2008年05月09日
ベルバトフ スペースの違いが分かる男
「中にいながら、外から眺めるようにプレイするのは簡単なことじゃない。(中略)家に帰りながら、どうしたら自分とチームが次にうまくやれるかじっくり考えるよ。みんながそうしてくれるといいな。それが良くなるための方法だから」 The Sun紙のベルバトフのコメント 2007年12月31日
ベルバトフという選手がいる。 イングランド プレミアリーグのトッテナムホットスパーズというチームのフォワードだ。代表チームではブルガリア代表のキャプテンでもある。
ベルバトフは、俳優のアンディ・ガルシアに似て、フィールドで静かな迫力がある。 もちろん、外見だけでなく歌も踊りも、、ではなくて、サッカー選手としての実力もある。 今シーズンは得点ランキングのトップ10にも名を連ね、ブルガリアの最優秀選手を何度も受賞している(02年、04年、05年、07年) 決定力あり、アシストもできて、ヘディングも強い。真ん中に構えてよし、サイドに流れてよし、下がってポストになってもよし、とそういう男だ。 ベルバトフをずっと見てきて、彼は「スペース」の違いがわかる男なのかな、とそんなことを思っている。 こんなシーンが典型だ。 トッテナムが攻撃に入ると、ベルバトフが、センターフォワードとして真ん中に構えている。彼にはディフェンスがぴったりついている。ボールをもらうために、サイドに流れるとそこにパスが出る。 ベルバトフは、相手ディフェンス二人ぐらいをひきつけている。サイドでボールを受けると、体を外に向けて、少し外に流れる素振りをみせる。 突然ターンをする。センターにグラウンダーの鋭いパスを出す。ディフェンスが「あっ」と思う間もなく、そこにフォワードのロビーキーンが走りこんでいる。その場所は、まさに先ほどまでベルバトフがいた場所で、今は一瞬スペースになっている。そして走りこんだロビーキーンがシュート! もう一つの場面はこんなシーンだ。 味方のキーパーがゴールキックで前線にボールを出す。そのボールが出る前ベルバトフは、ど真ん中に構えている。しかし、ゴールキックはサイドに流れ気味なので、サイドに移動する。相手と競り合いながら、しかも難しい姿勢でもきっちりと頭でボールを捕らえる。 ベルバトフがヘディングでボールを落とす場所は、先ほど自分がいた場所で、ぽっかりと大きいスペースになっている。そこに綺麗にボールが落ちる。しかし、そこには誰もいない。ベルバトフは、不満げに両手を広げる。 「なんで誰もいないんだ? スペースが見えないのか?」 ベルバトフは、今、トッテナムに残りたい気持と、さらに上のチームに移籍する気持と半々かもしれない。 残りたい気持の方は、ベルバトフと同じ絵が描けるロビーキーンがいるからだろう。 「ロビーキーンと僕はテレパシーが通じたような連携ができる。とても幸せな関係だよ」 そうベルバトフも発言している。(トッテナムのホームページのコメント 2008年4月4日) 一方で、彼は冷徹なリアリストでもある。自分が見えるサッカーができないと不満を(ただし冷静に)ぶちまける。ブルガリア代表では、こんな発言もあった。
「これは代表チームで、幼稚園じゃない。真実を言うのを侮辱だと受け取ってはいけない。不満のある人間は、自由に出て行けばいい」 (ブルガリアSTANDART NEWS 2007年9月10日)
トッテナムでも、ベルバトフが両手を広げて不満を見せる場面は少なくない。その回数が増えれば、移籍の可能性が高まるのかもしれない。 ベルバトフは、少しだけ中田英寿に似ている。そんなことを言うと、両方のファンから怒られそうだが、、、外見ではなく、サッカーに対する姿勢だ。 「スペース」という考え方を僕はヒデから学んだ。「スルーパス」は中田とともに一世を風靡したが、僕なりの解釈は、「おいしいスペースへの決定的なパス」のことだと、そう納得している。 最初、僕はサッカーにおける「スペース」がよくわからなかった。 それは、丸いお皿のように、動かずにフィールド上にあるのかとぼんやりと思っていた。 立食パーティーの食事が乗った皿のような感じだ。そこにサラダが出ることも、ローストビーフが出ることも、サッカー選手は共通にみんなわかっている、と思っていた。 少したって、それが間違いであることがわかった。 「スペース」は普段は見えない。どこにあられるかもわからない。あらわれては消え、消えてはあらわれる。 やがてスペースの中にも質の違いがあり、とっておきの「おいしいスペース」があることに気づく。それはゴールに直結する「スペース」で、あらわれるのも一瞬だが、消えてなくなるのも一瞬だ。 僕がこの何年かをかけてわかったサッカーの「スペース」は、立食パーティーの神出鬼没のローストビーフのようなものなんだな、という変てこなイメージだ。 そして、そのローストビーフを、味方の複数の人間が感じると、絶大な効果が出る。 中田英寿がスルーパスを出して、そのボールに追い付けないフォワードをしかる場面がときどきあった。 「なんであそこにローストビーフが出るのに、走っていかないんだ」 「そんなん、むちゃっすよ。出る前に匂いとかわかるんすか?」 そんなことを言っているわけはないのだが、決定的なスペースはきっと誰にでも見えるわけではないのだろう。 フィールドの中にいると、そのスペースは、思った以上に見つけづらいはずだ。しかし中田には、それが見えていた。そのおいしい場所を探すために首をたえずふっていた。 そして、ベルバトフにも、その「おいしいスペース」は、よく見えている。それは彼がフィールドの外側からの視点を、いつも持とうとしているからだ。他の選手が、彼と同じように見えていないとき、ベルバトフは両手を広げて不満を表明する。 試合中、ベルバトフは、とても静かだ。ゴールをしてもあまり喜ばない。 激しく動いているが、その運動量はこちらに伝わってこない。屈強なディフェンスに激しくマークされても、体の軸がぶれず、不必要に倒れたりしない。 ベルバトフは、ブルガリアで、サッカーに限らず才能ある子供達への基金を設立し、母国からブルガリアへの貢献で賞を授与されている。現役のサッカー選手なのに、サッカーを超えた社会的な活動もはじめている。
「基金のアイデアは、ソファで寝転がっている時に思いついたよ。色々なことを思いつくが、あまり人には喋らないんだ。夢はサッカー以外にも大きく広がっているが、今はサッカーに集中しているよ」 (STANDART NEWS 2008年4月4日)
自分のポジションとスペースはよく見えている。サッカーでも社会でも。 そんな点もヒデと少しだけだぶってみえる。 来期、ベルバトフがトッテナムに残留するのか、移籍するのか。いずれにしろ、彼の去就でチームの戦力は大きく変わりそうだ。
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posted by オオウチコム |09:23 |
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ベルバトフ スペースの違いが分かる男
ディミタール・ベルバトフ。通称"天使の顔を持つ悪魔"
彼の"ひとつ先の時間を見る能力"は間違いなく世界随一でしょう。性格上、エゴイスティックなプレーに走ることはありませんが、もし彼がブラジル人に生まれていれば、今頃は世界最高の点取り屋として恐れられていたでしょうね。
posted by あどうも | 2008-05-09 13:08


