2007年11月23日
今回は仏大会のレビューと露大会のプレビュー。ファイナル出場権を賭けたレースの展望についてもひとくさり。
Review of TROPHEE ERIC BOMPARD
澤田 亜紀
本当に残念な結果になってしまった。それこそ実力の半分も出せなかったのではないか。ジャンプの回転不足は取られるわ、ステップ、スピンのレベルは軒並み低いわで、シーズン初戦とは言え、PBSを60点近くも下回った結果にはさすがに首を捻らざるをえない。本人は「調整不足がそのまま出てしまった」とだけコメントし、詳細は語らなかったが、単なる調整の遅れとは思えないほどの低迷だった。どこか故障でも抱えているのではないかと思ってしまう。もし、そうなら故障していることをきちんと言ってもいいと思う。格闘技のようにケガを明かすと対戦相手に有利になるというようなことは、採点競技のフィギュアスケートの場合は考えられないので、故障を明かすことは問題ないはずだ。
確かに日本国内には、故障を隠すことを美徳とし、故障をのことを言うと「言い訳している」と揶揄する人たちがいないわけではない。しかし、故障をきちんと自己責任だと捉えた上で故障を説明することは決して言い訳ではない。事実を説明しているに過ぎない。言い訳とは、氷の硬さが自分の好みに合わなかったとか、照明が明るすぎたとか、他者に敗因を求め、自己責任を転嫁しているような釈明をしている場合だ。確かにアスリートにとってケガは付き物ではあるが、ケガの程度によっては深刻な影響が出ることを周囲のファンやメディアもきちんと理解してあげないといけない(根性とか気合とか言うのは簡単だが、そんな精神論ではどうしようもないケガというのはある)。
例えば、「手の指を骨折している」とか「虫歯が痛い」と言う程度では「言い訳」になるかもしれないが、足、股関節、腰、背中、肩、首といった箇所に故障を抱え、痛みが抑えられないようであれば、フィギュアスケートでは支障が出て当然だ。そうであればきちんと説明することは、ファンや期待している関係者に対する説明責任のひとつだろう。演技に影響する故障については、きちんとコメントするという姿勢は正当に認められるべきものだと思う。故障を説明することに臆する必要はどこにもない。
むしろ自分の弱さや抱えている問題を公表することは、大変勇気のいることである。公表することで、その問題から逃げずに正面から立ち向かわざるをえない状況を自ら作り出すことになるからだ。また、その問題を克服できなかったときには、周囲から「自分に負けた」と言われかねない。それだけリスクを背負った状況に自らを追い込むことになるので、本当に勇気のいることなのだ。
もちろん、これは一般論で、澤田選手が故障を抱えているという情報をつかんでいるということを言っているわけではない。ただ、単なる調整不足以上の不調を感じたので心配しているのだ。
・・・という矢先、「NHK杯欠場」の一報が入ってきた(代替出場は浅田舞選手)。日ス連(JSF)の公式発表では「体調不良」とのこと。これまた何とも曖昧な発表だ。後日でもよいのできちんと発表してほしい。
澤田選手はJSFの強化指定選手である。それだけ期待されているし、注目もされている。GPを途中欠場したので、次戦は全日本ということになる。是非、「体調」を取り戻して、本来の演技を見せてほしい。
キミー・マイズナー
あれっ?という感じの内容だった。前回の米大会は調整の遅れが出ていたことは明らかだったが、今回も調整は進んでいなかったようだ。
先日触れたように、彼女は安藤美姫選手と並んで、6種類のジャンプを跳び分けられる数少ない選手の一人で、派手さはないがシュアな演技が持ち味だ。調整不足の前回はともかく、今回もジャンプが不安定で点が伸びなかった。PBSを30点以上も下回るスコアでは、浅田真央選手の緊張を解き、楽勝の手助けにしかならなかっただろう。
5コンポーネンツは安定して7点以上が取れているのが唯一の救いだが、TESが伸びないのはプログラムが自分のリズムに合っていず、自分のモノになっていないのではないか。
内容がどうあれ、「順位目標」としては何とか2位を確保、13pt.を獲得。トータル28pt.で上位6位以内を確定したためファイナル進出が決定した。昨季はファイナル出場を逃しているだけに、今季のファイナルには期するものがあるだろう。うまいことにファイナルまでは4週間ある。再度調整し直し、トリノでは是非、06世界チャンピオンの演技を見せてほしいものだ。
浅田 真央
まずはホッとしただろう。演技後の表情にそれがよく表れていた。マイズナーがあれほど低スコアでは、浅田真選手は普通に滑れば楽勝だったろう。なにせ彼女もPBSを20点も下回るスコアで優勝できたのだから。
ルッツの矯正は今季中になんとかしてもらうことを期待するとして、その他は現段階では十分ではないか。FSの冒頭で3Aを転倒したことには冷や冷やした人も多かっただろう。いつもの彼女であれば、そこから立て直すのが難しかったのだが、今回は崩れなかった。攻めの気持ちが萎えなかったように思う。私の友人で「直前のマイズナーが大失敗したので気持ちに余裕が生まれたのではないか」と言っていた者がいたが、そういう点もあったかもしれないが、とにかく事実として崩れなかった。ラッキーだったのか、自分でコントロールできたのかは本人のみが知ることだろうが、少なくとも崩れなかったという事実は彼女自身を心強くすることだろう。きっかけはどうあれ、自信になるはずだ。
細部に目を配れば、いくつか私なりに気づいたことがある。
まず、SPでのコンビネーションジャンプ。彼女のコンビネーションはセカンドジャンプに3Loを入れるのだが、これはけっこう難しい、というか実はリスキーだと思う。セカンドジャンプのループは着氷した右足のみで踏み切るので、ファーストジャンプの軸が傾き、着氷姿勢が崩れるとセカンドのループがうまく跳べなくなる。これがトウループであれば、左足でトウを突く(両足で踏み切る)ので多少踏ん張りが利き、修正しやすいのだが、ループはこれが難しいのだ。この点を指摘して、以前、渡辺絵美さんも「3F+3Tにすべき」と助言していた。
安藤美姫選手のコンビネーションは、浅田真選手のそれよりもさらに難度の高い3Lz+3Loだが、米大会では(肩の故障が影響し)練習中から回転不足が見られたので、本番では急遽セカンドを2Loに変更して対応した。浅田真選手の場合は、技術的、或いはコンディションに問題を抱えていたのではなく、緊張とか自信とかのメンタル的な問題で失敗したのに過ぎないと思われるので、特に変更する必要はなかったと思う。先述の自信とともに、コンビネーションも復活するだろう。
もうひとつは、彼女の演技というよりも、ジャッジで気になったことがあった。5コンポーネンツの評価が割れたことだ。平均ではどれも7点以上と素晴らしいスコアを得たのだが、ジャッジ別に細かく見ると随分バラつきがあるなあという感じだ。第6ジャッジは8.00~8.50とすべてに8点以上をつけた。これは現役選手では最高点と言ってもいい評価だ。ところが第10ジャッジの評価は6.75~7.25にしか過ぎない。これは差がありすぎる。他の8人のジャッジはどれも7.5前後の点をつけていたので、この2人のジャッジだけが目立ってしまった。換言すると、PCSは採点競技の宿命を色濃く残している要素だなあ、と妙に納得してしまった次第。
Preview of CUP OF RUSSIA
露大会は見所がいっぱいだ。ファイナル出場をかけた闘いが激化する大会となりそうだからだ。仏大会終了時のポイントスタンディングを見れば、露大会の激戦ぶりは推して知るべしだ。
まず男子シングルでは、世界チャンピオンのジュベールが仏大会欠場により加大会の15pt.のみになってしまったため早くも脱落。主役の思わぬ降板により男子シングルはやや混戦模様だ。2戦終了でポイントが確定し上位につけているのは、チャン(26pt.)、ライザチェック(26pt.)、ヴァン・デル・ペレン(22pt.)の3人。結論を先に言えば、チャンとライザチェックはファイナル出場が決定している。残り2戦で合計26pt.を上回る可能性がある選手は最大3人のため、上位6位以内が確定したためだ。よってもって、残るファイナル出場権は4枠。
この4枠に入る可能性=ポイントを持っているのは以下の5人。
ヴァン・デル・ペレン(22pt.=加2位+仏4位)
ウィアー(15pt.=中1位、次戦は露)
高橋大輔(15pt.=米1位、次戦はNHK杯)
バトル(11pt.=加3位、次戦は露)
ランビエール(11pt.=中3位、次戦は露)
先に高橋選手から見てみよう。彼の次戦は最終戦のNHK杯だが、これは組合わせに恵まれている。PBS、初戦のスコア、今季PGの基礎点、実績、どれを取ってもNHK杯では対抗馬が見当たらず、順当勝ちすると思われる。即ち、高橋選手のポイントは30pt.に達すると予測していいだろう。これで実質的には残りの3枠を4人で争うことになるわけだが、その内の3人が揃って露大会に出場するのだ。しかも、その3人とは、ウィアー、バトル、ランビエールで実力も拮抗したつわもの同士。これは目が離せないだろう。
この3人のファイナル出場を行方を左右するキー・スケーターは、実はポイントが確定しているヴァン・デル・ペレン。彼の合計22pt.を超えれば、ファイナル出場決定というわけだ。最もそれに近づいているのはウィアー。5位以内に入れば合計22pt.になり決定(ヴァン・デル・ペレンと同点だが、ウィアーは初戦で優勝しているので優先権がある)。共に初戦を3位で終えているバトルとランビエールは激戦だ。露大会で3位=11pt.を得ればヴァン・デル・ペレンの22pt.に並ぶのだが、ヴァン・デル・ペレンは加大会で2位になっているので同点の場合はヴァン・デル・ペレンに優先権が渡る。バトルとランビエールはなんとしても2位以内にならなければならない。
バトルとランビエールで1~2位を分け合い、ウィアーは3位に終わる。露大会の表彰台がこのような顔ぶれになれば、3人ともファイナル出場が決定し丸く収まるというわけだが、果たしてどうなるか。各々のファンにとってはやきもきする一戦になることだけは間違いない。
次に女子シングルでは、マイズナーと浅田真央選手が仏大会で揃ってファイナル出場を決定した。男子と同様、残るは4枠。但し、男子よりも争奪戦は激化している。残る4枠に入る可能性=ポイントを持っているのは以下の8人。
ザン(24pt.=米3位+中2位)
金妍兒(15pt.=中1位、次戦は露)
中野友加里(13pt.=加2位、次戦は露)
安藤美姫(13pt.=米2位、次戦はNHK杯)
ロシェット(11pt.=加3位、次戦は露)
コストナー(11pt.=中3位、次戦はNHK杯)
マイアー(9pt.=仏4位、次戦はNHK杯)
村主章枝(9pt.=中4位、次戦は露)
女子のキー・スケーターはザン。彼女の合計24pt.が分かれ目だ。但し、マイアーと村主選手が24pt.に達するためには優勝(15pt.)が必要で、強豪が揃って出場する露大会、NHK杯ではかなり厳しいのではないか。
よって、残る4枠を争うのは実質的には6人。つまり露大会は、金妍兒、中野、ロシェット、3選手の順位争いが焦点となろう。そして、初戦の出来具合から見ても、この順番がそのままファイナル出場の可能性の高さに比例すると見ていいだろう。金妍兒は2位以内で、中野選手は優勝で決定。ロシェットは優勝すれば可能性は残るが、金妍兒と中野選手の順位により全体の位置関係が変わり、さらにはNHK杯での安藤選手、コストナーの結果待ちになる。
男子は露大会でファイナリストの顔ぶれが(実質的に)決定しそうだが、女子では最終戦のNHK杯まで持ち越されることだけは間違いないだろう。
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2007年11月16日
今回は中国大会のレビューと仏大会のプレビュー。というわけで「Chinoise篇」としてみた。”Chinoise”から”La Femme Chinoise”をすぐに連想する人がいたら、その人は私と同世代かもしれない。
Review of CUP OF CHINA
★ Today’s Skaters ★ #9
村主 章枝 Fumie SUGURI
村主選手=表現力、というのが定説になっている感がある。どこぞの民放によると「氷上のアクトレス」だそうだ。「アクトレス」かどうかは別として、彼女の01/02シーズンのプログラムは今でも私のお気に入りのプログラムだ。SPの『アヴェ・マリア』、FSの『月光』とも素晴らしい。ソルトレイク五輪でも披露されたのでご記憶の方も多いだろう。あのときの彼女は、振り付けの一つひとつに涙を込めて滑った。私はこのときの彼女のスケートは「祈り」だと思った。メダルこそ取れなかったけれど、私が最も心打たれたのは、表彰台の3人ではなく村主選手の演技だったのだ。
彼女は、04/05シーズンから本格導入されたジャッジングシステムに最も苦しんでいる選手の一人だろう。得点を稼いでいくためには技術要素、特に基礎点の高いジャンプをプログラムに取り入れなければならない。彼女はトウループやフリップは得意だが、エッジ系のサルコウやループが苦手だ。エッジ判定が厳しくなった今季は、彼女のルッツも減点対象になってしまった(フルッツ)。それでも彼女のチャレンジング・スピリッツは衰えない。3-3のコンビネーションにも新しいスピンにも取り組む意欲は旺盛だ。プログラムを仕上げられていないまま迎えた中国大会は恐らく「試合の中で練習していく」という感覚だったのではないか。結果、中国大会は4位(9pt.)に留まった。彼女ほどのキャリアであれば、目先の成績に一喜一憂することなく、シーズンの目標に向かえることだろう。GPはむしろ「実戦の場で練習する」というくらいに捉えて、やはりターゲットにしているのは全日本か。トリノ出場を賭けた05年の全日本がそうだったように、彼女の「ハレの舞台」は常に全日本だった。
彼女の今季の「幕」が上がるのはこれからだ。
ところで、ご本人の公式サイトで「本格的にはじめたのは中学3年生」という記述を見かけたが、事実から考えると少し不可思議な感じがする。なぜなら、彼女は既に8歳(小3)の頃にはスケートクラブに所属し、11歳(小6)のとき92年全日本ジュニアに出場しているのだ。
いい機会だから、ここで簡単に、標準的な例で整理しておこう(知人の先生に伺った話)。
まず、最初は「スケート教室」に通う。各スケートリンクが「来場者サービス」の一環で行なっている初心者向けの教室である。ここで初歩的な滑り方を習うのだが、目的はあくまでも「スケートを好きになる、楽しむ」こと。幼稚園くらいの小さい子供向けのクラスもあれば、年配向けのクラスもある。教室だから「集団受講」が基本で、月謝は数千円程度。この段階では「本格的に」取り組み始めたとは言わない。
本格的に取組む=選手として競技会出場を目指す、ということであれば「スケートクラブ」に入る。内容も「競技スケート」としての技術習得に変わり、個人指導のコーチがつく。月謝も数万円に跳ね上がる。スケートクラブに所属しなければ「バッチテスト」も受けられないし、選手登録もされない。バッチテストに受かって、選手登録されないと、競技会に出場できないのだ。
したがって、村主選手が「本格的に」取り組み始めたのは、スケートクラブに所属して個人指導を受け始めた8歳の頃から、というのが客観的な事実に即している。(このときのホームリンクは「ハマスケートリンク」、個人コーチはF先生)
もっともご本人が冒頭のように言明しているのだから、彼女にとって「本格的に始めた」という意味は、「自分はスケート選手として大成したい」という決意をもってスケートに取り組む姿勢が変わり始めたという意味であり、それが「中学3年生」のときだった、ということなのかもしれない。
★ Today’s Skaters ★ #10
カロリーナ・コストナー Carolina KOSTNER
最近こそ「コストナー」と英語読みで表記されることが多くなったが、以前は原語に近い表記の「コストネル」だったように記憶している。その昔、世界ジュニアの中継でJ-SportsのKキャスターが「コステール」と発音していたのはご愛嬌だが、今は「コストナー」と表記しないと違和感がありそうだから、当ブログでも「コストナー」に統一しよう。
コストナーは安藤美姫選手とほぼ同期の選手であり、ジュニア時代も度々大会で顔を合わせている。昔から滑っているときの姿勢がきれいで、長身となった現在はそのシルエットはリンクに非常に映える。特に長い手足を駆使したステップは軸もぶれず安定していて、大柄な選手にありがちな大味な感じは微塵もない。安藤選手を指導するモロゾフ・コーチは、(自分の教え子を差し置いて)コストナーは世界最強の選手だと評価していて「クリーンに滑ったら彼女に敵う選手はいない」そうだ。ポイントは「クリーンに滑ったら」という条件をつけていることで、彼女の場合、SP、FSとも揃って高得点をマークしたことがあまりない。SPで良くてもFSで崩れるというパターンが多い。前回の世界選手権を思い出そう。私は会場で見ていて、SPで67点のPBSを出されたときは、「さすが欧州チャンピオン。トリノの失敗を糧に成長したか」と思ったのだが、FSで大きく失速してしまった。
果たして、今回の中国大会でもそうなってしまった。前回、浅田真選手のパートでも述べたが、コストナーの場合も一度崩れると立て直しが難しい。SPでは60点台のSBを出したが、FSで冒頭の3F+3Tを失敗するとジャンプのミスを連発してしまった。
どこかのサイトで「いつものコストナーだった」という手厳しいコメントを見かけたが、実に惜しいなあという気がする。彼女はポテンシャルの高い選手で、十分バンクーバーでもトップを争う力を持っていると思っているのだが、安定した力を出せないのはなぜだろう。彼女の情報があまり入ってこないのでその原因を推察することすらできないのだが、とにかくもったいないなあと思う次第だ。
なんとか3位(11pt.)に滑り込んだが、次戦はNHK杯。安藤選手(初戦2位、13pt.)と直接ぶつかる。同じくトリノで辛酸を舐めた同期の二人にとって、NHK杯はまたもやトリノ(GPファイナル)を賭けた正念場となることだけは間違いないだろう。
★ Today’s Skaters ★ #11
金 妍兒 Yu-Na KIM
カタカナでは「ユナ」、「ヨナ」、「ヨンア」と三通りの表記が見られ、いまだ表記方法が確立していないように見える。彼女の母国・韓国系メディアの日本語版では「ヨンア」という表記に統一されているようだが、当ブログではカナ表記に左右されない「妍兒」で統一する。
今さらだが、世界選手権のSP『ムーランルージュ』は衝撃的だった。まだ今季は始まったばかりで早計との誹りを免れないかもしれないが、(スコアは別として)今季もあのSPを超えるSPはなかなか出てこないのではないだろうか。ジャンプ、スピン等の技術はもちろん、振り付け、技のつなぎの間の細かい仕草、表情、コスチューム・・・、そのパッケージ全体がパーフェクトだったと思っている。
技術的な賛辞は様々なところで挙げられているのでここでは敬意をもって控えるが、私が彼女に一目置くのは他ならぬ彼女のスケートに取り組む姿勢にある。それはライバルと目される選手たちやその報道に惑わされることなく、自分に集中してトレーニングし、試合に臨むことだ。周知の通り、日韓両国で彼女は浅田真選手と比較され、採り上げられることが多い。取材陣の口をついて出てくるのは「3Aはやらないのか?」という質問だ。彼女は「3Aには興味がない。必要だと思っていないから」とのこと。この回答に対してつっこんだ質問をしている記事を見かけたことがないのでこれ以上は想像になってしまうが、考えられることはひとつある。それは、基礎点の高い難しい技の習得に力を入れるのではなく、現在自分ができる技の質を上げることでGOEを稼ぎ、トータルの出来映えで対抗しようというものだ。この考え方は非常に歓迎されるべきものだと思う。というのは、先日も述べたが、質は高くはないかもしれないが高難度の技、難度は高くはないかもしれないが質の高い技、この両者がぶつかり合うのが「個性の競演」だと信じて疑わないからだ。どちらも価値のあることだと思うのである。
初戦で明らかになったことは彼女の5コンポーネンツも評価が高く、定評になりつつあるのかな、ということだ。第3戦までで主要選手が出揃ったが、FSのPCSで平均7点台を出したのは、マイズナー、浅田真央、そして金妍兒の3選手だけだ(安藤選手は惜しくも平均6.98点)。
それと耳寄りな情報をひとつ。今季開幕前のISUの技術委員会ではサンプルとして金妍兒の演技がビデオ上映されたということだ。サンプルの意味が「良い例」としてなのか「悪い例」としてなのか詳細は不明だが、中国大会のジャッジ結果を見た限りでは「良い例」として採り上げられたと見るのが妥当だろう。昨季までの彼女のフリップはリップ気味になることが少なくなかったのだが、今大会ではエッジエラー判定はなかった。一方で、ちょっとジャッジが甘いかなあと感じたのが、FSでの2A+3T。セカンドジャンプをトウで着氷したので、ガリッと氷を削ってしまった。着氷はアウトエッジで行なうのが正しいので、トウの着氷は「着氷の質が悪い」ということで本来GOEの減点対象なのだが、このコンビネーションでは逆に加点がついた。コンビネーション全体の印象が良かったところは加点になるとしても、着氷で減点、トータルで相殺されて加点0とするのが妥当なんじゃないか、というのが私の素直な感想だ。但し、これをポジティブに捉えることもできる。それは既に彼女がジャッジを味方につけ始めているということだ。採点競技においてジャッジを味方につける(ジャッジの評判を上げる)ということは重要で、これは彼女にとってこれからも大いにアドバンテージになるはずだ。
Preview of TROPHEE ERIC BOMPARD
GPは今週末の仏大会(エリック・ボンパール杯)からいよいよ後半戦に入る。主要選手は2戦目となる。
見所は、初戦で優勝、15pt.を獲得したマイズナーと浅田真選手がぶつかることだろう。お互い仏大会で2位以上になれば、合計28pt.以上になり、ファイナル進出当確だ。それだけに結果に臆することなく、今季の取り組み目標に対してチャレンジしてほしい。思い切りのいい演技を両選手に期待しよう。
マイズナーは初戦は結果こそ優勝だったが、内容は芳しくなかった。その後、3週間空いて調整はうまくいっているだろうか。初戦もスピード感はあったので、フィジカルコンディションは悪くないのだろう。プログラムの仕上げが注目される。昨季はファイナル出場を逃しただけに、この大会で自力でファイナル進出を決めたいところだ。
浅田真選手は、初戦の結果はもちろん、内容もまずまずだった。但し、前回も述べたように課題はまだ修正途上にある。これがどの程度進んでいるか。初戦からは2週間空いているだけで試合勘の維持も問題ないだろうし、この2週間を課題修正に集中できていれば、さらに良い内容の演技が期待できよう。
そして、この大会から登場するのが、昨季シニアに移行した澤田亜紀選手だ。
★ Today’s Skaters ★ #12
澤田 亜紀 Aki SAWADA
滑走直前の濱田コーチからのおまじない「デコピン」が一部ですっかり有名になった彼女は、そのキュートなルックスには似つかないダイナミックでパワフルな演技をする。特にアクセルは得意のジャンプで、EXで4連続アクセルを見せてくれたりする。3-3のコンビネーション(3F+3T)も跳べる。ISUの公式バイオグラフィーによると、国内競技会で3Aも跳んだことが認められている(私は直接知らないので詳細は不明)。浅田舞&真央選手といい、中野友加里選手といい、恐らく日本は3Aジャンパーを世界で最も多く輩出している国と言えるのではないか。伊藤みどりさんの功績はしっかりと継承されているといった感じだ。
シニア初参戦となった昨季は3F+3T(基礎点9.5)ではなく、3Lz+2Lo(同7.5)に抑えていたが、今季はどうだろうか。またシニア2シーズン目の今季は課題の表現力の取り組みにも注目したい。彼女の昨季のEX『おろち』は終盤の2A×4連発に目が行きがちだったが、しっとりとした表現も見応えがあった。今季の成長に期待したい。
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2007年11月09日
Review of SKATE CANADA
日程を勘違いしていて中国大会が開幕してしまった。よって、不本意ながら中国大会のプレビューは中止。また、この加大会のレビューも「昨日の新聞」になってしまった感が否めないので、私個人の備忘録くらいにしかならないかもしれない。(嗚呼、それにしても、生業の片手間にブログをやるのは何とハードなことだろう。まあ所詮は道楽に過ぎないが・・・)
第2戦は日本人選手が揃って好成績を残した大会となった。日本人選手にスポットを当ててレビューとしよう。
武田 奈也
シニア・デビューとしては上出来だったのではないか。
(3-3とかの大技はなかったが)ジャンプは大きなミスはなく、ジャンプ以外のTEも軒並みレベル3~4に認定され、今後、苦手と伝えられている3Lzを習得すれば、さらに高得点が期待できるだろう。(言うは易しだが・・・)
PCSがまだ5点台に留まっているのは、まだ各要素をこなしているだけに見えたり、ジャッジに対するアピールがまだ不足していることもあるのだろうか。いわゆる「ジュニアから上がって来たばかりの選手」に見られているのかもしれない。この辺が採点競技の曖昧さ、主観性を残すところだろう。その対策には、プログラムを仕上げ、滑り込んでいくのはもちろん、ジャッジに顔を売っていくことを地道にやっていくことも必要だろう。
見ての通り、恐らく日本で最も大柄な選手であり、(うまくいったときは)すべての要素が見栄えがする。これは大変な武器。しかし、その武器を活かすためには小柄な、或いは細身の選手にはない苦労があると思う。民放が彼女に与えたキャッチフレーズは「七色の笑顔」だとか。民放には珍しく趣味のいいキャッチフレーズだが、笑顔だけではないところを見せてくれそうな、そんな予感をさせるデビュー戦だった。
次戦は日本大会(NHK杯)。「七色の笑顔」から「七色のスケーター」への成長を期待しよう。
中野 友加里
トリプルアクセル炸裂!元祖「伊藤みどりの後継者」の面目躍如たる一撃だった。
実は、中野選手は浅田真選手に負けず劣らず3Aへのこだわりを持っていて、このオフに相当負荷をかけたトレーニングを積んだのだという。一足先に公式戦を戦い、コンディションを上げてきていたことを実証する内容だった。GP初戦でいきなりPBを更新し、TESに至っては浅田真選手を抜いてトップスコアを叩き出した。惜しむらくはPCSが6点台前半に留まっていることだが、これはプログラムを仕上げること、楽曲の解釈をスケーティングに反映させる表現方法を熟考することに時間をかけていくほかない。(ど素人の私にはそれ以外の方法が思いつかないのが情けないところだが・・・)
PBを出したにもかかわらず、FS演技後のインタビューでは満足の表情はなかった。もっとできたはずだ、という感触があったのだろう。FSの技術要素では「今できることをやった」という納得感があったようだが、PCSが伸びなかったことや、何と言ってもSPの出来に不満があったのだと思われる。その意気や良し。プレビューでも書いたように、今季の彼女の活躍を期待させるだけのポテンシャルを見せてくれた一戦だった。
ところで、現役の競技選手に対して言うのは多少憚れるが、彼女はエキシビションやアイスショーでさらに真価を発揮するスケーターの一人だと私は見ている。競技会ではどうしても技術要素の成否に集中し、硬さが見られることもあるのだが、ショーナンバーで見せてくれるリラックスした演技は本当に魅力的だ。現役選手の中では、安藤美姫選手がグラマラスで女性らしい魅力を見せてくれる最右翼だが、中野選手は安藤選手とはまた一味違った、とてもフェミニンで優美な大人の演技を見せてくれる。こういう部分が競技会でも発揮できればPCSも伸びてくるのではないか。実際、アイスショーとかではそういう演技を見せてくれているのだから、まだまだ伸び白のある選手なのだ。
浅田 真央
収穫と課題が入り混じった内容だった。逆転優勝という結果に浮かれて、順調なシーズンインをしたという論調がメディアや他のブログでは少なくないが、冷静に振り返ると果たしてどうだろうか。
まず、収穫のあった点について。
PCSが「高値安定」だ。TESが悪くても十分カバーできるだけのPCSを稼げている。TESで中野選手には劣ったのに優勝できたのはPCSの高さだと言っても過言ではない。過去の傾向として、TESとPCSは比例する傾向が見られるということを荒川静香さんも言っていたが、浅田真選手の場合は5コンポーネンツの評価が定着し、TESが芳しくないときでもPCSが高く出るようになりつつあるということか。これは強い。彼女はシーズンインしてすぐにトップギアに入れられるだけのコンディショニングのうまさがあるということを先日述べたが、今回もやはりそのことを証明したとも言える。基本的なコンディションの良さが、ベーシックなスケーティングに安定感をもたらし、結果としてPCSを押し上げたと言えなくもないからだ。
もうひとつの収穫は、収穫と言っていいかどうか多少議論の余地はあるだろうが、「安全策」を取れるだけの「頭の切り替え」ができるようになったことだ。もともと「結果」に人一倍こだわる、負けず嫌いの性格の彼女だから、今回は演技内容に妥協してでも「優勝=15点」がほしいということだったのかもしれない。これまでは、たとえ不安があろうとも3Aを跳び続けてきたのに、ジュニア以降の彼女で、3Aを2Aに変更した彼女を初めて見た。もともとアクセルが得意な彼女であれば2AではGOEの加点も期待できる。ルール改正で今季から2Aの基礎点が上がったことも追い風だったろう。今回の彼女の2Aは基礎点3.5+GOE1.4=合計4.9だった。2AのGOEはトリプル並みに加点されるから、お得なジャンプだとも言える。試合前に不安だったという3Aが、回転不足でダウングレードされたら基礎点が2Aと同じになってしまう。しかも回転不足ではGOEの減点もあるので、確実に3.5未満の得点になってしまう。結果重視なら2Aで正解というわけだ。
一方、課題点は、新たに出てきたというよりも、昨季からの課題を引きずっているという点だ。
ひとつは既報の通り「フルッツ」の癖だ。結局、矯正できていなかった。私が見る限り、「矯正の兆し」すら見えなかった。昨季までの跳び方とまったくと言っていいほど変わっていなかったからだ。彼女のルッツはターンから入るのだが、このターン自体はアウトエッジで入っているのだけれど、肝心の踏み切りの直前にグイッとインエッジになってしまうのだ。この跳び方が昨季までとまったく同じだ。試合前の本人は「ルッツの入り方を工夫してアウトエッジになるようにする」と答えていたが、アルトゥニアン・コーチはいったいどこまで真剣に指導しているのだろうかと疑ってしまうくらいだ。某サイトで「無理に跳んで2Lz(基礎点1.9)になってしまうよりも、今まで通りに跳んだ方が結果的に得。エッジエラー判定を喰らってもGOE-1.5くらいで済み、結果的には4.5取れるからだ」とか、「新ルールへの対応を真面目にやっても調子を崩すだけ。ずるいかもしれないが、今までの跳び方でいくのも試合の戦略のひとつ」という声が出てきてしまうのも、然もありなんだろう。
某サイトで論じられたように、これが「戦略」なのではないかという見方もできるかもしれないが、私としては、今季の彼女の取組みテーマには優先順位が付けられていて、ルッツの矯正はトッププライオリティではないだけだと考えたい。そうでなければ志が低いと言わざるをえない。
ひとつの事例を紹介しよう。
米大会では、安藤選手が3Fの矯正を実践した。SPではうまくいったが、FSでは(リズムが合わず)1Fになってしまった。基礎点0.5+GOE-0.26でわずか0.24の得点になってしまった。得点は低くなってしまったがエッジエラーはなかったので「エッジの矯正」という初期段階の目標は達成したと見ることもできる。もし、昨季までの跳び方をしていれば、3Fの基礎点5.5+エッジエラーの減点-1.5で合計4.0が取れただろう。つまり、マイズナーを逆転できたことになる。(結果重視で)逆転優勝したかったのであれば、わざとエッジエラーのまま跳んだ方がよかったということになってしまう。これを新ルールの盲点を突いた姑息な作戦と見るか、勝負に徹したリアリストの冷静な戦略と見るかは議論の余地があるだろうが、結果的には、安藤選手は0.24点しか取れず、浅田真選手は4.6点取れた、という事実だけが残った。
志が低かろうはずがない浅田真選手のことだから、シーズン中にはきっと対応してくれることを期待しよう。
でなければ、これを有効な戦略として後追いする選手が出てこないとは限らない。それではISUが焦るだろう。そうなるとどうなるか?ISUはルールをさらに厳しく改正するだろう。まずGOEは必ず-3減点。さらに、(エッジがインサイドになっているのだから)3Lzではなく3Fと判定。そうなると3Fを3回跳んだことになる。すると今度はザヤック・ルールにひっかかり、最後の3Fが無得点になる、というルール改正だ。ここまでルールを徹底すれば、先述の「戦略」は一掃されるだろう。このルール改正は十分ありうると思っているが、こういうイタチごっこはあまり見たくないものだ。
浅田真選手の課題点に戻ろう。もうひとつの課題はメンタル面だ。これはメディアや他のブログではほとんど触れていない。
彼女は大きな挫折や逆境、伸び悩みというものを経験したことがない。少なくともそういう情報は皆無に等しい。(お姉さんたちを相手にして出場した大会を除けば)実際、これまでほとんど「負けなし」で、まともに負けたのは06世界ジュニア、06GPファイナル、07世界選手権くらいだろう。もちろんそれだけの努力をしてきたことは言うまでもないが、これだけの戦績は奇蹟的ですらある。(そう言えば、某局が彼女に「ミラクル真央」というキャッチフレーズをつけている。彼女もそれがお気に入りのようだが・・・)
荒川さんが「怖いもの知らずのイケイケのジュニア選手と一緒に出場するのはやりにくい」と言っていたことがあるが、これは言いえて妙だ。変な言い方になるが、浅田真選手は負けることに慣れていない。こういう選手は勝っている時、リードしている時は非常に強い。攻めに強い。勝つときは常に圧勝だ。逆に、守りに入ると脆さが出る。一度崩れると歯止めが利かない。「守り方」を知らないからだ。本人は「私にも脆いところがある」と言っていたのは、このことかどうかは確認できないが、とにかく守りには弱いところを見せる。
今回もSPでこの脆さが顔を覗かせた。冒頭の3-3で失敗した後、その動揺を引きずり、その後の演技が少々雑になってしまった。解説の荒川さんは「(演技の後半は)序盤の失敗を感じさせないですね」というような優しいコメントをしていたが、私にはTV視聴者を意識したリップサービスにしか聞こえなかった。事実、Lspは回転数が足りずレベル1の判定に留まった。なぜそうなったのか?以前、荒川さんが述べていたコメントがその要因を示唆している。「選手は今やっている要素に集中しないといけない。今やっている要素の途中で次の要素が頭をかすめると失敗することがある。ミスに動揺し、早く演技を終えたいと焦ってしまうとこういうことがよく起きる」・・・難しいことだとは思う。トップクラスの選手でも簡単にはいかないだろう。浅田真選手は過去にもそういうことがいくつか見られた(事例の紹介は別の機会に)。1回のミスで崩れてしまうのだ。常に「パーフェクトな演技」を目指しているのはけっこうなことだが、そのプランが崩れたときにどうするか。翌日のFSのように「仕切り直し」ができるときは立て直すこともできる。問題は演技途中での立て直しだ。
自分はミスもすれば、負けることもあるし、描いた通りにいかないこともある・・・、それを真摯に受け入れて試合に臨んだとき、彼女は本当の「強さ」を身に付けるのではないだろうか。
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2007年11月07日
GPは北米の2戦が終了し、第3戦以降は太平洋を渡り、アジアと欧州で開催される。
GPが2戦を終了した段階で、技術審判の「ルール運用」の問題が見えてきたので触れておこう。当ブログは本来、ルールや技術論ではなく、むしろ「技術と芸術の葛藤」をテーマとしたものだが、スポーツ競技においてルールや技術は基本的なことでもあり、このことに触れているブログは決して多くないので、この機会に整理しておこうと思う。(本来は私も決して技術論は得意ではないので悪しからず)
新聞等でも眼にした方は多いと思うが、今季はジャンプ判定がより厳しさを増したという印象が、この2戦で明確になった。但し、相変わらず、技術審判によるバラつきが見られ、判定が安定していないようにも見える。技術審判(TC、TS、ATS)やジャッジの方々も当然、技術会議を行ない、判定の運用基準の統一を図っているわけだが、そこはやはり審判も人の子。実際にはどうしても「採点競技」には宿命のバラつきは大なり小なり生じる。まして、ルール改正初年度の初戦では致し方ないところもあろう。
例えば、女子シングルのジャンプで見ると、第1戦ではエッジエラー判定が計10回、回転不足判定(ダウングレード)が計28回もあった。男子では前者が1回、後者が5回。
第2戦になると、女子のエッジエラー判定が5回、回転不足判定が8回に激減。男子では回転不足が6回だったが、エッジエラー判定は10回と激増。もちろん、出場選手が異なるのだから結果が異なっても当然だが、GPは上位選手のシードエントリーにより各大会の選手のレベルを均一化しているので、この判定回数の大幅な増減は審判のバラつきと見ることもできるだろう。(各大会の男女各々で審判はすべて異なる)
例え、ISUジャッジングシステムというルール大改正があっても、審判が変われば判定も違ってくるというのは「採点競技」の宿命であり、新ルール時代にあっても完璧に公明正大にすることは不可能だ。
但し、審判の違いによるジャンプ判定のバラつきは多少なりとも仕方がないとしても、この2戦の結果からは、ジャンプは高得点が稼げる要素であるからこそ、(その判定を厳しくしていくことで)「ジャンプ競争」に多少ブレーキをかけようとしているISUの思惑が見えてくる。エッジエラー判定は本来の基準に戻しただけとも言えなくもないが、回転不足判定については本来の基準以上に厳しく判定しているとしか思えないものがいくつも見られたからだ。
まず、ジャンプの回転不足の判定基準と評価は以下の通りと定められている。簡潔に記す。
(1)ターンやステップの進行方向を仮想ラインとして、踏み切りから着氷まで必要回転数を「回り切って」いれば成功と判定され、基礎点が得られる。さらに、踏み切り時のエッジやトウの使い方、着氷後の姿勢・バランス・伸び、等の出来映えによりGOEが加減される。
(2)基準ラインに「1/4回転未満」の回転不足があったと判定された場合、GOEで-1~-2程度が減点される。基礎点はそのままだ。数式で表すと、トリプルであれば回転数(N)が「2.75<N<3.0」と判定されたという意味だ。例えば、3Lzでこういう判定があった場合は、(単純計算だが)基礎点6.0+GOE-1.0でトータル得点は5.0になってしまう。
(3)基準ラインに「1/4回転以上」の回転不足があったと判定された場合、基礎点がダウングレードされた上にGOEで-1~-2程度が減点される。数式で表すと、トリプルであれば回転数(N)が「N≦2.75」と判定されたという意味だ。例えば、3Lzでこういう判定があった場合は、(基礎点は2Lzのそれに下げられ)基礎点1.9+GOE-0.3(2Lzの場合、GOE-1は-0.3に換算)でトータル得点は1.6まで落ちてしまう。基礎点は2Lzの計算になるが、プロトコルには識別上「3Lz<」と記録される。(「<」の表記は昨季から。それ以前は単に2Lzという記録だけが残された)
転倒すると(1)~(3)ともGOEは-3になる。(転倒の場合は、プロトコル上の(1)と(2)の区別はないことになる)
ところが、既に昨季の世界選手権から見られる傾向だが、実際には(2)の基準は使用されず、回転不足はすべて(3)の基準で処理されているとしか思われない。プロトコルで「<」の記録があったジャンプを逐一ビデオのスロー&コマ送り再生で確認すると、回転不足が「1/4回転未満」に収まっているジャンプがいくつもあるのだ。つまり、回転不足が1~2割程度のものでもダウングレードされているのだ。基準としては「1/4回転」という基準を設けているが、実際にはこの基準の判定が困難で、一律に(3)で対応せざるをえなくなっているのではないかと思えてしまう。
もともと「1/4回転」という基準は絶妙な設定だったと思う。3/4回転で着氷するとブレードは真横を向いた状態だ。これを超えて回転していると、ブレードは進行方向を向いて着氷したことになるからだ。そういう意味で(2)はダウングレードはせずに(必要回転数は認定して)GOEでの減点に留め、(3)は必要回転数と認定せずダウングレードする、という判定は理に適っているからだ。
ちなみに、素人の私たちが回転不足を見分ける「目視」上の目安は、着氷直後のブレードの動きだ。回転不足のジャンプというのは「回転途中で着氷」したジャンプなので、着氷直後もまだブレードが少し回転して見えることが多い。但し、(きちんと回転していても)軸が大きく傾いて着氷した場合も、着氷後の動きが小さな円弧を描くことがある。深いアウトエッジで着氷すると、バランスが崩れ、小さなターンを回ってしまうのだ。先日の加大会での中野友加里選手の3Aがこれに当る。軸が傾いていたので着氷でバランスを崩したのだが、小さなターンで踏ん張れたので、ステップアウトを回避できたのだ。幸いにも回転は足りていたので見事3Aが認定された。(着氷姿勢を乱したということでGOEで僅かに減点されたが)
現在の運用基準で過去の記録を再評価することはナンセンス極まりないが、ジャンプ回転数に寛容だった時代は終わり、ジャンプ氷河期が訪れようとしているというのは言い過ぎか?
少なくとも、ISUは、ジャンプは基礎点ではなく、質(GOE)で競うことを推奨しようとしているのかもしれない。それはそれでいいことだが、難度は高くはないが質のいいジャンプ、質は芳しくないが難度が高くスリリングなジャンプ、両者の価値を認めることで個性の競演が見られると思うのは、年寄りのノスタルジーだろうか。
「GPレビュー&プレビュー」のイントロダクションとして書いたつもりだが長くなってしまったので、今日はここまで。本編は中国大会までには間に合わせよう。
posted by pbq1447 |03:32 |
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2007年11月03日
GPシリーズは忙しい。開幕後6週連続で開催され、最終戦の日本大会(NHK杯)の2週間後にはファイナルがある。先週末、米大会が終わったと思ったら今週末には加大会だ。前大会のレビューと次大会のプレビューを正味4日以内でこなさなければならない。記者さんが時間に追われるのは本業だから日常茶飯事のことだろうが、こちらのブログは生業の合間に道楽でやっているに過ぎない。そこで、今回は米大会のレビューと加大会のプレビューをまとめてやってしまおうというわけだ。駆け足になるがご容赦を。
Review of Skate America
ある意味「初戦らしい」大会になった。ルール改正後、シーズンイン後の「最初の公式戦」として予測された通りの結果になった。
まず、ルール改正の影響はかなりあったと思う。私が主に注目していたのは、ルッツ&フリップのエッジ判定、シットスピンのポジション評価だ。それに対する各選手の対応状況が現時点でどの程度かに注目していたわけだ。
一方で予想外だったのは、ジャンプの回転不足に対する判定は、より厳しさを増したという印象がある。ビデオのスロー&コマ送り再生で確認しても「これでも回転不足なの?」と眼を疑いたくなるほどの厳しさだ。(ジャンプの判定方法の詳細については後日触れよう)
次に注目していたのが、各選手のコンディション作りと今季初披露されるプログラムの仕上がりだ。フィギュアスケートの(公式戦の)シーズンはGPで開幕し、各国の国内選手権、四大陸・欧州のISU選手権を経て、世界選手権で閉幕する。どの時期・大会にコンディションのピークを持ってくるのかは各選手のシーズン目標により異なるだろう。日本選手の場合、世界選手権出場を狙うトップクラスの選手であれば、出場権が懸かる全日本に一度ピークを持ってきて、出場権を得た後、再調整し、最終的には世界選手権をトップコンディションで迎えられるのが理想だろう。全日本出場を目標にしている選手であれば、その前の東日本・西日本で良いコンディションが必要だろう。中には浅田真選手のように、「出場するすべての大会で優勝を狙う」と豪語する兵(つわもの)もいるが、まあそれは彼女ならではの話であって、通常は稀有な例だ。競技に影響する故障を抱えている選手であれば、故障回復と同時並行で調整しなければならないので、なおのことじっくりとコンディションを上げていくことになろう。(手の指の骨折というような直接競技に影響しない程度のケガであれば、コンディション調整には問題ないようだ)
そこでシーズン初戦となったGP米大会では予想通り、コンディション調整中やプログラム仕上げ中の選手同士の大会となった。昨季の米大会では、この初戦を復活の試金石とすべくコンディションを合わせてきた安藤美姫選手の圧勝に終わったのはむしろ例外的で、今季は彼女も含めて各選手とも例年通り「調整中」の様相を呈していたと言える。以下は、注目選手の私なりのレビュー。
浅田 舞
足の疲労骨折の回復が先だったので、明らかに調整不足。フィジカル的にも身体が絞れていなくて全体にスピード不足に見えた。当然、プログラムも滑り込めていないようで、特にFSでは後半失速していた。彼女にとってGP初戦から参加するのは酷だったかもしれない。せめてシリーズ後半戦の参加であればもう少し調整もできていただろうに。気の毒だ。
技術的に見ると、SP、FSともすべてのルッツが「フルッツ」に判定されてしまった。跳び方が昨季とまったく同じように見え、矯正にどこまで取組んでいるのか見えなかった。これも間に合わなかったのだろう。
彼女のGPは米大会だけの参加なのでこれでお終い。次は国内戦なので全日本での復活に期待しよう。
エミリー・ヒューズ
なんか随分と身体が大きくなったなあ、と思ったら、身長が168cmまで伸びたそうだ。もともと横幅もある選手なので、余計に大柄に見えてしまった。安定感が身上の彼女ではあるが、ここまで身体が縦にも横にも大きくなるとジャンプが苦しくなるのではないかと危惧していたら、その心配が当ってしまった。
彼女もコンディション調整中なのだろうが、全体的にはなんとか踏ん張ったという感じの演技だった。ジャンプの回転不足が目立ち、着氷もバランスを崩すことが多かった。それでもスピンやスパイラルが軒並みレベル3~4に認定されたところはさすが。この辺が大崩れしないところだろう。ジャンプの精度が増せば、シーズン後半にはもっと良くなるのではないか。・・・と思ってたら、次は加大会で連戦だ。わずか1週間足らずで劇的に調子が上がってくるとは想像しにくい。彼女は今後、全米選手権(08年1月)に向けてコンディションを作っていくことになるのだろうか。
キャロライン・ザン
いやーー、恐れ入谷の鬼子母神だ(死語^^;)。昨季の世界ジュニアを見て、アメリカってぇのは層が厚いというか、流石はフィギュア王国、次から次へと金の卵を輩出するもんだなあ、と感嘆の眼で彼女を見ていたのだが、早速GP初戦で魅せてくれた。
彼女のスーパーウェポンの「パールスピン」がFSでレベル4、しかもGOEは全ジャッジがフルマークの「+3」(換算は+1.5)を付けた。私はGOEがフルマークついたLspを初めて見た。これは実質的に彼女のパールスピンは「世界一」だと認定されたも同然だろう。
コンビネーションジャンプも3-3を入れた(3F+3T)。回転不足と判定されたが、厳しいなあという印象。ルッツでエッジエラーがあったのは矯正がまだできていないということだろうが、この辺のジャンプの質を上げていけば、シニアでも十分に戦っていけるだろう。PCSもジュニア上がりでいきなり平均6点台の後半をマーク。今後、ジャッジに顔を売り、プログラムも仕上げていけば、7点台も見えてくるのではないか。いやいや、末恐ろしいとは彼女のことだ。
安藤 美姫
意外と言ったら失礼だろうが、正直に告白すれば、私の予想よりも良い内容だった。(番組で佐藤有香さんもコメントしていたように)SPのSlStでの予想外の転倒はともかく、FSを普通の出来映えで終えていたらSP2位からの逆転優勝は容易かっただろう。
しかし、結果はそうはならなかった。
その原因は明らかだ。出場選手で最もコンディションが悪かったのは明らかに安藤選手だったろう。浅田舞選手もコンディションは悪かったが、それでも足の故障は癒えていた。対して、安藤選手の右肩は相当悪いようだ。右肩は手術しなければ完治しないとのこと。昨季の全日本での右肩脱臼の後遺症で靭帯が伸びているのかなと思っていたら、軟骨に問題があり、完治には手術が必要ということだ。間接に軟骨の問題があるということであれば「遊離軟骨」がすぐに思い浮かぶが、だとすれば激痛を伴うし、手術しなければ完治はしないだろう。通常は内視鏡手術で軟骨を除去するが、練習を再開するまでに3ヶ月くらいかかるらしい。今季中は手術しないということなので、手術するとしてもシーズン後ということか。
SPで得意の3Lz+3Loのセカンドを2Loに抑えたのを見た時点で、これは相当悪いなと思ったが、案の定FSでも高得点を稼げるジャンプに次々とミスが目立った。SPでフリップがきれいに矯正できていたのは収穫だが、「まだ自分のリズムで跳べていない」ということもありFSではパンクしてしまった。これは繰り返し練習し、身体に染み込ませていくしかないし、初戦早々にその兆しは見ることができた。
TESの基礎点合計はマイズナーと微差だったが、安藤選手はGOEの加点が多く、これがFS1位の原動力となった。一方で、肩の故障を始めとした様々な不安要素があったせいか、演技全体には硬さが見られ、まだまだカルメンを「踊る」というまでには至っていない。これがPCSでマイズナーに劣ったところだろう。PCSのマイズナーとの差は1.44だったので、これが総合2位に甘んじた主因と見ることもできよう。(総合点の差は1.64)
どうやら安藤選手の今季はケガとの闘いから始まってしまったようだ。しかも「今季の完治はない。このままの状態」ということであれば、今季はケガとどう付き合っていくかに腐心するシーズンになるだろう。ただ、面白いもので、不調の原因と対処方法が明らかになっているときは選手というものは意外とサバサバしている。(右肩の状態は楽観視できないが)安藤選手の試合後の表情が明るかったのもそこにあるのだろう。その表情が次戦NHK杯ではさらに輝くことを祈ろう。
キミー・マイズナー
安藤選手とは対照的に、マイズナーに対する私の予想はもう少し良かった。大会前の強気のコメントと自信みなぎる表情からは、昨季、安藤選手と同時出場した大会ですべて後塵を拝した彼女はリベンジに燃えているのか、初戦からトップギアに入れてきているのか、と思わせるものがあった。米大会の公式スポンサーのWEBサイトでは公式練習の様子を動画で見られるのだが、そこで彼女の動画はなかった。事前にコンディションを眼で確かめられる機会を逸したので、彼女のコメントを鵜呑みにするわけにはいかないのだが、彼女の実力を知る者としてはそれなりに期待するのも当然と言うものだ。地元ファンの期待に水を差したくなかったのか、地元メディアに煽られたのかは知る由もないが、蓋を開けてみれば、やはり彼女もトップコンディションとは言いがたかった。
SPのフリップがいきなり「リップ」判定になったときには、「おいおい、俺はブログで君のことを『全種類のジャンプを正確に跳べる』と褒めてんだよ」と冷や汗をかかされたが、FSでは見事にきれいに跳んでくれて、私の名誉(?)をかろうじて守ってくれた(汗)。ジャンプの着氷で度々バランスを崩し、TESのGOEは減点となったが、演技全体を通じてスピードが落ちなかったのは流石。
メディアや一般ファンならず一部の専門家からも、今季も世界選手権のメダリスト3人が中心になるだろうという声が多いのは承知しているが、やはりマイズナーは実力者であることに疑いはない。兎にも角にも、内容はともかく最高の結果を得たのだから、(地元の期待に応えたという意味でも)初戦は目標達成というところだろう。
Preview of Skate Canada
GP第2戦は北米連戦でカナダだ。加大会の概要を述べている暇はないので、さっさと注目選手についてコメント。
★ Today’s Skaters ★ #6
ジョアニー・ロシェット Joannie ROCHETTE
地元カナダからの一番手はやはりロシェット。今年21歳になった彼女だが、既にベテラン選手の貫禄さえ漂わせる。その容姿だけではなく、安定感のある演技が余計にそう感じさせるのだ。スピード感が魅力的な選手で、ジャンプをミスしなければ上位争いの常連だ。
但し、強豪とぶつかる大会でさらに上位を目指すとなると、コンビネーションジャンプにどうしても3-3を入れたい。彼女の事前情報は伝わってこないので予測は難しいが、地元大会ということで表彰台の一角に食い込んでくることを期待しよう。
★ Today’s Skaters ★ #7
浅田 真央 Mao ASADA
彼女はコンディション調整がうまい。というか仕上がりが早い。シーズン始めからトップギア近くに入ってくる。ケガ知らずというのも強みだ。このオフシーズンでは(珍しく)膝に軽い炎症を起こしたらしいが、それもあっという間に回復。これはひとつの才能だ。
若くして既に完成された感があり、弱点を見つけにくい選手のように見える。特に私が評価するのは膝の柔らかさだ。ジャンプがどうしても注目される彼女ではあるが、この膝の柔らかさはまるでクルマのサスペンションのように機能し、彼女のスケーティングにしなやかさを与えている。一見パーフェクトに見える彼女にも実は弱点がないわけではない。浅田真選手と言えば、今や3Aが代名詞になっているようにジャンプの名手のように報道され、そう思っている人も多いだろうが、敢えてパラドキシカルな言い方をすると、そのジャンプに弱点があるのだ。意外にも彼女は全種類のジャンプを跳ぶことができない。ルッツがリップになってしまうのはノービス時代からの長い癖で、日米対抗でも矯正できていなかった。本番の公式戦でどこまで対応してくるだろうか。サルコウに至っては明らかに苦手で、彼女のサルコウは04年のジュニアGPの米大会が最後だ。しかもこのときは3Sが回転不足で2Sにダウングレードされ、転倒までしてしまった。それ以来、彼女のプログラムからはサルコウが消えてしまった。(跳べないとは言わないが)使えるジャンプの種類が限られるというのは、ウェルバランスの点で不利で、プログラムの構成に片寄りが生じるだろう。もっとも、苦手を克服してバランス良くするのか、得意を伸ばしてユニークネスを追求するのかは本人次第だが・・・。
また、特に減点対象にはなっていないようだが、彼女のフリップもちょっとした癖があり、ノービス~ジュニア時代には(国内の)ジャッジの間では意見が出されていたことがある。本来フリップは「トウジャンプ」なのだが、彼女の場合はトウを突くはずの右足が「エッジ気味」になり、ループのようになってしまうというものだ。実際にはこれが原因でGOE減点されたものを見たことがないので、競技上は問題なしとされているようだが、最近、一部のファンの間で話題になり思い出した次第。その代わりと言ってはなんだが、彼女のアクセルは実にきれいだ。本人も一番好きなジャンプなのではないか。ジャンプというのは、ルール上の難易度と本人の中の難易度とは必ずしも一致しないという好例だろう。(安藤選手が3Aや4Tを跳んだことがないのに4Sを跳べる、というのも同様だ)
浅田真選手の見所は、まず初戦から3Aを成功させてくるか。調整の早い彼女のことだから期待しよう。そして、日米対抗でレベル4と判定されたSlStが公式戦ではどう判定されるか。たとえレベル4と判定されなくとも彼女の今季のステップは要注目。本人の「大人にはなりたくない」という発言とは裏腹に、大人っぽい表現力を身に付けようとしているのが今季の彼女のテーマのひとつ。その原動力としているのがステップだ。ヤグディンが「真央はジャンプはいいが、ステップはまだまだジュニアだね」と言っていたらしいが、さすがのヤグディンも今季の彼女には脱帽するかもしれない。楽しみだ。
★ Today’s Skaters ★ #8
中野 友加里 Yukari NAKANO
中野選手の仕上がりが早い。先日の東京選手権で久しぶりに3Aを決めてくれた。直接見に行った友人の話によると、回転不足も見られずクリーンな着氷だったとのこと。他の選手が公式戦に初めて臨む中、彼女は既にシーズンインしている。試合勘とコンディションと言う点では彼女は一歩リードしているかもしれない。これは面白いことになりそうだ。
伊藤みどりさんが引退した後、3Aの後継者となったのは実は中野選手。浅田真選手よりも先に、FSで3Aを2回入れるプログラムに挑んだばかりか、3A+2Tのコンビネーションさえ成功させた。このコンビネーションは私も実際に見たことがあり、思わず歓声を上げたことを今でも鮮明に覚えている。しかもこのときは、最初のソロ3Aを失敗した後だけに「たいしたものだなあ」と感嘆した。
(村主章枝選手は別として)彼女は最近選手仲間から「おねえさん」的存在として慕われているという。それはそれで微笑ましくもあるが、まだまだどうして、バンクーバーだって十分狙えるし、すでに昨季から再上昇のモードに入っている。跳べ!友加里、バンクーバーの国で。
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