ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

宝塚記念 キタサンを負かしたデムーロの手綱 横山典の騎乗にも拍手

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春のグランプリ、第58回宝塚記念が行われました。 注目はやはりGIレース3連勝がかかるキタサンブラック。単勝1.4倍の圧倒的人気に支持されました。


春の天皇賞で3200mをレコードタイムで勝ってから約1か月半の間に、GI大阪杯からのレース疲れや目に見えない肉体的・精神的な消耗を取り除き、それからまた調教の日々で勝つために鍛える。芯からリフレッシュできている状態であればよいのですが、もしも前走までの調子が維持できていなければ前走のようなパフォーマンスはできない可能性もありました。

春の天皇賞2着の実力馬シュヴァルグランも上記の理由で、こちらは評価を落としました。キタサンブラックはそれでも好戦できる地力があると踏みましたが…。


レースはスタート後、鞍上の武豊騎手は普段と同じくまずはキタサンブラックとの折り合いを意識しリズム優先、自分よりも先に行きたい馬があればそれを行かせて、好位で流れに乗る騎乗をしました。

2000mを超える距離らしくペースはそれほど速くなく、キタサンブラックは位置取りとしては丁度良いところだったと思います。そのポジションのまま4コーナーを回り直線へ。そして鞍上が仕掛けだす。と、いつもならここで脚を使いグングンと伸びてくるのですが、今回は全く動かず動けず、ズルズルと下がるのみ。ラストの脚が残っておらず、道中でかなり力を削られてしまったのではないかと思います。当日は稍重の発表でしたが、馬場の影響や、他馬の仕掛け等にジワジワと消耗してしまったのかもしれませんね。


この王者キタサンブラックを“負かした”のが、昨年GI香港ヴァーズを勝ちGⅡも3勝している実績馬、3番人気サトノクラウン。 道中はキタサンブラックをマークする形で進め、流れが遅いと判断したのか鞍上のデムーロ騎手は向正面の半ば過ぎでキタサンブラックに並びかけるように上がっていきました。この動きによりキタサンブラックはリズムを狂わされ、少しハミを取る格好になってしまいました。大本命馬が楽々とレースを進めている姿を見て、ちょっとペースを乱してみようと突っついてみたのかもしれません。

その後、自分はスッと下げて何事もなかったかのように淡々と馬を走らせていました。これもまた騎手同士の駆け引きというか、戦法です。なかなかやってくれます。さすがデムーロ騎手と思わせる巧い騎乗でした。


2着は5番人気ゴールドアクター。 前走の天皇賞春は出遅れてこの馬の競馬ができず7着に敗れ、前回から手綱をとる横山典騎手は今回こそ、との思いで挑んだのでしょう。

ゲートをスムーズに出てからは中団よりやや後ろで脚を温存、馬場の内側はすでに荒れて悪い状態でしたが、横山典騎手はあえて経済コースであるインにもぐり込んで終始そのまま、1度も外に出さずにレースを進めました。ゴールドアクターがこういう馬場を苦にしないとわかっていたために、あのコース取りを選択したのでしょうが、普通はスターホースの騎乗依頼を受けたからには、騎手はみな良いところを見せようと思いリスキーなことはしません。

しかし前回出遅れてしまっただけに今回こそは何が何でも結果を出さなければならない、2度目のミスは許されない、と横山典騎手ほどのジョッキーでもそう考えたはずです。再び騎乗するチャンスを得たことで、絶対に何かやってくれると僕は確信していました。

腹の据わった騎乗に拍手を送りたい。お見事。



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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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