2010年02月15日
人生一路 ~ バンクーバーの空に向かって
四年越しの再会 冬季五輪が閏年に開催されなくなって久しいが、IOCにすれば夏季大会との「テレコ開催」が都合がいいのは百も承知だが、私個人的にはいい迷惑である。 なぜか? サッカーW杯と開催年が重なってしまうからだ。お陰で毎回、開催の前年には「W杯に行くか、五輪にするか」と葛藤が起きる。同年同時観戦は懐事情が許さない。この二大イベントを現地観戦すると合計で1人当り100万円くらいになってしまう。連れを同伴させたら200万円だ。それはありえない。ゆえに、毎回「来年はどっち?」と前年から悩むことになるのである。 1998年と2002年はその葛藤とは無縁で済んだ幸運な4年間だった。98年は冬季五輪が、02年はW杯が各々日本開催だったので旅費が浮いた。 問題は06年だった。 五輪はトリノ、W杯はドイツだった。つまり両者とも海外だったのだ。その選択は相当に逡巡した。 このときの日本フィギュア界は「バブル前夜」ということもあり、特に女子は空前の注目度だったことは今も記憶に新しい。村主選手には集大成の演技を、荒川選手にはドルトムントの再現を、安藤選手には次代の跳躍を各々期待し、トリノ五輪には胸をときめかせていた。日本フィギュア陣の活躍に胸踊る初めての五輪だった。もともとトリノには観光で行ってみたかったというのもあった。 一方で06年のW杯も相当に魅力的だった。まず欧州開催というのがいい。やはり本場で開催されるW杯というのは捨てがたい。日韓共催となった02年大会が物足りなかっただけに欧州に惹かれた。そして、そのときのチームも魅力的だった。結果こそ伴わなかったが、私はこのときの日本代表が好きだった。94年米国大会を目指した代表(通称・オフトJAPAN)と並んで思い入れが深かった。 結局、トリノはチケットを入手できなかったという凡庸な結末が、初夏のドイツ・ツアー(しかもドルトムント^^;)に落着させた。 あれから4年。葛藤のシーズンが再びやってきた・・・・。 というわけで、今回はやはり五輪プレビュー企画。題して、 祝・バンクーバー五輪開幕! 結婚してますますキレイになっちゃった八木沼純子さんの解説が隠れた楽しみかもスペシャル 民放のバラエティ番組のようなタイトルにしてみたが、いかがだろうか^^; (八木沼さん、ようやく歯を治されたようで、誠に喜ばしい限り!) 当ブログの前回のエントリーはGPファイナルの後だったが、その後日本を始めとして各国のナショナルチャンピオンシップやISUチャンピオンシップが相次いで開催され、各国の五輪代表が次々と選出されている。 ナショナルチャンピオンシップは例年、各国ともISU公式戦よりも高めのスコアが出る傾向にあることは知られているが、五輪シーズンは特にその傾向が強いように思われる。その試合が五輪代表の最終選考会となる場合は尚更だ。五輪選考会を兼ねた国内大会での出血大サービスぶりは、藤森美恵子ISUジャッジの言葉を借りれば「オリンピックで頑張ってこい」というハナムケだそうで、優勝者のスコアは特に跳ね上がるらしい。いわゆる景気づけといったところか。選手、スタッフ、協会役員はもとより、メディア、スポンサー、エージェント、そしてファン、さらには取り巻きの外野まで、ありとあらゆる人々が進軍ラッパに鼓舞される。 五輪開幕前夜、今回は実質的に各国の五輪代表選考会となった各ナショナルチャンピオンシップと五輪前の最後のISU公式戦をレビューし、五輪に集う選手たちへのエールとしよう。但し、レビュー対象となる大会数が多く、五輪開幕も迫っているので、駆け足で有力選手の演技印象を中心にサマる次第。各選手の演技の詳細なレビューはまた別の機会で・・・・。 第78回 全日本フィギュアスケート選手権 2009 2009年12月25-27日 大阪府立門真スポーツセンター (なみはやドーム) GPファイナルで既に五輪代表内定を得ていた安藤美姫、織田信成両選手にとってはモチベーション維持が難しい大会だったろう。メディアもファンも残枠の男女各2枠の争いに注目が集中したのは仕方のないこと。(アイスダンスの1枠争いも実質的には無風) トリノ五輪最終選考会を兼ねた05年大会は女子だけだったが、今回は男女とも「景気づけ」の大会となった。但し、関係者のせっかくの景気づけも「贔屓の引き倒し」とならないように願いたいところ。ジャッジの方々はここまで気前良くスコアを出すことが選手に対するエールになると本当に思っているのだろうか。高橋大輔選手が高スコアに浮かれていなかったところは頼もしいが・・・・。 全国ネット中継を担当するフジテレビは東京・新宿の地下コンコースで写真展を開催するなど、例年以上に番宣に力を注いだが、ジャッジの景気づけは視聴率アップにも奏功したのだろうか。 参考までに、五輪代表選考がかかった05年大会と今回の番組平均視聴率を比較する。比較は、両者とも最高視聴率を獲った最終日の女子FSで比較。(放送日はともに日曜日の19時~21時台) 関東地区: 05年 33.7% 09年 28.9% 関西地区: 05年 26.1% 09年 27.1% 名古屋地区: 05年 33.2% 09年 34.2% 三地区加重平均: 05年 31.8% 09年 29.1% (いずれも世帯平均) これは意外。メディアが大騒ぎしている割には視聴率は上がっていない。それどころか加重平均すると寧ろ下がってしまった。それにしても関東地区の視聴者は移り気だ。他地区に比較して明らかに視聴率が下がってしまった。まさか安藤、織田両選手が内定済みだったことが代表枠争いの興味を削いでしまったわけでもなかろうに。もちろんこれでも十分に高い視聴率ではあるのだが。 以上のように全日本は地上波で全国中継されたので、今更の大会レビューは割愛。最終決定された代表選手にエールを送ることで先へ進みたい。 織田信成、安藤美姫、高橋大輔、小塚崇彦、キャシー・リード、クリス・リード、浅田真央、鈴木明子の各選手におきましては、バンクーバー五輪日本代表に見事選出され、おめでとうございます。(選手名は代表決定順) 来るバンクーバー五輪では心置きなく、納得のいくように演技されんことを願って止みません。 ロシアフィギュアスケート選手権 2010 Russian Figure Skating Championships 2010 Dec. 24-27, 2009 Sports Palace “Yubileyny”, Sankt-Peterburg 09/10シーズンのロシア選手権は全日本と完全に日程が重なって開催された。ロシア選手権は開催日が固定されていないようで、シーズンによってバラバラ。年末~年始の開催と流動的だ。今季は09年末の開催だったが大会名称で「2010」を使用しているのもそのためだ。 ロシア男子の五輪枠は2枠。これを実質的にはエフゲニー・プルシェンコ、セルゲイ・ヴォロノフ、アルチョム・ボロドゥリンの3人で争うという構図。今大会の注目の中心はやはりプルシェンコ。GPではロシア杯だけの出場で、その後に足を痛めたという情報もあったので、ロシア選手権での演技が注目された。詳細なプロトコルが入手できていないのでスコアの概要と映像を見ての感想をレビューとする。 エフゲニー・プルシェンコ Evgeni PLUSHENKO SP: TES54.05+PCS46.04=TSS100.09 (1位) FS: TES79.00+PCS92.50=TSS171.50 (1位) 総合 271.59 (1位) 「恐れ入谷の鬼子母神」という言葉をプルシェンコは知っているだろうか。とにかく私には笑うしか手がない。 もちろんこれはISUスコアではないから、国内選手権らしく気前の良いジャッジが奮発した「参考記録」には違いないが、恐れ入谷の鬼子母神なのである。特にPCSが凄まじい。SP、FSとも平均9.00以上だ。やはり笑うしかないだろう。 笑ってばかりもいられないので映像を見ての感想をひとくさり。 やはり笑ってしまった。クワッドってこんなに簡単だったっけ?と思わず声を上げてしまうほど精度の高いクワッド。SPでもFSでもクワッドをいとも簡単に跳んでいる。ランディングもピタリと決まる。回転不足の心配は微塵もなし。ただし、SPでは4T+3Tだったが、FSでは4Tはソロのみ。コンビネーションも2回だけ(もう1回可)。つまりジャンプ構成はそれほど高難度でもない。織田選手のプログラムの方がジャンプの難度は高い。FSの後半では疲労のせいか3Sでステップアウトもしている。スピンは姿勢も工夫されていて軸もきれいで良かったが、ステップはパトリック・チャンあたりと比べるとちょっと古臭く見えてしまう。上体の動きがあまりないのだ。ミスもあったし、プログラム構成もわりと普通の感じというのが全体的な印象だ。 PCSについては笑うしかない。なんてったって平均9.00以上だ!感想は差し控えたい。感想を述べる方が野暮だろう。 プルシェンコの演技はロシア選手権だけを見ればスコアほどには驚くものではない。確かに4シーズンぶりの競技会の演技としては賞賛に相応しいが、スコアは国内選手権であることを考慮に入れるべきだ。確かに正確なクワッドは驚異的だが、プログラム全体の出来栄えとしては五輪のメダル争いで抜きん出ているかと言えば微妙だ。少なくともライバルたちは警戒はすれど恐れはしないだろう。 もっともプルシェンコにとっては、五輪も含めて修羅場をくぐりぬけて来た百戦錬磨の経験こそが最強の武器なのだろうが。 2010 カナダフィギュアスケート選手権 2010 Canadian Figure Skating Championships Jan. 11-17, 2010 John Labatt Centre and Western Fair Sports Centre, London 今季は五輪シーズン、しかもカナダにはメダル有力選手がいるということで、J sports でカナダ選手権が放送された。注目は男子がパトリック・チャン、女子はジョアニー・ロシェット。ともに不調だったGPからの修正状況がチェックポイント。 結論から言うと、カナダでもロシアに続けとばかりに見事な椀飯振る舞い。但し、カナダの方が少しは節度があった。チャンもロシェットも出来は良かったからだ。 チャンは怪我のせいもあってGPで精彩を欠いたが、本大会では仕上がっていた。 パトリック・チャン Patrick CHAN SP: TES47.72+PCS42.42=TSS90.14 (1位) FS: TES88.78+PCS89.10=TSS177.88 (1位) 総合 268.02 (1位) チャンのプログラムには例によって大技はない。SPを見ると、クワッドはないし、コンビネーションも3+2だった(流石にバンクーバーでは3+3だろうが)。それを補って余りあるのがステップ&スピンだった。すべてレベル4でGOE加点も+2が並ぶ。SlStのGOEは8人中6人のジャッジが+3だ!笑うしかない。SPでのGOE合計は9.42だった。 FSでも大技はない。というよりも入れる予定はないだろう。彼が持つ最高基礎点のジャンプは3A+2T。基礎点は9.50。4T+3T(基礎点13.80)を持っているプルシェンコやジュベールのクワッド・ジャンパーよりもトリプルジャンプ1本分も少ない。しかしFSでもSP同様、ステップ&スピンのレベルとGOEがすごい。FSでのGOE合計は13.95。SlStのGOEもやはり8人中6人のジャッジが+3。判で押したかのようなプロトコル!笑うしかない。但し、プルシェンコのときほど爆笑しなかった。そのステップはプルシェンコよりも遥かにモダンだったからだ。 その代わりPCSでは十分笑わせてもらった。特に当日の第3ジャッジのPCSは記憶しておくべきだ。SSが9.75、他の4コンポーネンツも9.50だ。つまりほぼ満点という評価をチャンに与えたということだ。そのPCSに見合うほどチャンの演技内容はちゃんとしていたか?と駄洒落を言うことくらいが私に残っている思考力だった。 ジョアニー・ロシェット Joannie ROCHETTE SP: TES34.98+PCS30.17-減点1=TSS64.15 (2位) FS: TES74.94+PCS69.14=TSS144.08 (1位) 総合 208.23 (1位) ロシェットのSPは完璧というわけではなかった。冒頭の3Lzで転倒したことが影響してGOE合計が伸びなかった(3.08)。但し、3Lzが予定通り成功していたら、GOEが+1はもらえただろうし転倒減点(-1)もないので、SPは5点以上スコアが伸びていた計算になる。となると、またまた「3+3なしでSP70点台到達」という快挙もありえたやもしれぬ。しかし、これはほんの序章。本当に瞠目したのはFSだった。 FSのTES74.94の内訳は、基礎点60.69+GOE14.25だ。採点対象となる要素が女子は男子よりも1つ少ないのだが、ロシェットのGOEはチャンさえも上回るという凄まじさだ。その加点要因の中心はジャンプ。ジャンプのGOEは軒並み+2だ。他の要素を見渡しても加点をしなかったジャッジを探すほうが大変なくらいだ。ちなみに、四大陸を欠場しカナダでじっくり調整中の五輪金メダル大本命の耳にもこのスコアが届いたようで、本人曰く「びっくりした」とのこと。それはそうだろう。ロシェット本人でさえ自身のスコアを見てひっくり返りそうになっていたのだから。 で、肝心の演技がどうだったかというと・・・・、FSは確かに彼女のシーズンベスト。素晴らしい出来だった。特に楽曲のリズム、盛り上がりに合わせた演技の強弱といった表現のメリハリと楽曲との親和性が素晴らしい。もちろんテクニカル要素もクリーンだった。 バンクーバーの1ヶ月前に『サムソンとデリラ』はバルクアップしていると見ていいだろう。彼女は内弁慶だし、これはけっこう来るかもしれない。 2010 全米フィギュアスケート選手権 2010 U.S. Figure Skating Championships Jan. 14-24, 2010 Spokane Arena, Spokane 同じ北米同士というわけでもないだろうが、カナダ選手権と全米選手権は開催時期が重なっている。もっとも全米はノービス~ジュニア~シニアまで同時開催のビッグイベントなので11日間の長期に亘っているため、カナダ選手権終了後の翌週まで続く。 ところで、米国のナショナルチャンピオンシップは日本では「全米」と通称するが、ロシアやカナダのそれはそのままだ。全米に倣えば「全露」とか「全加」と言っても良さそうだが聴いたためしがない。テニスやゴルフの世界では全英、全仏、全豪という言い方があるので、国によって使い分けでもあるのだろうか。ちなみに全米選手権ではシニア種目の場合は頭に “Championship” と付けて、例えばシニア女子のことを“Championship Ladies” と呼称する。日本国内大会で「選手権女子(男子)」という種目名を見かけるが、これは全米選手権の呼称に倣ってのことだろうか。 全米は男子3枠の代表権争いは波乱はなく順当だったと言えようが、女子は2枠に減っていることもあって予測不能な大会となった。その状況を作り出したのは間違いなくカムバック・スケーターとニューカマーの競演だった。 サーシャ・コーエン Sasha COHEN SP: TES39.26+PCS30.37=TSS69.63 (2位) FS: TES46.66+PCS58.99-減点1=TSS104.65 (4位) 総合 174.28 (4位) コーエンの2009/2010シーズンが終わった。かねてよりバンクーバーへ向けての復帰を示唆しながら、実際に復帰したのは今季に入ってから。しかも復帰早々に足を痛めコンディション調整に時間を要したため、復帰戦はいきなり全米選手権。即ち一発勝負の大博打となった。ナショナルチャンピオンシップが、それも五輪代表選考会を兼ねたビッグイベントが博打が通じるほど牧歌的な大会ではなかったことは既報の通りだが、それでもコーエンのSPを見終わった後ではもしやと思わせるものがあったことを正直に告白しなければならないだろう。 SpSqはもちろんレベル4で、しかも9人中6人のジャッジがGOE+3を付けたのは、ジャッジにとってもコーエンが「お待ちかねの選手」だったことを如実に物語っていると言ったら言い過ぎか。ジャンプであまり加点を付けなかったこととPCSが7点台に落ち着いたのは全米のジャッジが冷静だったことの証しだろうが、総GOE+7.06は十分だっただろう。 FSは前半からジャンプにミスが出てしまい、後半のスタミナを心配する以前に開始1分足らずで期待がしぼんでしまった。7本あるジャンプでクリーンだったのは2Aの1本だけとあってはTESがどうしても伸びない。PCSではトップ3に迫るスコアが出たのはせめてもの救いだったが、GOEとディダクションで10点以上も失ってはSPが接戦だっただけにトップ2に食い込むだけの貯金は残っていなかった。 コーエンのバンクーバーへの挑戦はたった1回の試合で終わってしまったが、彼女のスケートはこれからも続くだろう。五輪は確かに特別なイベントだが、スケートライフが五輪だけではないことも確かなのだから。 レイチェル・フラット Rachael FLATT SP: TES39.39+PCS29.96=TSS69.35 (3位) FS: TES69.05+PCS61.71=TSS130.76 (1位) 総合 200.11 (1位) ミライ・ナガス Mirai NAGASU SP: TES40.20+PCS29.86=TSS70.06 (1位) FS: TES56.94+PCS61.78=TSS118.72 (3位) 総合 188.78 (2位) USFSA(米国協会)は自国の女子代表に若い二人を選んだ。そして、その選択は面白いことになるかもしれない。バンクーバーを掻き回すニュー・ジェネレーションがいるとしたらこの二人だろう。「元々はソチ五輪候補」だった二人に失うものはない。怖いもの知らずの勢いでパシフィック・コロシアムを席巻するか、欲が出て五輪の魔物の餌食となるか、二つに一つだと言ったら乱暴か。それくらい予測不能の力を秘めている。 ところで、全米の結果が出た直後は、私は総合3位となったアシュレー・ワーグナーが選ばれる可能性もあると思っていた。 GPシリーズが不調で全米一発勝負に近かったナガスと比べて、ワーグナーはGPファイナルにも出場しシーズンを通して安定していた。さらに、この全米では結果的にはナガスの後塵を拝したが、SPの出遅れ(62.55、4位)をFSで挽回(122.15、2位)しての総合3位(184.70)だけに、FSで順位を落としたナガスよりも追い上げたワーグナーの方が印象が良いという判断もあるかもしれないと思ったのだ。 しかし、USFSAはもともと全米の成績重視ということもあり、トップ2をそのまま代表に選んだ。確かにナガスのSPは久々の快演だったし、FSもジャンプの回転不足に目をつぶれば、「もうジュニアではない」スケートを見せてくれた。 大舞台で「化ける」ポテンシャルはナガスの方があると見たのかもしれない。 ISU 欧州フィギュアスケート選手権 2010 ISU European Figure Skating Championships 2010 Jan. 18-24, 2010 Saku Suurhall Arena, Tallinn, EST 全米と欧州選手権が重なるのはいつものことだが、今季は五輪があるのでなにかと忙しい。例年では世界選手権までにレビューしておけば済むが、五輪のある今季は時間が許してくれない。 さあ、もう少しスピードアップしよう。 私の欧州選手権の注目のキーワードは、復帰と復調。復帰の注目株は五輪出場を目指して引退を撤回したステファン・ランビエール、復調の注目株は予想に反して国内の1枠を争う羽目になってしまったカロリーナ・コストナー。 ステファン・ランビエール Stéphane LAMBIEL SP: TES37.00+PCS40.75=TSS77.75 (5位) FS: TES76.79+PCS85.00-減点1=TSS160.79 (2位) 総合 238.54 (2位) プルシェンコをバンクーバーの本命に考えている人もいると思うが、欧州選手権のランビエールを見て、これは面白くなりそうだと思った。 大胆に言おう。ランビエールが本来の力を出し切れば、ノーミスのプルシェンコにさえも勝てる。もちろん条件はつく。クワッドを最低2回入れた上で、3Aを含む全ジャンプをクリーンに決めること。SP、FS両方でだ。それができればGOEとPCSでプルシェンコを凌駕できる。その力がランビエールには残っている。百戦錬磨のキャリアは互角だ。あとはコンディショニングで決するだろう。 ロシア選手権に比べれば、欧州選手権のプルシェンコのスコアは納得がいくものだった。 SPは文句なし。穴はFSにあった。スタミナ不足は解決していないのかもしれない。演技後半には息切れしているかのようで切れを欠く。シーズン中に短期間で体力アップを図ることは困難なので、五輪本番では「省エネ」演技がどれだけできるか。 プルシェンコの出来次第で勢力図が変わってくることには違いないだろう。 カロリーナ・コストナー Carolina KOSTNER SP: TES36.00+PCS29.80=TSS65.80 (1位) FS: TES49.22+PCS59.44-減点1=TSS107.66 (1位) 総合 173.46 (1位) まずは世界中のカロ・マニアが胸を撫で下ろしたことだろう。昨年3月の世界選手権でイタリアの五輪枠が1つになってしまったときでも、まだファンや関係者はコストナーの出場を疑っていなかっただろうが、年末のイタリア選手権でヴァレンティーナ・マルケイに屈し、2位(総合155.68点)に甘んじるという絶不調に陥った彼女を目の当たりにしたときは流石に顔色を失くしただろう。 そのコストナーがよくぞ立て直した。3度目の欧州戴冠は五輪出場を決めるタイトルであっただけに感慨も深かろう。FSのスコアだけを見るとあまり喜んでばかりはいられないが、注目すべきは、あの美しい3F+3Tが戻ってきたこと(珍しくエッジ・アテンションが付けられたが)。不調だったコンビネーションが復調するとスケート全体が生き生きしてくるのは彼女も例外ではない。もちろんバンクーバーでメダル争いに食い込んでくるためにはミスをもっと減らさなければならないが、この成果をきっかけに上昇気流に乗ってバンクーバー入りしてほしいものだ。 欧州選手権では、他にもエレーネ・ゲデバニシビリやキーラ・コルピの活躍にも触れなければならないが、それは別の機会に譲ることをご容赦願いたい。 一方で、どうしても五輪前に触れておきたい選手がいる。 ユウコ・カワグチ/アレクサンドル・スミルノフ Yuko KAVAGUTI / Alexander SMIRNOV SP: TES41.44+PCS32.48=TSS73.92 (2位) FS: TES69.31+PCS69.92=TSS139.23 (1位) 総合 213.15 (1位) 川口悠子選手、いや、ユウコ・カワグチ、おめでとう!この種目で、欧州で、日本人選手が金メダルを獲る時代にいられたことを誇りに思う。 先に結果を知った後のTV観戦ではあったが、欧州選手権のペアという競技を初めて「自分事」として見ることが叶った。ありがとう。このペアはパートナーのスミルノフの成長次第だと思って見てきたが、五輪前にしてようやくひとつの到達点に着いたかのようだ。とにかくユニゾンが良くなった。スピード感とスケール感も出てきた。離れた後にもう一度組んで滑りだすタイミングや間の取り方というのもスムースになり、それが全体のスケーティングを美しく見せるようになってきた。 FSが「歴代最高スコア」というオマケもついて、バンクーバーには金メダル候補として乗り込んでくる、欧州チャンピオンの肩書きとともに。 ロシアは旧ソ時代も含めて五輪12連覇中だ。そのプレッシャーがこのペアの両肩にかかる。ましてカワグチは日本人だ。ロシア選手を押しのけて異国出身の選手に代表権を与えたのはスポーツの世界ならではの美徳だが、そのチャンスを与えてくれた日露両国に対する感謝を胸に刻み、カワグチはパシフィック・コロシアムで舞うだろう。 スポーツは国境を越える。日本人としての川口悠子、ロシア代表ユウコ・カワグチ、そのどちらも誇りに思って応援したい。 ISU 四大陸フィギュアスケート選手権 2010 ISU Four Continents Figure Skating Championships 2010 Jan. 27-30, 2010 Hwasan Ice Arena, Jeonju, KOR 毎年、四大陸は「世界選手権に向けての調整試合」のような色彩が拭えず、ISUチャンピオンシップらしからぬマイナー感が残念なのだが、今回はさらに五輪直前開催ということで、大量の五輪代表選手の欠場がアナウンスされたため、例年以上にそのマイナー感が強まってしまった。 なにせ本大会に出場した五輪代表の有力選手は、女子の鈴木明子、浅田真央、ペアの張丹/張昊だけなのである。バンクーバーにしか関心がない人にはこの試合の結果など興味がなくても仕方がない。他のエントリーを見れば、この3選手(組)にとっては練習試合としては良かったのかもしれない。但し、女子はともかく、ペアはバンクーバーの最初の種目なので時間的に余裕があるわけではない。張丹/張昊はよく出場を決断したと思う。 鈴木 明子 Akiko SUZUKI SP: TES33.40+PCS25.48=TSS58.88 (1位) FS: TES62.20+PCS52.64=TSS114.84 (2位) 総合 173.72 (2位) 当初は本稿でこの大会を取り上げる予定はなかったのだが、鈴木選手の快挙がそれを翻意させた。 メディアは浅田選手の3Aがどうたらこうたらと喧しいだけで、鈴木選手の快挙がまったくと言っていいほど報道されなかったが、(私の記憶が正しければ)この大会で鈴木選手は恐らく「女子史上初の快挙」を成し遂げたのである。それは1位となったSPにあった。 ジャンプ以外のステップ、スピンの要素すべてにおいてレベル4を獲得したのだ。せっかくだからスコアを記す。 表記は、要素・レベル / 基礎点 / 平均GOE / 合計点 の順。 FCSp4 / 3.20 / 0.70 / 3.90 SpSq4 / 3.40 / 1.20 / 4.60 LSp4 / 2.70 / 0.60 / 3.30 SlSt4 / 3.90 / 2.00 / 5.90 CCoSp4 / 3.50 / 0.70 / 4.20 特に注目していただきたいのはSlStである。レベル4だけではなくGOEが+2.00というのが凄い。ジャッジ9人中8人が+2、1人が+3をつけたのだ。この時点で鈴木選手のSlStは世界最高だと評価されたと見ていい。これを快挙と言わずして何と言うのか。 また、他の要素も加点が素晴らしく、全ジャッジが+1以上をつけたのだ。ジャンプでミスがあったので結果的にTESは伸びなかったが、ステップ&スピンの評価が世界チャンプをも上回っているということになる。 問題はPCSだ。これだけ高いGOEを付けた同じジャッジが採点したとは思えないほどPCSが低い。軒並み6点台の前半だ。ちょっと首を捻りたくなるほどの低評価である。FSでは6点台後半まで持ち直してはいるが、それでもまだ低い。 ジャンプがノーミスでこのPCSが7点台に乗ってくるようなことになると、バンクーバーでは誰も彼女を無視できなくなるだろう。それは、彼女のステップを見れば一目瞭然だ。 「もっと私を見て!」、彼女のステップがそう言っている。 第21回オリンピック冬季競技大会 バンクーバー2010 XXI Olympic Winter Games Vancouver 2010 現地時間2010年2月12日金曜日18:00 (日本時間2月13日土曜日11:00)、バンクーバー五輪が開幕した。フィギュアスケートはペアが最初の種目で15日(日本時間)から開始となるので、本稿がエントリーするときには既にSPが始まっているはずだ。 世界一を決する大会が世界選手権であることに変わりはないが、四年に一度という五輪はやはり特別な大会だ。四年に一度というプレミアム性に他競技との合同開催という非日常性が加わって、五輪は特別なムードと価値を持った大会となる。 幾度も世界を制したチャンピオンなのに五輪の金メダルには遂に届かなかったということもあれば、誰も注目していなかった選手が金メダルをかっさらって行くことだってある。大会全体を支配する特別な空気が、勝利の女神をも気まぐれにさせる。 初めてのオリンピック、二度目のオリンピック、いや三度目、四度目となるオリンピック、そして、これが最後と誓ったオリンピック・・・・。 どのオリンピックにも等しく喜びと哀しみがあり、どのオリンピックにも一期一会の出会いがある。無駄な時間は一秒たりともない。 であればこそ、どの選手にも、自分のために、自分で描いた、自分自身の道を、迷うことなく突き進んでほしいと思う。 代表の誇りと責任を持って、 支えてくれたすべての人に感謝を示すために、 自分だけではなく応援してくれる人の夢も一緒に持っていく・・・・ その気持ちはもう十分だから その思いはもう痛いほどに分かったから どうか自分のために自分のスケートを 自分の思い描いたスケートを滑りきってほしい 私たちの夢を思い描く必要はない あなたの夢がそのまま私たちの夢なのだから 本稿の最後に・・・・ 自分の道を迷わず突き進む人へ応援歌を贈ることで、その地に集うすべての選手への はなむけとしたい。 バンクーバーの空に向かって・・・・ 『人生一路』 (作詩/石本美由起、作曲/かとう哲也、唄/美空ひばり) 一度決めたら 二度とは変えぬ これが自分の 生きる道 泣くな迷うな 苦しみぬいて 人は望みを はたすのさ 雪の深さに 埋もれて耐えて 麦は芽を出す 春を待つ 生きる試練に 身をさらすとも 意地をつらぬく 人になれ 胸に根性の 炎を抱いて 決めたこの道 まっしぐら 明日にかけよう 人生一路 花は苦労の 風に咲け
posted by pbq1463 |17:30 |
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