2008年09月08日

スパの森に住む悪魔 ベルギーGP観戦記

今シーズンは荒れるレースが多いのだが、毎回荒れ模様のスパでも大荒れのレースとなった。

スタート前、雨は完全に上がっていたが路面は少し濡れている状態で、第二セクターはほぼドライ。
この状況では、すべてのドライバーがドライタイヤを選択。
ピケJr以外のドライバーはすべてソフトタイヤでスタート。

スタートでは、コバライネンが出遅れ、路面が濡れていた1コーナーではライコネンが立ち上がりで飛び出す波乱の展開。
後続のマシンも接触やスピンが続出した。

マッサは1コーナーでは2位のポジションを守ったが、オールージュからの立ち上がりで、路面状況が心配になりアクセルをわずかに戻したところを、ライコネンに狙われてストレートで抜かれてしまう。

グリッドにつく前にマッサも一度、通っているはずなのだが、その後急速に乾いたというのだろうか。

そして、ライコネンには更なる幸運が降ってくる。
なんと、ハミルトンが2周目の1コーナーでハーフスピン。
またもライコネンは、ハミルトンをストレートでかわし、労せずしてトップへ上り詰める。


マッサ、ハミルトンのミスにも助けられたが、思った以上に晴れてきて路面温度が上昇。
さらに、序盤コースが濡れていてソフトタイヤで走れたことも、タイヤの発熱という面では助かった。
ここからのライコネンは、過去の不振が嘘のようにすばらしいドライビングを見せて、ハミルトンをじりじりと引き離す。
スパ・マイスター キミ・ライコネンの面目躍如である。

ところが、第三スティントになり事情が変わってきた。
発熱性に問題のあるハードタイヤで、ライコネンのラップタイムが上がらない。
徐々にハミルトンがライコネンとの差を縮めてくる。

それでも、渾身のアタックでハミルトンとの差をキープするライコネン。
さらに三位のマッサも差を詰めてくる展開。
トップ3ドライバーの意地をかけた素晴らしい攻防が繰り広げられる。

そして、残り三周で雨がポツリポツリ降り始めて、スパ劇場の最終幕が開いた。
ペースを落とすライコネンにハミルトンが急速に差を縮めてきて、最終シケインでブレーキングのあまいライコネンをアウトから抜きにかかり、一時は完全に並んだ。
だが、余裕のないライコネンは外側にスペースを空けることができずに、ハミルトンは接触を避けるためにシケインをショートカットして前に出てしまう。
当然、ライコネンに道を譲るもライコネンがアウトにマシンを寄せたのを見ると、ハミルトンは1コーナーでインに飛び込み抜いてしまう。

問題のシーンだ。
現時点では審議中のこのアクシデント。
ハミルトンは、ライコネンに完全に譲っていて、二位に落ちており、問題はないように見える。
シケインでのハミルトンのコースアウトも、接触を避けるためであり、ライコネンがアウト側にスペースを与えなかったのも事実。

ライコネンがアウト側にマシンを振ったのも、ハミルトンを抑えるためであり、ハミルトンは空いたインに飛び込んだだけ。

ともにぎりぎりの勝負を繰り広げており、どちらもペナルティになるとは思えない。
なによりも、この素晴らしい勝負にペナルティという水を差さないでほしい。


飛び込みで抜かれたライコネンもアウトから1コーナーにアプローチし、立ち上がりでハミルトンに迫るが、追突してしまうが、幸運にも二台とも無傷でレース続行。
ここまでの執念を見せるライコネンも見たことがない。

勝てば表情を変えずにうれしいと言い、負けても淡々と今回の結果には満足だと言うクールなキミの面影はなかった。
キミの熱い熱い走りだった。

そして、大粒の雨音が聞こえてきた。
第二セクターでは誰もコース上に残れない状況で、誰がリタイヤしても不思議ではなかった。
とにかく、トラクションを少しでもかければスピンするような路面状況だった。

ハミルトン、ライコネンともにコースアウトするも、ライコネンが壁にぶつかりまさかのリタイヤ ノーポイントに終わる。
このとき、ライコネンはエスケープゾーンからコースへ戻る途中で、コースより汚れたエ路面で、少しだけアクセルを開けてしまった。
コース上では問題にならなかったかもしれないが、これでライコネンのシーズンは終わった。

ライコネンは二位ではあまり意味がなく、優勝こそが目指すべきものだった。
それだけに、踏んでしまったのかもしれないが、あまりにも痛いリタイヤだった。

ただ、ここまでのライコネンの走りは素晴らしく、やる気がないだの引退するのだなどという外野の声を吹き飛ばすドライビングだった。
元々、私はライコネンがやる気がないとは全く思っていおらず、単純にタイヤの発熱に問題を抱えているだけだと思っていた。

オーバーステア気味を好むライコネンにとって、フロントタイヤのバイト感、グリップ感というのは彼の生命線のようなもので、この感覚がないと思い切って攻められないし、攻めるとミスをしてしまう。
彼がここ数戦の予選でミスを犯しているのはこれが原因であると思われる。

当り前だが、決してやる気がないわけではない。
それだけに、得意のスパでの彼のパフォーマンが結果に結びつかなかったのは不運としか言いようがない。

彼は攻めていたし、それゆえにクラッシュしてしまった。
仕方がない。
あと数分、雨が降るのが遅かったら。
たらればはないが、そう考えてしまう。


だが、このライコネンのクラッシュはフェラーリにとっては幸運かもしれない。
これで、ライコネンのチャンピオン獲得は厳しくなった。
それゆえにライコネンがマッサのサポートに回れば昨シーズンの逆転劇を再現できるかもしれない。

私はシーズン前から、ハミルトンがタイトルを取るにはフェラーリの二台がポイントを取り合う必要があると言ってきていた。
そして、ここまではほぼその通りに展開してきた。

では、ここからが問題だ。
はっきり言ってコバライネンにハミルトンをサポートすることは難しいだろう。
このレースもスタートで出遅れ、ペナルティをもらい最後はリタイヤと散々な結果となった。

一方、フェラーリはタイヤさえ温められれば1-2フィニッシュは夢ではない。
マッサ1位でライコネン2位なら、ハミルトン3位でもマッサは4ポイントの差を縮められる。
そうすれば、逆転は夢ではない。

問題はマッサは好不調の波が大きいこと。
今回も二度目のピットインの前に軽い状態で走れる機会があったのだが、ハミルトンの前には出られなかった。
こういう大事な時に、ベストラップを連発し、ファーステスト・ラップと記録して逆転できればチャンピオンになれるのだが。
ミハエルにあって、マッサに欠けているのはこのポイントだ。


優勝したハミルトンがだが、彼もまた手放しでは喜べない。
まずは2周目の第一コーナーでのミス。
ポールからスタートし、1周目で二位に差を広げて戻ってきたのだが、ここでのミスはやってはいけない。
ポールからスタートして、スタートを決めて、1周目で差を広げてレース前に予想通りの展開であり、このミスがなければライコネンに先行を許すこともなかっただろうし、普通にレースをして勝てていた可能性も高い。

そうすれば、エンジンの負担も抑えることができたかもしれないし、汚い空気の中を走って、エンジンに負荷をかけることもなかっただろう。

次のモンツァもエンジンに厳しいコースであり、そこでハミルトンのエンジンに問題が起きても不思議ではない。

さらに残り3周の最終シケインでミスして、1秒以内に詰めていたライコネンとの差を広げてしまう。
雨がなければ、これで1位ライコネン2位ハミルトンで決まりだった。
そういう意味では、ハミルトンもまた手放しでは喜べない。


それ以外のドライバーは、最後の混乱の中で順位を上げた人、下げた人、悲喜こもごもだった。

一つだけ言えるのはフェラーリエンジンが最強のエンジンであることは間違いがない。
次の、モンツァではトロ・ロッソがフェラーリ、マクラーレンの次である5位6位に来ても驚かない。

もし、もう1周余分にあればハミルトンもマッサも勝てなかった可能性が高い。
そう考えると、スパには本当の魔物がすんでいるのかもしれない。

posted by passion |01:50 | F1 | トラックバック(0)
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