクラブにも同種の動きがあったように思います。 ケルンの場合は、強力なストライカー不在が主要な原因で、代わりに才能ある選手が多かったからこのような試合をするのだということでした。才能というのはオールラウンドにプレーできる点と、強調していた個人技の高さなどを含んだ意味合いだろうと思います。ポリバレ的な新語表現は好まれず、言説の文学的意味はなにかとか、そんな論議はなかったんじゃないかという気がしますね。 「ドイツのチームというのは、昔はイングランドと並んでヘディングが強かったものですが、テクニックが向上すると空中戦はなぜか弱くなりましてね…」 1970年代、ダイヤモンド・サッカーに西ドイツのリーグ戦が登場するようになり、解説の岡野さんはこんな意味のことを話していたと記憶してますが、違うでしょうか。 西ドイツの、1970年を挟む十年前後の世代には、きわだった名手たちが散らばっていました。 西ドイツ育ちの人たちが巧みなドリブルをしたり、縦の壁パスや三人目の動きなど、ポジションを入れ替えながらのコンビネーションを主要な武器として使いこなし、何点とられようが一点多くとる。そんなことがあったとは、二十一世紀の統一ドイツ選手たちからはイメージし難いかもしれませんね。 以下、当時の西ドイツについての論調を、世界最高峰の批評家と目された、エリック・バッティの記事からひろってみます。 「 〜 西ドイツこそ、現在世界のベスト・チームであると位置づけられそうだ」 「 〜 現在、世界サッカーの見地からは、西ドイツは正に世界に冠たるものがあり、ウェンブリーで見せたその技術や才能、チームのムードや気分からも、一九七二年欧州選手権にふさわしく、間違いなく一九七四年ワールドカップの最有力優勝候補である」 これは、1972年欧州選手権、イングランドを破り、決勝大会(4か国)に臨むことになった時点。 以下は、欧州選手権優勝時のもの。 「 〜 しかし、更に重要なことは、彼らの勝ち方だった。… 中略 … これまでのどのヨーロッパのチームと比べても最もブラジルに近いといえる、南米スタイルの質のサッカーを生み出していたことである」 このブラジルというのは、一般的な意味よりも、1970年メキシコ・ワールドカップを制したチームの攻撃を指していると思えます。 「 〜 優美で流れるようなフットボールに感銘を受けない批評家たちはいなかった」 「 〜 西ドイツは、また現時点において全世界における最高のチームであることを私はかたく信じてやまない」 ブラジルが低落し始めるかという時期で、この意味するところは、チャンピオンズ・カップ連覇中の、アヤックスを凌駕するクォリティだということのはず。 「 〜 ただ最高調にありさえすれば、ブラジルが西ドイツと対抗しうる唯一のチームといえるだろうが、… 中略 … ペレの働きをはずしてのブラジルでは、私は彼らが西ドイツに対抗しえようとは思えない。まして、勝ちうるなどということは…」 このころの西ドイツ・スタイルは、ドリブルと壁パスを、長短のパスと織り交ぜたもので、世代の若い人によっては、アルゼンチンのようなプレーだという場合がありました。 立ってつなぐ「パスサッカー」とは異質で、相手のほころびを待って慎重につなぐ「ポゼッショ〜ン」とは別物… そして、スローガン好きの低俗(?)マスコミは、この西ドイツを指して、「トータル・フットボール」なる形容を、初めて使用したようです。そのことも、「オシムらくはトータル ・フットボール旧式?」に書きました。
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