2008年10月01日

08-09シーズンに向けての考察1 ~ エッジ判定の実態

07-08シーズンからフリップとルッツに限ってエッジ判定が厳しくなったことは記憶に新しい。当ブログでもこの点については、きちんとまとめた形で考察しよう、と予告していた。そこで今回はシニアクラスの08-09シーズンが直前に迫ったプレシーズン企画として、このエッジ問題を総括し、08-09シーズンの展望の一助としよう。
まずは、フリップとルッツというのはどういうジャンプでどう違うのか、簡単におさらい。(右足が利き足で反時計回りにジャンプする場合で説明)

フリップとルッツの共通点
バックスケーティング(後ろ向きの助走)で、左足のエッジと右足のトウで踏切り、右足のアウトエッジで後ろ向きに着氷する。両者ともエッジだけではなくトウも使う「両足踏切り」のため高さが得やすい。
ちなみに、サルコウやループは片足エッジだけで踏切るので高さはあまり出ない。(回転数を上げるには、高さではなく回転速度を必要とする)

フリップとルッツの相違点
左足エッジの、インサイド(右側のエッジ=身体の内側)を使うのがフリップ。アウトサイド(左側のエッジ=身体の外側)を使うのがルッツ。
ちなみに、フリップ(Flip)は「はじく、はじき飛ばす」という意味の一般動詞。対してルッツ(Lutz)は、考案者の Alois Lutz というスケーターの名前が語源。
また、基礎点はルッツの方が高い。左足インエッジから反時計回りに回転するフリップは自然に回転しやすいのに対して、ルッツは不自然で回転しにくいからだ。左足アウトエッジから反時計回りに回転しようとするのは「逆方向」に無理やり回ることになるのでルッツはフリップよりも遥かに難しいとされているわけだ。もっともその割にはトリプルの場合で言うと基礎点は0.5しか違わないが(3F=5.5、3Lz=6.0)。そして、比較的跳躍力の劣る女子選手ではルッツを正確に跳べないため、ルッツと申告しておきながら実際はフリップで代用(=フルッツ)してしまう選手が多いと言われている。ちなみに、本来インエッジで跳ぶフリップをアウトエッジで跳んでしまう ジャンプを「リップ」と呼ぶ。(いずれも造語)

というわけで、簡単に言うと、フリップとルッツの跳び方の違いは踏切りエッジがインかアウトだけだ。(厳密に言うと、アプローチの仕方も異なるが、本章では割愛)
ここまでは理屈と定説の話。では、実態はどうなのか?
今回は07-08シーズンの実績を集計し、巷言われている定説を事実に基づいて検証しようという酔狂な試みである。

検証の条件(検証の対象)
1. 競技会はシニア、カテゴリーは男女の各シングルを対象とする。
 (ジュニア選手でもシニア競技会での試技であれば対象とする)
2. ISUスコアが認定される、ISUチャンピオンシップとGPシリーズを対象に集計。
 (世界選手権、欧州選手権、四大陸、GPシリーズ6戦+ファイナル1戦)
3. 対象となるフリップ&ルッツは、トリプル以上とする。
 (男女とも条件を揃えるため、男子で実施の少ないダブル以下を除外)
4. 技術審判がエラー判定したジャンプのみを「リップ&フルッツ」
  としてカウント。(私見の排除)
5. 対象競技会に2回以上出場し、フリップとルッツの両方を2回以上
  実施した選手で集計。(偶発性の排除)

検証の結果
男子
◆フリップ&ルッツ実施選手:42名
◆フリップ実施回数:延べ236回
 「リップ」判定回数:延べ56回(エラー率23.7%)
◆ルッツ実施回数:延べ347回
 「フルッツ」判定回数:延べ4回(エラー率1.4%)

女子
◆フリップ&ルッツ実施選手:33名
◆フリップ実施回数:延べ218回
 「リップ」判定回数:延べ38回(エラー率17.4%)
◆ルッツ実施回数:延べ256回
 「フルッツ」判定回数:延べ52回(エラー率20.3%)

ちょっと意外な結果ではないだろうか。
男子ではルッツを正確に跳べる選手が多いのは予測できたとして、ルッツよりも易しいはずのフリップがリップになってしまう選手が多かったのは予想外だった。延べ回数で言えば、4回に1回はリップになってしまっているという結果だ。
女子ではフルッツが多かったのは予想通りか。しかし、男子ほどではないもののリップも意外に多かった。大雑把に言えば、女子ではフリップとルッツが両者とも5回に1回は不正確に跳んでいた計算になる。

巷の定説には実はもうひとつある。フリップが得意な選手はルッツが苦手、ルッツが得意な選手はフリップが苦手という定説だ。
難度の理屈で言えば、ルッツが跳べるのであれば、より易しいフリップは問題なく跳べるはずだと考えがちだが、実態はそうではない。選手には癖や相性というものがあり、理論通りにはいかないということだろう。ルッツの習得過程でアウトエッジで踏み切ることに慣れてしまって、フリップまでもがアウトエッジになってしまったということもあるようだ。
一方で、フリップがリップになってしまう選手がエッジを矯正することは比較的可能だと言われている。フリップの後にルッツを習得した選手であればフリップは「元に戻す」作業だからだ。
これに対して、ルッツがフルッツになっている選手のエッジ矯正は相当に困難だと言われている。なぜなら、その選手は実はルッツをまだマスターできていないからだ。フリップは習得したが、ルッツが未習得の状態で「フリップでルッツ風に跳んでいる」に過ぎないから、ということらしい。アプローチだけはルッツ風に行ない、ジャンプ自体はフリップで跳ぶ、換言すれば「代用」しているだけということになる。ルッツの習得を途中で止めて「代用ジャンプ」で誤魔化すことを続けてきたため、正確なルッツの「習得前」に変な癖がついてしまっているというわけだ。

なぜ女子選手にフルッツが多いのか?
それは同一ジャンプの実施回数を制限した通称「ザヤック・ルール」と、より基礎点の高いジャンプを跳ぶことが有利になる新採点方式の影響ではないか、と小生は思っている。ルッツをまだマスターしていないのに、回数制限をクリアしながら高い基礎点が欲しくて「代用ジャンプ」を使い続けてしまった代償なのではないか。技術審判が今まで看過してきたこともこれに拍車をかけただろう。より高い基礎点のジャンプを少しでも多く入れる・・・そんな点数稼ぎにこだわったプログラム作りがしっぺ返しを喰らったと言っては言い過ぎだろうか。

次に、選手個々の判定状況を検証する。

男子
◆1回もエラー判定されなかった選手:19名(男子全体の45.2%)
*実施回数によるTOP5:
 1位 マイケル・チャン/延べ23回(Flip11回、Lutz12回)
 2位 高橋大輔/延べ22回(F12回、Lz10回)
 3位 クリストファー・ベルントソン/延べ19回(F11回、Lz8回)
 4位 ステファン・ランビエール/延べ17回(F7回、Lz10回)
 5位 エヴァン・ライサチェク/延べ12回(F4回、Lz8回)

◆フリップが半数以上「リップ」判定された選手:10名(23.8%)
 *フリップがすべて「リップ」判定された選手:2名
  マニュエル・コール(フリップ実施回数3回)
  アレクサンダー・カザコフ(同2回)
◆ルッツが半数以上「フルッツ」判定された選手:1名(2.4%)
 *ルッツがすべて「フルッツ」判定された選手:0名

女子
◆1回もエラー判定されなかった選手:15名(女子全体の45.5%)
*実施回数によるTOP5:
 1位 カロリーナ・コストナー/延べ25回(Flip15回、Lutz10回)
 2位 金妍兒/延べ20回(F8回、Lz12回)
 2位 ジョアニー・ロシェット/延べ20回(F8回、Lz12回)
 4位 安藤美姫/延べ17回(F7回、Lz10回)
 5位 レズリー・ホーカー/延べ12回(F6回、Lz6回)
 5位 金羅英/延べ12回(F6回、Lz6回)

◆フリップが半数以上「リップ」判定された選手:5名(15.2%)
 *フリップがすべて「リップ」判定された選手:1名
  サラ・マイアー(フリップ実施回数8回)
◆ルッツが半数以上「フルッツ」判定された選手:6名(18.2%)
 *ルッツがすべて「フルッツ」判定された選手:4名
  アシュレー・ワーグナー(ルッツ実施回数12回)
  浅田真央(同9回)
  キャロライン・ザン(同9回)
  浅田舞(同4回)

1回もエラー判定されなかった=パーフェクトに跳び分けていた選手は、男女とも5割弱。これもやや意外。女子はともかく男子はもっと多いイメージがあったが、男女に大差はなかった。パーフェクト・ジャンパーには男女ともトップスケーターが名を連ねているのは納得するところ。
問題は、すべてエラー判定された=跳び分けがまったくできていなかった選手、である。男子の2名はいずれもトップクラスとは言いがたいのでまだいいとして、女子の5名がいずれもトップスケーターであったことは驚き以外の何物でもない。アシュレー・ワーグナーとキャロライン・ザンはジュニアから上がってきたばかりということで目をつぶるとしても、浅田真央選手は「ジャンプの名手」としても知られてきた世界チャンピオンのはずであり、サラ・マイアーにしても欧州を代表する実力派スケーターだ。これはどうしたことか。1シーズンでは間に合わないほど矯正が困難だったということか、それとも1-2点程度の減点であれば他でリカバーできると高をくくったか・・・・、よもや矯正は不可能とあきらめたわけではあるまい。
いずれにせよ、両選手とも他の範となるべき選手であるだけに今季は是非ともエッジ矯正に本格的に着手し、その成果を篤と拝見したいと願うばかりだ。


エッジ判定方法の構造的欠陥
公式記録によるエッジ・エラーの実態検証は以上の通りだが、小生は当ブログにおいて、しばしばその判定に疑問を投げかけてきた。プロトコルを鵜呑みにせず、あくまでも自分自身の目視を大切にする小生の判断と、プロトコルに記載された公式記録が一致しないことが少なからずあったからだ。言うまでもなく、小生はISUの技術審判ではない。「専門家が下した判定になんでイチャモンをつけるのか?」と訝しがる向きもあろうが、たとえ専門家と言えども人間のやることに完璧はないものだ。必ずそこには限界があるし、さらには非合理的であることを承知で強行するという「権威の乱用」さえ存在する場合がある。新採点方式になってからは一見、採点の透明性・客観性が向上しているようには思われるが、一方で「強引な判定」も存在するように見受けられる。特に、このエッジ判定については判定方法に「構造的欠陥」があることを承知で強引に行なっていると思わざるをえない部分がある。
そこで、このパートではエッジ判定方法の欠陥を検証し、知見を高める一助にするための考察を試みる。

エッジ判定は技術審判の裁量だが、彼らの判定方法のポイントを以下に簡潔に整理する。
1. まずは「目視」で判定。
2. 審判専用カメラで撮影されたビデオ映像でも確認するが、その再生速度は標準。
  (回転不足判定のようなスロー再生は行なわない)
3. 審判専用カメラは1台、設置位置は審判席の横。
  (即ち、審判の目視と専用カメラの撮影方向はほぼ同じ角度)
4. 踏切る瞬間だけではなく、アプローチでのエッジの傾きも参考に判断する。
  (「間違ったエッジを使っている時間」の長さも考慮に入れる)

上記1-2に象徴されるように、エッジ判定は曖昧さを相当に孕んで判定されていると思っていいだろう。回転不足に対する異様なまでの厳格さとは雲泥の差だ。ISUはエッジ判定を回転不足ほどには問題視していない、と考えていいだろう。(減点方法もそれに比例している)
上記4点で最も注目していただきたいのは、3番目の審判専用カメラの台数と設置位置である。
フィギュアスケートリンクの国際規格は、長辺60m×短辺60mの長方形(四隅は角丸)で、面積は1800平方メートルとなっている。技術審判3名(TC、TS、ATS)とジャッジ10-12名(競技会により変動)は、長辺側のリンクサイドに陣取るのが基本。他の技術要素同様、エッジ判定は技術審判が判定するのだが、問題は彼らの「席位置」にある。当然ながら座席は固定されていて、選手の演技中に自由に動くことができない。当然、審判席からでは「見えにくい角度」が必ず生じる。しかも「目視」をサポートするはずの専用カメラもほぼ同じ角度からしか撮影していない(目視の死角を補完していない)。
エッジの傾き角度(イン/アウト)は、ブレードの正面または真後ろからがもっとも見分けやすい。即ち、選手が技術審判に対して縦方向に向かってジャンプするときが最もエッジ角度が見やすい。逆に、技術審判の前を横切る方向で選手がジャンプすると最も見えにくい。エッジ自体の角度が見えにくい場合は、(アプローチ時の)膝や足首の曲がり具合などを参考にせざるをえないという。つまり、選手がリンクの長辺方向に滑ってフリップやルッツを跳ぶと、技術審判からはエッジが見えにくいのだ。しかも厄介なことに、他のジャンプに比べ長い助走を必要とするフリップ&ルッツは長辺方向(審判の前を横切る方向)に実施されることが多い。
こんなことは素人の小生が指摘するまでもなく、ISUの技術委員会では百も承知のはずだ。専用カメラをリンク長辺側だけではなく、短辺側にも設置し、ダブルアングルで確認するのであればこの構造的欠陥を少しでも改善できようが、それも行なっていないようであれば「無理を承知で強引に判定している」と言わざるをえない。
一方で、こちらはTV中継のマルチアングル映像やスロー再生など、現場の技術審判よりも遥かに厳密にエッジを確認できる。このことが判定に疑義を生じさせる温床となっているのではないか。
小生がコリオグラファーだったら、フリップやルッツのエッジに自信がない選手のためには、フリップやルッツは必ず長辺方向に行なうように構成したプログラムを作る。技術審判の目を盗める公算が大きいからだ。


金妍兒の「リップ疑惑」
エッジ判定のテーマでもうひとつ避けて通れないのが、金妍兒の「リップ疑惑」の件だ。当ブログでもしばしばその「疑惑」について触れてきたことをご記憶かと思う。本章では、その疑惑について結論を出したいと思う。
但し、本章を進める前に予め書き添えておきたいことがある。それは、本章の目的は金妍兒の弾劾にあるのではなく、ISUの判定方法及び技術委員会の運営に問題があることを指摘することにある。当ブログでは特定の選手だけを賞賛することは極力避けたいのであまり触れたくないことだが、小生は金妍兒を非常に高く評価している。さらに告白すると好意的にすら思っている。順番は申し上げにくいが、5本の指に入るくらいお気に入りの選手である。よって、この問題は金妍兒に非があるのではなく、寧ろ金妍兒はISUの曖昧さの被害者であるとさえ思っている。金妍兒ファンの方がいらしたら、どうか冷静に本章を読んでいただきたい。
先述のように、プロトコルに基づく検証では金妍兒は一度もエラー判定を受けていない。パーフェクトに跳び分けができている選手ということになる。しかし、小生が見る限り、(ビデオの助けを借りなくても)どうしても彼女のフリップはアウトエッジに見えて仕方がない。
彼女のフリップはリンクの長辺方向に行なわれる。先述のように踏切りエッジは審判席からは見えにくいだろう。それでも、踏切り前の左膝の開き具合、左足首の曲がり具合は「目視」でも確認できるはずで、インエッジで踏み切っているとは到底見えない。百歩譲って「フラットエッジ」(インにもアウトにも傾いていない垂直に立ったエッジ)がいいところだ。そうは言ってもISUが認定していることも事実なわけで、ISUの基準では金妍兒のフリップは「セーフ」ということになる。
ひとつ盲点があるとすれば、彼女はフリップを必ずコンビネーションで跳んで(3F+3T)、ソロでは跳ばないということだ。彼女のコンビネーションは本当に素晴らしい。助走スピード、高さ、距離、回転軸、着氷姿勢・・・どれを取っても申し分ない。GOEで+2の加点が付くことも珍しくない。コンビネーションジャンプとしての全体の出来栄えがフリップのエッジを忘れさせてしまうほどだ。実際、たとえフリップのエッジで減点されても、コンビネーション全体の出来栄えがエッジの減点を上回り、トータルではGOEが加点になっていると考えることもできる。3Fをソロで跳んだらどうなるか?「e」マークは付くのか?GOEは減点されるのか?実際に彼女がソロで跳んで見せてくれない限り、それは憶測の域を出ないだろう。コーチのブライアン・オーサーさんは金妍兒の3F+3Tを見て、その全体の出来栄えがあまりにもいいので、細かくエッジ指導をする必要はないと思ったのではないか。エッジを気にしてコンビネーションが崩れてしまうよりは、このままの状態で跳んだ方が得られるものは大きいと考えたのではないか。つまり、弱点の矯正ではなく特長を生かす、ということ。勿論これは小生の大胆な想像ではあるけれども、もし本当にそうだとしたらオーサー・コーチの大英断だったと思う。
まあ、このような仮説を立ててみたところでプロトコルの事実はシンプルに「認定」を示しているだけだ。
しかしそれでも釈然としないのは、金妍兒のフリップにISUがお墨付きを与えているという「オフ・アイス」の問題だ。

07-08シーズンが始まる前にISUの技術委員会は各国協会の役員を招き、その場でフリップ&ルッツの「模範映像」が上映されたという。その映像が金妍兒のものだったと報道されている。この報道の通りだとしたら2つの点で問題がある。
まず1つ目は、ルッツはともかく金妍兒のフリップは模範演技としては不相応ではないかということだ。理由は上述の通り。彼女のフリップは「可」かもしれないが「優」とは言えないだろう。模範というのであれば、カロリーナ・コストナーやジョアニー・ロシェットの方が遥かに相応しいのではないか。ルッツはともかくフリップに限定すれば村主章枝選手のだってかなりいい。
2つ目は、現役選手の映像を模範映像として採用するのはアンフェアだということだ。公平を期さなければならないISU自身が特定選手のエッジ判定について審判に予断を与えることになるからだ。模範映像は引退した選手のものにするべきで、現役選手の映像しか入手できなかったというのであれば、選手を特定できないようにその映像を加工・編集してから上映すべきだった。上半身にモザイクをかけるとか、下半身だけをアップにするとか、いくらでもできたはずだ。
実は、ISUがこのようなアンフェアなことをするのは今に始まったことではない。かつて、渡部絵美さんが現役選手だったころ(約30年前)、彼女の2Aを模範演技として技術委員会で取り扱っていたことがある。流石に当時は現在ほど細かい採点基準はなかったので、実際にジャッジに与えた影響は微々たるものだったのかもしれないが、現役選手の演技を模範として扱うことが採点競技の審判にどれだけ影響を与えるかということについて、ISUは昔から無頓着だということだ。

金妍兒のフリップは、07-08シーズンのISU基準では合格ラインに達していて、減点対象にはならない。但し、合格点(可)はもらえるかもしれないが、「優」、「良」がもらえるかというと厳しいかもしれない。これが結論だ。
金妍兒は誠実で自分に正直なだけではなく、どこか内省的な志向がある選手だ。それが彼女の魅力でもある。金妍兒はとても聡明な女性だ。彼女は自分の長所も短所もすべて自覚できている。であればこそ、ISUのお墨付きに浮かれることなく寧ろ冷淡なくらいに受け止めているのは、他ならぬ彼女自身ではないだろうか。


08-09シーズンのルール改正
エッジ判定の厳格化が昨季から行なわれ、今後はさらにその厳しさが増すものだと予測していた。ところが、過日発表されたルール改正は拍子抜けするものだった。既にISUのアナウンスをご覧になった方も少なくないだろうから以下に簡潔に記す。

1. エッジ判定は2段階で判定する。
2. 重度の間違ったエッジで踏み切った場合、技術審判は「間違ったエッジ」であったことをジャッジに通知、且つGOEを必ずマイナスにするようにジャッジに指示(強制)。プロトコルには “e” マークを記載(edgeの意)。
3. 上記2よりも軽度の「間違ったエッジ」の場合は、GOEの減点はジャッジの任意(減点してもしなくてもよい)。プロトコルには “ ! ” を記載して(Attentionの意)、上記2と区別。

エラーの度合いにより減点の幅を持たせたことは理に適っている。但し、上記3は実質的に「目をつぶる」余地を追認したことになる。この改正で今季はエッジで減点される選手が減少すると予測される。昨季のエラー判定された選手の中で「より軽度」の選手は「減刑」されることになるわけで、「軽度」と判定されるとGOEはマイナスにならない可能性が出てきたからだ。
一方で、昨季は「クロ」とは断定されず「灰色」に留まり、結果的には減点を免れていた選手の中で、今季は「軽度」と判定される可能性も出てきたとは言える。但し、ISUが昨季に「灰色」と睨んでいた選手がどの程度いたのかはまったく情報がないので予測がつかない。
とにかく、ISUがエッジ判定の減点を厳格化しようという方向でルール改正をしたとは思えない。厳格化するのであれば、エラーの度合いに限らずGOEは必ずマイナスにする。重度のエラーは-3、軽度は-1。これくらいにしないと厳格化したとは言えない。マイナスにしなくてもよい、という余地を作ったことは、エッジ判定を緩和したことになる。
なぜ緩和したのか?
手前味噌のようで気が引けるが、当ブログの検証でも指摘したように、ISUもエッジ判定の困難さと選手の実態に気づいたということではないだろうか。審判席からは見えにくい死角があること、女子選手はともかく男子選手にも多くのエラーが見られたこと。エッジ判定を厳格化していくことは混乱を招くだけで非現実的だと判断したのかもしれない。その結果が今季のルール改正(緩和)の背景にあったのではないか。まあ、それもよしとしようか・・・・。
但し、このようなルール緩和は昨季まじめにエッジ矯正に取り組んでいた選手にとっては梯子をはずされたのも同然だろう。得意のルッツの調子を崩してまでもフリップのエッジ矯正に真面目に取り組んでいた選手やコーチはどのような思いでこのルール改正の説明を聞いただろうか。一方で、エッジ矯正を先送りにして延命を図ってきた選手やコーチはこっそりと安堵しているかもしれない。正直者が馬鹿を見たのだとしたら、猫の目のように変わるISUのルール改正は何とも罪作りなことをしたものだと思うのである。


08-09シーズンのプレシーズン企画の第1弾として、今回は「エッジ判定の検証とルール改正」についてまとめた。次回、第2弾は「ジャンプの回転不足の検証とルールの欠陥」についてお届けする予定だ。ジャンプの回転不足の判定については、現行ルールがほとんど死文化しているとしか思われないからだ。その点について検証と指摘を試みる。
それはいつになるか? GPシリーズ開幕までには間に合わせないと「プレシーズン企画」にはならないのだが・・・・(汗)

posted by pbq1464 |22:49 | コメント(0) | トラックバック(1)
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2008-10-09 15:49 | 続きを読む
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