ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

NHKマイルC アエロリットの勝因は鞍上の『覚悟』と手腕

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3歳のマイルGⅠレース、第22回NHKマイルカップが東京競馬場で行われました。 優勝は2番人気の牝馬アエロリット、僕も上位を窺う一角の存在と見ていました。

重賞勝ちこそありませんがGⅢで2着2回、前走の桜花賞では掲示板に載る(5着)健闘を見せるなど出走メンバーの中でも力上位。桜花賞では出遅れてしまいスムーズなレース運びができませんでしたが、今回はロケットスタートを決めて好位を楽々と取りに行けました。

アエロリットが入った8枠16番はマイル戦で不利かというとそうでもなく、たとえ外側の枠でも好スタートを決めることによりじわじわと内へ寄っていけます。また幸いなことに、外から被されたり周囲の馬たちとゴチャつくところもないまま流れに乗れて、鞍上の横山典騎手にとって、レース前半は思った以上にうまく騎乗できていたのではないでしょうか。ここがやはり彼の腕ですね。

速いペースでも抑えず気分良く行かせ、かといって引っかかるような押せ押せの騎乗ではない、とても自然な乗り方で馬に僅かな負担すら与えずにポジションを取っています。脚も精神的にも消耗のない見事なレース運びでした。


東京開催も3週目を迎えましたが、芝がぐんぐんとよく伸びるこの時季はまだパンパンの良馬場で競馬ができます。それもあってか流れがとても速くなり、最初の1ハロンだけ12秒台で残りのラップは最後まで12秒を切る高速決着。にもかかわらずレース後コメントで「時計は速かったけどそれほどは(速く)感じなかった」と横山典騎手が話していたのは、僕も経験があるのでわかります。

馬が本当に良い状態にあり絶好調のときに軽い馬場でうまくレースを進められると、速く感じないままに走り切ってしまう。反対に馬の調子が落ちているときは普通のペースでもついていけずに速く感じたりします。 今回は実力は当然として、その力を出し切るための全ての条件が揃ったこと、そして速いペースでも行くと決めた鞍上の覚悟が勝利の要因でしょう。


2着に人気薄13番人気のリエノテソーロが入りました。 中団で脚をため徐々に進出、直線では外に出しメンバー最速の上がり3F34.0秒の脚を披露するも、勝ち馬に並びかけたところで脚いろが止まり、そこまで。一瞬“吉田隼騎手が勝った”と思ったのですが、アエロリットに突き放されてしまい最終的には1馬身1/2差をつけられゴール。さぞかし悔しい思いをしているでしょうが見事な騎乗ぶりでした。

3着の6番人気ボンセルヴィーソは戦前から単騎逃げが予想されていて、展開としては有利な立場にありました。ただし、その利をどう生かすかは鞍上の腕次第。松山騎手がどう乗るのかと興味深く見ていましたが、速いラップでも馬に負担を与えないよううまく乗っていましたね。今年の皐月賞を制して精神的にも余裕が出てきたのか、たいへん自信にあふれた手綱さばきで、堂々とした良い逃げっぷりでした。


一方、1番人気に支持されたカラクレナイはまさかの17着敗退。 中団でレースを進めていたのを見ても終始手応えがあやしく、直線では、いつもなら仕掛けだしたら鋭く反応してくれる馬なのに全然動けない状態。いくら大敗しても、展開が向かずに、この流れでは力が出せなくても仕方ない、と思わせる内容であれば心配ありませんが、今回のレースのように1つも見せ場がないのはこの馬の能力では考えられないこと。あらためてこれからのレースに期待したいところです。



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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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