2007年10月26日
07/08シーズンの展望2(シニア篇)~GP開幕に向けて
生業に忙殺されブログを怠けていたら、あっと言う間にジュニアGP(基本ラウンド)は閉幕し、今週末にはシニアのGPが開幕するという時期になってしまった(汗)。ジュニアGPについてもう少し書きたいことがあり、それを踏まえてシニアのGPに書き始めようと思っていたのだが、こうなっては予定変更するほかない。ジュニアGPについてはファイナルの時期にあらためて触れることにしよう。 ところで、GP開幕直前となったシニアについて書き始める前に、ひとつ私から反省の弁を述べなければならない。それは前回の「07/08シーズンの展望~ジュニアGP」が私自身の認識不足の記事であったことが否めなかったからだ。その記事の中で私は「日本女子ジュニアで上位争いをしそうなのは水津選手以外に見当たらない」と書いていた。確かに水津選手は初戦で3位。次戦でもSPで首位に立つ活躍を見せた。FSであそこまで大崩れするのは予測不能だったし、試合結果というのは水物だから、実力的には十分ファイナルに進めるポテンシャルはあったことに疑いはない。問題は西野選手のことだ。2大会とも1位で文句なしでファイナル進出を決めた。特に初戦のエストニア大会はプロトコルを見ても素晴らしい出来だったことが想像できる。私は「自分の眼で見たもの以外は鵜呑みにしない」と言っておきながら、まともに見たこともない西野選手を過小評価していたことになる。猛省以外の何物でもない。西野選手はもちろん、コーチ陣を始めとした関係者、ファンの皆さんに陳謝します。ごめんなさい。今後はTV中継されない(=見ることができない)ジュニアGPについて論評することは、慎重に慎重を重ねることを肝に銘じます。 さて、シニアのシーズン開幕である。 プレシーズンマッチとして開催された日米対抗は限られた選手と内容ではあったが、今季を占う試金石のひとつにはなったと思う。ISUのルールは未だ安定せず、細かいルール&解釈変更が毎シーズンのように行なわれているので、ISUジャッジが派遣されるシーズン直前の大会が興味深いものとなる。ルール適用がどうなるかが予測できるからだ。今回の日米対抗に派遣されたジャッジのレベルがどの程度の方々なのかは知らないが、結果的に見ると、今季のジャッジは混乱しそうだなあ、という感想をもった。 各選手ともSP、FSのどちらかのプログラムしか滑らなかったので、参考とする範囲は限られてしまう。私が特に注目したのは(一般メディアと同様に)フリップとルッツのエッジ判定だった。いわゆる「フルッツ」や「リップ」と判定された場合はプロトコルに「e」が注記されるのだが、この日米対抗で「e」判定があったのはナガスの3Lzだけだった(つまりフルッツだったということ)。ビデオのスロー&コマ送り再生でも確認したが、明らかにエッジエラーだった選手は他にもいた。繰り返す。「微妙」ではなく「明らか」にエラーだったのだ。このことは他のブログでも話題になり眼にした方も多いだろうからクドクド書かないが、判定の信頼性には疑問が残った。エッジ判定はテクニカルコントローラー(コーラー)の役割なので、今回派遣されたコーラーの技量に問題があったのではないかと疑ってしまう。 まあ、いずれにせよ、日米対抗は所詮はISUの「公認大会」ではあっても「公式大会」ではない。やはり公式戦のGPにならないと何とも言えないなあ、ということに変わりはない。 よってもって、前置きが長くなったが、GPである。今回は初戦の米大会について書こう。現地時間では本日(10/26)18:00から、日本時間では明朝(10/27)8:00から開幕する。駆け足になってしまうが仕方ない。 安藤選手と高橋選手が同時出場。最終戦の日本大会(NHK杯)も一緒だ。これはモロゾフ・コーチの意向なのだろうか。米大会とNHK杯の間は十分な調整期間が取れる反面、(順調に行けば)この後にファイナルと全日本が続く。4週間で3戦連続出場というのはコンディション維持が大変だろう。昨季の上位選手はシードされエントリー希望が受け入れられるということらしいので、このエントリーは両選手陣の希望なのだろうが少し心配。墓穴を掘ることにならないことを願うばかりだ。 以下に、本大会の私の注目選手についてコメントしよう。 ★ Today’s Skaters ★ #2 キャロライン・ザン Caroline ZHANG 日米対抗で日本国内初登場となった昨季の世界ジュニア・チャンピオン。今季もまだジュニア資格なのだが、世界ジュニア・チャンピオンの推薦枠でシニア参戦する。よって、彼女にとって今季は、GPはシニアで、世界選手権はジュニアで参戦、というダブルエントリーシーズンだ。 日本では同年齢のナガス(長洲)の方が国内メディアの注目度が高いようだが、私はザンを推す。まず何と言っても、誰にも真似できないスピンを持っていること(「パール・スピン」と命名されているらしい)。誰にもない武器を持っているというのは強い。地元・米国ではその柔軟性から「ゴム人間」と呼ばれているらしい。その柔軟性と抜群のボディバランスが生み出すスパイラルも絶品だ。サーシャ・コーエンを彷彿とさせるスパイラルは必見。(新ルールの影響で)ジャンプ重視時代にあって、彼女のようにスピンとスパイラルで勝負できる選手の登場はうれしい限りだ。さらに、年齢に似合わない大人びた表現力も魅力で、金妍兒に通じるものを感じる。ジャンプに入るときに前傾姿勢が強すぎるという点を弱点として指摘する声も多いらしいが、これは今のうちに矯正しておけば対応できるだろう。但し「今のうちに」である。成長に伴い、肉体のバランスが変化するシニアになってから矯正するのは難しいらしい。基本はジュニアで身に付けろということか。むしろ、シニア参戦に向けて身に付けなければいけない技術の筆頭は、3-3のコンビネーションジャンプだろう。もっとも、シニアに上がれば、演技時間も長くなるし、PGに入れるエレメンツも増えるので、たとえ3-3が決まったとしてもいきなりの高得点は容易いことではない。しかしバンクーバーが確実に視野に入ってくる世代の一翼を担うことは間違いない選手。注目したい。 ちなみに、日本では「キャロライン・ジャン」と紹介されることが多いようだが、原語に近い表記は「ザン」だ。昨季、世界ジュニアを放送したJ sportsではきちんと「ザン」と紹介していたが、今季に入ってから地上波TVを始めとした各メディアは「ジャン」と紹介し始めた。ここでは従来通り「ザン」と表記する。細かいことかもしれないが、それが私の流儀^^ ★ Today’s Skaters ★ #3 キミー・マイズナー Kimmie MEISSNER 昨季の世界選手権で日本のメディアは「浅田真央vs金妍兒」という構図で煽っていたが、マイズナーも「バンクーバー世代」の一人であり、その実力は常に表彰台の一角を争うだけのものは持っている。確かに06世界選手権での優勝は、荒川選手(当時)とスルツカヤ欠場の間隙を縫ってかっさらったと言えなくもないが、内容は優勝に値するものだったと思う。 (3Aを見せてくれる機会は少ないが)全種類のトリプルジャンプを正確に跳ぶ唯一の選手であり、3-3のコンビーネーションも跳べる。ステップは成長中というところかもしれないが、スピンやスパイラルも安定感がある。キャラクターはいかにもアメリカン・ガールで陽気で屈託がなく、キス&クライで見せるおどけた表情は愛らしい。日本でももっと人気が出ていい選手だと思うのだが、どうしても日本のメディアは取り上げてくれない。米国選手と言えばナガス、という図式ができあがりつつある最近は特にそうだ。 昨季の世界選手権ではFSで3位となり、実力の一端を見せてくれたが、GPは出遅れた。そのためファイナル出場も逃した。先日の日米対抗も出ていなかったので現在の調整状況が読めない。彼女の3-3コンビネーションは3Lz+3Tなのだが、これをSPから入れてくるようだと手強い存在になるだろう。今季のGPでもまたもや安藤選手とぶつかるが、彼女のSPの出来が表彰台の顔ぶれを決めるかもしれない。 ★ Today’s Skaters ★ #4 浅田 舞 Mai ASADA いきなりで何だが、惜しい選手である。何が惜しいのかと言うと、その潜在能力に見合った力を出し切れていないという感じがしてならないからだ。浅田真央選手を同時に指導したラファエル・コーチの言葉を借りれば「潜在能力は舞の方が上」だそうだ。真央選手にしか眼が行っていないファンからすれば信じがたいかもしれないが、ジュニア時代の彼女を知っていれば肯ける話ではある。 メディア上では、どうしても妹の真央選手と一緒に「ユニット」で扱われ、失礼を承知で言えば「引き立て役」を背負わされているように見えてしまうので、彼女の選手としてのポテンシャルが伝わらないのではないか。或いはメディアは「姉妹ユニット」としての存在でしか興味がないのではないか。(成功率は別だが)実は舞選手だって3Aを跳べるのである。ジュニア時代には競技会できちんと跳んでいた。スパイラルもきれいだし、スピンは真央選手よりも良かったと思う。加えて、あの美貌だ(好みは別として)。ラファエル・コーチが惚れ込むのは分かる。 では、現在の真央選手との差は何か?それは「欲」の差ではないか。TVでよく見られる光景だが、二人同時に受けているインタビューの答え方にそれが垣間見られる。舞選手はいつも「真央と一緒に表彰台に上がりたい」の言葉に代表されるように、常に「真央と一緒に・・・」という発言が多い。それに対して真央選手は(そんなことには無頓着で)「全試合でパーフェクトに演技して、全試合で優勝したい」と答えるのが常だ。この強烈な自意識、「結果」に対する貪欲さが真央選手を支えている。この差だと思う。つまり、舞選手は競技選手としては優しすぎるのだ。この優しさが練習でも災いし、諦めが早いのだという。「諦めが早い」という傾向は今でも頻繁に顔を覗かせているという情報が専門誌により伝えられている。 今季は春先に疲労骨折した足の回復が遅れ、滑り込みが不足したままの状態で初戦を迎えることになるようだ。しかも昨季の成績により舞選手は今季のGP出場は1戦のみ。つまり、ファイナル出場はないということだ。足の回復も図りながら、調整を続け、復活を目指すのは全日本ということになろう。不謹慎を承知で白状すると、「料亭の女将さん」的なあの優美な笑顔でスパイラルを滑る姿を見られたら、個人的にはそれだけでも幸せなのだが・・・。 ★ Today’s Skaters ★ #5 安藤 美姫 Miki ANDO うーーーん、この選手について書くのはある意味とても難しい。なぜなら「GP出場選手の紹介」というテーマでは書ききれないことが山ほどあるからだ。恐らく日本フィギュアスケート史において、彼女ほどメディアに「消費」され、翻弄され、毀誉褒貶の嵐に巻き込まれた選手は他に例を見ないだろう。それゆえに、巷伝わる話を再び採り上げたり、メディアで伝えられている情報をリライトするだけでも膨大な量になるだろうし、ジュニア時代から彼女を見てきている私としては若いファンの方が知らないことを中心に書きたいところだが、それでも相当な量になってしまうことは明らかだ。まあ、それは今季のどこかで機会を見つけることとして、この場では今季GPの展望に限定して書くことにしよう。 現世界チャンピオンの安藤選手は、私から言わせれば、実はまだ成長途上にある選手と言える。換言すれば、現役チャンピオンでありながら頂点は極めておらず、逆にまだまだ「伸びしろ」のある選手だ。先日の日米対抗でその一部を証明して見せてくれた。彼女も全種類のジャンプを跳ぶことができるが、特に得意としているのはエッジ系のサルコウとループ、そしてルッツだ。彼女が得意としている3Lz+3Loを跳べる選手は、他にはスルツカヤしかいない。そのスルツカヤも出産のため長期休養とあっては引退寸前と見ても仕方ないし、実質的に現役選手で跳べるのは現時点では安藤選手だけということになる。一方で、ルッツが得意な選手はフリップが苦手な傾向があるらしい。荒川静香さんの現役時代もそうだったが、安藤選手のフリップはリップになってしまうことが少なくない。それが先日の日米対抗ではきちんと矯正されていた。例によってビデオでスロー&コマ送り再生でも確認したが、70度くらいの傾きでインエッジになっていた。今季の改正ルールへの対応は(今のところ)順調と見ていいだろう。 新しいステップにも注目したい。昨季、そのパワフルな滑りから「ぶんぶんステップ」と選手仲間から称されたステップにエレガントな振り付けが施されているということだ。ニコライ・コーチに言わせると「肘の使い方」の工夫だそうな。なるほど・・・・。 不安点は二つ。まず一つ目は、例の右肩の故障が完治しないこと。この不安を抱えたままだと(日米対抗での転倒のように)ジャンプの軸に影響するだろうし、ビールマン姿勢が取れない。ビールマンスピンは諦めて、それ以外の「難度の高い姿勢変化」でレベルアップを図るスピンを開発中ということだが、さて、どんなスピンを見せてくれるのだろうか。ピンチをチャンスに変えられるか、期待しよう。 二つ目の不安は、オフの滑り込み不足、PG開発の遅れによる調整が不足気味のままシーズンインすること。なぜそういう事態に至ったかは、私自身が知りえた情報もあるが、メディアでも一部報じられているのでここでは割愛。調整不足のまま迎える初戦をなんとか凌ぎ、NHK杯までに再調整し、NHK杯で確実にポイントを稼ぎ、ファイナル進出を果たす、というのが彼女の描くGP戦略と見る。(もっともNHK杯にはカロリーナ・コストナーが出る。米大会で2位以上に入らなければ、安藤選手のファイナル進出には黄信号が灯る) 勝負事は水物だから、どこかの専門誌のように単純な順位予測はやめておこう。だいたい選手たちに対して失礼というものだ。ギャンブルじゃないんだから。初戦、米大会の表彰台の行方は、安藤、マイズナーの出来次第で変動し、新星・ザン、安定感を武器にエミリー・ヒューズがどこまで迫れるか、と述べるに留めておこう。 最後に一言。ルール改正直後の初戦ということもあり、優勝スコアはあまり伸びないのではないか、というのが私の唯一の予想(汗) PS GPは、テレ朝が喧伝しているような「世界一決定戦」ではありません。「世界一」を決めるのは世界選手権です。お間違いなく(笑)
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posted by pbq1447 |16:22 |
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