2008年12月26日

NAGANOに帰ってくる全日本選手権

虹と雪のバラード

NAGANOは日本にとって、冬季五輪の第二の故郷だ。もちろん第一の故郷はあのSAPPOROであり、私の冬季五輪の原風景もSAPPOROだ。そして、SAPPOROとNAGANOをつなぐ重要な橋渡しになっているのが、トワ・エ・モワが歌った札幌冬季五輪テーマソング『虹と雪のバラード』なのである。
あれから30年以上経った今でも、私はこの歌を聴くと熱いものがこみ上げてくるのを抑えられない。1971年12月から72年4月までの5ヶ月間は、例え幼少期にあったとしても、私の人生の中でも特別なシーズンだった。その「特別な」意味は普段は表に出ることなく、私の記憶の中に静かに折りたたまれてはいるが、あの歌がひとたび流れ出すとそれはあたかもリマインダーのごとく作用し、いつでも私をあの「特別なシーズン」へ連れ戻してしまう。1997年の暮れもそうだった。それは確かクリスマスだった。
それまでずっと記憶の底に沈んでいたはずだった、あの歌が、突然、ラジオから流れ出したのだ。それは、(73年くらいに解散していた)あのトワ・エ・モワが四半世紀年ぶりに再結成し、あの歌を長野で歌うというニュースとともに私の前に再び甦った。冬季五輪が四半世紀ぶりに日本へ帰ってきた記念に、SAPPOROからNAGANOへつなげられるタスキとして、あの歌をもう一度歌うというのだ。あの『虹と雪のバラード』を・・・・。
メモリアルコンサートではトワ・エ・モワのほかに、財津和夫さんや渡辺真知子さんも共演するとアナウンスされた。開催は五輪期間中のバレンタインデーの頃だったと思う。当然、居ても立っても居られない。五輪チケットは入手していなかった私だが、あの歌を五輪の地で聴きたいと思った。切望した・・・・。しかし、それは叶わなかった。既にいろいろなしがらみに自己犠牲を強いられているワーカホリックな自分を再認識するだけだった。
それでも、あの歌はNAGANOとともに私の中で甦ったことは確かだった。

いよいよ本日(25日)から開幕する全日本の会場、長野ビッグハットでは、冬季五輪ではフィギュアスケートは開催されていなかったように思う。2002年に長野で開催された世界フィギュアもビッグハットではない。しかし、03年の全日本はビッグハットだった。冬季五輪と世界フィギュア、そして全日本・・・・、会場は各々違うけれども、私にとっては長野はフィギュアスケート所縁の地だ。

5年前に長野ビッグハットで開催された2003年第72回全日本選手権大会は、実は「日本一」を決する最高格式の大会としては不遇な大会だった。
トリノ五輪シーズン以降に全日本を見るようになったファンには想像がつかないかもしれないが、この第72回大会だけはTV中継がなかったのだ。02-03シーズンまで全日本と世界フィギュアの放送権を保有していたTBSが離れ、JSF(日ス連)も他局との新規契約を獲得できないまま大会当日を迎えてしまったのだ。ちなみに、年が明けて、日本国内での放送が未定になっていた04年世界フィギュア(ドルトムント)の放送権を急遽フジテレビが獲得したことで、これ以降は同局が全日本と世界フィギュアの中継を行なっているというわけだ(フジテレビはJSFと契約したので、フィギュアだけではなくスピードスケートも放送。JSFの抱合せ販売?)。全日本の中継はこの2-3年で視聴率20%を取るほどのメガコンテンツに急激に化け、同局でも1-2位を争うほどのスポーツ番組に急成長したことは周知の通り。TBSが世界フィギュアの放送権を手放したのは、ISUに強いコネクションを持っていた当時のスポーツ局長が退任したためと言われている。TBSとしては、世界フィギュアの放送権を優先し、全日本はオマケくらいにしか考えていなかったための判断なのだろうが、フジテレビの全日本の視聴率を見るたびに「放送権の安い全日本だけでも契約延長をしておけばよかったなあ」と溜息をつくTBS関係者の落胆振りを想像することは難しくない。(背景には放送権料の高騰もあるのだろうが・・・)

というわけで、03年の第72回大会を見た人は、実質的には会場観戦者だけということになるはずだ。貴重な観戦経験であり、自慢話にもなろう。で、かく言う私はどうか?私もTV中継を当てにしていたクチであり、多くのご同輩同様見ることは叶わなかった。但し、あくまでも全国中継がなかったということであり、地元局が独自に中継していたかもしれないが、残念ながらそういう情報を私は得ていない。(もし、ご存知の方がいらしたら教えてほしい)
この第72回大会はその後の現在に至るフィギュアスケート界の趨勢を占う大会だった。男子では高橋大輔選手が初めて表彰台に上がり、世界フィギュアへの切符も初めて手にした。女子では、当時まだジュニアだった安藤美姫選手が、前年まで「国内二強」として覇権を競ってきた荒川(97、98年で二連覇)、村主(00、01、02年で三連覇中)の両選手を押さえて初戴冠した(安藤選手は翌04年も連覇)。
また、安藤選手がこの大会のFSで成功させた4Sの映像を最近よく見かける人もいるだろうが、この映像は報道カメラの「ニュース映像」であって、大会中継の「番組映像」ではない。ついでに言うと、このときの4Sを「国内で初成功」と解説しているメディアがあるが、それは正確ではない。私の記憶が正しければ、安藤選手の4S初成功は02年11月の西日本選手権(福岡)だったはずだ。ISUが公認したことで有名な02年12月のジュニアGPファイナルよりも前のことだ。

さて、その全日本が5年ぶりに長野に、ビッグハットに帰ってくる。
トップクラスの選手についてはGPシリーズが参考になるだろうが、国内のブロック大会を勝ち抜いて出場権を得た選手については(専門誌以外では)ほとんど報道もないので、直接観戦した人でなければ注目選手を特定することは難しいかもしれない。私とて直接観戦できたのは東京ブロックだけである。フジテレビの地上波放送は生中継ではないし、上位選手に特化した編集が行われた上で放送されるので、全日本の全容を番組から想像するのは難しいだろう。私が東京ブロックで注目した望月梨早選手も出場が決定しているが、その演技は放送ではカットされてしまうかもしれない。CSのフジテレビ739では年明けに男子を3時間、女子を4時間に亘って放送するようだが、果たしてどこまで選手を網羅してくれるのだろうか。(視聴するには追加オプション料金が発生することも悩ましいが・・・・)



08-09シーズン後半へ ~GPシリーズを終えて

今季のGPシリーズ、ファイナルも終わり、08-09シーズンは後半戦に入った。
GPシリーズ、ファイナルの結果は周知の通りであり、ここで改めて書くこともない。私にとってGPシリーズとは、各選手の今季のプログラムを拝見し、各選手の当該シーズンの取組み目標や調整状況を知り、全日本や全米、欧州、そして世界フィギュアへの展望に役立てようということが主眼だ。GPはISUスコアが認定されるISU公式大会なので、当該シーズンのジャッジのトレンドを伺い知ることもできる。
言うまでもなくスケートは秋~春がメインシーズンだ。国際大会を主戦場とするトップスケーターにとっては、10-11月のGPシリーズはシーズンの前半戦(ジュニアはこれより1ヶ月半ほど早く開幕)、12-1月に各国で開催されるナショナルチャンピオンシップから欧州や四大陸の大陸選手権を経て世界選手権までが後半戦、という区切り方ができようか(もちろん私見)。シンクロナイズドスケーティングの世界選手権や今季から新設される国別対抗戦(ISU World Team Trophy)が世界フィギュア後に控えているとは言え、3月の世界フィギュアがシーズンのフィナーレにしてクライマックスであることには異論はないだろう。(五輪シーズンはカレンダーがイレギュラーになるので少々様相が異なるが・・・)

昨季はGPシリーズの一戦ごとにレビュー&プレビューをアップしたが、今季は諸事情により趣向を変えることにした。米大会~NHK杯の全6戦+ファイナルを通して見た全体的なインプレッションというレポートにしようと思う。(1戦ごとの詳しいレビューをお望みの読者諸氏はコメントで質問でも入れていただければ個別にお応えできるかもしれない)


ルール改定とその影響
毎シーズン、マイナーチェンジが行なわれ、未だに安定しないISUルールだが、今季はその中でも比較的大きいマイナーチェンジだったと言えよう。ルッツ&フリップのエッジ判定が2段階(e,!)に細分化され、3A以上のジャンプの基礎点&GOE減点が大きくなり、そしてFSのエレメンツ(スピン)が減った(シングルの話)。特に後者2点の改定はスコアに大きく影響するのは自明の理で、今季のスコアを昨季以前のそれと比較することは最早意味をなさなくなったと言っても過言ではないだろう。過去のスコアをすべて比較対象とするパーソナル・ベスト・スコア(PBS)は既に無意味であり、当該シーズンのスコアを比較対象とするシーズンズ・ベスト・スコア(SBS)が存在するだけである。いわんや「ISUベストスコア」をや、である。例えば、高橋大輔選手が08四大陸で記録した264.41というスコアは、あくまでも07-08シーズンのルール・採点基準によるベストスコアであり、今季のスコアと単純に比較することは難しい。
さて、その改定されたルールの実際の運用はどうであったか。

◆エッジ判定について
エッジ判定は概ね的確に運用されていたのではないかと思う。昨季までは見逃されていたと思う踏切りに対して的確に減点されるケースが出てきたと思う。但し、あくまでも「概ね」であり、選手を個別に見ていくと相変わらず不可思議な判定があったことも確かだ。同じ選手が同じ踏切りで、1戦目では見逃されていたのに2戦目では減点された、というケースもあった。まあ、この辺は大会ごとに派遣される技術審判が異なり、その審判の「目」の違いにより生じたバラつきの範囲ということなのだろう。問題は他にあった。
実はルールでは、エッジ判定で「間違ったエッジ(Wrong edge)」と技術審判が判定した場合は、ジャッジはGOEを必ずマイナスにしなければならい、と定められている。周知のことだが、ジャンプのGOEは踏切りエッジ以外にも評価要素が複数ある。例えば、踏切り前に難しいステップを入れたので「+1」、しかし着氷でバランスを崩したので「-1」、トータルでGOEは「0」、という具合に計算される。ところがエッジ判定は厳しく減点する方針なので、他の要素でいくら加点があっても「e」マークがつくとトータルのGOEは必ずマイナスにしなければならないと定められているのだ。換言すると、間違ったエッジだと判定されると、そのジャンプのGOEは「最高でも-1」にしかならない。これはソロジャンプでもコンビネーションでも同じ規定だ。
ところが、驚くことに、技術審判が「e」マークをつけたのにも関わらず、トータルGOEを「0」や「1」にしたジャッジが複数存在した。これはジャッジの裁量の問題ではなく、単純にルール適用ミスである。ジャッジがルールを理解していなかったとは思えないので、単純な端末入力ミスの類いかと思い、後日プロトコルが訂正されるものと思っていた。大会後もISUのサイトをウォッチしていたが、結局、現在もそのプロトコルは訂正されていない。これはジャッジの単純な「作業ミス」であり、更に言えば大会レフェリーの確認ミスである。訂正理由は明確であり、議論の余地はない。それなのに訂正されていない・・・・?????????
せっかく厳密にルールを作っておきながら自らの間違いを訂正しないとは、審判も随分といい加減なことをするなあとあきれた次第だ。(もしかしたらミス自体に気づいていない?そうだとしたらお粗末すぎるが・・・・)

◆FSでスピンがひとつ減った点について
これはTESの基礎点に影響するわけで、単純に計算すると従来のプログラムよりも3点前後低くなることが予測される。一方で、このルール改定はPCSのTR(要素間のつなぎの演技)にも影響を与えているようだ。技術要素を減らしたことでプログラム構成に余裕が生まれた半面、TRに苦心している選手が多く見受けられた。スピンをひとつ減らすと10秒前後余裕ができるわけだが、その10秒間を漫然と滑るのではなく、ステップやターンで「つなぎの演技」を入れていかなければならない。実際、他のコンポーネンツに比べてTRだけが昨季よりも低く採点されている選手も少なからず見られ、ジャッジがTRについて厳しくなったことが今季のトレンドと言えようか。実際にはスピンを減らす必要はない。昨季のように基礎点がもらえなくなっただけで、つなぎの要素としてスピンを入れても問題ない(ジャッジがどう評価するかは別だが・・・・)。
PCSの評価基準に影響するTESの要素が変化したことで、特にこのTRについてはジャッジでも評価が揺れているようだ。例えば、ある選手のTRは4.50~7.00のときもあれば5.00~7.50だったりと、他の要素評価に比べて差が大きすぎるジャッジが出ていた。ジャッジ間のバラつきはできるだけないほうがいいに決まっている。あっても大体1.00程度の幅に収まっているものだ。それが2.50も差が出てしまっては、TRのジャッジが明らかに不安定であることを示していよう。

◆回転不足によるジャンプ基礎点のダウングレードについて
今季のGPシリーズでも回転不足のダウングレード判定は厳しさを極めた。例の「1/4回転」ということは90度だ。正規のランディングラインに対してブレードが「真横」を向いて着氷でもしなければ90度にはならない。この点はTV解説者(元選手)ですら正確に把握していないようだった。選手はジャンプの着氷の際に「キャッチ」と呼ばれる姿勢を取る。両手を広げてフリーレッグを後ろに伸ばす、例の姿勢のことだ。このキャッチを入れることで空中の回転を止めるのだが、回転が止まりきらないで着氷すると、着氷直後もブレードが少し回り続けてしまう。ピタッと着氷しないで、グリッと氷面をブレードでえぐるような降り方になるので、「グリ降り」と通称されている。このグリ降りが少しでも見られると、先の解説者は「ああ、回転不足ですねえ」と言う。確かに「1/4未満の回転不足」を指摘するのであればそれでもいいかもしれないが、「1/4以上の回転不足」だったかどうかについても言及してほしいところだ。
TV放送で見る限り、ブレードが真横を向くほど(1/4以上)の回転不足があったのは2回だけだった。参考までに事例を挙げると、小塚選手の4Tと安藤選手の3Fでは「1/4以上」と見られる回転不足があった。特に安藤選手の3F(中国大会のSP)は事例として分かりやすい。TV画面の中で真横に移動してジャンプし、着氷の瞬間のシューズのヒールはカメラ正面を向いていた。即ちブレードが視聴者側に正対して着氷していた。これが90度=1/4回転だ。改めて見ると1/4回転というのは相当大きな角度である。これならスロー再生を繰り返し見なくても回転不足は明白だ。他の選手も含めて、残りのダウングレード判定されたジャンプの回転不足は、実際はどれも1/8~1/16回転くらいだった。
明らかに1/4以上の回転不足ではないのに、どうしてダウングレード判定が繰り返されるのか?
私はこの疑問に対して、どうしてもある仮説に辿り着かざるをえない。それは、プレローテーション(踏切り前の事前回転)の問題だ。
厳密に言うとジャンプの回転数は、ブレードのトウ(ピック)、またはエッジが離氷してから着氷するまでの間の「空中での回転数」がカウントされる。アクセルジャンプの例で説明しよう。アクセルは前向きに踏切り、後ろ向きに降りる。そのため、後ろ向きに踏み切り、後ろ向きに降りる他のジャンプと異なり、半回転多く回ることになる。ところが、前向きに踏切るとは言っても、実際には離氷する前に回転動作を始めているので離氷時には既に後ろ向きになっている選手が多い。だいたい3/4回転くらい事前に回転(プレローテーション)しているのだ。2Aの場合だと、2.5回転と言ってもその内の0.4回転くらいはプレローテーションなので、空中で純粋に回転しているのは実質的には2.1回転くらいなのだ。3/4回転くらいのプレローテーションは一般的で、中にはプレローテーションが1/2回転以上にもなる選手がいる。
一般的なアクセルは、アウトエッジで前向きに回転しながら踏み切る。だいたい3/4回転くらいで離氷している。ところが、その選手のアクセルは、体が完全に後ろを向いた状態、即ち1/2回転してから更に最後にトウで氷を一押しして、ようやく離氷している。かなりのプレローテーションだ。
しかし、今まではこういう激しいプレローテーションでも問題にされることはなかった。それが今季からはきちんと見るようになったのではないか、というのが私の仮説だ。
以前からもプレローテーションは「減点の考慮の対象」にはなっていた。「考慮の対象」という程度に表記したのは、必ずカウントされるというわけではなかったからだ。なぜならプレローテーションの発生をゼロに抑えることは現実的には不可能だと考えられているからだ。つまり多少のプレローテーションは容認するということだ。事実、プレローテーション判定には「1/4回転」というような数値化した基準はない。できるだけプレローテーションが少ないジャンプが望ましい、という程度の解釈だろう。それが(特に)今季からはプレローテーションも条件付でカウントしようということになったのではないか。
仮説の結論はこうだ。
着氷時に、まったく回転不足がなければ、プレローテーションは無視する。着氷時に少しでも回転不足(1/4未満の回転不足)があれば、プレローテーションと合算して「1/4以上の回転不足」があったと見なし、ダウングレードする。「合わせ技一本」で回転不足という考え方だ。
要は、プレローテーションはいくらやっても見逃してあげるから、その代わり着氷はピタッと止めなさい、ということだろう。
なんか体操の鉄棒の着地のようではないか。どんなに空中で高難度の降り技をやっても、着地で少しでも乱れれば減点というやつだ。それでも体操では単純な減点で済み、E難度からD難度へダウングレードされるというような「二重減点」はない。
いやはや、かくもフィギュアスケートのジャンプにおけるダウングレード(二重減点)ほど意地の悪いルールはない。GOE減点で十分だろうに・・・・。



EPILOGUE
ここに本日(25日)発売されたばかりの雑誌がある。文藝春秋社の『Sports Graphic Number』719号だ。既に全国の書店・コンビニ等の店頭に並んでいると思う。創刊から30年近くも経った「総合スポーツマガジン」の草分けで、私のようなオールドタイマーはもちろん若いスポーツファンにも知名度は高いようだ。他誌と同様に最近は全盛期よりも発行部数も半減して営業的には苦戦しているようだが、写真の美しさとテーマ追求型の記事の濃密さは相変わらずで、他の専門誌と一線を画した存在感はまだまだ健在のようだ。
但し、記事の良質さは今やサッカーと野球くらいに限られ、「総合スポーツマガジン」と謳っているわりには他のカテゴリーの記事の質は明らかに低い。特に最近はほとんどサッカー専門誌と言ってもいいくらいで、サッカーのライター陣は人材が揃っている代わりに、他のスポーツはどうしても取材テーマ、記事内容、編集構成ともいずれも貧弱だ。写真はいいとしても、記事がお粗末なことが多い。フィギュアスケートにしても、契約ライターの取材視点、文章力は「素人」丸出しで、本当にこれで禄を食んでいるプロのスポーツライターなのかと首を捻ることが少なくない。残念ながらこの719号でもフィギュアスケートの記事はお粗末の極みだった。
719号のフィギュアスケート記事は「GPファイナル詳報」と銘打って日韓女王の対決をリポートしているのだが、その記事に550円を払う価値はないし、立読みで済ませたとしても何の発見もない。記事はすべて他メディアでリリース済みの情報の羅列に終始しているばかりか、このライターはせっかく韓国まで出張取材に出かけておきながら、会場の臨場感を伝えなければいけないはずの描写も貧弱だ。現場の臨場感などは一般読者は既にTV放送で堪能済みなのだから、TVカメラに映っていなかった姿・表情、マイクが拾いきれなかった声・ノイズを文章で伝えられなければ、現地取材は単なる出張費の無駄遣いだ。せめて専門誌の契約ライターとして、ルールや業界事情等に精通し、一般メディアが紹介できない知見を披露してくれるならいざ知らず、それすらも「素人」レベルではお話にならない。
「詳報」のタイトルは残念ながら羊頭狗肉になってしまっている。まさか韓国の狗肉料理に合わせた冗談でもないだろうに・・・・。

雑誌は今やリストラクチャーを迫られている。
TVにはダイナミズムとライヴ感で太刀打ちできず、ラジオと新聞には速報性で劣り、インターネットには速報性・インタラクティヴ性・グローバリティで圧倒されるという状況下で、雑誌(特に専門誌)が生き残っていくためにはジャーナリズムに立ち返るしかないのではないか。時間軸では他のメディアに物理的に決定的に敵わないのだから、それを逆手に取って、じっくり読んでもらってこそ雑誌は生きてくるはずだ。情報を再構成(=編集)することで、感動を再生し、長く記憶に留めさせることができなければ、雑誌はもはや「死に体」も同然だろう。
Numberの例で言えば、写真という直感的な印象情報に、文字という客観的な認識情報を組合わせたところにNumberの妙味があったはずだ。確かに同誌のフォトグラファーの描写力は未だ衰えていない。ところが、ライターの質が低下している。ここに現在の同誌の問題がある。特に、野球やサッカー以外の競技でその問題は顕著だ。

では、なぜわざわざ私がここでNumber719号について触れているのか?
実は、私が興味を引かれたのは本誌の記事ではない。719号に付録として付いていた別冊に興味を引かれたのだ。今回、「もう一つの物語」というタイトルが冠せられて本誌に挟み込まれた別冊は、これまでの別冊と趣が違うのだ。わずか20ページの小冊子にこれまでにないテーマが織り込まれている。
従来の別冊は、特定の広告主のために企画された、1社買切りの「編集タイアップ広告企画」みたいなもので、スポンサーのPRパンフでしかなかった。ところが、今回は明らかに編集部のオリジナルテーマで企画が立てられている。それを裏付けるように、広告も特定企業のものではなく、様々な企業の広告が入っている。
「アスリートをめぐる、もう一つの物語」というタイトル、そのタイトルに呼応するようにシンメトリックな構図が際立って美しい安藤美姫選手の表紙のカット、巻頭を飾る高橋尚子さんの独白記事と、それに続く安藤選手の関連記事・・・・、最初の数ページで別冊の企画意図は明確に感じられる。それは恐らく「選手を支える力」だろう。選手を直接サポートするスタッフ、間接的に支援する企業や団体、そして地域とのリレーション活動といったものに視点が注がれているのだ。「アスリートのもう一つの物語」ではなく、「アスリートをめぐる、もう一つの物語」としたのも、テーマの視点を選手だけに留めないで、選手の周囲にも広げた企画意図の表れではないか。
これまでこうした「支える力」に視点を当てた編集テーマをスポーツメディアで見かけた記憶はない。あったとしてもビジネス系のメディアに限られていたように思う。もともと選手の活躍だけではなく、選手を支える周囲の力や活動にもスポットが当たってほしいと思っていた私としては、今回の別冊企画は非常に興味深かいものだった。

実際の記事内容には編集部サイドの苦労が偲ばれる。厳しい言い方をすると、記者の取材不足、ライターの文章力不足、エディターの知見不足があったためか、せっかく踏み込んだチャレンジングなテーマがぼやけてしまっている箇所が散見される。勿体ない。これまでアプローチしたことがなかった人に取材をかけ、経験の乏しいテーマに基づいて相手から言葉を引き出すのは簡単なことではなかっただろう、ということは想像に難くない。
例えば、「安藤美姫を長年支えるエッジ調整の達人」というタイトルで書かれている記事は、安藤選手のスケート靴のエッジ調整を手がけている坂田清治さん(インストラクター)の話だ。取材の現場では、安藤選手の靴をどうメンテし、彼女のオーダーにどう応え、ジュニアからシニアへ移行していく際にエッジをどうアジャストさせ、さらにどんなアドバイスを送ってきたのか、ということが流暢とは言えないまでも断片的にでも語られていたはずだ。坂田さんは多くのトップスケーターに関わっていながら「中でもつきあいの長いのは安藤美姫だ」ということなのだから。
ところが、恐らく、この坂田さんは取材慣れしていなかったのだろう。取材記者は同氏から言葉を引き出すのに相当苦労したのではないか。結果的に記事として構成された文章の主体と客体がぼやかされ、散漫な文章になってしまっていることからその舞台裏が想像できる。取材する側と受ける側の関係はデリケートで、こちらがとやかく言える立場にはない。しかし、この記事の拙さのせいで、せっかくの良質な材料をうまく活かせていないのは確かだろう。おいしそうな料理に仕上がっていない。ここにもNumberのライターの問題が出ているように思う。
一方で、巻頭の「Voice」と企画タイトルが付けられた高橋尚子さんの記事はなかなかの仕上がりだ。719号本誌にも高橋さんのインタビュー記事が掲載されているが、こちらの記事には何ら発見がない。別冊の記事の方が遥かに出来が良い。但し、これはライターの技量というよりも、高橋さん自身の表現力、取材慣れに助けられたところが大きいのではないだろうか。それくらい高橋尚子さんは自分の言葉と物語を持っている選手だったからだ。ちなみに、“Voice”には「声」という意味だけではなく、「宣言」とか「表明」という意味がある。巻頭のコーナータイトルを「Voice」としたのは、単に高橋尚子さんの「声」を掲載しただけではなく、この別冊企画がNumberにとっても新しい試みだったことを読者に「表明」したかったのではないか、と考えるのは私の読み過ぎだろうか。

どちらにしても、Numberとしても今回の別冊企画は初めての試みだったことには違いないだろう。営業的な危機感がチャレンジを後押ししたのかもしれないが、兎に角、新しい一歩を始めたことには拍手を送ろう。願わくはこの企画が継続されんことを。



全日本はクリスマスから仕事納めまで慌しい時期に開催されるのが通例。私も、新横浜プリンスで開催されていた頃は会場で観戦したこともあるが、その後は毎年TV観戦。しかも帰宅後のビデオ録画での観戦だ。今年も間違いなく録画観戦と諦めている。唯一の救いは我が家のレコーダがブルーレイになったことだ。ハイビジョン録画で観戦できるのがせめてもの慰めというわけだ^^;
今のフィギュアバブルが続く限りは、新横浜に全日本が帰ってくることは当分ないだろうなあ・・・・。

それでは皆さん、選手への愛情と感謝を込めて、またこの年末に精一杯の拍手と声援を送ろうではないか。
また、私からも皆さんへ、この一年間の感謝と、無事に来年を迎えられることを願って・・・・
今年もありがとう、そして、良いお年を!

Wish you have a very merry skate-week and a happy New Year!

posted by pbq1464 |06:12 | コメント(5) | トラックバック(0)
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NAGANOに帰ってくる全日本選手権

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明けましておめでとうございます。
え~2月になってしまいましたが、まぁ今年に入って最初の挨拶という事で・・・^^

仕事に忙殺されてるか、ブルーレイで選手のきめ細かい演技に魅了され枕を涙で濡らしているか、なが~いブログを少しずつ書いて「あ~駄目だ。ここは全部消してもう一回書き直そう」なんて四苦八苦してるかのどれかとは思いますが、元気です?^^スポナビ+のフィギュアの欄でもうすぐ表示が切れてしまいます。その前にちょいと書き込んでおきます。

でフィギュアのほうですが、欧州、全米が終わりましたね~どちらもリアルタイムでは観てないのですが、チェックはしましたよ。ドラマがあったようですね~特にアメリカ女子は管理人殿のストライクゾーンに入るようなドラマだったのではないかと思います^^

今週はもう4大大会ですね~何か早いなぁ時間が過ぎるのが・・・

posted by 夕焼け | 2009-02-02 00:59

NAGANOに帰ってくる全日本選手権

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こんばんは。
管理人さんは名探偵?DG「1/4規定」ってどこにいっちゃたんだろう?って疑問を持っていましたが「合わせ技1本」って!そうなんだ・・・。しかし最近のDG判定は観るものにも影響(悪影響)を与えているような、気が。3回転が2回転に見えてきたり・・・。あとTBSの放映権。何で手放したの?って思ってました。少し(いや大分)前までは他よりは硬派なイメージがあったので。でも今はどこが放送しても同じようなものかもしれませんね。
雑誌については、私のように年とともに知的好奇心も薄れ
、活字も読まなくなってきてしまった人間にはちょっと難しい話です。でも今の時代ってとにかく、なんでもかんでもスピード重視って感じで、そんななかでプロが育つ環境を作るのが難しいような気がします。
フィギュアについての私の理想は、もっとトップ選手の年齢が上がることです。みんな驚くほど若すぎて、円熟の頃には引退してしまう。でも難しいですよね、いろいろと。

posted by 忍 | 2008-12-28 01:20

NAGANOに帰ってくる全日本選手権

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珍しく一刀両断してますね^^てか復活していきなりテンション高っ!
あいや~ワタクシナンバー大好きなんですよね~ナンバーは昔から世の中の人気、フィーバーにあんまり左右されない独自の「ナンバー目線」みたいなモンを持ってると好印象だったんですが、野球、サッカー以外の分野ですか?ナルホドナルホド・・・
まぁ雑誌業界は今厳しいみたいですね~付録や懸賞に思いっきり力入れてる雑誌も多いですし・・・
そういう話なら音楽業界も厳しいと思いますし、自動車業界なんかもそうかも知れないですね~新聞も広告が減ってきていると聞きますし・・・おっと湿っぽくなってしまいました^^
実はワタクシ、ネットで情報を集めるなんてほとんどやった事がありません~朝は朝刊とスポーツ新聞で情報をチェックして、好きな分野は雑誌が出るのを楽しみにしているクチでして^^ワタクシ結構アナログな奴です・・・雑誌も使い捨てのように考える人もいれば、一冊一冊きちんと保存する人もいますし、「作品」として雑誌を捉えている人達から見れば今の雑誌の状況は悲しく思えるのかも知れんなぁ~

札幌五輪はリアルタイムではないのですが、長野五輪はテーマ曲が確かアガルタの「輪になって踊ろう」だったような気が・・・他にありましたかね?覚えてないなぁ~

でフィギュア。
小塚選手がポーンと飛躍しましたねぇ~ワタクシがチェックしてなかっただけとも言えるのかも知れませんが・・・
マイズナー殿は今季も笑顔が少ないですが、最近ワタクシメディアが流す「スランプ」や「不調」という言葉をあんまり信用しなくなりましたよ。「昔飛べたから」という理由で「スランプ」と言うのはどうなんでしょうね~?ジャンプに限って言えば、ジュニア時代に飛ぶのとシニアになって飛ぶのとではやっぱ難易度も違うでしょうし・・・真意は選手本人しか分からない事なのであんまし順位、点数に一喜一憂せずに「まったりと応援していこうかな?」なんて考えております^^



posted by 夕焼け | 2008-12-26 23:16

tacticsさん、こんばんは!

コメント投稿者ID :

>前回の長野での全日本。。。。
>僕、見に行ってました。

おおーーー!それは羨ましい!
あの大会を見たということは、マジで自慢していいと思いますっ^^

>村主さんも、恩田さんも、荒川さんも、太田さんもでてたすごい大会でした。(武田さんも、舞ねーちゃんも・・)

本当にすごい大会、すごいエントリーですね。
あの頃はトップのシニア4-5人にジュニア上がりの2-3人が食い込んできて、上位を7-8人くらいで競っていた感じでしたね。これから日本の女子はすごいことになりそうだとワクワクし始めた頃でした。
それが爆発したのが05年の全日本でしょうか。


>なのに、入場料タダ、会場ガラガラ・・・・なんだか隔世の感があります。

そうそう、入場無料だったんですよね^^;
今は考えられない。
私は新横浜へ見に行ってたんですけど、全日本なのに地方のブロック大会みたいなのどかささえ感じられて、選手との距離感もすごい近く感じたものです(新横浜の会場が小さいってこともありますが^^;)

それが今は、トップの選手は皆スター扱いで、JSFの管理もうるさくなり、なんか別世界の人たちみたいに感じちゃうんですよね・・・・ちょっと寂しいです、仕方ないけど。

posted by pbq1464 | 2008-12-26 18:32

NAGANOに帰ってくる全日本選手権

コメント投稿者ID :

前回の長野での全日本。。。。

僕、見に行ってました。

あのときは、真央ちゃんが2回目くらいの挑戦!!

安藤選手の成功したと言われている4回転サルコウ!!

村主さんも、恩田さんも、荒川さんも、太田さんもでてたすごい大会でした。(武田さんも、舞ねーちゃんも・・)

なのに、入場料タダ、会場ガラガラ・・・・なんだか隔世の感があります。

posted by tactics | 2008-12-26 17:41

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【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」