ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

ヴィクトリアM 牝馬のレースの難しさが如実に出た一戦

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先週は東京競馬場で牝馬のマイルGⅠレース、第12回ヴィクトリアマイルが行われました。


このレース、過去の結果を見ると上位人気馬同士の決着がほとんどありません。 例えば昨年は7歳牝馬ストレイトガールが1番人気ミッキークイーンに2馬身半の差をつけて優勝、連覇を果たしましたが、前年にこのレースを制し(秋にはスプリンターズSも優勝し)ているにもかかわらず、7番人気に甘んじ配当は高め。 さらに2013~2014年ヴィクトリアマイル連覇のヴィルシーナも1番人気1着の13年に対し14年は11番人気での優勝と、どちらも終わってみれば納得の実績・能力を持つ馬、ただ近走がふるわずに人気が出なかったようです。

好走した後に人気を集めて敗れ、少し評価が下がったところでまた好走するのは競馬ではよくあることで、これはコースの相性や展開やメンバーなど様々な要素が絡むので仕方ありません。どれほど高い能力を秘めていても、それを発揮できるかできないか、ここで突き抜けるか大敗かに分かれてしまいます。 また牝馬の場合は、ちょっとしたこと(ショックや疲れ)で全く飼い葉を受けつけなくなったり、カリカリして体力を消耗してしまうような神経質なタイプが少なくないため、身体的・精神的に大きく波があり、それは当然成績にも影響が出てきます。だから牝馬のレースは難しく、地力の高さはもちろんのこと今現在の状態の見極めが必要になります。


今年のヴィクトリアマイルは1~5番人気馬が揃って3着以内に入らず、特に単勝1.9倍の断然人気ミッキークイーンが7着に沈んだことが大きく、馬連4万超の波乱の結果となりました。僕もこの一昨年のオークス・秋華賞馬が優勝候補の最右翼かと見ていましたが…。

スタートしてポジションは中団よりやや前、手応えの良い走りで順調にレースを進めていましたが、その後4コーナーを回り外に出して追い出しにかかると反応がなく、前走・阪神牝馬Sを勝った時のような脚は全くと言ってよいほど使えませんでした。直線で多少、外から寄られる場面があったとはいえ脚さえ残っていたら割ってこられるスペースは十分、あの時点ですでに力尽きていた感じでした。

馬場発表は稍重、ただし前日は大雨とまではいかずとも、1日中グズグズと雨が降り続いたので、見た目以上に馬場が緩かったと思います。切れ味勝負が得意なミッキークイーンにとってはかなりの負担がかかり戦意を喪失してしまったのでしょう。同じく稍重で行われた今年の桜花賞でも見られたように、通常の良馬場のコンディションではなく緩い馬場になってしまうと見せ場も作れずに惨敗するというケースはとても多く、やはり牡馬に比べると牝馬は繊細な性質をもっています。ミッキークイーンは次走、得意な馬場で臨めると良いですね。あらためて期待します。


優勝は6番人気アドマイヤリード。 前半は中団よりやや後ろに位置を取って、3~4コーナーでは内を回り前との距離を詰めていきました。このルメール騎手のコース取りが何よりも大きな勝因です。

前半のスローな流れは当然、前につけた方が有利にもかかわらずアドマイヤリードは後方寄り。瞬発力勝負なら何とかなると鞍上は考え、余計な動きはせずにジッと我慢、この馬の脚を存分に発揮してくれました。緩い馬場でも上手に走れる馬なのはルメール騎手も承知していたため、あえて外を回さなかったのでしょう。外の馬場の良いところを選んでいたら勝ちきるまでには至らなかったと思います。さすが、見事な騎乗でした。


2着に11番人気のデンコウアンジュ。 成績を見ると2歳秋にG3アルテミスSを勝って以降1年半以上勝っていませんが、この馬はやはり東京競馬場が合っています。アドマイヤリード同様の決め手があり、それを鞍上の蛯名騎手がうまく引き出しました。最速の上がり33.2秒の脚を使って直線残り200mで横一線に並び外から抜け出し、一瞬勝てると思うほどの勢いがありました。最後は勝ち馬に1馬身1/4離されましたが、力を出し切って満足のいく内容だったのではないでしょうか。

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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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