ダービージョッキー大西直宏 騎手の視点

天皇賞・春 武豊騎手のタフな作戦に見事応えたキタサンブラック

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伝統のGⅠレース、第155回天皇賞・春が京都競馬場で行われました。

中距離がメインになりつつある昨今の競馬界ですが、騎手同士のペースの駆け引きや、騎乗馬をどうやって上手く走らせるかなど、距離が長くなればなるほど鞍上の技術が問われる長距離レースは短距離戦とは違った魅力があります。 熱狂の短距離戦に対し、密やかな興奮とでもいうのか、そんなワクワク感とともに騎手の腕を純粋に楽しむのが長距離の醍醐味かと思います。


今年は天皇賞・春の連覇がかかる2015年菊花賞馬キタサンブラックと、昨年の有馬記念でキタサンブラックを下し優勝した2016年菊花賞馬サトノダイヤモンドの2頭が人気を分け合い、単勝はともに2倍台。戦績を見ても両方が両方とも甲乙つけがたく、どちらも菊花賞を制しているようにこの長距離でも全く不安なしと、完全に2強の一騎打ちになるであろうと思われました。

また鞍上の武豊騎手とルメール騎手、この2人の名手の腕比べも大きな見どころとなり、予想に際し軸をどちらにするかは最終的には個人の好みによるのでは、としか言えません。僕は昨年から“この馬は強い”と言い続け、ずっと追いかけてきたサトノダイヤモンドにより注目していましたが…。


結果は1番人気キタサンブラックが優勝。それも3分12秒5のレコードタイム、まさに文句なしの圧勝でした。2着に4番人気シュヴァルグラン、3着に2番人気サトノダイヤモンドが入り、上位3頭を見ると真の凄さを感じるというか実力のある馬が揃ったと思います。

レースはヤマカツライデンが後続を離しハイラップを刻み、キタサンブラックはその離れた2番手につけましたが、2番手にいながらもペースは落とさず平均的に速い流れで淡々と進め、完全にレースを支配していました。逃げる松山騎手以外のジョッキーたちにとって目標とするのはもちろん武騎手なので、このコンビに離されることなく追走しなければなりませんが、ペースが全然落ちずにいることで、大半のジョッキーがかなり速いと感じていたと思います。

これは武騎手の思惑どおり。 キタサンブラックの力に自信と信頼があるからこそ、自らが苦しい思いをしながらも後続馬に脚を使わせて余力を残さない流れにしたのでしょう。おそらく、スローに落として瞬発力勝負になれば分が悪いとふんでいたのでは。この武騎手のタフな作戦に見事応えたキタサンブラックは昨年以上にパワーアップして見えます。これからもファンの期待を背負い素晴らしいレースを見せてくれることと期待しています。


2着シュヴァルグランは好位で追走、今回はかかることなくスムーズに流れに乗って、福永騎手とは息ピッタリの、じつに良いレース運びができました。好走の要因は長い距離でもピッチが良かったからだと思います。スローになるとどうしても行きたがるところが出てしまいますが今回は鞍上も乗りやすかったでしょうね。好位のポジションでじっと我慢できたことが最後の直線での伸び・粘りにつながったのだと思います。本来この馬が持っている能力を余すことなく発揮することができました。


3着にサトノダイヤモンド。 スタート後、好位を取りに行き追走するものの8枠15番に入り終始外を回る展開となりました。ルメール騎手のことだから前々週イスラボニータで勝ったマイラーズカップのように、どこかで隙間を見つけてインに潜り込むものと期待していたのですが、それが出来そうな隙がなかったのか、またはインで詰まるよりも外を回してでもサトノダイヤモンドが走りやすい競馬をしようと心掛けていたのかはわかりません。結果的にこのロスが2着と3着のクビ差に表れたのでしょう。

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元JRA騎手。1997年には、サニーブライアンに騎乗して皐月賞・日本ダービーの2冠を達成。通算512勝、重賞12勝。引退後は、騎手ならではの視点で競馬を表現するターフメディアクリエイターとして、レース解説などを発表。日刊スポーツをはじめ、各種メディアにて連載中。また、自らの名を冠した育成牧場「N.Oレーシングステーブル」を経営。ターフに活躍馬を送り出すべく、代表として手腕を発揮している。
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