2008年04月11日

【UEFAカップ】青い涙が流れた日。

試合終了後、アボンダンシエリがユニフォームに顔をうずめて泣いている。
同じアルゼンチン代表のデミチェリスに抱きしめられると、
その涙はさらに勢いを増した。

コリセウム・アルフォンソ・ペレスがあんなにも揺れた夜はないだろう。
あれほどの狂気・涙・感動に…。

数々の金字塔を打ち立ててきた、白い巨人レアル・マドリー。
スペイン一とも言われる熱狂的ファンを持つ古豪・アトレティコ・マドリー。
この2チームに次ぐマドリーの第3勢力、それがヘタフェである。
クラブ設立は1983年。歴史も浅く、資金力にも乏しい地方のクラブだ。

それでも、現会長であるアンヘル・トーレスの陣頭指揮の下、
着実な成長を遂げてきた。その基本コンセプトは、「育成」。
「育てて送り出す」という中堅クラブの宿命たる経営方針を忠実に守りつつ、
それぞれの選手を大きく成長させてレンタルバックすることで、
少ない資金でのクラブを経営している。

シュスター(現レアル・マドリード)、キケ・フローレス(前バレンシア監督)などの
知将に恵まれたことで、
これまでには、ペルニーア、アルビオル、ガビ、アレクシス、グイサ…。
そして、今シーズンのチームには、
デ・ラ・レッド、グラネロ、パブロ、2度目の武者修行となるガビラン…。
リーガ・エスパニョーラの舞台で輝く選手たちが生まれてきている。
名門クラブゆえの重圧も少ないためか、のびのびとプレーできるようだ。
育てて売るクラブとしての実績は、ここ数年で申し分ないものとなった。

昨シーズンの国王杯ではバルセロナを破って決勝進出。
決勝ではセビージャにこそ敗れたが、そのシーズンのUEFAカップで優勝。
今シーズンのUEFAカップ出場権は、いわば「タナボタ」的なものだった。

それがどうだろうか。スルスルと勝ち上がり、あっという間に準々決勝。
相手はバイエルン・ミュンヘン。
チャンピオンズ・リーグを戦っていてもおかしくないドイツの巨人だ。
力の差は歴然。当然、ヘタフェもこれまでかと思った。

アリアンツ・アレナでの第1戦は1-1でのドロー発進。試合終了間際、コントラが追いついた。

そして昨日、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでの第2戦。
数多くの奇跡が生まれた夜だった。

開始5分で10人になった中で、ドリブルで道を開き先制点を奪ったコントラ。
試合終了間際に守り続けたヘタフェのゴールをこじ開けたリベリー。
終了間際の失点でも眼が死んでいなかったヘタフェの姿。
延長キックオフしてすぐのカスケーロ、ブラウリオの2ゴール。
アボンダンシエリのキャッチミスを見逃さなかった、ルカ・トーニのしたたかさ。

そして、奇跡の120分の最後を彩ったのは、
長きに渡ってヨーロッパのトップクラスに君臨してきたドイツ王者の意地。

試合終了後、ラウドルップは胸を張って言った。
「ヘタフェはスペインサッカー界の歴史となった」
いや、むしろ、ヨーロッパサッカー界にその名を刻んだんだよ。

ヘタフェという街は、本当に小さな小さな街だから、
選手との交流も盛ん。ファンの集まるバルに、選手がヒョコッと顔を出すこともあるらしい。
収容人数17000人というスタジアムの小ささも相変わらずで、
チケットを持たずとも裏山から観戦ができるようだ。

デミチェリスとの抱擁の後、
センターサークルあたりで、アボンダンシエリはがっくりと両手で膝をついた。
そんな彼の肩をポンッと叩いたのは、ボールボーイを務めていた男の子。
どれだけ強くなろうとも、
地域クラブゆえのアットホームさ、これこそヘタフェの魅力である。

水曜日には国王杯の決勝が控える。
国王杯を勝ち取れば、来シーズンもまた同じ舞台で戦えるのだ。

美しく散ったヘタフェは、ヨーロッパの舞台から去る。
青い涙を流しながら、でもしっかりと顔を上げて。

  • 共通ジャンル:

posted by pishaaaa14_07-08 |23:01 | UEFAカップ | コメント(0) | トラックバック(1)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加