2008年02月14日
全米選手権の真実~ジュニア旋風は本当に吹いたか?
2008全米フィギュアスケート選手権大会 2008 United States Figure Skating Championships 恐らく、いや確実に、私がスポーツ専門誌の編集をやっていたら、次の職探しを真剣に考えなければならないだろう。 世間の耳目は今まさに四大陸選手権に注がれているというこの時期に、なんでまた「昨日の新聞」に過ぎない全米選手権を採り上げるのか? それは全米選手権に大きな胎動があったこと、そしてそれを検証しなければ(米国選手が出場する)四大陸選手権の展望も見えてこないと思ったからだ。時系列に片付けていかないと落ち着かないという私の性分もあるが・・・。 「衝撃!」、「バンクーバーで日本の強敵!」・・・ 今季の全米選手権のシニア女子は、とにかくセンセーショナルな報道でその結果(のみ)が報じられた。その論旨は「ジュニアが上位を独占」、「加速する世代交代」というものだ。いわゆる “enfant terrible” の台頭というやつだ。 報道されるように「世代交代」はあったのか? まずは(表面的な)事実の確認。2007年と2008年の大会結果を比較してみよう。(上位のみ) 2007年 順位 スコア 選手名(大会出場時の満年齢) 1位 181.68 キミー・マイズナー(17歳3ヶ月) 2位 180.86 エミリー・ヒューズ(18歳0ヶ月) 3位 177.74 アリサ・シズニー(19歳7ヶ月) 4位 167.15 ベベ・リャン(18歳8ヶ月) 5位 159.75 レイチェル・フラット(14歳6ヶ月) 6位 143.82 ダニエル・ケイリー(17歳9ヶ月) <平均スコア> 1-3位:180.09 1-6位:168.50 <平均年齢> 1-3位:18歳3ヶ月 1-6位:17歳8ヶ月 2008年 1位 190.41 ミライ・ナガス(14歳9ヶ月) 2位 188.73 レイチェル・フラット(15歳6ヶ月) 3位 188.56 アシュレー・ワーグナー(16歳8ヶ月) 4位 173.16 キャロライン・ザン(14歳8ヶ月) 5位 164.87 ベベ・リャン(19歳8ヶ月) 6位 158.28 カトリーナ・ハッカー(17歳6ヶ月) <平均スコア> 1-3位:189.23 (昨対差+9.14) 1-6位:177.34 (+8.84) <平均年齢> 1-3位:15歳8ヶ月 (-2歳5ヶ月) 1-6位:16歳6ヶ月 (-1歳2ヶ月) 07年の上位6選手で08年にも上位に入っているのはフラット(2位)とリャン(5位)の2選手のみ。ナガスら4選手は「シニア初エントリー」だ。リャンは07年とほぼ同スコアに収まっているが、フラットのスコアは大幅に伸びている(+28.98)。 上位選手の平均スコアは08年に大きく伸び、平均年齢は下がっている。特に1-3位は2歳5ヶ月も若い。 では07年の上位選手、マイズナー、シズニー、ケイリーは一体どこへ行ったのか? 彼女らは08年では軒並み大きくスコアを下げ、下位に甘んじている(ヒューズは欠場)。 7位 157.56 キミー・マイズナー(18歳3ヶ月) 9位 146.38 アリサ・シズニー(20歳7ヶ月) 12位 132.22 ダニエル・ケイリー(18歳9ヶ月) この「結果」だけを見れば、なるほど「ジュニア世代がシニアを打ち負かした」と言うことができる。単純に順位だけではなく、スコアでも昨季を大きく上回っているのだから。しかし、ちょっとスコアを注意深く見ると、単にジュニア世代が躍進しただけではなく、シニア勢が不振だったことも見えてくる。 例えば、マイズナーのPBSは189.87なのだが、これは今大会では「僅差の2位」に相当する。しかもこのPBSは06年世界選手権で叩き出したもの、即ち「ISU公式スコア」だ。もちろんシーズンが変わればルールも変わるので、シーズンを跨いでのスコア比較は単純に比較できないのは百も承知。要するに、ジュニア世代の活躍にだけ注目するのではなく、ジュニア世代の躍進+シニア勢の不振がこの結果となって表れた、という解釈も可能なのではないかということだ。 ここまではあくまでも「結果」からの推察に過ぎない。私は「自分の眼」で見たものでなければ最終的には納得がいかないので、やはり演技の映像を見ないことにはその実態が分からない。ここからは J sports Plus で放送された大会中継を見て検証しよう。 上位&注目選手について、FSの滑走順にレビューする。 アリサ・シズニー Alissa CZISNY SPはジャンプの失敗に尽きる。 もともとスケーティングがきれいで、スピンも美しい選手。PG『白鳥』は彼女にとても合っていて、各要素が滑らかで自然に流れていくようで「滑る」とはこういうことなのだというお手本のようなスケートだ。スピンやスパイラルでレベル4+GOE2を取ったのは流石だが、それでも3つのジャンプをすべて失敗するとスコアはどうしても伸びない。 「表現とジャンプは反比例する」という法則でもあるかのように、彼女の場合も美しいスケーティングに反してジャンプが得意とは言えない。FSでもこの「法則」が顔を出す。最初の2つのジャンプはうまくいった。2つ目の3Fが回転不足の判定だったのは疑問。繰り返しビデオスロー&コマ送り再生して確認したが、ちゃんと回っている。この判定はちょっと気の毒。それが災いしたわけではないだろうが、その後のジャンプをことごとく失敗。PCSもSPより下回り、07年大会ではFS1位となった国内PBS(119.59)を20点以上も下回ってしまった。 なお、彼女はルッツとフリップのエッジを正確に使い分けていて、判定でもきちんと認定されていた。 キャロライン・ザン Caroline ZHANG 全米選手権の女子シングルの初回放送(J sports Plus)ではザンのSPが放送されなかったので、実は私もまだ彼女のSPは見ていない(2/19に放送予定)。したがってSPはプロトコルから想像するしかない。 GPのSPが安定して良かったので注目していたが、SPは53.49で7位と出遅れたというニュースが入ってきたので首を捻ってしまった。早速プロトコルを見ると、冒頭のジャンプ2つが回転不足で10点も失い、TESが28点台に低迷。彼女のSPのTESは30点台後半を出すポテンシャルがあるので大失敗だったのか?しかし、シズニーの3Fが不可解な判定だったことからも、ザンの回転不足も「気の毒な判定」だったのかもしれない。ビデオで見てみないとこれ以上は何とも言えない。PCSも6点台前半に留まり、伸びていない。ジャッジも5.00~7.00にバラつき、ジャッジの「好み」が分かれた格好だ。 FSはTV放送を見ることができた。ルッツがすべて「フルッツ」判定になっていたのはGPと同様。「修正中」という様子も見られなかったので、浅田真央選手と同様、修正は来季に持ち越しなのだろうか。フリップでもそうなのだが、ザンのトウジャンプは癖があってGOEで不利になる傾向がある。トウを突く前に思いっきり右足を後ろに振り上げるのだ。この姿勢の癖は浅田真選手にも見られる癖だが、ザンの場合はそれが極端で、その姿勢はまるでキャメルスピンのように見えるほど、即ち足を腰の高さまで振り上げて跳ぶ。この姿勢が「美しくない」ということでGOEでなかなか加点がつかないようだ。特にルール違反というわけではないから減点されるほどではないが、高い評価を得にくくなっているようだ。むしろ気になるのは、他の選手に比べて彼女のフルッツは狙い撃ちされているような気がすることだ。後述するが、他の選手ではフルッツが見逃されていることが少なくないのに、ザンのフルッツは確実に減点されている。「ザンのジャンプは質が低い」という先入観が災いし、審判団の間でも「要注意選手」になっているのかもしれない。採点競技ならではの難しい問題だ。 スピン、スパイラルでレベル4+GOE2~3を取ったのは流石。彼女のPGは基礎点が高い構成なのだが、ジャンプのGOEが伸びないので、トータルでのGOEはわずか3.01しか上積みになっていない。 世界一のスピンは別だが、スケーティングのスピード感に欠け、リンクいっぱいに演技をしていないため、全体的にこじんまりとした印象の滑りに見えた。ただでさえ小柄なので、演技を大きく見せる工夫がないと審判の印象が上がらないだろう。ただ、その割りにPCSはGPのときよりも評価が高かったのは幸いした。TSSで120点に届こうかというハイスコアはシニア1年目としては十分過ぎるほどだろう。 キミー・マイズナー Kimbery “Kimmie” MEISSNER ISU公式大会では “Kimmie” の愛称でエントリーされているが、国内大会ではなぜか “Kimbery” の正式名でエントリーされている。 彼女はSP、FSともジャンプが不調だ。特に基礎点が高いルッツとフリップの不調が顕著。映像を見ると一目瞭然。高さがない。回転軸が傾いている。ゆえに回転不足がしばしば見られ、そのため転倒も多い。FSでは3回も転倒してしまった。しかも転倒はすべて、フリップ、ルッツ、ルッツのコンビネーションという基礎点が高いジャンプだっただけに痛い。これでは他の要素でレベル3~4を取り、PCSも7点台を出してもTESが低いのでどうしてもTSSが伸びない。SP57.58(4位)、FS99.98(7位)で総合157.56では躍進するジュニア勢どころか中堅勢に対しても後塵を拝する結果となった。 SPから検証しよう。 もともと今季の彼女のPGは難しいと思う。曲調が抑揚に欠けるため、曲が引っ張ってくれない。スピード感を出しにくい。エスニックな雰囲気の中、SpSqから入る構成は個性的でチャレンジングだとは思うが、SPではいかがなものか。SPでは要求課題に的確に応え、確実にスコアを上げていきやすいようなPGの方が競技会向きだとは思う。ただモチベーションを高めていくために、敢えて難しいPGにすることはありうることだが、だとしたら彼女もまたモチベーションに問題を抱えているということでもあるのだろうか。トリノ五輪で初出場ながら6位に入賞、直後の世界選手権では初出場でいきなり戴冠し、07年全米でも初優勝。結果だけを見れば十分な栄光を既につかんでいるが、そこは彼女もトップアスリート。さらなる高みを目指していくためにはモチベーションをさらに上げていかなければ、ハードワークをクリアしていけない。 というわけで今季の彼女に何が起きているのか、という疑問をもとにネットサーフィンをしていたら、彼女のファンサイトと思しきものでその一端となる情報を得た。彼女もまたエッジ矯正で苦しんでいるということらしい。確かに今季の彼女のフリップは「リップ」判定をされることが多い。その矯正の副作用でルッツも調子を崩しているということだ。寄寓にも06年の世界チャンピオンは07年のチャンピオンと同じ課題を抱えているということか(後者は既に矯正済みだが・・・・)。SPのフリップは確かにリップだった。しかしFSではきちんとインエッジで跳んでいた。アプローチの段階ではアウトエッジのままだが、踏切りの瞬間にはきちんとインになっていた。残念ながら全米の審判はここを見てくれなかったようだ。転倒してしまったので、予断も働いた可能性はある。どちらにしてもマイズナーはエッジ矯正に苦しみ、ジャンプ全体の調子を落としているのは確かなようだ。 ところで、マイズナーのFSを見ていて、うらやましいというか、敬意を払いたいと思ったことがある。それは米国の観客の態度だった。 (あくまでも私が感じる限りの話だが)フィギュアスケートに限らずあらゆる競技で、欧米、特に米国のファンは「自国の世界チャンピオン」に対して大変な敬意を明確に態度で示す。その選手のファンはもちろんだが、ファンでない人たちも敬意を払うことは忘れない。その選手が尊敬されるだけの言動を伴っていることも必要だが、(もちろんいい意味での)愛国心というものが決定的に違うことが根底にあるのではないか。それに対して日本の場合はどうだろうか。どの競技を見ても「自国の世界チャンピオン」に対して、これほど敬意を払わない国というものは世界中を探しても見つけることは容易くない。「敬う」という言葉が日本の辞書から消えたのは何も最近のことではないのかもしれないが、マイズナーの演技に対する観客の反応を見て、アンチテーゼ的に思い出した次第。 マイズナーが転倒をするたびに、観客はさらに強い拍手で彼女の心を奮い立たせようとしていた。日本ではどうだろうか。私には昨年のNHK杯が即座に思い出された。安藤美姫選手が転倒するたびに、日本の観客はどんどん静かになっていくばかりだった。米国の観客は選手と一体になって闘おうとしていた。それに対して日本の観客は「観賞」しているだけだった。確かに日本は今、強豪国として世界中からマークされているかもしれないが、「フィギュア王国」の名誉は選手の成績だけではなく、ファンが一体となって「文化」になるような成熟を伴わないと得られないのだろうなあ、という思いを強くしたのだった。 レイチェル・フラット Rachael FLATT ナガスやザンばかりに眼を向けていた方にとってはノーマークの選手だったかもしれないが、フラットも米国ジュニア世代を代表する一人。今季のジュニアGPファイナルでは、FSでナガスを5点近く引き離して1位となっている。(SPで出遅れたため総合では僅差の2位) ジャンプがいい。回転速度が速く、軸がきれいなジャンプを跳んでいた。3Lz+3Tのコンビネーションも素晴らしい。GOEが0.57しかもらえなかったが1.00以上はあげてもいいのではないか。少なくとも後述するナガスのコンビよりは質がよく見えた。フリップのアプローチはアウト気味だったが、踏み切りはきちんとイン。解説の村主千香さんが「アウト気味だった」と言っていたが彼女もアプローチしか見ていなかったのではないか。きちんと踏み切りの瞬間を見てほしい。フリップのエッジを指摘するくらいならルッツの方が怪しかった。SPではなんとか「アウト気味」になっていたが、FSでは恐らくインだったのではないか。なぜ「恐らく」かと言うと、カメラアングルの問題で踏み切り時のエッジの角度が見えにくかったからだ。いずれにしてもエラー判定はなかった。 SPではジャンプ以外の要素でとりこぼしていたが(スピンの姿勢変化が少ない等)、TESの35.74は立派。要素間のつなぎもいいし、振付けも曲調・構成に合っているように見えたが、PCSが6点台に留まったのは残念。全体に歳に合わない「大人の滑り」をしていたと私は好意的に見たが、「歳に似合わない大人っぽさ」というのはジャッジの好みが分かれるようだ。PEでは4.75~7.50、INでは5.75~8.00まで評価が分かれたことがその証左。 FSでもすべてのジャンプを成功させ、さらにそれ以外の要素もレベルを上げてきた。PGの終盤に3連続コンビを入れるタフネスさで会場を沸かし、ジャッジの印象も上げられたのだろう。PCSは7点台が連発し、TESに至っては驚愕の69.38で、TSSの125.82というのはジュニアのスコアではない。当然FSは見事1位。 国内大会という点からスコア自体は割り引いても、その内容は正に「日本の脅威」には違いない。 アシュレー・ワーグナー Ashley WAGNER GPシリーズ出場で既にシニアの顔見世を済ませているワーグナーは、その滑りも既にシニアのそれだった。 やはり彼女もジャンプが抜群にいい。ステップからすぐに跳ぶジャンプはPGの流れをスムースにする質の良いものだ。但し、安藤選手の独占市場に待ったをかけたと評判の「3Lz+3Lo」は、残念ながら最初のルッツは見事なフルッツ。GPでもそうだったがまだ矯正されていない。ところが大会の技術審判はエラー判定をしなかった。SPでもFSでも見逃された。これは一体どうしたのだろう。米国の審判は何を基準に判定しているのだろうか。ISU公式大会で認定されるか、興味深いところだ。 (ルッツはともかく)良かったのはジャンプだけではない。スケーティングでは深いエッジを使いこなし、ステップやスピンもいい。SPではなぜかレベル3に留まったスピンもFSではきっちりレベル4。これは納得。SPでもレベル4じゃないの?と思ったくらいだ。 またまた疑問なのはPCS。曲と振り付け、身のこなし、要素の構成も合っていて、見応えがあったのだが、SPではすべて6点台、7点がひとつもないのはどうしても疑問。これまた5.75~7.75までのバラつきがあったため点が伸びなかった。(FSでは7点台が3つ出たが・・・) 彼女もまた全体的に「歳に似合わない大人っぽさ」を見せてくれる演技だった。どうやら「年齢相応の演技」が米国審判のお好みなのようだ。逆に言えば、これからさらに伸びるポテンシャルが高いとも言える。これまた「脅威」・・・・。 ミライ・ナガス Mirai NAGASU 今季の全米選手権の結果に対する日本の報道の主役は間違いなく彼女だった。 「日本人」であるため日本のメディアからは大会前から注目されており、しかもその結果が「シニア初参戦で初優勝」なのだから、ニュースとしては格好の材料だった。しかも、SP70.23(1位)、FS120.18(3位)、総合190.41、というスコアはシニア初参戦としては世界でも例を見ないほどのスーパースコアで、もし「ジュニア選手が初出場のシニア競技会でマークした歴代記録」というものがあったら、恐らくこのスコアは世界最高スコアになるだろう。 さて、そのスーパースコアをマークした演技とはどんな内容だったのだろうか。私は昨季の世界ジュニア以上の多大な関心をもってTV放送を見た。 確かに技術の難度も表現のレベルも世界ジュニアのときを大幅に上回る急成長を見せてくれた。 SP、FSとも彼女の演技の素晴らしいところは、全体のスピード感、氷をとらえる膝の柔らかさ、柔軟性を活かしたポジションの多彩さ、そして軸がきれいで回転の速いジャンプ、といったところか。PGは彼女の年齢、容姿のキャラクターに見合ったものが用意されているようで、表現は躍動的で、しかも可愛らしいという印象だ。技術、表現の全体を通して彼女の演技の全体的な印象を一言で表すなら、それは “vivid” だろう。 まずはSPについて・・・。 LSpは素晴らしい。サイドウェイズからビールマンへの難しい姿勢変化、軸が動かず回転速度も十分。レベル4+GOE2には思わず納得。SlStもいい。コミカルな振付けに乗せて軽やかで、レベル3だったがGOEは軒並み+2というのは少し甘いかなあとは思うが・・・。面白いなあと関心したのが2A。着氷した右足のまま(一度も左足を着かず)ターンを入れてスパイラルをしてみせた。直接GOEには反映されるわけではないが凄いバランス感覚。柔軟性を活かしたSpSqもザンに負けず劣らず美しいポジションを見せる。 全体的には素晴らしい印象だったことは疑いないが、それでも(FSはともかく)SPの70点を超えるスコアについては多少首を捻らざるをえない内容だったと言うことを私はためらわない。後半のスピンでは(疲労のせいか)回転速度が落ちていたのにレベル4で、しかもGOE+3を付けたジャッジまでいたし、何よりも疑問視せざるをえないのは彼女のルッツは明らかにフルッツなのだが減点されなかったということ。フルッツが見逃されたり、後半のスピンの評価が甘かったということで、TESの41.40は3点以上割り引いて見たほうが妥当かなというのが率直な感想。PCSも予想外に高かった。SSが7点を取ったのは分からないでもないが、PE、CH、INまでが7点以上なのはいかがなものか。ゆえに、TSSの70.23は椀飯振舞だなあという感じがしてならない。65点前後は取れる内容だったことは認めるが・・・。(もちろん65点でも凄いことだが) FSでもSPと印象は変わらない。PGもSP同様の「可愛らしい」ものに構成、振付けが施されている。SP後に審判団で反省会でもやったのだろうか、FSで2回跳んだルッツの内、2回目のルッツがようやく「フルッツ判定」された(1回目のフルッツは相変わらず見逃されていたが・・・)。むしろ3Lz+3Tのセカンドジャンプが回転不足という判定は厳しいなあという感じ。録画を繰り返し見たが回転は足りていたとしか思えない。これはちょっと気の毒。そして、FSでも彼女のPCSは高かった。ジャッジはあのSPで7点台を与えたのだから、同様の出来栄えだったFSでも7点台を与えたことはむしろ「安定したジャッジ」だったと言えるかも。私にはナガスの5コンポーネンツがフラットやワーグナーのそれよりも上回ったとは思えないのだが、ジャッジの評価はナガスの演技に概して好意的だった。「歳に似合わない大人っぽさ」よりも「歳に見合った可愛らしさ」が米国ジャッジのお好みということなのだろうか。 ナガスの次戦は世界ジュニアだ。ISU公式大会で過半数を占める欧州のジャッジの眼には彼女の演技(特に5コンポーネンツ)はどう映るだろうか。楽しみが増えたことだけは間違いない。 風は吹いたか 全米選手権の表彰式は4位までがポディウムに上がるというユニークなものだ。今大会の1-3位の平均年齢が15歳8ヶ月になることは先述したが、4位のザンまで加えた平均年齢では15歳5ヶ月とさらに下がる。 (FSを見る限り)4位のザンは少し元気がなく、こじんまりとまとまった感じで世界ジュニアで受けた感銘は薄れていたが、1-3位の選手はどれも急激な成長が見え、内容も素晴らしかった。但し、スコア自体はやはり「国内大会」の範疇に留めて見るべきだろうという感想は否定できない。特に米国の観客は(日本と比べるとなおのこと)熱狂しやすく、選手と一体となって盛り上げるというスタイルが確立している。そして、ジャッジの採点が観客の後押しによりエスカレートしていくことがしばしば見られる、という現象は何もフィギュアスケートに限ったことではない。エンターティメント、ショービジネス大国の米国ならでは傾向であり、またそれは必然的に選手に「魅せる演技」、「プレゼンテーション性の高い演技」を要求することになり、大舞台に強い、プレッシャーをモチベーションに変える選手を生み出す土壌となっているのだろう。 今季の全米選手権で「ジュニア旋風」は確かに吹いた。 しかし、その風が吹いたのは今のところ米国内であったことも事実であり、ジュニア世代というのは変化が激しい世代でもある。栴檀は双葉より芳しかったか、十五の才子が二十でただの人に終わるのかは、スケートの神様だけがご存知なのかもしれない。 旋風は北米大陸の一時的な突風に留まるのか、極東やスカンジナビアの地にまで流れを変える偏西風、果てはぐるりと地球を一周してメイプルの森の大空を翔るジェット気流となるのかは、もう少し時間をかけて見たいと思う。
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posted by pbq1464 |17:59 |
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