2007年12月01日

Touch and Go #6 ~ GPレビュー&プレビュー(日露篇)

Review of CUP OF RUSSIA

ジョアニー・ロシェット
逆説的な言い方をすると、「逆転のロシェット」の面目躍如たる演技だった。SPの失敗をFSで挽回して、逆転する、或いは順位を大きく上げるというのが、最近の彼女の傾向になっている感がある。伊藤みどりさんも現役時代、SPまでの出遅れをFSで大きく挽回することが度々あったので「ツナミ・ガール」の異名をとったことがあったが、今やロシェットがツナミ・ガールを襲名というわけでもあるまい。
しかし、ロシェットはシュアなジャンプが持ち味なのに、SPでジャンプミスが目立つのは不思議な感じがする。コストナーのように、SPではいい滑りを見せながらFSで失速するというのに比べれば、最後は帳尻合わせの順位に落ち着くことになるが、地力のある選手だけにもったいないと思ってしまう次第だ。
それにしてももったいない。FSが素晴らしかっただけにSPのミスがもったいない。彼女のSPのコンビネーションジャンプは本来、3F+2Tのはずだから基礎点は6.8だ。これが転倒してセカンドが入らなかったので、3Fの基礎点5.5+GOE-3.0+ディダクション-1.00=1.5になってしまった。都合5.3点も失ってしまった計算だ。この5.3点の意味は大きい。総合で2位になれたからだ。露大会で2位(13pt.)となっていたら、加大会の3位(11pt.)との合計で24pt.を得て、キャロライン・ザンを上回り上位5選手に入ることができた(ザンとは24pt.で同点だが、2戦合計のスコア338.09はザンのそれより30点近くも上回る)。NHK杯を残して5位であればファイナル出場の可能性が少しは高まるわけで、本人も悔いが残っているのではないか。
なお、周知の通り今季からフリップとルッツの踏切りエッジが厳しく判定されているが、今季のロシェットはすべてのフリップとルッツでエラー判定を受けていない数少ない選手なのだ。このことからもロシェットが正確なジャンプを跳べる選手だということが分かるだろう。それだけにSPのジャンプでミスが目立つのがなおのこと惜しいと思うのである。(エッジエラーについては後日まとめてレポートしよう)

中野 友加里
好調を維持している。またまた3Aを決めてくれた。SPをノーミスで終え、FSでもコンビネーションの回転不足や「フルッツ」があったくらいでほぼノーミス。演技終了直後は本人もいい感触があったと見えて、納得の表情を浮かべていたが、意外にTESが伸びなかった。本人もキスクラで少々顔を曇らせていたが、私もそのときは首を捻った。後でプロトコルを見たら、GOEの加点があまりなく2.84に留まっていたのだ。そのためFSのTESは60点に届かなかった。
但し、今回はPCSが伸びた。SP、FSとも7点近くの評価を受けた。これは初戦の加大会を上回るもので、彼女がPGを滑り込んでいる成果が出始めているのではないだろうか。2戦連続で好調を維持していることが自信につながり、硬さが取れ、のびのびと滑っているように見えたのも事実だ。TSSは170点を超えてPBSを更新。2戦連続で2位をゲット。合計26pt.で見事ファイナル進出を確定。
ファイナルでもこのまま上昇気流に乗って、日本の女子は安藤美姫、浅田真央だけではないぞ、ということを是非見せてほしい。

金 妍兒
確かにFSは素晴らしかった。全選手中、文句なく今季一番の出来だったとは思う。
まずFS冒頭のコンビネーションは高さ、空中姿勢、着氷後の流れ、安定感・・・・、場内にどよめきが起きるのも肯ける。しかし、敢えて言うと、あのファーストジャンプは「リップ」だった。なにも今回だけではない。彼女の今季のフリップをすべてチェックしているが、ほとんどリップになっている。昨季と変わり映えしない。カメラのアングル上、見分けにくいときもあったが、それでも足首の傾き方を見ているとアウトエッジの疑いが濃い。百歩譲って、フラットエッジだったかもしれないが、少なくともインエッジにはなったことは一度もないと思う。確かにテクニカルスペシャリストの位置から見えにくかったり、モニターで確認してもアングルが悪く、判定しづらいこともあるだろう。それでも今季彼女は合計4回フリップを跳んでいるが一度もエッジエラー判定を受けていないことについては疑問が残る。もちろん、このエッジエラー以上に彼女の素晴らしさはたくさんあるわけで、その点についてもっと述べたいので、この問題についてはまた別な機会に触れることにしよう。
エッジエラーを疑うことは些細なことに思われるほど、彼女のジャンプは全体的には素晴らしいものがある。まず高さがある。回転の速さというよりも助走を含めた全体的な速さがある。姿勢の美しさがある。総じて見栄えがするジャンプである。安藤美姫選手のジャンプは高さというよりも、回転の速さと跳ぶ距離の長さがある。助走でスピードをつけてというよりも、スピードを溜めて「ヒュッ」という感じのジャンプだ(そう言えば、本人の言葉によると「ヒュイッ」と跳ぶそうだ)。浅田真央選手の場合は、ジャンプ前に上下動の抑揚があるジャンプで、「ポーン」と跳ぶ感じ。では金妍兒の場合はどうか?「スパッ」という感じだ。私の表現力の問題もあろうが、とにかく三人三様で面白い。
実は今季、私が金妍兒の演技で一番注目しているのは、全体的なスピード感だ。オフの調整がうまくいっているのだろう。スピン、ターン、ステップすべてにスピードがある。相当フィジカルを鍛えたのだと思う。そうでなければ、シットスピンをあの深い姿勢であれだけ速く回ることはできないだろう。ステップやターンのエッジチェンジも素晴らしい。ほとんど氷上にエッジの跡がつかないくらいスムースに滑っている。
FSの『ミス・サイゴン』は難しい楽曲を選んだなあ、というのが正直な感想だ。決してリズムやスピードに乗せてくれるような楽曲ではないと思う。しかし、それを感じさせないほど彼女はこの曲をものにしている。それに対してSPの『こうもり~序曲』は本来乗りやすい曲調をもっている。しかし、私は彼女のSPの振り付けはこの楽曲に合っていないと思う。特に中盤でワルツに乗せてステップを踏むパートがあるのだが、このワルツにステップが合っていない。曲は三拍子なのに、ステップは四拍子になっているという感じだ。『こうもり』は私の大好きなオペレッタだけに、このワルツのところは是非ステップのリズムを合わせてほしいと強く願ってしまうのだ。
ちなみに、オペレッタ『こうもり』は来年(08年)5月に日本で公演がある。私の大好きなコントラルティスタ、ヨッヘン・コワルスキーが十八番のオルロフスキー公を演じるという、またとない公演だ。もちろん、大枚はたいて見に行くつもりで、チケットは既に押さえてある。本場の『こうもり』を観劇しているときに、金妍兒の『こうもり』が重なって見えてきたら、それは彼女が『こうもり』のワルツをものにしたことになるのだろう。


Preview of NHK TROPHY

今や日本の選手(男女シングル)は、世界選手権の上位争いの常連になり、特に女子シングルはフィギュア王国アメリカに伍すレベル、層の厚さを誇るようになったので、今は全日本選手権が国内で開催される公式戦のハイライトなのだろうが、ひと昔前までは(毎年開催の公式戦としては)NHK杯が最も格式が高く、華やかな大会だったように思う。毎年、海外のトップクラスの選手が来日し、海外選手に日本選手が挑戦するというような構図で、国際公式戦らしい華やかさと緊張感があった。
もちろん今だって、その格式の高さと緊張感の強さは変わらない。GPシリーズとしては最終戦になり、2週間後には上位6選手によるファイナルが開催されるが、私の中ではファイナルは”Extra event”という印象が強い。
まあ、そうは言うものの、NHK杯の結果で男女ともファイナル進出選手が確定するので、日本国内開催ということも手伝い、GPシリーズ中、最も注目が高く、最も盛り上がることも確かだ。(テレビ中継はNHKということもあり、民放のようなハイテンションではなく、実直に盛り上げているという感じだが・・・・)

私事で恐縮だが、またもや生業の関係で、ブログをアップするタイミングを逸し、この時点で既にNHK杯はスタートしてしまった。よって、ここで見所や予測を紹介しても、例によって”Yesterday’s paper”だ。私はこれから帰宅し、予約録画したビデオで女子シングルSPを見ることになる。私自身の注目のポイントは衆目と一致するところであり、やはり安藤美姫、高橋大輔の両選手が筆頭であり、それにコストナー、(シニア2戦目の)武田奈也選手だ。敢えて絞れば、安藤選手のコンディションの上がり具合と高橋選手のSPでの「ヒップホップステップ」の仕上がり具合が私自身の見所だ。

ホームグランプリなので、男女とも多くの日本選手が出場する。私は明日(12/1)は仙台入りし、会場で観戦する。会場で生観戦する人はもちろん、テレビで観戦する人も、どうかご贔屓の選手がいたら精一杯の声援を送ってほしい。たとえ、テレビ観戦でも、その声援は言霊となって、千の風になって、仙台へ、選手へ届くことだろう。

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posted by pbq1447 |01:12 | コメント(2) | トラックバック(3)
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alexandraさん、こんにちは。

コメント投稿者ID :

そうですか。alexandraさんも会場で生観戦だったんですね。
私は西側スタンド(オーロラビジョンの下)で観戦していたのですが、どの辺だったのでしょう?
意外と近くにいたりしてね^^;

どんなスポーツでも本当は生観戦が一番です。
臨場感と緊張感が違います。

NHK杯のレビューは「生観戦レポート+所感」の形でアップする予定です。今しばらくお待ちください。

posted by pbq1447 | 2007-12-03 15:10

生観戦

コメント投稿者ID :

再びのコメント失礼致します。

私も昨日は仙台にて、(恥ずかしながら)人生初の生観戦をして参りました。
幸運にも選手に近い席で、エッジが氷を削る音やステップの時の表情を間近に見聞きできたので感動しました。
どの選手も、実物はテレビ以上に美しく凛々しいものなのですね。

トリノ五輪のFSを見て以来サラ・マイアー選手に注目しておりまして、今回も彼女が一番のお目当てでした。
堅実な技術の一方、音楽や衣装を含めた表現がしっとりとまとまっていて、自分のプログラムに振り回されることなく演じているという印象を受けます。3回転を確実に飛べるともっと素晴らしくなりそうなのですが…

安藤選手、会場で遠目に見ても練習中から元気のない感じでした。心配ですね。

長々と失礼致しました。NHK杯のレビューも楽しみにしております。

posted by alexandra | 2007-12-02 15:20

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