ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

七夕賞 思惑あっての騎乗は否定こそできませんが……

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七夕の時季にお馴染みのGⅢレース、第53回七夕賞が福島競馬場で行われました。


優勝は1番人気ゼーヴィント。 1年前のラジオNIKKEI賞を勝った福島で2度目の重賞勝利を飾りました。

このレースでは、2番人気マルターズアポジーが逃げることを全てのジョッキーが承知していました。マルターズアポジーは昨秋、七夕賞と同じ福島芝2000mで行われるGⅢ福島記念でゼーヴィントを2着に下し優勝している、今回のレース最大のライバルです。また、この逃げ馬はスローに持ち込んで逃げるのではなく、淡々と、かつピッチ良く走って後続の馬にも脚を使わせるタイプなので、ゼーヴィントの鞍上・戸崎騎手の気持ちとしては、もしマルターズアポジーをマークしてついていったら共倒れになる可能性が高い、かといって後ろから悠々と追走していては逃げ切られてしまう。

どうしようかとレース前にかなり考えたことでしょうが、相手は逃げ馬。自分の力だけでは止められません。さて、どんな展開になるのか、興味をもってスタートを待ちました。


そしてゲートが切られレースが始まり。 当然のことながらマルターズアポジーが先手を取ります。 そこでなんと12頭中11番人気、石川騎手騎乗フェイマスエンドが果敢に追ってきて、ハナを主張するようにマルターズアポジーに競りかける乗り方をしてきました。

勝つための作戦としてどんな乗り方をしようとも、それは騎手の自由であり、それぞれの思惑があってのこと。それは否定しません。 ただ結果的にはマルターズアポジーのリズムを大幅に狂わせ、1番人気馬に多少なりとも有利に働いただけ、そんなレース運びをしてしまったことに対する違和感がありました。


確かにフェイマスエンドはこれまでも先行して好結果を出してきた馬ですが、他に絶対的な逃げ馬がいないレースならともかく、何が何でもハナに行くタイプではありません。逃げ馬がいてペースが速い場合は間をおいて追走したり、遅ければそれなりの動きをするなど融通は利く。どうしてあのように競っていったのかわかりませんでした。

ゼーヴィントの実力は疑いようがなく、この展開でなくとも勝っていたかもしれません。 しかしフェイマスエンドの騎乗がレース全体の流れに大きな影響を与えたのは確かです。 トップハンデ57.5キロが響いたのだとしてもマルターズアポジーが負け過ぎと思える11着の大敗を喫し、フェイマスエンドがそこから大差のシンガリ負けとの結果を見ると、わざわざ競っていった意味は何だったのかと考えてしまいますね。

ゼーヴィントは恵まれた展開に加え、戸崎騎手が上手に乗ったのも勝因のひとつでしょう。 レースでは前を見る形で中団につけて3コーナーから早めに動き出し、直線では力強く伸びて先に抜け出していたマイネルフロストを捕らえゴール。これで福島での重賞レースは〔2.1.0.0〕と連対率100%、ここの馬場とは大変相性が良いようです。


2着に5番人気マイネルフロストは鞍上の柴田大騎手が3番手を追走し、小回りの福島競馬場を意識してか早めに先頭に立ってゴールまで粘り込む作戦をとり2着に好走。この馬の脚質、コース形態を踏まえると文句なしの好騎乗でしたね。


もう一頭、鞍上込みで注目していたスズカデヴィアスは4番人気4着。 ポツンと後方待機というのは横山典騎手らしい、腹の据わった乗り方でした。 ペースが速く、流れはこの馬に向いていたと思います。“夏バテ気味だったけど頑張ってくれた”とのコメントは、展開が向いてメンバー最速の上がりにもかかわらず本来の伸びがなく勝ちきれなかったことと、馬の手応えから感じたものなのでしょう。

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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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