2010年02月18日

岡田監督 あなたがリアリストに戻るのなら

私にとってそもそも「攻撃的か、それとも守備的か」というくくり方は存在しない。あるのは「リアリストか、そうではないか」という分け方だけに限られる。
ファビオカッペロ 欧州サッカー批評2009


東アジア選手権は、まったくふがいないひどい結果だった。本来なら、怒りをぶちまけて、サッカー協会の皆さんがぐうの音も出ない文句を言いたいと思うところだ。
しかし、なぜか僕の怒りはあまり本質的なところにはないようだ。

人間の怒るポイントは、いつも見た目はささいなところだ。
妻が怒り狂うきっかけも、テーブルの上に新聞を広げっぱなしにしているところとか、「朝起こしたら1度で起きなさいよ」みたいなところで爆発する。(ここの下りを妻が読んだら怒り狂うな)。

その日、2月14日の日韓戦は、審判の奇妙な演出で、国立の舞台に役者が10人づつしかいない、という状況になった。役者が少なくなったので、フィールドには、自然にスペースが生まれていた。日本代表も、ぶれの少ないパス展開で、縦に進めるようになっていた(ゴールの手前まで)。

これだけスペースがあるなら、ここは佐藤寿人を出すのが一番いい。僕ら家族は「こりゃ寿人だな」と言っていた。
そのことは岡田監督もわかっていたのだろう。結局フォワードの交代は佐藤寿人だった。失礼な言い方だが、料理の仕方は僕らと一致していた。
しかし、どうにも佐藤寿人の投入が遅いのだ。いや本当に遅かった。怒っていて何分の交代かは覚えていないが、結局2点のビハインドになって、佐藤寿人に与えられた残り時間はわずかになり、ついでにスペースも消えてしまっていた。

フライパンの上では、ニンニクがいい色になり、もう焦げ始めているのに、フライパンを見つめたままで、次の食材を入れないのは、いったいどういうわけだ?
お前は、何を料理しようとしているんだ? と僕らは声を荒げてテレビの画面に罵り続けた。
もっと本質的な批判もあるはずなのに、佐藤寿人の投入が遅かった点だけは、今になっても怒りがおさまらない(友人は交代の玉田のゆっくり歩きに怒り心頭だ)。

もちろん、岡田監督の言い分はあるだろう。残りの交代枠と審判のきまぐれさを考えると、ギリギリの時間まで交代のカードは切りたくなかった。あるいは今のメンバーで点を取れるかギリギリまで見たかった。
でもね、結局、出来上がった料理は、これまでで一番おいしくなかったでしょ?

おそらく、無残な敗因は、岡田監督がリアリストの自分を無理やり隠して、理想家の仮面をかぶってしまったことだ。
本来はリアリストなのに、理想家になろうとする。結果的に血の通わない言葉を発し、そのちぐはぐさが、選手の歯車を狂わせ、僕らと代表の距離を遠くさせてしまっている。

選手に自由な発想を期待する、と言いながら、90分間メリハリなく動き続けなければダメだ、と言う。
もっとシュートの意識を持て、と言いながら、二人のフォワードをサイドに開かせて、フォワードの仕事への集中力をそいでいる。

平山というターゲットができて活性化しても、「遠藤が上がったからだ」と、リアリストの象徴の平山を否定する。(もちろん、「遠藤」の件は間違いではない。両方セットなのに、リアリストの理由だけ打ち消すから妙な感じで響くのだ)
その他の起用や交代もちぐはぐで、理想家とリアリストが、混乱したままの状態だ。

本当は岡田監督の真骨頂は、アンチフットボールなぐらいリアリストな面だ。守備を固め、センターバックが上がるのは死ぬほど嫌いだ。可能性の低い理想を求めるより、可能性の高い冷徹で現実的、相手が嫌がるような対策を取る方があっている。
結果的に出来上がったのは、ときどきアーセナルだけど、あとはずっとバタバタと動き続けるチームだ。

監督の抱える矛盾は、絶対にフィールドに反射する。選手たちは、力を発揮できず、ちぐはぐな雰囲気が続く。勝負にこだわったシンプルな韓国に押されていき、最後は土石流のようにチームが崩れていく。

オシムが倒れた時、あっさりと代表監督を引き受けたのは、リアリストのタケシ君の方だった。この空白は、自分以外の他の誰も埋められない、と岡田さんの本能が決めたのだ。
それなのに、「引き受けるからには理想のサッカーを追求する」と、オシムの「サッカーの日本化」からさらに原理主義的に先鋭化したようなサッカーになってしまった。

ベストフォーという目標も、リアリストのタケシ君のままなら、「いや、やっぱり今回はちょっと無理だね。悪い」と早々に撤回していたはずだ。
しかし、今はうつろな目で「ベストフォーだけどそれが何か」という態度にまでなっている。

本来ならこの危機は、リアリストの岡田に戻る最後のチャンスなのだ。
「理想を追求しようと思ったけど、やっぱりやめた。とにかくまず最初の1勝をなりふり構わず取りに行く」と、そう本音に戻ってくれるなら、それなら、僕はあなたをその1勝分だけ信じることができる。

でも、そうでないなら、佐藤寿人の遅い投入に、煮えくりかえった僕の怒りは、もう4年間続くだろう。


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posted by オオウチコム |12:00 | サッカー監督 | コメント(4) | トラックバック(0)
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岡田監督 あなたがリアリストに戻るのなら

コメント投稿者ID : moneru01

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0912/14/news010.html
マリノスサポなのでマリノス監督時代も一貫して見てますが、自分の感覚では
「リアリストの手法しか持ち合わせていない理想家」です。
ずれがある、という点では同じでしょうが、本質に帰れば帰るほど理想家になっていく気がします。

posted by moneru01 | 2010-02-18 16:10

岡田監督 あなたがリアリストに戻るのなら

コメント投稿者ID : ouchicom

ありがとうございます。

所詮、男の子なので(?)、理想家というか、ちょっと格好つけたい、というのはあるでしょう。

りアリストと理想家、どっちが人間の元なのかは、僕もさすがにわかりませんが、Jリーグ時代はリアリストだったと印象があります。

posted by オオウチコム | 2010-02-19 01:34

岡田監督 あなたがリアリストに戻るのなら

コメント投稿者ID : quoli_1289

南アワールドカップ前のイングランド戦からリアリストらしさが出てきましたね。
ただ、結果出してる佐藤寿人を呼んで欲しかったですよね・・・。

posted by quoli_1289 | 2010-06-20 21:45

岡田監督 あなたがリアリストに戻るのなら

コメント投稿者ID : NID00011652

コメントありがとうございます。

すんごい「土壇場リアリスト」ぶりでしたよね。

佐藤寿人 
僕も好きな選手で、ここぞ、というところでほしい選手です。

大内

posted by 大内 | 2010-06-21 10:37

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