2008年07月15日

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

 先日の欧州選手権では、どのくらい動いていたのか?

20080721-01.jpg


 上図はドイツ対スペインの決勝戦です。ごちゃごちゃと見づらいものの、ポジションごとの違いは、わりと見渡しやすいかな、と。交替した選手のペアを組み合わせたので、いっそう混雑してしまいましたが…

● どういう数字なのか

 これはUEFAのWebページからひろった数字です。日本語ページでは「走破距離」と表記され、英語ページでは"Distance Covered"でした。これは、普通、走行距離と言い習わしていたものだろうと思います。
 走っていない「歩き」なども含めた、試合中の移動距離の全体を表したものでしょうね。アウト・オブ・プレーの間に歩いた距離も入った、試合時間中の総量のはずです。欧州選手権では、追尾カメラ(?)を使った算出をしていたらしい。

 同種のものとして、下記もご覧ください。3月のドイツ対スイス戦での、バラックの動きを、5分刻みでグラフ化したもののようです。
 欧州選手権の正規スポンサー、カストロール社がスポンサードするWebページらしく、データ採取方法も、本大会と同一かなと思えますが、詳しいことはわかりません。

 http://www.euro2008statistics.com/2008/06/08/germany’s-playmaker-michael-lazy-that’s-ballacks/ballck-distance-covered/

 このデータは、やはりアウト・オブ・プレーの間も含めた、試合中の移動のすべてをとらえたもののようですね。たぶん、5分刻みよりも、もっと細かく区切っているだろうと感じます。速度も計算しているのではないでしょうか。

● イン・プレー時間? アクチュアル・タイム? 実働時間

 アウト・オブ・プレーの時間というのは意外に長く、たいていは一試合の半分前後、いや、昔は半分以上がアウト・オブ・プレー時間だったと思います。イン・プレー、実際のプレー時間は、90分のうち、40分前後だったか…

 今は、50分くらいにはなるようです。90分のうち、一時間近くがイン・プレーという場合も。いろいろ要因はあるでしょうが、たぶん、1990年代なかばあたりからの、マルチ・ボール・システムの影響により、ずいぶんと実働時間が増えたのだろうと想像します。
 ボール1個だけで、破損したら審判の判断で予備ボールを使う。それが今でも正式ルールなのではないでしょうか。下々の試合では、たくさんのボールも、ボール・ボーイもありませんからね。上位クラスの試合だけ、ルールを運用改定しているのかもしれません。

 サッカーに対してフットサルでは、タイム・キーパーがアウト・オブ・プレーの間、時計を止めます。ということは、20分ハーフのフットサルは、45分ハーフのサッカーと、せいぜい10〜20分しか、イン・プレー時間は変わらないわけですね。

 サッカーでは、アウト・オブ・プレーに際して走ったりすることは少なく、移動距離も少なめだとは、想像できるでしょう。それになにより、イン・プレー以外での移動を除外できる資料がありません。乱暴ですが、アウト・オブ・プレー中の移動は、限りなく0に近いと見るしかなさそうです。
 事実は、コーナー・キックの折りに、ディフェンダーが長駆、相手ペナルティ・エリアに進出したりします。また、移動0だとしてしまうと、50分で10,000m以上を移動してしまうことになり、ちょっと速すぎるようですが、まあ、仕方なく、いい加減にとらえておきます。

● ポジションごとの傾向を、あらためて探る

 図から走行距離ベスト5を抜き出すと、こうなります。

 - シャビ			  11,446m
 - シュバインシュタイガー
				  10,637m
 - バラック		  10,242m
 - マルコス・セナ	  10,036m
 - イニエスタ		   9,595m

 交替した人たちは、ひとり換算をするのが困難なので、除外です。


 ゴールキーパーが極小なのは当然ですね。そして、ミッドフィールダーが一番多く、守備の選手が少なめ。これも予想どおりですね。
 ふたたび同じ図です。

20080721-01.jpg

 守備陣は、自分のゴールを背にして相手に対する。一方、攻める側は、外から中に入り込もうとするわけです。だから、外径に攻め手、内径に守備者という感じで、自然と守る側の移動は少なくなりますね。
 守備者の走行距離が増加するかどうかは、攻撃参加、組み立て参加の多少によるところが大きいのではないでしょうか。中央のバックが外側のバックよりも少なめなのは、マーク相手の移動量も関係あるでしょうが、さらに、組み立て・攻撃のために上がっていくという部分が、もっとも影響しているかなと思います。
 そのあたりは、ほぼ守備専従要員だったスペインのセンターバック2名に対し、昔風のアタッキング・センターバックを試みかけていたドイツのメッツェルダーが、少々多めの走行距離になっていることからも頷けます。
 まあ、なにげなくメルテザッカーも若干多いようですが、偏見により、あまり気にしないことにします。

 決勝では、両チームともセンターフォワードが途中交替してしまいましたが、単純にそのペアを足して、気持ち、その距離を適当に割り引いてみたりすると、攻撃陣の中では走行距離が少ないことになりそうです。攻撃選手としては、内径に一番近いわけですから、相対的には少なくなりがちでしょう。
 この試合、どちらも左右に流れたりするスピア・ヘッドでしたが、トップで待ち受けというのが基本姿勢ではあったでしょう。このあたりは、流動的センターフォワードとは大きく異なり、走行距離が少なめになるのは当然ですね。

 そして中盤選手の運動量が相対的に多くなるというのは、古今、変わらぬ傾向。攻守両面で動かねばならないので、これは仕方ないことでしょう。

● 比較的運動量の少ない試合?

 この決勝戦は、やや走行距離が少なめだったようです。ゴールキーパーを別にして、フィールド・プレーヤーの合計が、100kmを超えるくらいが普通らしいので。双方、決勝まで勝ち進んだ疲労の蓄積があるでしょうし、後半になっての、ドイツ攻撃陣の工夫のなさ等も、あるいは影響があったのかも。
 この試合の走行距離だけを単純にながめれば、日本選手がかなり上回ってみせることは、充分可能に思えます。まあ、走り勝つというのは、質やタイミング、方向や同期性が重要でしょうが、総量で大差をつけられるなら、それも大いに有効かなと考えられますね。
 ドイツとスペインの、決勝に来るまでの試合もザッとながめてみたいところですが、ここで終えます。

 続きはこちら…


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走行距離 98WC (キロメートル)

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アルゼンチン戦 中田  10.26
          山口   8.49
          城    11.83

クロアチア戦   中田  13.39

ジャマイカ戦   中田  12.98

posted by 杉本 | 2008-07-15 19:27

パススピード (メートル/秒)

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                  前方    後方
外国人    15,1     15.0    15,3

日本人    13,6     13,6    12,6

ユース    12,6     13,4    10.8

98 Jリーグ ナビスコ Jユース 4試合
「中盤で」 「インサイドキック」 「グラウンダー」
の「中距離」パス。

posted by 杉本 | 2008-07-15 19:34

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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ありがとうございました。フランス・ワールドカップだと、すでにマルチ・ボールだったでしょうね。米国大会以前、さらにその十年前とか、推移があると一番いいですね。各種論文を探せば、たぶんいくつか研究があるはずでしょうけど。

欧州選手権の試合ごと実働時間、出してるはずですよね。一覧表でも公開してくれるとありがたいんですが。
ボール支配時間を双方たすと、70分を超える試合とかもありました。「一時間近くがイン・プレー」という感覚をオーバーして、一時間十分くらいの時代が来るかもしれませんね。

三、四十年前の、イン・プレー時間の計測値なども、きっとどこかに多数あるんでしょうけど…

posted by コリバノフ | 2008-07-15 22:36

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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なるほど、アクチュアル・タイムっていうのは考えませんでした。確かに、マルチボール・システムで実働時間が増えてれば、走行距離も伸びますよね。

それを踏まえて、「スピード」を考えないといけないわけッスね。

この辺りの研究って、近代なのはあっても昔と比較したものっていうのが見つからないんですよね。協会とかはもっているんでしょうが・・・。

posted by ブランク | 2008-07-15 23:14

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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走行距離が長くなる事で疲労してしまい、
選手生命が短くなることってあるでしょうかね?

posted by ノ良 | 2008-07-16 12:44

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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> 協会とかはもっているんでしょうが・・・

たくさんあるんではないかな、と。

> 選手生命が短くなることってあるでしょうかね?

影響あるかもしれませんね。まあ、試合間隔が短いとか、そのほかとからみあって、けがをしやすくなったり、そんなことはありそうな気がします。

posted by コリバノフ | 2008-07-16 20:11

小学生や中学生は?

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1、 全日本少年サッカー大会  7.8 キロメートル
   (1978-81)

2、 全国中学校サッカー大会  9.6 
   (1978-81)

3、 U17               9.7
   (1993・日本開催)

4、 U17               9.4
   (1995・エクアドル 高地。首都キトは 2800M)

5、 ワールドユース        10.6
   (1979)

試合時間を 90分としての1試合の「走行距離」

posted by 杉本 | 2008-07-22 19:30

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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1993年、これは、マルチ・ボールでないかもしれませんね。でも、キック・インなど、試行ルールが盛り込まれた大会だったような感じも…
1995年、このころになると、主要大会ではマルチでしょうか。

しかし、ボール1個の1979年で 10.6km。これはチーム平均でなく、特定の中盤選手かなという気がしますね。
少年、中学の大会というのは、六、七十分を、九十分換算した…
ありがとうございました。

posted by コリバノフ | 2008-07-22 22:11

U17 1993

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キックインが 試行された大会です。
財前、船越、中田、
カヌー。

posted by 杉本 | 2008-07-22 23:33

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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船越、思い出しますね。彼目がけて「ハイ・ボール」。日本が一番工夫した戦術が、これ。ということもなかったでしょうが…

スローインというのは、各チーム、一試合に二、三十回はあろうかというのに、あまりアイデアを注がれなかったりします。

で、五十年以上前の英国では、ウィングハーフがスロワーになる慣習があったそうです。
ハンガリーに敗れる試合では、すべてがウィングハーフによるものではありませんが、しかし、やはりライトとディキンソンが、スローインをしようとする傾向は顕著な感じです。

慣れというのは、おそろしくもあり…

posted by コリバノフ | 2008-07-23 00:10

スローイン

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>ハンガリーに敗れる試合では<

ハンガリーも プスカシュが スローイン多いので
この時代は 
「ゲーム・キャプテンが スローインをする」 ?
という慣習が あったのかと 思いました。

スローイン戦術では オフサイドに ならないので
DFラインの裏、わざと ゴールライン際 で受けて・・・。

私の得意技は
ゴールの裏を グルリと 回ってうける
というせこい戦術。
草サッカー戦術です。

ユーロ08 ロシアーオランダ 3点目 スローインから
アルシャビンが オフサイドに走りこんでます。

posted by 杉本 | 2008-07-23 07:01

一流の運動量 ドイツとスペインをながめて

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3点目は、わりと見え見えだったと思うんですが、たしかディフェンダーがふたりいて、ちょっと集中を欠いていたかもしれませんね。とにかく、効果的でした。

> 「ゲーム・キャプテンが スローインをする」 ?

ウィリー・マイスルは、スローインの回数や、アウト・オブ・プレーの時間など、メモしながら観戦する場合もあったようです。で、単にもっとも近い者が、「早く」投げ入れろという主張がありました。コーナー・キック以上に役立ちもする、と。
なぜウィングハーフがスロワーなのか、その由来に関しては、書いてないみたいです。

スローインがコーナー・キックより有用だとする考えは、キック・イン試行大会の日本の戦術とは、真っ向から対立しそうです。

それから、医療体制を批判してもいましたね。すぐに運び出して、適切に手当を施すように。

イングランド対ハンガリーでは、ライトの負傷時、外で治療して、ゲームは早速再開するべきで、モーテンセンが倒れていたときに、搬出したのがハンガリー選手たちだったのは、いったいどういうことだ、みたいに。
そして、ラグビーのやかんじゃないですけど、衛生的に、医学的に、処置をするべきだと。

ほかにも、交替制度正規導入の試案とか…

posted by コリバノフ | 2008-07-23 19:13

負傷交代は いつから?

コメント投稿者ID :

>交替制度正規導入の試案<

選手交代が 認められたのは いつからでしょうか?

66WC ブラジルーハンガリー
交代は 認められず。 
後半なかば 明らかに鎖骨骨折か肩関節脱臼のDFが 
プレー続行してしてました。

70WC から 選手交代が 2人でしょうか?
独ー伊 ヘルトとリブダが 交代してます。
70年は 2人?
74WCは?

現在は 交代3人ですが 
5人交代を 試行しても 面白い。

posted by 杉本 | 2008-07-23 20:58

メヒコ、どちらか

コメント投稿者ID :

それはもう、メキシコ・ワールドカップでしょう、と。
リブダ、ヘルト、レーア、グラボウスキ、西ドイツがウィングばかりを複数使い、「戦術的交替選手」ですねーと、岡野さんがダイヤモンド・サッカーで…

でも、牛木さん、中条さんの話では、メキシコ五輪からとしているかもしれません。一名は入れ替え可能だったらしいんですよね。
が、たぶん、正規のIBルールだと、承認した初めての統一交替ルールは、二名、いつでも、負傷でなくとも、だったんじゃないでしょうか。
つまり、メキシコ五輪あたり(含む予選)は試行ルールで一名、メキシコ・ワールドカップから正式に、二名では?

1950年代前半、マイスルが提案していた負傷交替制度は、15分(?)以上退いていたら、新たな選手が出て来れるというものです、たしか。
これは、「負傷交替」の真実性に拘泥し、虚偽の負傷申告を問題にする人が、英国には多かったからだそうです。15分も1人欠いて試合をしてまで、いんちき負傷を演じまいということ。
で、逆にこうであれば、負傷してなくてもよしとすると、マイスルは書いていたような。上の状況に陥ってまで新たな選手を入れようというなら、別に、ほんとの負傷でなくてもいいだろう、と。
あと、ゴールキーパーのみは特別枠で負傷交替させるとかだったと思います。

posted by コリバノフ | 2008-07-23 21:25

メヒコ違い

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1968年メキシコ・オリンピック本大会では、交代2名だったようです。というよりも、そうした記録があります。

1名というのは予選段階のことで、どうやら五輪本大会は、1970年ワールドカップ同様のルールみたいです。
そうであれば、試行ではないかもしれず、また試行であっても、五輪からワールドカップへと、同じ規定で流れているのなら、IBが改訂したかどうかは、さほど問題ではないかもしれませんね。

posted by コリバノフ | 2008-07-23 22:04

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